たまたま目にした旭川市の地域おこし協力隊の募集広告をきっかけに、大分県から旭川へ移住を決めた大嶋さん夫妻。2人とも道北バス株式会社に在籍し、バスドライバーとしての仕事をスタートさせたばかりです。今回は、これまでの歩みや旭川での暮らしのこと、バスドライバーの仕事について話を伺いました。また、引き続き旭川市がバスドライバーとして活躍しながら、地域情報を発信してくれる地域おこし協力隊を募集するということで、2人の所属先でもある道北バスについて同社の運輸部部長でもある旭川営業所所長の小川さんに伺いました。
きっかけは、偶然見つけた協力隊募集記事
大分出身という大嶋さん夫妻。お二人とも旭川に移住する前は、大分でバスドライバーをされていました。日本の南に位置する大分から直線距離で1500㎞ほどある北海道・旭川へ移住を決めるまでの話から伺っていこうと思います。
北海道へ行こうと最初に切り出したのは、ご主人でした。当初は移住ではなく、北海道旅行に行けたらと思っていたそうです。
「若い頃に自衛官として働いていたことがあり、札幌の真駒内駐屯地で4年間を過ごしました。そのときに感じた北海道の人の優しさや、冬は雪が降るけれど、夏は湿気が少なくて過ごしやすい環境など、とにかく北海道に対して良い印象があって、いつかまた訪れたいと思っていました」
終始にこやかで、本当に仲むつまじい様子が伝わってくる大嶋さん夫妻!
かつて感じた北海道に対する憧れが心のどこかにずっとあったというご主人は、北海道を訪れたことのない妻をぜひ一度連れて行きたいと考えていました。奥さまも夫がかつて住んだことのある北海道内を見て歩きたいと希望していたそう。しかし、なかなか一緒にまとまった連休を取ることが叶わず、北海道旅行の夢を実現できずにいました。
「まとめた休みが取れないならば、いっそのこと移住したほうがいいかもねなんて話もしていたんですけど、たまたまFacebookで旭川市の地域おこし協力隊の募集記事を見つけたんです」
しかも募集職種は、バスドライバー!自身の経験をフルに生かせる職種の募集ということで、「もうこのまま行っちゃう?って感じで妻に相談しました」と話します。
もともとバスの運転が好きだったというご主人。
「自分も50半ばという年齢なので、このまま大分で定年を待ってから北海道に行くより、思い切って今のうちに行ったほうがいいんじゃないかと思ったんです。そして心機一転、好きなバスドライバーの仕事に就いたほうが気持ち的にラクかもしれないとも思いました」と話します。
ここで挑戦してみようと移住を決意させたのは...?
一方、奥さまはご主人からその話を聞いたとき、どう思われたのでしょうか。
「ちょっとこういう募集があるんだけど、どうかなって相談されて...。正直、私は悩みましたね。2カ月くらいは悩んだかな」
悩んだ理由は自身の仕事のことがあったからでした。長年、軽貨物の宅配の仕事に就いていた奥さまは、「もともと運転が好きで個人宅などに荷物を運ぶ仕事をしていたのですが、ドライバーとしてもうちょっとスキルアップしたいと考えて、夫と同じバス会社に転職しました。でも、夫から旭川の協力隊の話を聞いたのが、入社から半年くらいのときだったんです」と話します。

バス会社の研修を経て、ドライバーとして独り立ちしたばかりだった奥さまは、また新たな場所でチャレンジすることに少し抵抗があったそう。
「でも夫は、北海道にもう一度行けるチャンスがあるなら行きたいとずっと話していましたし、私としても希望を叶えてあげたいという気持ちもあって...」
奥さまが悩んでいる間、ご主人は旭川市の地域おこし協力隊の担当課・都市振興部交通政策課の担当者にいろいろ相談。やり取りを続ける中、担当者から「よかったら一度旭川に来て、バス会社も見学しませんか」と言われます。ご主人は「担当の方に誘われなかったら、ずっと悩んだままで、大分から離れなかったかもしれない」と話します。
デビューしたばかりという奥さまですが、運転手姿が板についています!
そして、2025年の8月末に2人は思い切って旭川へ。奥さまは、旭川のまちから見える大雪山の雄大な景色に強く感動し、「この場所で再度挑戦をしてみよう」と移住を決意します。
ゆとりある道路と譲り合うマナー。そして旭川の人の大らかさ
旭川を訪れ、市の担当者と一緒にバス会社をいくつか見学した大嶋さん夫妻。大分市からの移住の場合、地域おこし協力隊の制度上、居住要件の制限があったことから、通勤のことなどを考えた末、地域おこし協力隊としてではなく、社員としてバス会社に就職する方向で検討することにしました。
「大分で働いていたバス会社と規模感が同じくらいだったことやアットホームな感じも魅力に感じ、道北バスに就職することに。『路線バスだけではなく、都市間の高速バスも乗れそうならどうですか』と声をかけてもらい、ドライバーとしてのキャリアをきちんと理解していただいている感じも嬉しかったです」とご主人。
道北バスに社員として入社が決まった大嶋さん夫妻は、年明け2026年1月に入社するため、秋にもう一度旭川を訪れ、住まい探しを行います。ご主人は、「私は北海道に住んでいたときに雪道の運転経験はありますが、妻はまったく初めての雪道運転になるので、不動産屋さんに会社の近くで部屋を探してもらいました」と話し、歩いてでも通勤できる距離に住まいを見つけます。

雪が降り積もる12月に引っ越しを行い、1月に2人は道北バスに入社。まずは雪道の練習も含めてしっかり研修を受け、ご主人は3月下旬からドライバーとして独り立ちし、奥さまは取材日のつい3日前にデビューしたばかりだそう。
奥さまは、「教習車に乗っていたときは冬だったので、雪道は怖かったですね。初めてだったので、過酷なところに来てしまった、大丈夫だろうかと思いました。でも、ここでチャレンジをすると決めて、大分の家も手放してきたので、もうやるしかない、一生懸命頑張るしかないって必死でした」と冬の間に考えていたことを教えてくれました。
「バスの運転自体はそれほど問題なかったのですが、アイスバーンは怖かったですね。あとは、バス運賃のシステムや機械が前職とはまったく違うので、そういう違いを覚えるのが大変でした」とご主人が話すと、奥さまは「まだ間違えるときあるけれどね」と笑います。
旭川の雪道にも着実に経験を積みながら慣らしていきます。
奥さまは、「職場の皆さんも、乗客の方たちもやさしい。旭川は大らかな人が多いと思う」と話し、「お客さんの多くがバスを降りるときに『ありがとう』とか『頑張ってね』と声をかけてくれるんです。それがすごくやりがいになります」と続けます。また、地理に不慣れで、一度道を間違えてしまった際も、「『申し訳ありません』と謝ると、お客さんは怒るのではなく、『大丈夫だよ、落ち着いて営業所に連絡してね』と優しく声をかけてくださったんです。その言葉で随分救われました」と話します。
大分でドライバーをしていたときとの違いについて尋ねると、ご主人は「旭川の人は運転マナーがいいと思います。バス停のバスポケットから出る時ウインカーを出したら、後続車はちゃんと止まって入れてくれる人が多いんですよね。移住前は止まってくれないことも多かったので...」と苦笑しつつ、「道路が広いせいか、あまり渋滞がないし、ある程度時間通りに走れるから、自分自身もカリカリすることがなくなりました」と続けます。また、「職場の人たちも本当にやさしくて、みんな『どう?慣れた?』といつも声をかけてくれます。初めて走る路線のポイントなども教えてくれるのでありがたいですね」とも。

「やってみたい」の気持ちをしっかり後押し
次に、道北バスで大嶋さん夫妻の上司にあたる旭川営業所所長の小川さんに会社のことについて伺います。
貸切バスの安全性の高さを示す安全評価認定制度で星を2つ取っている同社は、しっかりした段階別の研修制度を整え、未経験からでもしっかりとドライバーを育成しています。
「当社はチャレンジしようという気持ちがある方であれば、大型二種免許をお持ちではない未経験者でも歓迎です。もちろん地域おこし協力隊でいらっしゃる方も同じです。ドライバーの皆さんには少しでも不安なことや気になることがあれば、研修中であっても、独り立ちしたあとでも、すぐに言ってくださいと伝えています。管理側としてはそれらに対してスピード感を持って対応するよう心がけています」
大嶋さん夫妻は、道外から移住してきた同社で初の社員。「土地勘がない分、道を覚えるのは大変だと思いますが、少しずつでもきちんと覚えていけるよう、独り立ちしたあともしっかりとサポートしていきます」と小川さん。
「面接のときにも気になったことや不安なことは、遠慮なくどんどん教えてください」と運輸部部長・旭川営業所所長の小川さん。
また、大型二種免許をお持ちの方に対しての支度金制度も設けているそうで、「このほかにも旭川市の移住に関する助成金もあるので、引っ越し費用などの負担は軽減できると思います」と話します。
社内のクラブ活動も盛んで、野球、釣り、アマチュア無線、バイク、温泉など、いろいろなクラブがあり、共通の趣味を通じて社員同士が交流を深めているそう。
また、休憩室を新しく改修し、広くゆったりした造りにしました。「ドライバーが安全に運転できるよう、少しずつですが働きやすい環境をこれからも整えていきたいと考えています」と話します。
ハンドルを握る緊張感も、新生活の喜びも分かち合って
さて、再び大嶋さん夫妻に登場してもらい、最後に旭川の暮らしやこれからのことなどを伺おうと思います。
冬に移住してきた大嶋さん夫妻、特に北海道が初めてという奥さまはその雪の多さに驚いたそう。「夫から話を聞いていたのでイメージ通りではありましたが、引っ越してきてすぐに30センチ近くの雪が積もって、それはビックリしました。歩いてドラッグストアまで行って、除雪道具を買ってきて生まれて初めての雪かきをしました」と話します。
旭川は、充実した都市機能と北海道らしい四季のコントラストを感じられる暮らしが楽しめます。
「大変なこともあるけれど、その逆に楽しいこともいっぱいあるから、移住して良かったなと思っています」と奥さま。「ジンギスカンや野菜などの食べ物、それから水がとにかくおいしくて」と嬉しそう。こちらに来て食べてお気に入りになった食べ物はタコ。「柔らかくておいしくて驚きました」と満面の笑顔。ご主人も「水はすごくおいしい。カルキ臭もしないですしね。旭川の水道水はおいしく飲めます」と話します。
家の片付けがまだ済んでいないそうで、休みの日は片付けをしていることが多いとのことですが、「妻が、私がかつて北海道にいたころに行った場所を自分も見てみたいというので、連れて行ってあげなければと思っています。留萌に向かって走る夏のオロロンラインからの景色も見せたいですね」とご主人。あとは利尻や礼文島にも行きたいと考えているそう。「旭川は道内のどこへ行くにもアクセスが良くていいですね。あと、空港が近くにあるのもとても便利」とも話します。

家でも仕事の話をよくするという大嶋さん夫妻。「大分のバス会社のときは、先輩後輩の立場でしたけど、今は入社同期。路線のことなどお互い教え合わないと頭に入ってこないこともあるので」とご主人は笑います。「互いに補い合いながら頑張っているという感じです」と奥さま。
これからのことについては、「今はまだ独り立ちして1カ月足らず。今は目の前のことを一生懸命やるだけです。安全第一で、道を間違えないように頑張ります」とご主人。続けて奥さまも「お客さんを安全に運ぶため、常に緊張感を持ちながら、一つひとつこなしていくだけです」とニッコリ。
公私共に夫婦で支え合い、二人三脚で頑張っている大嶋さん夫妻。新天地・旭川での生活は始まったばかりですが、日々充実している様子がよく伝わってきました。
- 道北バス株式会社
- 住所
<本社>〒070-0821 北海道旭川市近文町16丁目2698番地の1
- 電話
0166-51-0111
- URL















