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このまちのあの企業、あの製品
中標津町

自分と向き合う時間がある林業。ケイセイで見つける新しい自分。20250812

自分と向き合う時間がある林業。ケイセイで見つける新しい自分。

帯広市に本社を置く総合商社の株式会社ケイセイ。本社以外に、道内3カ所に事業所を構えています。北海道の基幹産業である、酪農・畜産に関係する事業をはじめ、林業も行っているため、住んでいる地区によって、何の会社と思うかはそれぞれかもしれません。家畜資材を扱う会社だと思っている人もいれば、公園の整備をする造園の会社、あるいは林業を行っている会社だと思っている人もいるでしょう。今回は、同社の中標津事業所へおじゃまし、会社のことを含め、同事業所で行っている事業について、業務課長 兼 工場長代理の榧木(かやき)博隆さんに伺うとともに、ここに勤務する森林緑化部の佐藤祐希さんにもお話を伺いました。

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樺太での造材からはじまった会社。中標津事業所は造林造材、木材加工が中心

株式会社ケイセイの中標津事業所は市街地の少し外れ、運動公園の近くにあります。事業所の敷地内に入ると、周りにはたくさんの丸太が積まれています。

「中標津で行っている事業は、いわゆる林業が主となります。造林、造材ですね。あとは、木材チップの製造、木材加工もそこの工場で行っています」と、取材陣を案内しながら榧木さんが説明してくれました。

早速、会社の成り立ちから伺っていこうと思います。

keisei_33.jpgこちらが榧木博隆さんです。

「1924年に当社の創業者が樺太で造材事業をはじめたのが最初です。終戦後、事業を一旦やめて、十勝へ引き揚げてきて全道各地で造材事業を展開していく中で、地域の方から酪農業関連のことも頼まれて、ニーズに応えていくうちに家畜の飼料の製造販売を行うようになり、今は総合商社という形で事業を行っています。飼料をはじめ、家畜資材関連の飼料部、造林造材の森林緑化部、木材加工の木質製造部、公園整備などを行う土木緑化部があります。指定管理者として、帯広市内の公園と『帯広の森・はぐくーむ』の管理も行っていますね」

keisei_32.jpg広大な敷地内には木材加工・チップ製造用の丸太がずらりと並んでいます。

同社の中で、森林緑化部と木質製造部があるのは中標津事業所だけ。同社における林業部門がここに揃っているというわけです。森林緑化部では、造林造材の事業と造園の事業がチームを分けて行われ、木質製造部は木材加工と木材チップ製造に分かれているそう。ただ、造林造材と造園は、人手不足ゆえに両方を兼務しているスタッフもいると話します。

「当社が造林で携わっているのは、50%が国有林。あとは町有林や民有林ですね。製紙会社の社有林の造林も請け負っていて、チップの製造も行っています。できたチップは網走のバイオマス発電所に納めています。木材加工で作っているものの大半は土木用の資材ですね。あとは、公園の東屋やログハウスを作るための技術的加工も行っています」

keisei_19.jpgこの木材チップから紙やトイレットペーパーが生まれます。

中標津にも飼料部があり、林業・木材加工とは無関係のようにも思いますが、「実は、造林で出た間伐材を使った酪農家の牧柵杭や仔牛が入るハッチも作っていて、ここの部分は家畜資材の飼料部と連携して取り組んでいます」と話します。

さらに、チップに関してもバイオマスで使用できるのは実の部分だけで、余ってしまったバークと呼ばれる皮の部分は、牧場で下に敷く藁の代わりとして使われることもあるそうです。また、薪も作っていて、ホームセンターや酪農家に卸すほか、一般の方にも販売しています。

「あと、飼料部との連携という部分で言えば、たまに酪農家さんの敷地内の防風林を伐ってほしいというような依頼もありますね」

keisei_1.jpg酪農家さんとの打ち合わせの一コマ。

一度離れたから分かる中標津の良さと、Uターンして新たに知った林業の魅力

中標津を中心とした道東エリアの林業について、榧木さんは「地形的に平らなところが多いので、膨大に木も植えられるし、大きな機械が入りやすいという利点がありますね。あとは天候もいいし、冬は雪が少ないというのもこの辺りの特徴ですね。林業をやるにはいい地域だと思います」と話します。

中標津の隣、標津町出身という榧木さん。高校は中標津高校で、ラグビーをしていたそう。中標津での暮らしについて尋ねると、「中標津は人口2万人ほどの町ですが、この辺りの市町村の中でもプチ都会という印象かな。都心部にあるチェーン店系の店や大型のスーパーもあるし、空港もありますしね。車は必要ですけど、生活するのに不便はまったくないです。僕自身はキャンプやアウトドアが好きなので、近くにいいキャンプ場があるのもいいところかな」と満足そう。

そんな榧木さんですが、若い頃は都会への憧れもあったと言います。札幌にある建設系の専門学校に進み、卒業後に一旦地元の土木会社に勤務しますが、5年ほどして単身で東京へ。

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「特に何かやりたいことがあったわけでもないのですが、このまま中標津で淡々と流れるままに仕事をしているのもどうかなと思って、自分探しのような感じでとりあえず東京へ行きました。向こうではいろいろな仕事をしましたが、最後はイベント会場のブースやセットを作る会社でディレクターをしていましたね」

その後、親御さんが病気になったことをきっかけに北海道へ戻ります。たまたま叔父さんがケイセイで働いていて、「家にただいるなら、うちでバイトでもしなさい」と造林造材の作業員のアルバイトの話を持ってきたのがきっかけでケイセイへ。

「土木の経験はあったけれど、林業のことは何も知らずに入りました。体力には自信があったから何とかなるかなと思ったんですけど、初めて草刈りをやったとき、クラクラしちゃって、まずいなと思っていたら、一緒に作業していたベテランのおじいさんがどんどん先に進んで草刈りをしていて...、ちょっと挫折感を味わいました(笑)」

虫のすごさにも驚いたそうですが、「人間って、案外すぐに慣れるんですよね。1年も経たないうちに平気になりました」と笑います。

keisei_21.jpg東京の仕事との違いを伺うと、「自分との対話が多くなったかな」と榧木さん。

「林業って、作業自体はすごくキツイところがあると思います。でも、誰かがやらなければならないからという使命感で僕は仕事をしていました。そして、林業というのは、その厳しい作業の中で自分自身と向き合うものなんだと思いました。僕なんかは東京でたくさんの人に揉まれて仕事をしてきたあとだったから、余計に自然の中に放り出されて解放された感じもあったし、その中で黙々と作業しながら自分と対峙するという感覚でしたね。そして、自分と向き合いながらも、そこには一緒に作業をする仲間がいて、その距離感とかもすごく良くてね」

林業の面白さを感じながら仕事を続けていると、会社から土木の現場代理人の経験を買われ、総合職の仕事に就いてほしいと声をかけられます。造林部門の総括として、取りまとめる仕事をしながら、今も人手が足りないときは現場にも応援に行くそう。最近は中標津事業所の採用も担当しています。

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一人ひとりのいいところを伸ばそうという社風。働きやすい環境も整備

「林業の仕事というのは、現場によってスタート時間が異なるなど変則的になりがちですが、うちはどこの現場であっても就業時間をきっちり7時30分~16時30分と決めていて、残業も少ないのが特徴ですね。残業した場合はきちんと残業代も出ますし。そして、完全週休2日制を導入しています。基本会社は土日休みですが、希望した平日に代休を充てたり、有休も取りやすい環境なので、うまく使って自分の時間を作っているスタッフも多いですね。手当関係もきちんと出しています。トータルで考えてみても働きやすい職場だと思いますよ」

職場の雰囲気も和気あいあいとした明るい感じだと話し、「うちの会社にはそれぞれの社員のいいところを見つけて、そこを伸ばしていこうという社風があります。一人ひとりの社員をきちんと仲間として受け入れて、みんなが一緒に気持ちよく働けるように工夫しているところがいいところだと感じています」と続けます。

keisei_34.jpg各部門の若手スタッフさんたちです!

林業=積極的な体育会系でなければ務まらないと思われがちですが、「そんなことはまったくないし、そういうイメージも払拭していきたいと考えているんですよね」と榧木さん。会社としても機械化を進めており、「筋肉むきむきである必要もないし、おとなしいタイプでもOK。黙々と作業をするのが好きな人に向いていると思います」と話します。

「うちは酪農や林業といった道東エリアの基幹産業に携わっているわけですが、みんな道東のまちを良くしたいという思いで仕事をしています。そういう気持ちを持ってくれている次世代が来てくれたらうれしいですね」

さて、次は榧木さんが「よく頑張っているなと思って見ている」と話す、その次世代を担う森林緑化部の佐藤祐希さんにお話を伺おうと思います。榧木さんは、「最初は華奢な印象でしたが、年々自信がついてきたのか、とてもしっかりしてきたし、成長著しい若手です」と評し、「彼を見ていると、人は少しずつでもきちんと成長していくものだから、周りがそれを見守っていくことが大事であると気付かされました」と話します。

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自然の中、黙々と仕事をするのが好きと話す、次世代を担う若手社員

次を担う存在として期待されている佐藤さんは、今年で入社5年目。標津町出身で、高校を卒業後、神奈川県藤沢市にある造園の専門学校へ進みます。庭と花のスペシャリストを育成する日本では数少ない学校です。

佐藤さんは、「学校では、庭の設計や花を種から育てて商品として出荷するまでを学んだり、実際に剪定などの作業を実習で経験したりしました。この学校を選んだのは、庭を造りたいというより、庭木などの剪定ができるようになりたいという思いがあったからなんです。だから、外の実習で剪定するのは楽しかったですね」と振り返ります。

keisei_14.jpgこちらが佐藤祐希さんです。

就職活動の際、「神奈川で暮らしてみて、関東は環境的に無理だなと思ったので、東北か北海道で探した」という佐藤さん。車の排ガスの多さや最高気温が42度まで上がったこともある暑さなど、人も車も密集していない冷涼な場所で生まれ育った佐藤さんには、専門学校時代の暮らしは厳しかったそう。

冬休みに帰省した際、地元のハローワークでたまたまケイセイの募集を見つけます。事業内容に造園とあったことで興味を持ちますが、そのとき応募していたのは造林の部門。「勉強してきたことがまったく無関係というわけでもないし、自然の中の仕事には興味があったので、とりあえず造林でもいいかなと思って応募しました」と話します。営業や接客の仕事は無理だと思っていたという佐藤さん。「どちらかというと一人で黙々と作業するほうが好きなので、自分には向いているかなと思いました」と笑います。

入社してすぐの会社の印象を尋ねると、「どうだったかなぁ。いやぁ、覚えてないですね。とにかく仕事を覚えるのに必死だったから」と苦笑い。「それでも仕事が嫌だとか、辞めたいとかは一度も思わなかったですね」と続けます。

keisei_9.jpg「大変な作業もありますが、終わったあとの爽快感がいいんです!」と教えてくれました。

「林業については知らないことばかりで、木を伐る以外にもいろいろな仕事があると携わって初めて知りました。春は植え付け、夏は下草刈り、秋は地ごしらえと少しだけ植え付けがあり、冬は間伐もしくは皆伐と、四季ごとに仕事内容が違うのも入社して知りました。最初はとにかく先輩たちについて現場へ行って、作業を見せてもらって、仕事内容を覚えていく感じの繰り返しでした」

現在は、造林部門と造園部門の両方を兼務。造林は管理側の仕事がメインとなり、伐倒をすることはほとんどありませんが、伐倒した木の枝払いや玉切りをチェーンソーで行うことはあるそう。枝が落とされてきれいになった木を見ると、達成感が得られると話します。また、造園の仕事は、パークゴルフ場の芝刈りや役場、公園、街路樹帯の草刈りなど。中には、個人宅の庭の剪定など、佐藤さんが得意とする仕事もあります。

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職場の雰囲気を尋ねると、「みんな仲はいいですよ。休憩中に冗談を言い合うなど、楽しくやっています」とニッコリ。一人で作業することが多いとはいえ、チームワークが必要な場面もあり、「一緒に働く仲間だから、コミュニケーションはしっかり取るようにしています」と話します。ただ、年齢が離れている先輩とは「昔の話題に対してうまく答えられないこともあり、もう少し自分が昔のことを知っていたら...と、申し訳なく思う時があります」と小さく笑って肩をすくめます。

佐藤さんの趣味は、3年ほど前から始めたカメラ。ミラーレスの一眼レフで、朝日や星空など自然の風景を撮るのが楽しいそう。その腕前はなかなかで、会社の記念誌に写真が採用されたこともありました。

keisei_26.jpg佐藤さんが実際に撮影した、野付半島にある木道の幻想的なお写真を見せてくださいました!

「気象情報や天の川専用アプリをチェックして、朝や夜の撮影をするために、車中泊して撮影に行きます。一番遠いところで仙台まで行ったこともあります。有休が取りやすいので、泊まりで撮影に行けるのはうれしいですね」

最後にこれからやってみたいことを尋ねると、「そうですね」と少し考えたあと、「測量機を導入して、苗木を植えるときに活用してみたいですね。もっと効率よく植え付けができるようになると思うんですよね」と、次世代を期待される若手らしい答えが返ってきました。

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株式会社ケイセイ 中標津事業所
株式会社ケイセイ 中標津事業所
住所

北海道標津郡中標津町緑ヶ丘7番地12

電話

0153-72-3258

URL

https://www.keisei-hokkaido.com/

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自分と向き合う時間がある林業。ケイセイで見つける新しい自分。

この記事は2025年6月24日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。