大正15年に創業した旭川電気軌道株式会社。電気軌道とは、電気を動力とする鉄道のこと。旭川電気軌道は、旭川と近郊地域を結ぶ交通手段が切望される中、軌道路線を敷設し、昭和2年から運行をスタートした会社です。その後、現在のバス事業につながる乗合自動車による運送業を始めたそう。今回は、旭川市がバスドライバーとして活躍しながら、地域情報を発信してくれる地域おこし協力隊を募集するということで、所属先のひとつとなる同社を訪ねました。
学生も高齢者も。市民の暮らしを運んできた100年
まず話を伺うのは、旭川電気軌道の運輸事業部次長の矢野さんです。会社の成り立ちや、これまでの取り組みなどについて教えてもらいました。
「当社は創業から100年になります。市内を走る路面電車事業から始まり、しばらくして全国で乗合自動車の普及が高まると、当社も路面電車と並行して乗合自動車の事業を推進してきました。時代の変化とともに路面電車からバスへと軸足を移しながら、旭川を中心に道北エリアの交通を支えてきました」
旭川市内を中心に近郊エリアの隅々まで走る旭川電気軌道の路線バスは、まさに地域住民の暮らしに必要な「足」。特に車の運転ができない学生や高齢者の方たちには欠かせない存在です。
「私は旭川の出身なので、自身も学生時代はいつも利用していましたし、旭川電気軌道のバスはとても身近な存在でした。ドライバー不足など課題はありますが、バスは旭川エリアの暮らしになくてはならないものです。いろいろ工夫を重ねながら、地域の皆さんに安心かつ快適に利用していただけるようこれからも努力を続けたいと考えています」
「シフトが様々なこともあり、自分のシフトが終わったら誰に遠慮することなくきっちり帰ることができるのもひとつの特長かもしれませんね」と運輸事業部次長の矢野さん。
矢野さんが話す「いろいろな工夫」のひとつが、路線の改編です。変化するまちのニーズに合わせて路線やダイヤを最適化し続けています。
「人口の動きやまちの変化などに応じて、少ない資源をいかに有効に使い、乗客の皆さんに不便を感じさせず、安心して利用していただくかを考え、路線や本数の改編を行っています。ほかのバス会社に比べ、かなり改編が多いほうだと思いますが、変化し続けることこそが、地域の足を確保する方法でもあると考えています」
高校生の利用を例にあげると、かつてニュータウンといわれたエリアには学生は少なくなる一方で、昨今新築の家が増えているエリアには今後学生が増加していく。そうした地域の実態の把握と分析を行う中で、どのエリアや時間帯に乗車率が上がるかなどを考えた上で路線や本数を改編するそう。つまり、それだけ旭川や近郊エリアのまちのことを常に把握しているということでもあり、地域と共に発展してきた企業であることが分かります。

全国・全道に先駆けた取組で「移動の不安」を「安心」に
旭川電気軌道のモットーは「地域社会への貢献」。地域の足を支えるため、「これはいい!」と思ったものに関しては、躊躇することなくいち早く導入してきたそう。道内にはたくさんのバス会社がありますが、道内で初めて冷房車の導入を行ったのも同社です。
「これは役立つ、これは乗客の皆さんにとってプラスになると思ったものに関しては、積極的に設備投資を行っています。バス接近表示型の停留所標識を旭川市の中心部50カ所に設置したのも全道に先駆けてでした」
雪が多い旭川は、冬になるとバスが遅れてしまうこともしばしば。そこで、バス停で待ち続ける乗客の不安や不便の解消のため、平成3年頃にバス接近表示型の停留所の設置を進めたそう。最近は、「バスキタ!旭川」というアプリやGoogleマップでの確認方法に変更されていますが、寒い中でも「もうすぐバスが来る」という安心感を得られるのはありがたいものです。
バスの運行状況がリアルタイムで分かる営業所のモニター。バスがどこにいるのかが分かるため、トラブル時のサポートの指示もすぐに受けられ、ドライバーとしても安心です。
「あとは、乗客の乗り降りに負担のないノンステップバスを平成9年から毎年10台ずつ導入しました。高齢者の方たちはもちろんですが、ベビーカー使用の子連れの方や車椅子の方にも利用しやすいのが特徴です」
当時、ノンステップバスをこれだけ大量導入したのは全国でも初めてだったそう。いかに旭川電気軌道が常に乗客のことを考え、時代に先駆けた取り組みや投資を行ってきたかが分かります。
「バリアフリー関連も積極的に行っていて、最近はアプリの『バスキタ!旭川』の中に、車椅子など乗降の際、支援が必要な方の乗車登録ができる機能が入りました。乗降支援が必要な方向けの『のります』ボタンを押せば、それがドライバーに伝わるので、車椅子をのせるための準備などがスムーズに行えるようになりました」
安心安全な運行の要は、ドライバーの心のゆとり
旭川電気軌道が投資を行ってきたのは、バスそのものやアプリのシステムだけではありません。乗客を安全に運ぶためには、バスを運転するドライバーが仕事に対して意識を高く持ち、前向きに取り組めるかが大事です。安心して働くことができる環境を整えることが重要だと捉え、ドライバーの働き方改革にもいち早く着手し、人に対する投資も行ってきました。
「当社では、ドライバーのQOL(生活の質)の向上を非常に重視しています。安全な運行にはドライバーの健康状態や意識が何よりも大事。週休二日制の導入を早くから取り入れているほか、有休も取りやすい環境を整えています」

有給休暇の消化率はほぼ100%。繁忙期となる冬もドライバー同士が協力し合いながら休みを取れるように工夫しているそう。
「200人以上のドライバーがいるので、もちろんいろいろなタイプの人がいます。そのほとんどが中途採用で、前職はさまざま。さらに定着率が高いのもうちの特徴かもしれません」
ドライバーはシフト制勤務ということもあり、オンとオフの時間の切り替えがしやすいのも魅力。また、路上に出てしまうと基本はひとりですが、そこが気に入っているというドライバーも多いそうです。
「路上に出ているときはひとりとはいえ、困ったことがあれば先輩や仲間がサポートします。また、入社時の教育や研修も手厚いので、未経験者で入っても大丈夫。免許取得からのサポートを行っています。先輩が就いてくれる研修を経て、だいたい3カ月ほどで独り立ちできるよう段階的に教育を行います。うちは旭川市と周辺が主な範囲なので、万が一の際もすぐに管理職や先輩がかけつけることができるというのが、安心感にもつながっているようですね」

入社をした後も年に3回の安全運転講習や外部講師を招いた講座を行うなど、運転スキルの向上や安全意識を常にキープできるように努めています。
ドライバー同士の交流に関しては、日常的に営業所で雑談をするといったコミュニケーションのほか、年に1度は会社の共済会主催の飲み会や旅行を実施。そこでさらに親交を深めます。人数が多いため、5つの班に分かれて実施するそう。
「あと、正社員に限る形になるのですが、当社は公式のクラブ活動も盛んです。野球、マラソン、釣り、ゴルフ、パークゴルフ、カメラなど、同じ趣味を持つ社員が集まって活動しています。結構活発で、みんな楽しそうにしていますよ」
6人以上のメンバーが集まれば、公式クラブとして認められ、その活動費も一部会社が負担してくれるとか。地域おこし協力隊で入った方は、任期後正社員になった暁にはクラブ活動に参加できるそうです。
旭岳を背に、感謝を乗せて。大好きな旭川を走る最高の日常
さて、次に実際にバスドライバーとして活躍している原田さんに仕事のやりがいや魅力などを伺いたいと思います。
次長の矢野さんから「彼はとても優秀なんですよ!」と太鼓判をおされている原田さん。
地元・旭川出身の原田さんは2023年に転職して旭川電気軌道のバスドライバーに。前職は、小学校や中学校などの行事の際に子どもたちを撮影するカメラマンだったそう。
「矢野さんと同じで、幼い頃からずっと電気軌道のバスに乗って育ったこともあり、すごく愛着はありました。バスも好きだったんですよね。それで、学校カメラマンをやっていたとき、小学生や中学生を貸切バスで目的地へ連れて行く仕事に憧れがあって、いつも撮影のたびにいいなぁと思っていました」
異業種からの転身に不安がなかったわけではなかったそうですが、30歳になる前に思い切って挑戦してみようと決心。免許取得をしっかりサポートしてくれる体制も背中を押してくれました。
「きちんと研修制度も整っているし、先輩たちのサポートもあるので、運転自体はなんとか大丈夫でしたが、最初は路線を覚えるのがとにかく大変でした。旭川市民ですが、普段あまり行かないエリアなどは分からなくなることも...」

旭川電気軌道の路線バスの停留所は、全部で750あるそう!路線を覚え、停留所をすべて頭に入れるのは大変なことです。
「でも、路線で迷ったときや分からなくなったときはすぐに運行管理者に連絡すれば、モニターを見ながら的確な指示をもらうことができるんです。そうしたサポートのおかげで、安心してハンドルを握ることができています」
原田さんは、現在ツアーなどの貸切バスの運転をメインにしつつ、路線バスの運転もしているそう。
「貸切バスは乗るたびに違う場所に行けるし、自分が知らなかった景色に出合えるのが楽しいです。市外に行くこともあり、先輩に教えてもらった新しい道を通ったりするのも今はすごく面白く感じます。そして、ツアーの最後にお客さんたちから『ありがとう。楽しかったよ』と直接声をかけていただくと、やっぱり嬉しいですよね。路線バスに乗るときも、ほとんどのお客さんが『ありがとう』と感謝を伝えてくれるので、気持ちよく運転できます」
お客さんとのエピソードを尋ねると、空港線のバスを運転していたとき、「時間通りに到着できてよかった。ありがとう」と荷物の中にあったお土産のお菓子を分けてくれたお客さんがいたそう。また、原田さんの先輩ドライバーの中には、地域のお客さんから育てた野菜をもらったという人もいたとか。
運転を通して、美しい旭岳や北海道らしい景色、そしてあたたかい人に出会える職場なのです。
職場環境については、「休みもあるし、働きやすいと思います」と原田さん。ドライバー同士のコミュニケーションに関しても、「みんな話しやすい人ばかりだし、先輩たちは優しい人が多い」と話します。さらに「職員の数が多いので、必ず趣味が合う人や話の合う人はいるはず」と続けます。
「もしバスドライバーになることを検討している人がいるなら、旭川は路上駐車も少ないし、運転しやすいと思います。一方通行や右折も少ないし。冬道は少し緊張しますけど(笑)。そして、四季がはっきりしているから、同じ路線を走っていても違う景色が楽しめるし、バスからの眺めが素晴らしいスポットもたくさんあります。営業所の前の通りから見える旭岳の山並みも本当にキレイですよ」
「生まれ育った旭川のまちが好き」と話す原田さん。後ろで話を聞いていた矢野さんも大きく頷きます。まちがコンパクトで、大きな病院や学校、買い物をする場所もたくさんあり、必要なものはほとんどすべて揃うから暮らしやすいとのこと。さらに、水がおいしい、スキー場が近い、物価が安いなど、次々と旭川の魅力を挙げてくれました。
矢野さんや原田さんのような地元愛溢れる職員が多くいる旭川電気軌道。運転が好きで、地域に根差し、地域の人と触れ合いながら仕事がしたいという人は、ここで地域おこし協力隊としてバスドライバーに従事するのも面白いかもしれませんね。

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- 旭川電気軌道株式会社
- 住所
<共栄営業所>〒078-8340 旭川市東旭川町共栄128番
- 電話
0166-31-5241
- URL















