HOME>北海道で暮らす人・暮らし方>遠別町地域おこし協力隊「あらぴー&いむすけ」の等身大ライフ

北海道で暮らす人・暮らし方
遠別町

遠別町地域おこし協力隊「あらぴー&いむすけ」の等身大ライフ20260522

遠別町地域おこし協力隊「あらぴー&いむすけ」の等身大ライフ

「北海道のひだりうえ」にある遠別町。農業、漁業が基幹産業の小さな町ですが、どこかゆっくり時間が流れる心地よさを感じる町です。今回は、そんな遠別町で地域おこし協力隊として町の人たちと関わりながら2025年9月から活動している教育サポーター隊員 荒木隆宏さんと、2026年4月に着任したばかりのほやほや地域プロデューサー隊員の井村哲之将さんに遠別に来るまでの話や協力隊としての活動内容、遠別での暮らしなどを伺いました。また、協力隊と一緒に活動していく「NPO法人えんおこ」の代表理事で、協力隊の大先輩でもある原田啓介さんにも登場してもらいました。

子どもに関わる仕事がしたいと遠別へ。決め手は...?

まずは、荒木さんに協力隊になるまでの経緯を伺っていきたいと思います。札幌出身の荒木さんは、北見工業大学に進学し、卒業後はそのまま北見で就職。地域の酪農家向けの共済や保険の仕事に携わっていました。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_4.jpg「以前の生活は、どこか張りつめた気持ちを持っていたけど、遠別ではとてもリラックスできていると感じます」と荒木隆宏さん。

「5、6年働いていたのですが、結構忙しかったこともあり、一度リセットしたいと思って退職。大学時代に児童相談所のアルバイトをしていた経験があって、そのときから子どもや教育に関係する仕事に興味を持っていたこともあり、実家のある札幌に戻って児童会館で働くことにしました」

児童会館では放課後にやってくる小学生や中学生の見守りや遊びの指導、行事企画などを行っていました。午前中には未就学児や赤ちゃんの相手をすることもあったそう。

「子どもたちと関わるのはとても面白かったんです。でも、児童会館は臨時職員だったので任期を終えたあと、次の仕事を探さなければならなくて...。できたら子どもに関われる仕事がいいなと思っていたら、『こういうのがあるよ』と姉が教えてくれたのが、遠別町の地域おこし協力隊の教育サポーターだったんです」

20260424_enbetsu_kyoryokutai_6.jpg

そのとき、「実は遠別町のことは知らなかった」という荒木さん。とりあえず話を聞いてみようと連絡をしたら、対応してくれたのがNPO法人えんおこの原田さんでした。

「とりあえずお試し協力隊で来てみたらということだったので、6月中旬に初めて遠別を訪れました。最初はどんなところかなと思ってドキドキして行ったんですけど、3日間滞在して、自然も豊かで食べ物もおいしくて、ここなら暮らせそうと思いました」

荒木さんは札幌へ帰る時点で、協力隊に応募しようと決心。最終的に荒木さんを動かしたのは、「暮らせそう」ということよりも3日間で出会ったまちの人たちでした。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_13.jpgNPO法人えんおこ代表の原田啓介さん。みんなから「はらちゃん」と呼ばれ慕われています。

「これまで働いてきて思ったのは、仕事内容も大切だけど、結局は『人』だということ。どんな人たちと関わっていくかだと思うんです。初めて遠別を訪れたとき、町を案内してくれた原田さんや役場の人たちなど、皆さん楽しくて優しくて、このまちで働きたいと思ったんです」

原田さんは「実はこのとき、夜に飲み会を開いたんですけど、みんな楽しくなってお酒を勧めすぎちゃって、大丈夫だったかなと心配した」と苦笑しますが、荒木さんは「確かに二日酔いは酷かったですけど(笑)、楽しかったんです。それに、漁師さんからお土産にいただいた魚を札幌の料理屋さんでさばいてもらったら、店の人がものすごく新鮮でいい魚だねって言ってくれて、そんなすごいものをもらったんだと嬉しくなりました」と話します。

子どもたちに人気の「あらぴー」誕生

荒木さんがお試しで滞在中に出会ったのは大人だけではありません。まちを案内してもらった際に、工作や遊びを通して探求学習に取り組む「クエストラボ」にも参加。「子どもたちがすごく楽しそうでイキイキしていて、この子たちにまた会いたいなと思ったのも理由のひとつです」と話します。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_14.jpg「クエストラボ」での一コマ。みんな楽しそう!

そのとき、子どもたちが付けてくれたニックネームが「あらぴー」。協力隊として9月に着任した際も子どもたちは「あらぴー」を覚えていてくれたそう。

今は、えんおこで行っている学習塾の「えんべつ学びの場」の手伝いのほか、ボランティアで運営しているクエストラボやおもちゃ図書館のサポート、役場で子ども向けのイベントを行う際にはその様子を写真におさめるなど、スタッフとして活躍。遠別農業高校や小中学校の行事にも参加しているそう。

子どもに懐かれやすいタイプという荒木さんは、ほかの人には一切触らせないというまちの小さな子にも好かれているとか。どうやら子どもたちは本能的に「あらぴーはいい人だ」と感じているようです。

実際に遠別町で暮らしはじめてからの感想を尋ねると、「人口は少ないですけど、暮らし自体に不便を感じたことはありません。強いて言えば、地方は仕方ないと思うのですが専門的な医療機関が少ないことくらいかな」と話します。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_3.jpg

「札幌や北見に暮らしていたときに比べて大きく違うと思うのは、人との距離感。町のイベントも町の人がみんなで協力してやるんです。さらにみんな顔見知りだから、距離が近いんですよね。実は僕、人見知りなほうで、札幌や北見にいるときも積極的に人と関わるほうではなかったんですけど、こちらに来たら、関わるのが当たり前のような感じで...。最初は自分のようなタイプでもやっていけるかな、大丈夫かなと思ったんですけど、ちょうどよい距離感でいられることが分かり、今は居心地がいいんです」

イベントの手伝いに関してもみんなでやり遂げる達成感などが得られて、「結構楽しいんですよね」とニッコリ。「まちの広報誌に取り上げてもらったり、役場やえんおこの人がまちの人とつないでくれたりして、協力隊だからこそまちの人とも交流しやすいと感じています」と続けます。「あと、協力隊として活動するにあたって、原田さんの存在も大きいです。原田さんがいろいろ間に入ってくれるので助かっています」とサポートの手厚さも実感しているそう。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_21.jpg協力隊の活動のなかには、地元農家さんのお話を聞きに行くことも。こうして地域のみなさんに少しずつ知ってもらえるそう。

休みの日は、割と家でのんびりしていることが多いそうですが、「遠別の海から見る夕日は素晴らしいですね」と話します。「北見や札幌にいたときに比べると、まちの空気感が違うからか、気持ち的に張り詰めた感じがなくなって、いつもリラックスした状態でいられるんです」とにこやかに続けます。

今は「えんべつ学びの場」の運営の引き継ぎの最中。引き継いだあとは荒木さんが中心になって運営を行っていくそう。また、今はイベントのお手伝いが中心ですが、ゆくゆくは自分で企画したイベントを実施できたらとも考えていると教えてくれました。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_16.jpg小学5年生〜中学3年生を対象とした公設民営塾の運営のほか、楽しみながら学習する体験学習のサポートなど幅広い年代の「学び」に携われます。

農業高校と関われる環境を求め、たどりついた遠別町

次に、今年の4月1日に着任したばかりの井村哲之将さんに話を伺います。井村さんは道東の生まれですが、親が転勤族だったため、中学までは道外で過ごしたそう。高校進学の際に農業高校で学びたいと考え、単身、岩見沢農業高校へ。

「家庭菜園で野菜や植物を育てるのが好きで、専門的に学びたいと思って農業高校を探していました。当時茨城県に住んでいたのですがちょうどいい農業高校が近くになく、どうせ遠くに行くことになるなら、魅力的な北海道の農業を学びたいと岩見沢農業高校に進学しました。高校ではアスパラの研究をしていました」

卒業後は弘前大学へ進み、農村振興や農村・農業政策に興味を持った井村さんは農業経済を専門的に学びます。

「最初は卒業後に研究職に進もうと考えていたんですが、一度自分のやりたいことを考え直そうと思って、休学していたときにいろいろ調べていました。自分は農業高校で教えることができる教員免許も持っていたので、農業高校に関われるものを探したら、たまたま遠別農業高校と関われる遠別町の地域おこし協力隊を知りました。北海道に戻って暮らしたいとも考えていたので運命的だなと思いました」

20260424_enbetsu_kyoryokutai_5.jpg大学を卒業してすぐ遠別町の協力隊となった井村哲之将さん。休学中には世界を旅していたそうで、なんとオマーンにいた時に遠別町とオンラインで繋いで面談したそう!

すぐに遠別町に連絡をし、荒木さんのようにお試し協力隊を5日間経験。井村さんもまちの人たちと触れ合って、遠別の協力隊になろうと決めたと話します。

「農業の勉強をしてきた自分にとって、一次産業が盛んなまちで、農業高校の子たちと関われるというのもすごく魅力でしたし、荒木さんが言っていたように自分も地域の『人』との関わりがすごく大事だと考えていて、そういう意味では遠別の人たちが自分のやりたいと思っていることに対しても協力的で、助言もしてくれるのはありがたいと感じました」

着任からまだ1カ月ほど。これからチャレンジしたいこととは?

大学の卒業と同時に、地域おこし協力隊の地域プロデューサーというミッションで遠別町へやって来た井村さん。着任からまだ1カ月ほどしか経っていませんが、どのような活動を行うのでしょうか。

「具体的にやることが決まっているわけではなくて、今はまず地域のことを知り、皆さんと親交を深めるため、イベントの手伝いをしたり、サポートが必要なところにお手伝いに入ったりする感じです。それこそ原田さんにいろいろな人とつないでもらって、挨拶に回るなどしています。いろいろなことがこれからという感じですね。ゆくゆくは遠別農業高校との関わりに絡ませてもらって、高校生と一緒にいろいろやっていければと考えています」

20260424_enbetsu_kyoryokutai_23.jpg日本最北にある農業高校「遠別農業高校」では、生徒が羊(サフォーク)を飼育しており一貫生産することで「命の教育」をうけることができます。

移住してまだ日も浅いですが遠別での暮らしについて尋ねると、「これまでいろいろなまちに暮らしましたが、ほとんどが中都市、大都市だったのですごく新鮮です」と話します。「もともと田舎に暮らしたいという気持ちもあったし、道で会う人会う人、みんな知り合いみたいな感じが、自分としては温かみがあって、安心できる場所だなと感じています」と続けます。

まちの広報誌にはまだ登場していないということですが、それでも協力隊の人だと分かると、まちの人たちは興味津々で声をかけてくれるそう。

「原田さんがいろいろな人と会わせてくれるし、やってみたいことの相談にも乗ってくれるし、荒木さんもいるから心強いです」

20260424_enbetsu_kyoryokutai_11.jpg着任してまだ1カ月ですが、役場のみなさんとも顔なじみです!

ちなみに井村さんもクエストラボで子どもたちに「いむすけ」というニックネームを付けてもらったそうで、「これからまちの皆さんに『いむすけ』と呼んでもらえたらと思います」と笑顔を見せます。

温泉巡りが趣味という井村さん、「お試しで来たとき、原田さんに遠別町内の『旭温泉』に連れて行ってもらったんですけど、山の中で露天風呂が最高でした」と話します。これからは休みの日に道北の温泉を順に回っていきたいと考えているそう。

協力隊の仕事も新社会人としての生活も始まったばかり。「今はまだ手探りな感じですが、少しずついろいろ頑張ってやっていければと思います」と最後に話してくれました。

あらぴー・いむすけに続く新たな協力隊を募集!

実は遠別町では新たに地域おこし協力隊を募集する予定で、荒木さんと同じ教育サポーター、井村さんと同じ地域プロデューサー、そして観光コーディネーターの3つの職種での募集を考えているそう。遠別町の協力隊は今回ちょいちょい登場する原田さんが代表をつとめる「NPO法人えんおこ」の職員として活動することとなります。
<元協力隊・原田さんの記事はこちら>
えんおこは遠別町の協力隊と一緒に活動しながら、任期を終えたあとの受け皿としての役割も担っており、荒木さんと井村さんが「原田さんのおかげ」と何度も言うように、協力隊とまちの人たちの懸け橋となり、協力隊のサポートも行っています。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_19.jpgまちからも協力隊からも頼られる存在の原田さん!

観光コーディネーターについて原田さんに尋ねると、「この職種の協力隊がすでに2人いて、えんおこの職員として活動しています」とのこと。次に募集する人たちも同じ立ち位置で活動してもらう予定だそう。「具体的には、遠別の魅力を発信したり、SNSの整理をしてもらったりという感じですね。あとは、その人の特性ややりたいことをうまく絡めながら、観光を軸にどんなことができるかを一緒に考えていけたらいいなと思っています」と話します。今は役場の一部になっている観光協会の機能をゆくゆくは独立させられたらとも考えているそうです。

「個人的に思っているのは...」と原田さん。「遠別って、基本的に観光客はほとんどいないんです。なので、観光客をどうやって呼ぼうとか、規模は小さくていいんですけど外向けのどんなイベントをやればいいかなどを一緒にアイデア出しからやってもらえたらと。正直自分も観光のことをやりたいんですけど、今いろいろやることがたくさんあって、そこまで手が回らず...」と苦笑します。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_20.jpg毎年夏に開催される「遠別神社例大祭」。継承されてきた遠別町の文化も大切な観光資源のひとつです。

どんなタイプの人に来てほしいかの問いには、「シンプルに人付き合いができる方であれば十分。あらぴー、いむすけとも仲良くやれる人かな」と話します。

せっかく遠別に来るなら、ここで経験を積んで挑戦してほしい

のんびりのどかな雰囲気が漂いつつ、農業や漁業という太く強い産業があり、どっしりした印象の遠別町。それはまちの人にも感じられ、以前、原田さんや町長の取材をした際も2人に強引なイメージはなく、どちらかと言うと控えめだけど軸があるという印象でした。
<遠別町・國部町長の記事はこちら>

「僕も町長もそうなんですけど、職種に関係なく協力隊の皆さんには『これをやってほしい』というより、任期中はせっかく遠別に来たんだから、いろいろなことを経験し、やりたいことにチャレンジをしてほしいと考えています」

そう言える原田さんや町長の懐の深さに感心していると、荒木さんが「気楽にやったらいいよと原田さんに言ってもらえたことがとても印象に残っています。自治体によっては過度に期待されたり、プレッシャーをかけられたりすることもあるようなので、自分としては遠別がそういうまちじゃなくて良かったと思っています」と教えてくれました。

20260424_enbetsu_kyoryokutai_22.jpg北海道内のさまざまな拠点でまちおこしをしているたくさんの人たちとも繋がりがある原田さん。顔が広い!

原田さんは、「前の取材でも話したと思いますが、遠別は人口が少ない分、仕事の『隙間』がめちゃくちゃあるんです。だから、やれることもいっぱいあって、都会だと埋もれてしまうような才能も生かせるし、一人ひとりの持っている能力を輝かせることができると思っています」と話します。

やってみたいことがあるけれど一歩踏み出せないという人、環境を変えて新たなことにチャレンジをしてみたいという人は、遠別町の地域おこし協力隊を検討してみてはどうでしょう。大らかな原田さんをはじめ、荒木さんや井村さん、そして楽しいまちの人たちが待っていますよ!

関連動画

移住交流支援センター NPO法人えんおこ
住所

〒098-3543 北海道天塩郡遠別町字本町2丁目 移住交流支援センター「ぴーぷる」内

電話

01632-9-7151

URL

https://www.town.embetsu.hokkaido.jp/index.html

GoogleMapで開く


遠別町地域おこし協力隊「あらぴー&いむすけ」の等身大ライフ

この記事は2026年4月24日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。