
生乳生産量日本一の酪農、希少な北海シマエビや大きなホタテが自慢の漁業。別海町の基幹産業であるこれら一次産業を、作業に欠かせない機械の整備や修理を通じて支えているのが「小泉機械店」です。自動車とあらゆる機械の販売、整備、修理を行っている同社は、町の産業はもちろん、町民の暮らしを支えています。今回はそんな同店へおじゃまし、会社の成り立ちや仕事への想い、これからのビジョンなどを小泉理央代表取締役に語ってもらいました。また、実際に整備の仕事に取り組む従業員の大森雅貴さんに仕事のやりがいや目標も伺いました。
町内ではここだけ。道内でも珍しい「車と機械」をトータルサポートする会社
自転車から重機まで。地域に無くてはならないお店です
創業して75年、別海町で自動車と機械のトータルサポートを行ってきた小泉機械店。まず、その取り扱っているものの幅の広さに驚きます。自動車をはじめ、重機類、船外機、草刈り機、チェーンソーに暖房機、さらに自転車まで、大小さまざま、あらゆる車や機械の販売・整備・修理を一手に手掛けています。指定民間車検工場でもあり、町内の自動車の車検を請負っているほか、ガソリンスタンドも運営しています。
「自動車だけ、重機類だけ、船関係だけと何かに特化している販売会社や整備工場が一般的だと思いますが、うちは創業時から幅広くやってきました。町内でもこれだけいろいろ対応しているのはうちだけですね。道内でも珍しいかもしれません。機械のことなら何でも相談に乗っています」
そう話すのは、同社の社長を務める小泉理央さん。祖父の代から数えて4代目になるそう。
こちらが代表の小泉理央(みちひろ)さん
「2代目だった父が、自分が中学生のときに急死し、叔父が3代目に。7年前に自分が社長に就任しました」
生まれも育ちも別海町の小泉社長。子どものころから家業の手伝いをしたいという気持ちが強かったそうで、地元の高校を卒業した後は自動車整備の資格を取るため、札幌にあった自動車短大へ。その後、修業を兼ねて取引先でもあった釧路の自動車ディーラーで2年間働きます。
「そのあとはこっちに戻って、ずっとここで仕事をしています。とにかく戻って会社を盛り上げたいという目標があったから、札幌や釧路に残ろうとも思わなかったし、最初から別海へ帰ると心に決めていました。当時は跡を継ぐことはあまり考えていませんでしたね」
目指すのは「機械のデパート」。根っこにあるのは地域に貢献したいという想い
町民なら大半の人が知っている小泉機械店の名前。なぜなら町の一次産業で使う重機や機械を取り扱っているということはもちろん、自転車のタイヤの空気入れの対応もしているため、子どものころからここへ通っているという町民も多いそう。
「漁業でも農業でも仕事をする際に道具となる機械はいろいろ使うので、その整備、修理ができる人が身近なところで必要となります。うちは町の基幹産業ではないけれど、それを支えることで地域に貢献していると自負しています。また、大きなものから小さなものまで幅広い取り扱いを続けているのは、町の人たちの暮らしを支えたい、地域のために貢献したいという想いが根底にあるからなんです」
理念として掲げているのは、車や機械を通じて「高品質なサービスを提供し、地域の人たちの安全で快適なトータルライフを実現すること」。それを支えるのが、同社の優れた整備士たちです。これまでの経験やスキルにあぐらをかくことなく、最新の技術や知識も習得し、常にアップデートしています。
若手の整備士も、先輩から知識を引き継ぎ活躍中
「うちは長く勤務してくれているベテラン整備士も多く、その技術や知識を次の世代へ引き継いでいかなければならない時期に入っています。10代、20代の若い子たちにそれを継承していきながら、新しいことも吸収していかなければならないのですが、今の課題は人手不足ですね。うちがなくなってしまったら、町の人たちも困ってしまうと思うので、そこの課題をなんとかクリアしたいと考えているところです」
今は、パート社員を含め19名が勤務。地元や近隣の町から通っています。
「うちは幅広い機械を扱っているので、整備や機械に興味がある人にとってはいろいろな経験を積めるのが特徴であり、面白さに繋がると思います。また、いろいろな仕事があるので、中途採用の場合はそれぞれの持っているスキルや前職での経験が発揮しやすいのも特徴かもしれません」
二人ともバイク免許保持者。さすがにさまになります!
従業員の方たちに対しては、「この小さな町で縁があって働いてくれているので、会社としてはできる限りいろいろなことをサポートしたいと思っています」と話します。業務に関する資格取得に関する費用やメーカーで開催する講習会、勉強会などにも参加する際の費用も会社で負担し、従業員の成長を支えます。燃料や車検などの社割もあるそう。
これからのビジョンを尋ねると、「技術的なことも含め、会社としてはまだまだのところもあると感じています。機械のデパートのような、全てをまかなえる会社にするのが目標。今以上に、機械のことならすべて小泉に任せればいいと思ってもらえる、地域の機械の総合商社的な存在になれるように全体の精度を上げていきたいですね」と語ってくれました。
個人的に何かやってみたいことはあるかと質問を投げかけると、「うーん」と唸りながら、「地域を盛り立てる何か別の会社を作ってみたいかな」とひと言。商工会の青年部で部長をやっていたときの繋がりで、ほかの市町村の商工会メンバーの人たちが地域おこしの会社を立ち上げたと聞き、「そういうのを自分たちでもやってみたいなと思いました。まだ構想しているだけですけどね」と話します。
静かな語り口の中にも、その一言一言から、強い責任感と地域への愛着が伝わってきました
別海町の良さを尋ねた際、「長く住んでいると良さとかもう分からない」と笑っていた小泉社長ですが、地域を盛り立てる会社をやってみたいということも含め、話の端々に別海への愛が感じられます。「そういえば東京に数か月いてこちらに戻ってきたとき、北海道の回転ずしのクオリティーが300倍違うって感動しました(笑)。北海道ってすごいなと思いましたね」と最後に笑いながら教えてくれました。
機械が好きで転職。風通しのいい職場環境で、スキルを磨き経験を積む日々
小泉社長の次に話を伺ったのは、自動車整備士として活躍中の大森雅貴さんです。地元・別海町出身の大森さんは地元の高校を卒業後、自衛隊へ。22歳のとき、小泉機械店に転職しました。
機械をいじるのが大好き! 笑顔が素敵な大森雅貴さん
「物心ついたころから機械いじりが好きでした。分解したり、組み立てたりするのが楽しかったんです。それで、機械に携われる小泉機械店へ転職しました」
子どものころから小泉機械店のことは知っていたという大森さん。「親が車検をお願いしていたこともあり、ガソリンスタンドもやっているし、身近な会社ではありましたね」と話します。
入社してすぐは、船外機や除雪機などを扱う第1工場に配属され、その後自動車や重機を扱う第2工場へ。自動車整備士の資格はこのときに取得しました。
本社の近くに第二工場もあります
「ひとつの会社でこんなに多彩な機械を扱っているところは珍しく、いろいろな機械に触れられるのはものすごく楽しみでした。いろいろな経験をさせてもらえるのはこの会社の魅力だと思います」
仕事をする上で心がけていることを尋ねると、「機械の整備も、自動車の整備もインフラに繋がる大事な仕事。ちょっとしたミスも命取りになりかねないので、使用するお客さんの安全を第一に考え、常に細心の注意を払いながら作業にあたっています」と話します。
「昨年の話なのですが、お客さんが車の調子が悪いから見てほしいとおっしゃって、その症状を聞いて、あれこれ調べてみたのですが、どこも悪いところは見当たらないことがありました。それでも、もしかしたら見逃しているところがあるかもしれないと、根気強く原因を探した結果、電気系統に問題があったと分かりました。修理を終えたあと、お客さんから、『買い替えも考えていたけど、原因が分かって直すことができて良かった』と言ってもらえたとき、ホッとすると同時にやりがいも感じました」
あらゆる角度からアプローチし、原因を特定するのに何日もかかるようなケースもあるそうですが、「それでも車が直ったら、素直に嬉しいですね」とニッコリ。お客さんから「ありがとう」「助かったよ」と声をかけてもらうと、また頑張ろうと思えるそうです。
大森さんがいる第2工場には、ベテランから若手まで7人の従業員が勤務。中堅の大森さんですが、「まだまだ先輩たちから学ぶことはたくさんあります」と話します。「経験値が高いからこそ分かることも多く、勉強させてもらいながらスキルアップを図っています」と続けます。
「仕事中はみんな集中して作業にあたっていますが、従業員同士の風通しは良く、仲もいいと思います。去年は、第2工場のメンバーで原付バイクに乗ってツーリングにも出かけました。行き先でおいしいものを食べて帰って来ました」
電気自動車など新しいジャンルのことも学びながら成長していきたい
別海町出身の大森さんですが、どのようなところに町の魅力を感じるかを尋ねると「食べ物でしょうか」と回答。牛乳と乳製品が大好きという大森さんにとって、おいしい牛乳や乳製品がすぐに手に入るのは最高の環境なのだそう。
「あとは、自然が豊かで景色がいいことでしょうか。中型バイクに乗っているのですが、天気がいい日に海沿いを走るとすごく気持ちがいいですね。それから、夜は外灯が少ないので、遠くまで行かなくても身近なところで星がキレイに見えることかな」
休みの日には、ツーリングに行くなど外へ出かけることもあるそうですが、「家で機械いじりをしていることも多い」と笑います。「パソコンを分解したり、部品を購入して組み立てたりしています。夢中になっていると時間が過ぎるのもあっという間で...。今、家で使っているパソコンも自分で組み立てたものなんですよ」と話し、本当に機械が好きなのだというのが分かります。
これからも学びつつけて成長したい、と語ってくれました
最後にこれからの目標について尋ねると、「車の整備を担当するようになって7年ほどになりますが、先輩たちに比べるとまだまだ経験も知識も足りないので、もっとレベルアップできるよう努力したいと思います。今後、電気自動車なども増えていくと思うので、新たな学びにも取り組みながら、町の人たちに頼りにされるように頑張っていきたいと思います」と控えめな口調で語ってくれた大森さん。謙虚でありながらも、仕事に対する熱意は十分伝わってきました。
- 株式会社 小泉機械店
- 住所
北海道野付郡別海町別海常盤町126番地
- 電話
0153-75-2226
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