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このまちのあの企業、あの製品
清水町

ホルスタイン雄牛においしい付加価値を。十勝清水フードサービス20260416

ホルスタイン雄牛においしい付加価値を。十勝清水フードサービス

北海道南東部・十勝平野の西の玄関口に位置する清水町。日高山脈を間近に望み、十勝川の清流に育まれた豊かな農業地帯です。とりわけ、広大な牧草地で乳牛がすくすくと育つことから、酪農が盛んなまち。都市のような利便性とは少し距離がありますが、その分、肩に力を入れすぎずに暮らせる空気がこのまちには流れています。

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この清水町で、地域の酪農と深く結びついた事業を展開しているのが株式会社十勝清水フードサービス。同社が加工・販売するブランド牛「十勝若牛(とかちわかうし)」は、酪農から生まれる副産物に価値をつける取り組みとして育まれてきました。まずは、その成り立ちと会社の役割について、執行役員兼総務課長の若原幸雄さんに伺いました。

ブランド牛「十勝若牛」が生まれた原点

酪農が盛んな地域では、生乳を生産するホルスタインの牝牛が毎年子牛を産みます。けれど、雄の子牛は乳を出さないため、かつては価値をつけにくかったといいます。さらに、牛肉の輸入自由化が進み、コストの安い海外産が流通し始めたことも向かい風となってきたため、JA十勝清水町とその関係者たちはこう考えました。どうすれば、ホルスタインの雄の子牛に価値をつけて届けられるか、と。

20260313_tokachishimizufoods_13.JPG執行役員兼総務課長の若原幸雄さん。「十勝若牛は、脂付きも少なくて捨てるところが少ないんです」と話します。

「当社は農協の100%子会社として設立され、肉の加工や販売を担っています。つまり、生産者と一緒に未来を考えていける立場にあることも強みでした」

アイデアをめぐらして出した答えが「十勝若牛」です。通常、国産の若牛は20カ月ほど育ててから出荷するのが一般的で、体重は800キロから1トン近くになります。けれど、十勝若牛は、約14カ月という異例の早さで出荷しているのです。

「14カ月を過ぎると、牛は筋肉より脂肪が増えていきます。若い月齢のうちに出荷することで、臭みが少なく、きめ細かで柔らかな赤身肉に仕上がるんですね」と若原さんは説明します。脂が控えめな分、食べやすく、最後まで無駄なく楽しめる点も評価されているそうです。

もちろん、この期間で一定の体重に持っていくのは簡単ではありません。ホルスタイン種は、通常20カ月かけて育てるのとは異なる成長曲線を描かなければならず、12カ月、13カ月とさまざまな月齢で試行錯誤を繰り返した末に、約14カ月という答えに行き着いたといいます。それでも当初は、サイズが小さいことで「かわいそう」「扱いづらい」という声も届いたとか。「なかなか受け入れてもらえない時期が長く続きました」と若原さんは振り返ります。

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転機となったのは2012年、滋賀県大津市で開催された全国牛肉サミット。松阪牛や神戸牛など全国の名だたるブランド牛が集う中、十勝若牛のローストビーフ握りで挑んだところ、見事グランプリを獲得します。「この受賞が大きな宣伝効果になって、少しずつ販路が開けてきました」と若原さん。以前から関東・関西・沖縄での取扱いはありましたが、以来更に幅広く流通するブランド牛へと成長しました。

利益だけを追わない姿勢が、働きやすさに直結

十勝清水フードサービスの特徴は、単なる加工会社ではない点にもあります。現在、十勝若牛の生産は4軒の農家が担い、年間約4,300頭を出荷しています。同社の役割は、その牛を食肉として加工し、仲卸や直販を通じて届けること。農協の100%子会社として、生産者が再生産できる仕組みを守ることが使命です。

「十勝若牛をお肉として販売して、その価値でまた子牛を導入してもらう。その循環を安定させることが大事なんですよね。たくさん生産しても加工できる処理能力がなければ意味がないですし、さばいても売り先がなければ回りません。そのバランスが、ここ数年はいい状態が続いていると思います」

20260313_tokachishimizufoods_7.JPGここでの仕事は、生産者さんの力になること、地域のブランドを育てることにもつながっています。

無理に規模を拡大するのではなく、地域と現場が持続できるラインを見極める。その考え方は、社員の働き方にもつながっています。年間の処理頭数があらかじめ決まっているため、それを日々に割り振れば1日に加工するべき量が自ずと見えてくるとか。結果として、無理なスケジュールが生まれにくく、毎朝のミーティングで当日の予定を共有しながら、計画的に仕事を進めていけます。

「残業は年間を通じてほぼなく、繁忙期の11月・12月でも遅くまで残ることはありません。利益を最大化するために無理に生産を増やす会社ではないので、その分、働き方も安定しているのかなと思います」と若原さんはまっすぐに言い切ります。

機械化が難しい分野だからこそ、じっくり、ゆっくり人を教育

一方で、同社が強く課題として捉えているのが、人材の年齢構成です。

20260313_tokachishimizufoods_4.JPG知識や経験は全く必要なし!丁寧に教えられる環境なので、思っているよりも早く成長を感じられるとのこと。

「今の平均年齢が45歳くらいで、40代以降の社員が多いんです。このままいくと、10年、20年後に一気に人が抜けるタイミングが来る可能性があります」

若原さんは、将来を見据えた危機感を率直に語ります。その背景にあるのは、食肉加工という仕事の性質です。一見すると機械化できそうに思えるものの、実際にはそう簡単ではないといいます。

「同じ牛でも骨の付き方や脂のつき方が違うので、まったく同じ処理はできないんです。重さが同じでも、さばき方は微妙に変わります。だから、人の判断と手の感覚がどうしても必要になるんです」

つまり、経験を積んだ人材がいなければ成り立たない仕事。そして、その技術は一朝一夕で身につくものではありません。

20260313_tokachishimizufoods_2.JPG社員の適正にあわせて仕事をお願いすることも。手が空いた人は他の人を手伝うが自然とできる職場です。

「ナイフの入れ方一つでも、深すぎれば商品価値に影響しますし、浅すぎても効率が落ちます。そういった感覚は、やっぱり現場で積み重ねるしかないんです」

だからこそ同社では人材採用に力を入れ、若い世代を一から育てていく方針を取っています。育成のプロセスも急がせることはありません。まずは袋詰めなど全体の流れを理解するところから始まり、徐々に骨抜き(部位ごとにきれいに解体すること)や成形といった工程へと進んでいきます。

「最初から全部できる必要はありませんし、できるようになるまでに時間がかかるのは当たり前です。ラインの仕事なので、どこかが詰まると全体に影響が出ますが、周りが自然と手を貸します。そういう動きができるのがこの職場の特徴ですね」

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セカセカした都会よりも、のんびり働ける地元

ここからは、工場の現場で長く働いている石津諒さんにインタビューのマイクを向けます。石津さんは十勝清水町生まれ、清水高校出身の地元っ子。高校卒業後すぐにこの会社に入社し、気がつけば15年以上が経ちました。

「地元が好きで、地元で働きたいと思っていました。同級生の多くは都会へ出ていってしまいましたが、僕は人ごみやセカセカした雰囲気が苦手。このまちで、のんびり働くのが性に合っているのかな、と」

就職先を選んだ理由は単純明快で、「食にまつわる仕事に興味があった」から。当時、十勝若牛のことは知らなかったそうですが、入社してからその特別さを知ることになったと笑います。

20260313_tokachishimizufoods_15.JPG全工程ができる社員は工場内でも数名。そのうちの一人・石津諒さんも、最初は袋詰めからスタートしました。

石津さんが所属する製造一課の仕事は「骨抜き」と呼ばれる作業が基本です。天井からぶら下がった枝肉を、担当ごとに部位を分けながらナイフで切り分けていきます。例えば、肩、バラ、ももにもそれぞれに適した切り方があり、個体の違いもあるため、毎日まったく同じということがないのだそうです。

「ホルスタインと和牛ではさばき方が変わりますし、この牛はこうやった方がいいかなと考えながら手を動かすのも面白いです」と石津さん。現在担当しているのは「掛け下ろし」と呼ばれるスタート地点の工程。ぶら下がった枝肉を大まかに3方向に切り分けて、後工程へ送り出す役割です。

「入社当初は袋詰めから始まり、次に骨抜きの基礎的な部位へ、そしてより難しい部位へと、段階を踏んで覚えてきました。全部の場所を覚えるには10年くらいかかりましたね」

20260313_tokachishimizufoods_16.JPG個体差がある肉の形状にあわせて切り分ける工程はやはり経験が必要。うまくできるようになると達成感につながっていきます。

器用さが必要になりそう、と問いかけたところ、「僕自身もすごく不器用ですよ。でも、時間をかければできるようになっていきますから」と笑顔を見せます。

「今では新しく入ってきた人に教える立場でもあるので、何でも聞けるような関係性を作ることを意識しています。まずは打ち解けてもらうためにも、積極的に話しかけるようにしているくらいですが」と笑います。職人の世界にありがちな「背中を見て覚えろ」という空気はなく、分からないことは気軽に聞ける...この「当たり前」が根づいていることも、長く続けられる大きな理由の一つだといいます。

地域のお祭りで見えてきた、食べる人の笑顔

地域のブランド牛を自分たちの手で加工しているという実感は、石津さんにどんなかたちで届いているのでしょうか。

「スーパーで買い物していて、十勝若牛が置いてあったら、あっここにもあるんだって思いますね」とさらっと話す石津さん。大きな誇りを声高に語るタイプではないけれど、スーパーの棚に並んだお肉と自分の仕事がつながっている感覚は確かにあるようです。

20260313_tokachishimizufoods_8.JPG十勝若牛のお肉は札幌をはじめ、関東や関西、そして沖縄のスーパーなどでも販売されています。

毎年秋に開催される地元のお祭り「十勝清水にんにく肉まつり」では、十勝若牛を使った料理が振る舞われます。普段は工場の中で作業していて、消費者の顔を見ることがほとんどない石津さんも、その日ばかりは食べる人たちのそばに立ちます。

「こんなにおいしそうに食べてもらえるものをつくっているんだって、嬉しくなります」と表情が和らぎました。日々の仕事は淡々と進んでいくものですが、その先には確かに消費者がいる。その実感が、ふとした場面で立ち上がるのだといいます。

石津さんに少し意地悪な質問をしてみました。これまでに他の仕事が魅力的に映ったことってありますか?

「う〜ん...そう思ったことがないわけではないんですけど、残業もほぼないですし、人間関係のストレスもないですし、お休みもしっかりあるので、辞める理由が見つからないんですよ(笑)」

20260313_tokachishimizufoods_20.jpg「十勝清水にんにく肉まつり」での一コマ。毎年たくさんの方が十勝若牛を楽しみに訪れます!

現在、石津さんは町内で一人暮らしをしていて、家賃は4万円台。残業がないから平日の夜も自分の時間があり、温泉に行ったり、友人と釣りに出かけたり、十勝の暮らしを自分なりに楽しんでいます。

十勝若牛が全国の食卓に届くその裏側に、石津さんをはじめとする工場スタッフの仕事があります。都会で数字を追い続ける働き方とも、ただのんびりするだけの暮らしとも違う。計画的で、穏やかで、確かな技術が積み上がっていく仕事。清水町という場所と、そこに根付いた会社の空気が重なった時、「ここで長く働ける」という実感が生まれるのかもしれません。石津さんが15年以上勤め続けていることが、そのことを物語っているように思えました。

株式会社十勝清水フードサービス
株式会社十勝清水フードサービス
住所

北海道上川郡清水町字清水419番地79

電話

0156-62-1129

URL

https://www.ja-shimizu.or.jp/foodservice/index.html

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ホルスタイン雄牛においしい付加価値を。十勝清水フードサービス

この記事は2026年3月13日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。