HOME>まちおこしレポート>まちを盛り上げたい。ブロック建築のパイオニアが手がけたカフェ

まちおこしレポート
苫小牧市

まちを盛り上げたい。ブロック建築のパイオニアが手がけたカフェ20260228

まちを盛り上げたい。ブロック建築のパイオニアが手がけたカフェ

2025年12月、北海道苫小牧市の西側の海沿いに素敵なお店「CAFE&DELI KITAZAWA.」がオープンしました。店内に足を踏み入れると、正面の大きな窓の外に太平洋が広がり、思わず「わぁ」と声が出てしまいます。天井が高く、落ち着いたテイストでまとめられている店内は、つい長居したくなるのも分かる雰囲気です。このお店、経営しているのは苫小牧市内の建設会社・北澤建設工業株式会社。もちろん、このセンスの良い建物は自社で手掛けたものです。今回は、北澤建設工業の代表取締役社長・泊内真人さん、CAFE&DELI KITAZAWA.の店長でもある飲食事業部・部長の村上智恵さん、北澤建設工業の工事部職長の滝田剣人さんに、カフェオープンの経緯を含め、仕事のことや会社のこと、そして苫小牧への想いなどを伺いました。

エクステリアや外構工事、新築やリフォームの2つの部署が主軸

北澤建設工業は、苫小牧で創業し68年目を迎える会社。2つの事業部が主軸となり、事業を展開しています。一つは、エクステリアの設計・施工や外構工事を行う工事部、もう一つは新築・増改築・リフォームなど建物を手掛ける建築部です。そして、2025年冬からこの2つのほかに飲食事業部が新設されました。

kitazawakensetsukogyo_2.jpg北澤建設工業の工事部メンバー

「創業者の北澤良弥はブロック建築を北海道内に広めたとして、表彰されたこともある人物。今も当社の強みのひとつが、このブロック建築の高い技術力です。ただ積めばいいと思っている方が多いかもしれませんが、安全かつ真っすぐにブロックを積み上げていくには、経験と技術が必要となります」と話すのは、同社の泊内真人社長。

国家資格でもあるブロック建築技能士1級を5人、2級を2人有する同社は、この資格の実技試験を実施機関から委託され会社で行っています。道内で唯一の試験会場で、毎年、全道から資格取得を目指して職人たちが集まってくるそう。いかに同社が道内におけるブロック建築のパイオニアであるかが分かります。

今回、取材場所として伺ったCAFE&DELI KITAZAWA.の外構や建物内にもブロック建築の技術がしっかり生かされています。このほか、エクステリアや建物内の空間、建物自体にも同社の工事部、建築部が誇る技術やアイデアが用いられています。

kitazawakensetsukogyo_3.jpg

次の夢は会社経営。プロのミュージシャンから建設業界へ

泊内社長は3代目。先代の父親から令和6年(2024年)に代表のバトンを託されました。
実は、自分が跡を継ぐとは微塵も考えていなかったという泊内社長。「創業者が親戚だったこともあり、父が2代目になったのですが、子どもから見ても本当に大変そうでした。父はいつも『経営者は大変だ』と僕に言い続けていたんです」と振り返ります。

そんな環境だったこともあり、泊内社長は苫小牧の高校を卒業後、中学時代から続けていたギターを手に音楽の道へ進みます。渋谷にある音楽の専門学校に通ったのち、スタジオミュージシャンやライブのサポートギターなど、プロとして活躍。25歳のころにはロックバンドを組み、CDデビューも果たします。

kitazawakensetsukogyo_4.jpg少し照れながらも音楽活動をしていた当時の話をしてくれた、泊内真人社長

「ずっと音楽でやっていくと思っていたのですが、ちょうど12年前、たまたま実家に帰省した際、会社を畳むかもしれないと聞かされたんです。そのとき、北澤建設工業という名前は、苫小牧ではたくさんの人に親しまれているのも知っていたし、このまま会社を畳むのはもったいないと思いました」

「ずっと好きなことをやらせてもらったので、親への恩返しの気持ちもあった」と話す泊内社長は、自分が跡を継ごうと決意。10代からの夢だったミュージシャンになり、音楽活動はやり切った感じも少しあったという泊内社長の中に、「会社を経営する」という次の夢が生まれます。「跡は継がなくていい」と言い続けていた先代も、泊内社長が「戻って跡を継ぐ」と告げたときは、とても喜んでくれたと言います。

「でも、今まで建設業界に関わったことが一度もない自分が突然帰ってきて、跡を継ぎますって言っても、みんなからはただのバカ息子って思われるだけだと思ったので(笑)、5年待ってくれと父親に話しました」と泊内社長。

とにかく建設業界の経験を積もうと、独学で電気工事士の資格を取得し、川崎の電気工事会社に就職します。ここまでの覚悟を持って行動に移すというだけでも驚きですが、さらに10年近くかかると言われる現場代理人の勤務を3年でこなし、公共事業の仕事でも優秀工事の高得点を獲得し、苫小牧へ帰る際に川崎の会社から引き留められたというのも納得です。

kitazawakensetsukogyo_20.jpg

目指すは100年企業。技術力を高め、働きがいのある会社作りを

苫小牧に戻り、約2年間、建築部の課長として勤務。その後、専務を経て代表取締役社長に就任します。

「専務の時に、会社として方向性を定めたいと思ったので経営理念を設けました。創業から70年近く経ち、今は100年企業を目指したいと考えています。そのためにも指針になるものが必要だと思い、あらためて理念を考えました」

泊内社長が専務時代に考えた理念は、「1.常に高い意識を持ち、技術を磨き、後世に伝えよう/2.自社の技術力を発揮し、地域の発展に貢献しよう/3.社員全員が共に学び合い、やりがいを感じられる会社を目指そう」の3つ。この中の、「技術」という部分を担っているのが、現場で活躍するスタッフです。

そのひとりが、現場の職人をまとめる工事部の職長・滝田剣人さんです。前はとび職だったという滝田さんは、6年前に北澤建設工業へ。先に勤めていた義兄からの誘いで入社したそう。

「前職のときに北澤の現場の足場をやっていたこともあり、北澤にはいい人が多いという印象を持っていました。義兄から、休みや給料も安定していると聞いたので、思い切って転職。実際、入ってみると風通しがよく、ざっくばらんにいろいろ話しやすい雰囲気で、居心地のいい職場です(笑)」と滝田さん。

kitazawakensetsukogyo_6.jpgこちらが滝田剣人さん

エクステリアや外構工事に関しては、現場で作業する職人はすべて自社の社員。自社で請けた仕事を自社の社員が責任を持って作業にあたっています。20代からベテランまで、全員が確かな技術を持ったプロフェッショナルなのが北澤建設工業の自慢でもあります。

滝田さんは、「技術力を上げようという高い意識を持っている人が多く、自分も今年、ブロック建築技能士1級の資格を取る予定です。そしてゆくゆくは現場代理人を目指したいと考えています」と意欲を見せます。

そんな目標も泊内社長には伝えているそうで、社長も「社員のやる気は全面的に応援したいし、そういう風に自分に伝えてくれることが嬉しい」と話します。

滝田さんは、「社長が気さくで話しやすい人なので、自分たちも『こうしたほうが職場がもっと良くなるのでは?』という意見を言いやすいんです。そういうやり取りをしていると、ただ仕事をやらされているという感覚はなく、会社の一員としての自覚も強くなる気がします」と話し、今も年間休日を増やすためにはどうすればいいかをみんなで意見を出し合って検討しているそう。スタッフの皆さんの前向きな雰囲気が伝わってきます。

kitazawakensetsukogyo_20.jpg

地域の発展に貢献したい。同じ思いの幼なじみと飲食業に挑戦

さて次に、CAFE&DELI KITAZAWA.を取り仕切る飲食事業部がどのような経緯でできたのかを伺いたいと思います。

泊内社長は、「地域のために、地域の人に喜ばれるものを作れないだろうかという思いがあり、2年ほど前からずっと飲食事業について考えていました」と話します。

「経営理念に『地域の発展に貢献しよう』という文言があります。建設業を通じ、確かに地域の発展を支えていますが、それだけだと工事でしか地域の方と触れ合う機会がないんですよね。それで、地元の人が誰でも気軽に立ち寄れるような、集まれるような場所を作りたいと思ったのがきっかけです」

事業化の構想はあるものの、実際に飲食業をやるには経験者が必要でした。そんなとき、泊内社長は自身の幼なじみで、苫小牧の繁華街・錦町でスペインバルを経営していた村上智恵さんに自分の構想を話します。

「そしたら、彼女も苫小牧をもっと盛り上げたいという同じような夢を描いていて、ぜひ一緒にやりたいと手を挙げてくれたんです」

ここからはその村上さんに登場してもらい、村上さんの歩みとオープンまでのことなどを伺おうと思います。

kitazawakensetsukogyo_8.jpgCAFE&DELI KITAZAWA.店長の村上さん

子どもの頃から料理やおいしいものが大好きだったという村上さん。いつか自分の店を開きたいと、働きながら料理教室に通い、料理だけでなくパンやケーキもプロ級に腕を上げます。そして、「おしゃれな店で、ノーチャージで、ご飯も食べられる店があったらいいのに」という周りの声を耳にし、「それなら自分が作ろう」とスペインバルをオープンします。

「イベントを企画したり、ほかの店とコラボをしたり、ウエディングの2次会にも使ってもらったり、とにかくいろいろな出会いもあり、常連さんもたくさんいて、おかげさまで忙しくしていましたが、自分の中でランチをやりたいという思いがずっとあったんです。とにかくご飯をいっぱい作って、それを『美味しい』っていっぱい食べてもらいたいと思っていました」

また多忙な中、「子育てしながら、自分で店をやっている人」というくくりで、まちづくりのフォーラムなどに呼ばれる機会が何度かあったそう。

「私、一度も苫小牧を出たことがないんですけど、苫小牧がすごく好きなんですよね。だから、まちに貢献できるようなことをしたいという気持ちもずっとあったんです」

そんなときに、幼なじみだった泊内社長から飲食事業の構想を聞き、あらゆる部分で自分が考えていたものと合致。2025年1月末でスペインバルを閉店し、2月から北澤建設工業に入社します。ここで驚くのが、いきなり飲食事業部というわけではなく、工事管理室にいたという点。正社員として入社する前の半年間、パートで広報の仕事や3D・CADを使って建設の仕事をしていたそう。

「北澤のメイン事業は建設。会社のことや仕事内容もきちんと理解し、北澤の一員として飲食事業を始めることが大事だと考え、まずは建設の部署で仕事をさせてもらいました」

kitazawakensetsukogyo_22.jpgおふたりは小学生からの幼なじみ。会話の節々から仲の良さがうかがえます

海の見える店を拠点にやりたいことを叶え、ワクワクしながら仕事を

CAFE&DELI KITAZAWA.のオープンに向け、泊内社長と村上さんは自分たちで場所探しに奔走します。そして見つけたのが、苫小牧西インターから車で約6分というこの場所でした。

kitazawakensetsukogyo_10.jpgウッドデッキに出れば太平洋が一望できます。日中・夕方・夜と、時間毎に違った景色が見られるところも魅力

あえて苫小牧の西側を選んだのは理由があると泊内社長。「ここしばらく苫小牧は、人口が東に偏っていて、西側が置いてけぼりのような印象がありました。僕が西側出身ということもあり、このカフェができることで、少しでも西側を盛り上げ、東西オール苫小牧で盛り上げていきたい!という想いがあり、西エリアで探しました」と言います。また、村上さんは「苫小牧はとても海がキレイに見えるのに、海岸沿いに素敵なお店が少ない。もっと海からの眺望をアピールしたいと思っていたので、海沿いであることも必須でした」と話します。

店内はブルックリンスタイルを意識した造り。ヴィンテージ感のあふれる内装ですが、天井が高くゆったりとした設計や座り心地の良いこだわりのソファなど、力を抜いてくつろげる空間がポイント。そして、店について語るのに外せないのが窓からのオーシャンビューです。窓に一番近い席が一段下がっていることで、窓際に座らずとも海の眺めを満喫できるという配慮も心憎いばかり。

オープンから約3カ月ですが、ランチタイムは列ができるほど評判。土日は昼を過ぎても人の波が引かないこともあるそう。平日は主婦層や年配の夫婦が多く、週末は若年層が多いとのこと。最近は、平日の午後に学生が一人で訪れ、カウンター席で本を読んだり、勉強したりする姿も見られ、村上さん的には地元の人が利用してくれているのが分かって嬉しいそう。

「食事メニューは、週替わりの定食、パスタセット、あとは少し体に優しいものをと考えて雑炊セットを用意しています。食材はできるだけ道産や地元のものを使用。野菜は地元の八百屋さんから仕入れ、魚はうちの息子が漁師なのでできるだけ新鮮な旬のものを仕入れるようにしています。今は1日2種類ですがデリも用意。デリのテイクアウトだけで立ち寄るお客さまもいらっしゃいます。スタッフにパティシエがいるので、焼き菓子やスイーツも評判なんですよ」と村上さん。

また、食育インストラクターやジュニアアスリートフードマイスターの資格も持っている村上さんは、少し落ち着いたら地元の人向けに2階席のスペースを使って料理教室も行いたいと考えているそう。このほかにも、イベントの企画を検討中。春からはテラス席も用意する予定です。

村上さんは、「いつか苫小牧といえば、CAFE&DELI KITAZAWA.といわれるような世代問わず愛される店にしたいですね」とニッコリ。スペインバル時代、「錦町の母」と呼ばれていたこともあるという村上さんは、面倒見が良いと昔から評判だったそう。確かに村上さんの明るく包み込むような笑顔は、スタッフの皆さんにも伝播しているようで、店の雰囲気も明るく感じます。「スタッフには楽しく働いてほしいと思います。その楽しい感じは、そのまま店の雰囲気にもつながると思うので」と続けます。苫小牧といえば...という夢もそう遠くはないかもしれません。

kitazawakensetsukogyo_24.jpg

最後に、泊内社長に飲食事業も含め、会社の目標について尋ねると、「まずは10年ビジョンとして、外構工事の市内シェアナンバー1を取りたいと考えています。その意味ですが、売上や利益ももちろん大事ですが、何よりも市内の皆様に必要とされているという裏付けになります。あとは、このカフェを拠点に料理教室やカジュアルウエディングなども行いたいし、ミュージシャンの経験を生かしてライブイベントなどもやってみたいですね」と話してくれました。「仕事って、先をきちんと見据えつつ、楽しくワクワクしながらやりたいじゃないですか。苫小牧を盛り上げながら、いろいろなことにチャレンジできる企業でありたいですね。そう笑った泊内社長の言葉がとても印象的でした。

kitazawakensetsukogyo_13.jpg

北澤建設工業株式会社
住所

北海道苫小牧市桜木町2丁目18-11

電話

0144-74-6161

URL

https://kitazawakensetsukogyo.co.jp/

GoogleMapで開く


まちを盛り上げたい。ブロック建築のパイオニアが手がけたカフェ

この記事は2026年2月2日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。