HOME>学校と学生の取り組み>『レディ魚ー×くらしごと』番外編:浜中町水産ツアー後編

学校と学生の取り組み
浜中町

『レディ魚ー×くらしごと』番外編:浜中町水産ツアー後編20251205

『レディ魚ー×くらしごと』番外編:浜中町水産ツアー後編

皆さんこんにちは!
「水産の未来を考える若者を増やす!」をモットーに活動する学生団体レディ魚―です!
本記事は2025年9月に行ったツアー「浜中町へレディ魚―!」のレポート後編です。
それでは早速いってみましょう!


Day2-1 船は出ずとも仕事はいっぱい!!カニの水揚げも見学!?

二日目は海が荒れてしまったため昆布漁はありませんでした。とはいっても、昆布漁師の仕事はあります!そんなわけでAM7:00、昨日よりゆっくり起きることができた一行、昨日干した長昆布を乾燥機から降ろします(実は昨日夕方浜に干した長昆布を乾燥機に入れていました)。長い竿を器用に使って昆布の束を回収します。バランス感覚と腕の筋力が試されました。

readygo_hamanaka19.png4メートルはあろうかという高さから昆布の束を下します。

その後、回収したコンブを束ねてカットします。そのまま出荷すればいいのではと思う方もいらっしゃると思いますが、実は昆布は出荷する際に長さが決まっているんです。根昆布という根本の場所を切り落としてから、さらに105cmごとに切っていきます。

カット作業をやってみると、なかなかうまく切れません...。なんども刃をいれてどうにかこうにか切ることができました。カット作業に苦戦していると、石塚さんがお手本を見せてくださいました。どんな風にやっているのかしっかり確認しようと、刃が入るのをよく見ていると、あれ??気づいたときには切り終わっているんです。あんなに時間をかけてやっていた作業がいとも簡単に終わっているのを見て、改めて凄いなと思いました。

readygo_hamanaka20.png105㎝ごとに区切られた木の板に入れて昆布をカット!

AM9:00急遽、タラバガニの水揚げがあるということで霧多布港へ!!

漁港に着くと、さっそく船がやってきました。港に着くやいなやタラバガニが水揚げされていきます。水揚げされたばかりのタラバガニは活きが良すぎて、入れられたカゴからなんども脱走しそうになるほどです。脱走犯に気をとられていると、タラバガニの計量が始まりました。数人のチームワークにより次々と重さが量られていきます。この日漁港には、タラバガニ以外にもウニや毛ガニ、マツカワなど様々な魚が水揚げされました。

readygo_hamanaka21.png動くタラバガニにみんな目が釘付けでした

Day2-2 町長と対談!?鬼昆布カットにも挑戦!

今日も朝から水産業にどっぷり浸かった一行でしたが、ここで少し方向転換して次は、浜中町役場へ。なんと、浜中町長の斎藤清隆さんとお会いできることに!

町長自ら、浜中町の現在の課題についてお話してくださいました。漁業と酪農を中心として、一次産業の産業別人口の比率が50%を超えるなど、全国的に見てもトップクラスの浜中町。最上級の品質を誇る水産物や牛乳といった素晴らしいものがある一方、人口減少や人手不足など様々な問題を抱えています。そんな生まれ育った町を次の世代につないでいく、町長として課題と向き合う姿が印象的でした。

readygo_hamanaka01.pngポーズは定番のルパン!町長と記念撮影をさせていただきました!

役場を後にした一行、今度は浜中町漁協青壮年部の佐澤さんのもとへ。ここでは鬼昆布のカット見学をさせていただきました!

さっそく倉庫に案内してもらうと、鬼昆布の濃厚な香りが一行を包みこみます。はっとして周囲を見渡すと、幻の昆布、鬼昆布が山のように積まれているではありませんか。普段はなかなか見られない、なんとも贅沢な光景に見とれていると、なんとここでもカットをさせていただけることに!さあ、先ほどのリベンジを果たせるでしょうか...。

先ほどの長昆布よりも厚い鬼昆布ですが...
 刃を入れると... 「おっと、さっきよりも切れるぞ!」コツをつかんだようで、リベンジ大成功。うまくいくと気持ちいいですね。こうして一行は少しずつ昆布の沼にはまっていくのでした。

Day2-3 棹の長さは5メートル!コンブ漁体験!!

昼が過ぎ、二日目も後半戦です。午後の一発目は浜中漁業協同組合さんに船を出していただいて、石塚さんに船上で昆布漁体験をさせていただきました。初日に浜から見ていたあの長い竿とご対面!目の前で見るとその大きさにあらためて圧倒されます。

昆布漁ではこの棹を使って昆布をひっかけて漁を行います。昆布の繁茂しているところは海が黒っぽく見えるそうで、そこを狙って棹を入れます。棹先が海底についたら、引き寄せてひっかけながら海の上にあげます。石塚さんは棹先の感覚で昆布を探っているそうですが、これがなかなか難しい。棹を使って海底に生える昆布の状態を想像する。その技術は職人技でまさに長年の経験に裏打ちされたものだなと感じました。

readygo_hamanaka23.png棹が想像よりも長くて重い...

Day2-4 コンブにサンマ、イカにタラバガニ!?贅沢すぎる料理会!!

船上で昆布漁を体験した後は、夕食です!

浜中漁協女性部の方々が料理会を開いてくださいました。浜中町で獲れた昆布を始めとして、タラバガニなどの食材を浜のお母さんの熟練の技によっていただきました。料理会ということで、私たちも料理に参加しました。

まず初めに調理したのは、トロロ昆布です。トロロ昆布と聞くと、あの加工された細長く糸になったものを想像するかもしれませんが、今回調理したのはそれとは別でトロロ昆布という種類の昆布を指します。表面はいぼ状でガゴメ昆布に似た特徴を持つ昆布で、近年では資源量が減ってなかなか獲れない希少な昆布だといいます。そんなトロロ昆布を贅沢に鍋一杯に茹でてから、みじん切りにしました。切れば切るほど粘り気がでて、ご飯にかけるとこれがまたご飯が進むんです。

readygo_hamanaka24.pngとろろ昆布をみじん切りに!女性部の徳光さんに教えていただきました。

浜のお母さんの素晴らしい手際によって出された数々の料理はどれも美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまいます。個人的にとても気に入ったのは、おでんの昆布でした!これまで昆布は出汁として使うことが多くあまり食べることはなかったのですが、おでんを一口食べると力をいれることなく昆布に歯がスッとはいり、気づいたときには口の中から昆布が消えていました。他の食材の引き立て役になることの多い昆布が「主役級の活躍」をできることに驚きと感動を覚えました。

readygo_hamanaka25.jpgサンマにタラバガニ、イカにコンブと贅沢すぎる食卓でした!!

Day3-1 いよいよ最終日。コンブの等級?

本日も海が荒れたため、コンブ漁は休漁。最終日は昨日よりもゆっくりAM8:00からのスタートとなりました。

この日のスタートはお勉強!石塚さんから、昆布の等級について教えていただきました。昆布の等級は葉の厚さや長さ重さなどによって細かく分かれています。それによって、箱をしばる紐の色を変えているそうです。この選別作業にも時間がかかりますが、現在は重さを量って自動で選別する機械もあり以前よりも楽になったといいます。

これで昆布の作業はある程度一通り見ることができました!ただ獲るだけでは価値がつかない。昆布の価値は、まさにこれまで見てきた様々な作業によって創られているのだと実感しました。

readygo_hamanaka26.png種類ごとにコンブの箱があるなんて...驚きです。

Day3-2 赤ちゃんから加工まで、ウニ養殖を学ぶ!

浜中町はウニも有名です!海の中から鈎などを使って獲る天然ものもありますが、専用の籠を使って育てる養殖もおこなっています。最終日はそんなウニ養殖の全貌を見学します! まず訪れたのはウニの種苗センターです。令和3年にできたばかりのこの施設、浜中町のウニ養殖にかかせないウニの赤ちゃんを生産しています。この施設の完成によって、100%浜中町産のウニが生産できるようになりました。

 「ウニの赤ちゃんってどんな形をしているんだろう」、「よく見るウニを小さくした感じかな」など、参加者からは疑問があったウニの種苗。さっそく屋外にある水槽をのぞいてみると、わずか数ミリの小さなウニが!小指にも満たないサイズのウニがこの後、海上の養殖場に移され、手のひらサイズまで大きくなることを考えると感慨深いですね。

readygo_hamanaka27.png水槽の中には5㎜程度のウニがびっしり!!小さくてもウニでした。

次は、ウニの養殖場!と、行きたいところですが、時間の関係で先にウニの加工場見学に行くことになりました。ウニの箱詰めなどの加工を行われている小川水産さんにお邪魔します!

readygo_hamanaka28.png小川水産さんは、浜中町のエゾバフンウニを中心にウニの加工を行っており、その品質の高さから各地の一流料亭からも注文が入るほど。

加工場に入る前にまずはしっかりと除菌です。エアシャワーやセンサー式の手洗い場は、加工場所と隔離されているなど徹底した衛生管理が行われています。

加工場で注目したいのはやはりウニの折入れ作業(箱にウニを詰める作業)でしょう。従業員の方が手作業で一粒一粒丁寧に詰めていきます。これは非常に繊細かつ手間のかかる作業だなと感じました。そんな大変な作業を支えているのは地元のお母さんや外国からの技能実習生の方々。昼休みになると「おつかれさまでーす!」と明るい声で颯爽とお昼休憩に入っていった後ろ姿にほれぼれしてしまいました。

小川水産さんを後にして私たちも昼食を頂きました。昼食は浜中町漁協の皆さんとウニ養殖のビデオを見ながらお弁当を頂きました!

readygo_hamanaka31.png漁師さんと養殖のビデオを見るという何とも貴重な経験...

昼食後いよいよウニの養殖場見学!山崎さんを始めとして、浜中漁協青年部の方々が船をだしてくださり、海上のウニの養殖場へと案内してくださいました。ポイントに到着し海中にあるロープを引き上げると、現れたのは丸いカゴ。大きくなったウニとご対面!わくわくしながら、開いたフタを確認すると...私たちがよくみる、あのウニがいるではありませんか!なんと、カゴで養殖しているウニをその場で食べさせてもらっちゃいました!気になるそのお味は...

旨い、旨すぎる。驚くくらい甘くて、それでいて全く臭くない。こんなに美味しいウニは今まで本当に食べたことがなく感動してしまいました。

そんな、ウニのおいしさの秘訣は浜中の昆布です。浜中の豊富で良質な昆布はウニ養殖の餌としても大変重要な役割を果たしています。カゴ一杯に入れた昆布をウニは2週間ほどで全て食べつくします。美味しい昆布を食べて育ったウニは本当に美味しかったです。また、人が食べない部分もウニにあげることができるため、この町では昆布が最大限に活用されているなと感じました。

readygo_hamanaka32.pngウニ養殖籠見学の様子。籠の中には立派なウニがたくさん!!

Day3-3 ウニに感動したのも束の間、最後の目的は学校!?

霧多布高校にお邪魔させていただきました。実は霧多布高校、数々の料理コンテストで様々な賞を受賞するとっても凄い学校なんです。地元の食材を生かした数々の料理のアイデアの秘訣はどこにあるのでしょうか?今回は霧多布高校の家庭科の先生である佐々木先生にその秘訣について授業していただきました!

授業では、料理コンテストで賞を受賞したレシピの誕生秘話など話していただき、あっという間の1時間となりました。なにより驚いたのは、素晴らしいレシピのほとんどは先生の助け無しに、生徒のアイデアと工夫によって完成したものだということです。あくまで主役は生徒で、その生徒が最大限力を発揮できるように裏方に徹する姿勢は学校の先生として素晴らしいなと思いました。

readygo_hamanaka33.png浜中の昆布醤油を使った「きりたっぷりん」。みたらしのような餡がプリンと最高にマッチ!!

ツアーの最後は石塚さん宅で、バーベキューをごちそうになりました。ご飯を食べながらツアーの振り返りや感謝を伝え楽しい時間を過ごすことができました。

あらためて、本当にもりだくさんなツアーでしたね。いざ振り返ってみると自分でもびっくりです。そしてなによりも、このツアーに関わってくださった浜中町のみなさま、本当にありがとうございました!!!

ツアーを振り返って

皆さんいかがでしょうか?少しでもツアーの様子が伝わったでしょうか?

私も改めて振り返っていたのですが、膨大な内容で驚きました...。本当に糸を縫うようなスケジュールで様々な人に支えられたツアーだったと思います。私個人としては、浜中町の一次産業の力強さ「一次産業がこの町を支えている!」という空気を感じさせられる活気、浜中の自然の豊かさと自然と共生する浜中の方々の力強さに驚きました。数日間浜中町で過ごすことが出来て本当に良かったなと感じています。

参加者の皆さんにツアーの感想を聞いてみると、

「疲れたけど,来てよかったです!」「浜中町の一次産業の力強さ、活気に感動しました」
「普通の旅行では、絶対に見ることがない視点で浜中町を見ることが出来て良かった。楽しかったです。次は観光で友人と浜中町に来て,豆知識みたいに教えたい!」
「一次産業の横の繋がりを強く感じました。あとご飯が本当に美味しかった...」

など笑顔で話してくれました。

「ウニがなんでこんなに高いのかが分かった」

ツアーを振り返り,色々な感想が出た中で、ボソッと出たこの言葉。ウニが出来るまでの手間暇を見て、想いを感じて印象に残ったからこそ出た言葉なのではないかと感じています。まさに、私が漁村訪問で感じたいこと、感じてほしいこと。「生産地のイメージ」を持つということがこのことだと気づかされました。これからもより深くより鮮明に、水産物がどういう場所で、どういう想いが込められているのかを知るために、漁村訪問を続けていきたいと思います。

readygo_hamanaka34.png宿泊したバンガローからの景色は絶景

最後になりましたが、今回のツアーは石塚仁さん、山崎賢治さん、徳光直子さん、ツアーの企画をサポートしていただいたとついようこさんをはじめ、多くの皆さまのご協力によって成り立ちました。
この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。

北大水産サークルレディ魚ー×くらしごと
北大水産サークルレディ魚ー×くらしごと
住所

北海道札幌市北区北20条西5丁目2-50(レディ魚ー事務局)

URL

https://www.instagram.com/ready_5500/

GoogleMapで開く


『レディ魚ー×くらしごと』番外編:浜中町水産ツアー後編

この記事は2025年9月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。