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厚真町で「ローカルベンチャーのパートナー」という新たな挑戦者を募集!20210215

この記事は2021年2月15日に公開した情報です。

厚真町で「ローカルベンチャーのパートナー」という新たな挑戦者を募集!

(※撮影時のみマスクを外して頂いています)

北海道の交通の玄関口である新千歳空港、苫小牧港からほど近い、東胆振の海から山まで揃うまち、厚真町。山林と田畑にも恵まれ、作付面積日本一となったハスカップや米、野菜、畜産物などの生産も盛ん。浜では年間を通してサーフィンを楽しむ人も多く、観光地としてのポテンシャルも秘めています。
道外の方は、2018年9月に起こった北海道胆振東部地震で、その名を知った方も多いのではないでしょうか。2021年になり、仮設住宅も解体され、新たに建設された災害公営住宅に移って生活の基盤を取り戻しつつあり、一歩一歩復興への道を進んでいます。

これまでくらしごとでは、厚真町に移住し起業する人を、地域おこし協力隊の制度を活用して町がバックアップする「厚真町ローカルベンチャースクール」について取り上げてきました。

■地域に新たな芽を育む、腐葉土のような存在に。
■「ここに来て、これがやりたい」を受け止める風土が、町の底力に
■自分は何者か?が見えてくる、リアルを感じるローカルビジネス。
■地域と都市。これからのクリエイターのあり方を見つける活動。

ここから巣立った起業家の事業が徐々に育ち、パートナーとなる存在が必要になってきた厚真町が、このたび「企業研修型」の地域おこし協力隊を募集すると聞き、その意図や求める人材、これからの展望について伺うことにしました。

厚真町で育ったベンチャー事業を共に創るパートナーを

まず役場でお話を聞いたのは、産業経済課兼まちづくり推進課主幹の宮久史さんと、産業経済課経済グループ主査の小松美香さん。お二人とも、道外から厚真町に来た移住者でもあります。
「厚真町ローカルベンチャースクールや、住民も使える起業化支援事業補助金を活用して、自ら事業を行う人が厚真町で増えています。事業が成長してパートナーとなる人がいることでより事業がスケールする段階にさしかかってきたこと、また、起業家タイプだけでなく多様な人材に町に入り込んでもらえばより豊かな町になるという考えから、企業研修型の地域おこし協力隊という制度を開始することになりました」と宮さん。

5D3B8880.JPG厚真町役場で働く福島県出身の小松さん(左)と岩手県出身の宮さん(右)

今回この制度を活用するのは、起業して5年以内もしくは企業内で新規に事業を立ち上げるなどの条件を満たしている4社。農産物の加工・販売を行う「株式会社たのしい」、厚真スイーツの開発を目指す「株式会社あつまみらい」、和牛メゾンを構築する「GOOD GOOD合同会社」、自動車の新たなビジネスを展開する「株式会社オートリペア ナスノ」。いずれも個性豊かな経営者が揃っています。
着任後から最長3年間は、こちらの企業の経営者と共に活動することになりますが、商工会が事務局となり、農協や漁協などが加わった厚真町地域産業活性化推進協議会が経営も含めバックアップする体制も整えています。

「ゼロイチ」タイプではなくても挑戦できる

これまでのローカルベンチャースクールには、起業のアイデアや計画、推進力がある人が挑戦していましたが、今回は既に立ち上がっている企業での活動とあって、「自分でも挑戦できそう!」と思える人の応募も可能とのこと。
「自分がゼロイチでアイデアを出して作り上げることはできないという方でも、何かを成し遂げたいという思いがあれば、事業を大きくする過程を楽しみながら自らも成長していくことができると思います。経営者が既に築いた人脈もあるので、町になじみやすいというメリットもあります。起業家が灯した火を一緒に燃やしていける、共感力と良いエネルギーを持った方にチャレンジしてほしいですね」と宮さん。ゼロイチでアイデアを出す人、パートナーとなってそのアイデアの実現に向けて動いてくれる人、どちらの人材も厚真町に必要であると強調します。

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ローカルベンチャーが育ち、事業に関連して集まってくる人も増え、新しい風が吹き始めている厚真町。北海道胆振東部地震で町に注目し、気にかけてくれる人や応援してくれる人が増えたことも、追い風となっているといいます。
「震災は悲しい出来事ではありますが、だからこそ頑張らなければと思えた部分もありますし、たくさんの方に厚真町を知っていただき支援していただけたという、前向きに捉えられる部分もありました。そんな中で厚真町内の事業者さんも本当に努力されていますし、この取り組みを通して事業をさらに大きくしていけたらいいと思います」と小松さん。引き続き、厚真町と新しいローカルベンチャーに携わる方たちを応援したくなりました。

さて、ここからは気になる4つの事業をご紹介していきしょう。


生産者の視点で農産物の加工・販売、情報発信を

株式会社たのしい

農家に嫁ぎ、家族で営む農園で生産している農産物の加工品の販売をする「株式会社たのしい」を創業した堀田祐美子さん。白老町出身で、苫小牧市にある大企業で事務の仕事を経て、結婚を機に厚真町に移住。6年間は3人のお子さんの子育てに専念し、少しずつ手がかからなくなってきてから農業に従事するようになりました。

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「会社員時代は人が主役の生活でしたが、厚真町で農業を始めてからは、自然や作物が主役。そんな中で、外で体を動かして仕事をするのは楽しいと思えました。ただ、北海道胆振東部地震をきっかけに、自分の働き方やこれからの人生を見直し、本当にやりたいことをやろう、食べてくれる人の方を向いて働こう、という思いを抱いたのが起業のきっかけです」。

厚真町の農業、生産物をもっと知ってほしい

堀田さんが扱っているのは、自家農園で作っている原木しいたけ、ハスカップ、とうもろこし。生産物そのものの販売のほか、原木しいたけは乾燥しいたけに、ハスカップはアイスクリームに加工もしています。
「一般的に販売されているしいたけは菌床栽培が多いですが、原木しいたけは食べると普通のしいたけには戻れないくらいおいしいんです。徐々に作る人が減っていることもあり、原木しいたけのおいしさを生産者自身が発信して、知ってもらって守りたいという思いもあります」。
株式会社たのしいのウェブサイト内でレシピを公開するなど、地道な努力を続ける堀田さん。原木しいたけは、海外への展開も視野に入れています。今後は自家農園以外の生産物もどんどん紹介し、厚真町の農業を知ってほしいという思いも。

「大人たのしい」働き方や生活を体現して

会社設立から1年経ち、農業と並行しての作業で人手が足りないこと、自分のアイデアだけに止まらずもっと幅広い発想で商品開発やブランディングを進め、自家農園も含め厚真町の素晴らしい農産物をもっと広めていきたいと考え、今回の募集に手を挙げることに。

株式会社たのしいの理念は、「おいしさと健やかさ、しあわせと豊かさを追求し、⼤⼈たのしい⽣き⽅を世界に届けたい」。「私自身が楽しく働きたいと思って起業したので、今回応募して来てくださる方にも、どうすれば自分や周りの人が楽しく働けるかを考えていただけたらいいですね。五感をフルに使って厚真町の暮らしと、そんな『大人たのしい』働き方を体現していただきたいと思います。食べることに関心があり農業や生産者に敬意を持ってくれる方、私の伴走者となってどんどんアイデアを出して実行してくれる方に来ていただきたいと思っています」。


日本一のハスカップ産地を作った男の新たな挑戦

株式会社あつまみらい

「厚真町を日本一のハスカップの町にしたい」という思いを抱いて、都市でのサラリーマン生活を経て厚真町に戻ってきた、株式会社あつまみらい代表の山口善紀さん。
「ハスカップファーム山口農園」として親子2代30年にわたり、生食に適した食味の良い木を選抜育種して、2009年に「あつまみらい」「ゆうしげ」を品種登録。町内の60件の農家に苗木を供給し、今では厚真町は作付面積日本一となっています。しかし、北海道胆振東部地震で町内約4万本の木のうち約1万本が被害を受け、生産量も減少。その逆境をバネに、全国の物産展へソフトクリームやスムージーの販売に出向くことにしました。

5D3B9030.JPG善紀さんと奥さまのさゆりさん。スムージーやクレープを移動販売車で販売しながら地道にハスカップのおいしさを広めてきました
「当初、全国の物産展で販売を始めた頃、道外ではハスカップは全く知られていませんでした。でも、地震からの復興を進める過程で応援してくださるお客様からたくさんの反響をいただき、大きな催事では1週間で8,000食を完売したこともあります。そのおかげでハスカップも徐々に浸透していきました」。
さらにハスカップの商品開発を進めるために、町内の加工施設を買い受けて機械を整備、2019年9月に「株式会社あつまみらい」を設立しました。現在、ハスカップを使った和菓子や佃煮の商品開発が進んでいるなかで、山口さんが注目しているのは「お菓子」でした。

新たな厚真名物となるスイーツを

「厚真町にはお菓子屋さんがなく、お遣い物やお土産にできる銘菓がありません。町民の方から私たちに、『持ち帰れるものはないの?』と聞かれることも多く、子どもの誕生日ケーキに困っているという声も多く聞きます。そこで、厚真町の銘菓になるお菓子を作りたいと思いましたが、専門の技術を持った人でないと難しいため、スイーツやケーキを作る技術を持つ経験者に来てほしいと思っています」。

自身が厚真町を出て10年間サラリーマン生活をしていた時に、出身地のことを聞かれ「有名なものはあづまジンギスカンくらいで、わかってもらえるものが何もありませんでした。子どもたちが将来町から出た時に、自慢できる名物が作れたらいいですね」。
豊富にあるハスカップ以外の農産物も活用して、厚真のスイーツを作っていきたいと夢が広がっています。

「厚真町は伸び代がたくさんある町です。その伸び代を伸ばして、私たちの思いを膨らませ形にしてくれる方、ワクワクするようなものを作ってくれる方を求めています。私も『厚真町を日本一のハスカップ産地に』という夢を抱いて厚真に戻り、応援してくれる方や仲間に出会えました。今度は来てくれる方の夢をここで一緒に叶えたいです」。


地域に根付く和牛文化を、長期的視野で育てる

GOOD GOOD合同会社

「循環型の牧場で和牛を育て、料理を楽しむ空間も演出する『和牛メゾン』を、2125年に完成させる」というビジョンを掲げる、GOOD GOOD合同会社 代表の野々宮秀樹さん。聞きなれない「和牛メゾン」は、フランスのシャンパーニュ地方にあるワインのメゾンから着想。地域の特徴を生かして葡萄畑を作り、ワインを醸造し、それを楽しむレストランなどの空間までを使ってワインを表現するというものです。
土作りから始めて、和牛を文化として地域に根付かせるには100年以上かかる、という発想から、完成は自らの寿命も超えた未来に設定されているのです。

5D3B9267.JPG「長いスパンでのビジネスですが完成までの過程がやってて一番たのしい部分だと思いますよ」と野々宮さん
野々宮さんは大学時代から起業し実績を挙げてきましたが、SONYの元会長である出井伸之さんとの出会いが、自身の生き方の方向性を変える転機になりました。「ベンチャービジネスではどれだけ儲けられるかという発想でしたが、出井さんを始め、大企業の経営者は地域や国レベルで大局的・長期的に物事を見て文化を作っていること気づき、お金よりも文化を作ることに目を向けるようになりました。そこで注目したのが、自分の好きなお肉です。持続可能な生産体制を作り、その地に和牛文化を根付かせることができればと考えました」。

「自分は何がしたいか」が一番大切

その後、熊本県阿蘇地方で循環型の牧場を作ることに成功しましたが、世界のマーケットを相手にするにはアクセス面での障害がありました。広大な土地があり、都市圏や海外の大都市圏とのアクセスの良い場所を考えた時に浮上したのが、新千歳空港から近い厚真町だったのです。ここで土作りから始めて牧場を作ると共に、和牛メゾンの企画を進め、さらに長期的な視野で経営を考えられる幹部候補生を育てる企業研修施設を作るプロジェクトを立ち上げました。厚真町でこのプロジェクトに向けて動いているメンバーは、現在3人。今回は、共に推進してくれる事業開発メンバーを募集することになりました。
「やはり事業が長期的な構想なので、長期的なビジョンで考えてくれる方、自分で発想してできることから行動できる方がいいですね」。

会社では阿蘇地方の牧場など既に複数のプロジェクトが動いており、50人のメンバーがいます。「新しい会社組織のあり方を模索しており、フリーランスのように働いたり、社内ベンチャーを立ち上げたりと、働き方はもっと自由でいいと思っています。その点、厚真町は自然が豊かでアウトドアの遊びにはもってこいですし、生活コストがかからないところも魅力です。大切にしているのはその人が何をしたいか。そのためにこの会社を活用していただき、将来的には独立したいという方も歓迎します」。


地域特性を生かした新たな自動車関連事業を展開

株式会社オートリペア ナスノ

新車・中古車の販売と整備を行う会社を経営し、既に実績を積んでいる株式会社オートリペア ナスノ代表の那須野恭佑さん。自身が経営する2社合わせて10人の従業員も雇用しています。整備士をしていた父親の影響で自身も自動車好きに。社会人になってから専門学校に通って資格を取得し、同業者のもとで経験を積んで、故郷の厚真町で会社を立ち上げ、6年間経営を続け軌道に乗せました。

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そして、さらにレンタカーと廃車買い取りの事業を今年新たに立ち上げることに。
「厚真町は新千歳空港と苫小牧港から近いので、インバウンド需要に合わせたレンタカー事業をやってみたいというのは数年前から考えていました。悪路でも走れるランドクルーザーやジムニー、キャンピングカーやトレーラーで、自然が豊かな北海道を思い切り走って楽しんでもらおうという構想です。もう一つの廃車買い取りの事業は、周辺のゴルフ場との取り引きがきっかけ。ゴルフ場では車両を多く持っており、その廃車は需要の高い海外で高く売れます。そこに注目している買い取り業者はまだあまりいません」。

働きやすい環境で伸び伸びと成長できる

これらの新しいサービスを作っていくために、自動車業界にない視点を持ち、向上心のある方に仲間に加わってほしいと那須野さんは言います。
「私や従業員は車のことは詳しいですが、逆にお客様が困っていることや、何がわからないのかがわかる方に意見を出していただくのがありがたいと思っています。仕組みの構築から実際の接客応対まで、自動車の資格が必要なこと以外は何でも積極的に担ってもらいたいですね。自動車の知識や技術に関しては他の従業員がスペシャリストなので、そこは安心してほしいです」。

経験は問わないということで、那須野さんのパートナーには気負わずに挑戦できそうです。また、会社の働きやすさや那須野さんの人柄も魅力の一つ。
「私は人に教えたり育てるのが好きで、社員に対してもいつも様子を気にかけ常に声を掛けており、社員同士もお互いに気遣いができる関係性ができています。また、私にも子どもが3人いて、会社員時代は子どもの行事や体調を崩した時に側にいられず辛い思いをしたので、社員は子どもの成長を側で見守れるよう、休みを取りやすい会社を作りたいと強く思い、それを実現しています。厚真町は町民も役場の人もあたたかいですし、子育て支援も充実していていい町ですよ!」。
那須野さんのもとでなら、家庭も大切にしながら働きやすい環境で自分も成長できそうです。


何かが新しく生まれそうな厚真町で、個性豊かな4人の経営者のもとで事業を大きくする経験を積み、自分を成長させてみたいという方は、ぜひ挑戦してみてください。

厚真町役場
厚真町役場
住所

北海道勇払郡厚真町京町120

電話

0145-27-2321

URL

http://www.town.atsuma.lg.jp/office/


厚真町で「ローカルベンチャーのパートナー」という新たな挑戦者を募集!

この記事は2021年1月14日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。