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このまちのあの企業、あの製品
芦別市

世界に誇る、星の降る里の0.8mm。大旺鋼球製造20260525

世界に誇る、星の降る里の0.8mm。大旺鋼球製造

私たちの暮らしの中で、当たり前のように「滑らかに動く」もの。自動車のハンドルや自転車のペダル、スマートフォンの製造現場まで、その正確な動きを支えているのは、目に見えないほど極小な「球」の存在です。
この滑らかな動きの要を作るのが、北海道芦別市の「大旺鋼球製造株式会社」です。 かつて炭鉱のまちとして栄えた芦別市は、多様な人々を受け入れてきた歴史があります。現在は「星の降る里」のキャッチフレーズで知られる美しい星空や緑に加え、手厚い移住支援でも注目を集める地域です。そんな芦別で鋼球の製造拠点を構え、歩み続けてきたのが同社です。

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同社が作り出すのは、直径0.8mmから15mmという小さな世界。そこにはサブミクロン単位の精度を追求する専門技術が凝縮されています。今回は、代表取締役社長の加治屋国博さんと、製造の最前線を担う前田和毅さん、高橋賢吾さんの3人にお話を伺いました。
ボールが滑らかな「動き」を作るように、ここで働く人たちが地域に活気を生み出していく。そんな芦別から始まる物語をお届けします。

0.8mmが世界を支える。自動車からスマホ製造まで

まずお話を伺ったのは、代表取締役の加治屋国博さんです。
私たちの暮らしを支える部品を作っている同社ですが、「0.8mmの鋼球」と言われても、正直なところ一般の私たちにはピンときません。
加治屋さんは身近な例を挙げて丁寧に教えてくれました。

daioukoukyuseizou_54.jpgこちらが代表取締役の加治屋国博さんです。普段は大阪本社にいるそうですが、今回北海道工場へ来るタイミングで快く取材に対応してくださいました。

「身近なところでいうと、車のシートを前後にスライドさせる部分にも鋼球が使われています。ほかにも、自動車のハンドルやタイヤ、自転車のペダルなど、『回転する・旋回する』場所には、鋼球という部品が欠かせない存在なんですよ」

なるほど。ネジが部品同士を「つなぐ」役目だとしたら、鋼球は「滑らかに動かす」ための主役といえそうです。
言われてみれば、あのスムーズなシートの動きも、鋼球が座席の下で支えてくれているからこそ。普段は意識しない足元に、そんな奥深い世界が広がっていたとは驚きです。

鋼球の活躍の場は、私たちの身の回りだけにとどまりません。工場の製造ラインで部品の位置を正確に決めるためのガイド役として、工作機械や半導体メーカーでも欠かせない存在となっています。今や生活に欠かせないスマートフォンも、同社の鋼球がなければ作れないといっても過言ではありません。

「当社が評価をいただいているのは、技術力による精度の高さです。目に見えないほど小さなボールでも、すべてを均一に作り上げる。メーカーさんの厳しい要望に応え続け、世の中の工業製品の発展を支えているのだという自負を持って、私たちは日々取り組んでいます」

星と緑と、人の温かさと。芦別で出会った魅力

加治屋さんは、大阪にある本社と芦別の製造拠点を毎月行き来する多忙な生活を送っています。
実は取材当日も、大阪へ戻るフライトの日。「せっかく遠くから来ていただいたのだから」と、自ら飛行機の時間を遅らせてお話を伺う時間を作ってくださいました。
そんな丁寧で柔らかな物腰からは地域や人に対する誠実な敬意が伝わってきます。

都市部と行き来する「外からの視点」を持つ加治屋さんだからこそ、芦別の魅力はより鮮明に映ります。

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「芦別は移住者への経済的な支援が手厚いだけでなく、まちの雰囲気が外から来る人にとても優しいと感じています。かつて炭鉱の町として全国から人が集まり、栄えた歴史があるからでしょう。多様な人を受け入れるおおらかさが地域全体に根付いている。私が飲食店を訪れても、地域の方が温かく接して入れてくれるのが嬉しいですね」

さらに加治屋さんの心を掴んだのは、この土地が持つ色彩の美しさでした。
「『星の降る里』という芦別のキャッチフレーズの通り、見上げる夜空の美しさは格別です。また、厳しい冬を越え5月から6月にかけて一斉に芽吹く緑の瑞々しさには本当に驚かされました。降り注ぐ星、溢れる緑。この豊かな彩りの中で働けることは、私にとって大きな喜びなんです」

「この美しい場所で、地域と共に発展していきたい」。
そのためにも、さらに「小さく」、あるいは「違う材質」にも。取引企業が求める一歩先の品質を追求していく。穏やかな語り口の奥には、芦別という地で日本のものづくりを支え続ける、社長としての確かな覚悟と自負がありました。

「定年まで、ここで」。一粒の精度を支える「人」への情熱

製造現場の業務は、プレスから熱処理、研磨、そして検査へと続きます。
配属にあたっては本人の希望と適性をじっくりとすり合わせ、入社前には実際の工程を見学してもらうのが同社のスタイルです。
「納得した上で、長く働いてほしい」という想いが、その根底にはあります。

働く環境づくりにも配慮しています。
生活の要となる「住まい」の負担を減らすため、26戸の社宅を用意。
特に新卒や若手の中途採用者にとって、この手厚いサポートは大きな安心感となっています。

極小の世界を扱うこの仕事には、どのような人が向いているのでしょうか。加治屋さんは「精度を追求し続けられる真面目さ」を挙げます。

「サブミクロンの世界は、決まったことを的確にやり遂げる粘り強さが不可欠です。大阪から来た私から見ると、北海道の方はコツコツと地道に仕事を進める気質が強い。この仕事に非常にマッチしていると感じます」

同社での働き方について話を伺うなかで、加治屋さんは「今どき古いと言われるかもしれないけれど」と前置きし、いっそう熱を込めて語ってくれました。

「定年までここで働きたい、と思ってもらえる会社であり続けたいんです。簡単に替えが利かない専門技術だからこそ、一人ひとりに寄り添い、仕事人生の最後まで共に歩める企業でありたい。そう願っています」

daioukoukyuseizou_60.jpg入口正面には創業95年の歴史を振り返る大きな年表パネルが飾られています。

大きな設備投資が必要な鋼球製造ですが、その設備を動かし、製品に命を吹き込むのは「人」に他なりません。
昭和6年の創業から95年。世界から寄せられる厚い信頼は、技術を継承し、磨き続けてきた「人」の力そのものです。

最近では若手によるワーキンググループを立ち上げるなど、伝統を守りつつ新たな風も吹き込みはじめています。
「世の中の発展に役立つことを、一緒に働く仲間とつくっていきたい」と語る加治屋社長の眼差しは、共に未来を回し続ける従業員たちへ真っ直ぐに向けられていました。

「レアな存在」への好奇心。若い技術者が芦別を選んだ理由

続いてお話を伺ったのは、製造現場の最前線を担う前田和毅さんと高橋賢吾さんです。函館市出身の前田さんは入社8年目の28歳。紋別市出身の高橋さんは入社5年目の24歳。お二人とも、若くして「鋼球」の世界に飛び込みました。

高橋さんが担当するのは、ラッピングと呼ばれる最終の仕上げ工程。製品の品質を左右する極めて精密な研磨作業です。
高校3年生の就職活動中、紋別から180kmも離れた芦別の工場を実際に見学し、入社を決めました。

daioukoukyuseizou_10.jpgこちらが高橋賢吾さんです。

「鋼球という製品自体が珍しくて、純粋に興味を持ちました。幅広い用途があり、説明を聞くうちに『あ、これならずっと需要があるんだな』と実感して。正直、高校生なりの視点で『ここならつぶれなそう』と思ったんです(笑)。親や周囲にも相談しまして、最後は『この会社なら大丈夫』と考えて進路を決めました」

一方の前田さんも、高橋さんと同じく「珍しいことに挑戦したい」という好奇心がきっかけでした。

「高専在学中の就職セミナーで出会ったのですが、数ある企業の中でも『球を削る』という仕事はとにかくレアな存在でした。どこにでもある仕事ではなく、他にはない特殊な技術で尖っている。その個性に面白さを感じたんです」

daioukoukyuseizou_66.jpgこちらが前田和毅さんです。

「珍しいことをやってみたい」「他にはないレア感」。そんな真っ直ぐな好奇心が、お二人がこの地、この仕事へと踏み出す第一歩となりました。


オンとオフの心地よいリズム。抜擢を力に変えるプロのマインド。

実際の仕事や暮らしについて伺うと、そこには20代らしい健やかな日常がありました。
高橋さんの仕事は、1週間ごとに日勤と夜勤が切り替わるサイクルです。
「週末にしっかりリズムをリセットできるので、無理なく切り替えられています」と頼もしい答え。日勤の日は朝5時半に起き、ゆとりを持って準備をしてから8時に出勤。17時の退勤後は、買い物や同僚との食事を楽しみます。

取材をした4月下旬、ゴールデンウィークの予定を尋ねると「紋別に帰省します」と照れくさそうに笑う高橋さん。

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「親から『いつ帰ってくるの?』と連絡が来て。教えた以上は帰らないと(笑)」。180kmの道のりも、自らの運転で約4時間。「道内なら十分、移動圏内ですよ」と笑います。
きっと、久しぶりに顔を合わせるご実家では、充実した仕事の話に耳を傾けながら、高橋さんの元気な姿に安心されることでしょう。

一方、現在日勤で現場を支える前田さんは、入社7年目にあたる27歳の時に異例の若さでラッピング(研磨)部門の係長を任されました。そして、今春には課長というポジジョンに大抜擢されたのです。その穏やかな物腰の奥には、仕事に対するプロとしてのマインドがしっかりと感じられます。

「期待に応えたいという気持ちが強いですね。今は暮らしの中でも仕事に比重を置いて、しっかりと成長したい時期なんです」。
入社8年目、現場の核となる役割を担う前田さんは、自らの目標を真っ直ぐに見据えています。

daioukoukyuseizou_20.jpg全体の工程を管理する業務が今の前田さんの大切なミッションです。

そんな二人の生活を支えているのが、2LDKという広々とした社宅の存在です。
「職場まで徒歩10分程度ですし、住まいの補助は本当にありがたい」と口を揃えます。

芦別は旭川まで車で1時間、滝川や富良野へも30分ほど。買い物や遊びの選択肢も多く、休日の過ごし方にも不自由しません。
時には社宅の同僚同士、誰かの家に集まって「家飲み」を楽しむこともあるのだとか。個人の時間は確保しながらも、ふとした時に仲間と集まれる距離感。そんな社宅ライフが、彼らの充実した働き方を根底で支えています。

「答えがない」からこそ面白い。最後の精度を決めるのは、人の目

最後に、この仕事に向いている人について聞いてみました。
「やりがいを自分で見つけられる人、あるいは発想力がある人でしょうか」と前田さんは話します。

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「機械をどうすれば理想の状態にできるか考えたり、『こうしたい』と提案したり。会社にはそうした個人の気づきを発言しやすい風土があります。今回は僕ら男性二人がお話していますが、力仕事というよりは繊細な視点が必要な場面も多く、性別を問わず活躍できる仕事だと思います」

前田さんは自身の仕事を「答えがない仕事」と表現します。
時に起こる機械の不具合に立ち向かい、どうすればうまくいくのか、条件を考え続ける。試行錯誤の末に理想の「球」が生まれた瞬間、そこにこそこの仕事の面白さが宿っています。

均一な製品を安定して届けるためには、個人の感覚だけに頼らず、誰もが再現できる仕組みを整えなければなりません。
数値を管理し、顕微鏡で確認する。いかに視覚化し、客観的なデータを積み上げられるかが肝となります。

「それでも、人の目が最後の頼りなんです」
前田さんはそう力を込めます。全てのロットで均一な製品をつくる。一見、完全に機械化された世界に見えますが、実は「人の目」こそが品質を守る最後の砦。
その事実は、加治屋社長が語っていた「設備を活かすのは人である」という信念とも強く共鳴しています。

不具合に悩み、疑問を持ち、より良い仕事をしたいと願う。そんな一粒への誠実さが、95年の歴史を支え、これからの芦別の活気をも作っていく。一粒の鋼球に込められた物語は、今日もこの場所で、確かな手応えと共に紡がれ続けています。

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大旺鋼球製造株式会社 北海道工場
大旺鋼球製造株式会社 北海道工場
住所

北海道芦別市上芦別町118番125

電話

0124-23-0061

URL

https://www.daio-steelball.co.jp/

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世界に誇る、星の降る里の0.8mm。大旺鋼球製造

この記事は2026年4月24日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。