ひまわりで知られる北竜町。その作付面積は日本一を誇り、開花時期には、一面に咲き誇るひまわりを見るために多くの人が訪れます。また、肥沃な土地と豊かな水資源を生かした稲作も盛ん。特産品の中にはスイカやメロンもあります。
そんな北竜町は、昨年、国の地方創生政策「地方創生2.0」のもと創設された「新しい地方経済・生活環境創生交付金」で、全国でもトップクラスの金額の交付金事業が採択されました。人口1,500人ほどの小さな町をひとつの経営体として捉え、町民総参加で7つの柱の施策を一体的に進めていこうという事業です。
今回は、「交付金が採択されてから、みんなの意識が大きく変わったと思う」と話す、北竜町教育委員会の宮崎芳希さんにインタビュー。地方の町で公務員として働くことの面白さや魅力などを伺いました。
北竜町の人はみんな温かく、子どもから高齢者までイベントの参加率も高い
取材日はあいにくの雨模様でしたが、「こんにちは!」とさわやかに登場した宮崎芳希さん。北竜町教育委員会で生涯教育に携わる仕事をメインに、小中学校のICT導入・活用に関する業務も兼務しています。
「生涯学習の中でも、自分が担当しているのは主に社会体育。町民の方たちに向けたスポーツイベントやレクリエーションの企画から運営までを行っています。たとえば、町内のコースを歩くフットパスのイベントや、子どもと高齢者の交流を深める餅つき大会など。今日の夜もフロアカーリング大会を行う予定なんですよ」
過去にはJALと折り紙飛行機のイベントを行ったこともあるそう。
北竜町教育委員会の宮崎芳希さん。
「折り紙飛行機のときのように民間企業と一緒にできることをもう少し増やせたらと考えています。できれば町内の企業と何かできたら、町の活性にもつながるのではないかなと思案しているところで、これは僕の課題でもあります。ただ、北竜町はほかの町に比べ、こういう事業やイベントの数がすごく多いほうなんです。さらに参加率も高いのが特徴。そして、町の人たちはみんな仲がいいんですよね」
2カ月に1回ほど、町の高齢者と小・中学生が交流するイベントの際も、高齢者と子どもたちがとても仲良くしているそう。
「子どもたちもですが、高齢者の方たちのコミュニケーション力も高いんですよ。それは僕も感心します。僕自身、教育委員会に配属になって2年なのですが、事業を通じて町の高齢者の方たちと触れ合う機会が増え、皆さんのフレンドリーさというか、受け入れてくれる器の広さに助けられています。温かい人が多いんですよね。また、現時点(令和7年3月)で町の小学生は61人、中学生は25人いるのですが、小学生と中学生も仲がいいんですよ。小さいころから一緒だからなのか、放課後に小学生と中学生が混じって楽しそうに遊んでいるのを見ると、いい光景だなと感じます」
隣の町から北竜町の役場へ。2年前に念願叶って教育委員会へ異動
現在25歳の宮崎さんは隣町の雨竜町出身。小・中学校を雨竜で過ごし、高校は滝川に通っていました。高校を卒業後、北竜町役場に入り、総務課、出納係を経て、教育委員会へ。
「母が雨竜町の教育委員会に勤務していたことがあって、その背中を見ていたせいか、仕事のイメージがつきやすくて公務員試験を受けました。試験を受けるときは母がまだ雨竜町役場にいたので、一緒じゃないほうがいいかな...という感じで隣の北竜町を受けたんです」
実は道職員の試験も受け、合格していましたが、「転勤でいろいろな市町村へ行くのもいいかなと思ったんですけど、ひとつの町に根を張り、深く掘り下げていくのも面白そうだなと思って、北竜町役場に入りました」とニッコリ。隣町ではありましたが、北竜町には知り合いも親戚もいないこともあり、訪れるのは「ひまわりまつり」のときくらいでしたが、町の規模感が雨竜町と似ていて親近感を感じたのも役場に入るきっかけになったとのこと。
きっかけは1979年。当時の農協職員だった四辻進さんが、研修先のヨーロッパで見たひまわり畑に感動し、「これからの農業は『見て楽しむ』要素も必要だ」と、一握りの種を持ち帰ったことから始まりました。最初は農協の若手職員たちが手探りで栽培を始め、それが次第に町全体を巻き込む大きな運動へと発展していきました。(写真提供:北竜町)
もともと子ども好きということもあり、役場に入ったときから教育委員会を希望していたという宮崎さん。2年前に念願叶って、教育委員会に配属されました。役場の教育委員会というと硬いイメージもありますが、職場におじゃますると、同じ生涯学習を担当する岸直樹係長と冗談を言い合うなど、和気あいあいとした和やかな雰囲気。ちなみに8つ年上の岸係長は、宮崎さんと同じ年に社会人枠で役場に入った同期なのだそう。
そんな宮崎さんですが、役場に入ってすぐのころは「公務員=安定、公務員=お堅いというイメージでしたね」と振り返り、決められたことを淡々とこなす感じで仕事をしていたときもあったと言います。
宮崎さんの中で仕事への向き合い方に変化が起き始めたのはここ数年。教育委員会へ配属されてからというのもありますが、「町自体が変わり始めたのが大きい」と話します。
新卒で入職した宮崎さんと、8歳年上で社会人経験を持つ岸係長。年齢も歩んできた道も違うけれど、二人は同じ日に北竜町役場の門を叩いた『同期』です。迷った時は人生の先輩として、現場では同じ志を持つ仲間として互いを高め合う二人の絆が町を支えています。
大きな事業構想が動き出し、町にも変化が。忙しいけれど、毎日が楽しい
地方の町の大半で課題となっている人口減少や高齢化。北竜町でも大きな課題となっていました。ほかにも産業構造の偏りや若い世代にとって魅力ある町づくりができていないなど、さまざまな課題が山積していました。
その解決に向け、町をひとつの経営体に見立てた「北竜ひまわりホールディングス」という概念を作り、子どもから高齢者まで町民総動員で課題解決に向けた取り組みを進めていこうという動きが起こりました。
「昨年、この事業構想に対して大きな金額の交付金が採択されました。これを機に、僕も含め、職員の意識もいい方向に大きく変わったと思います。新たな取り組みに関して柔軟にアイデアを出す機会が増え、今は若い職員を中心に、さまざまな部署からメンバーを集めてチームを作り、いろいろな取り組みを行っています」
部署の垣根を越えたチーム編成が、役場に新しい風を吹かせています。普段は交わらない他部署のメンバーと対話を重ねる中で、自分ひとりでは辿り着けなかった『北竜町の新たな魅力』を再発見する毎日だそうです。
部署を横断するチーム編成により、これまで接点のなかった部署の人と話をすることが増え、新しい気付きもたくさん得ているそう。また、さまざまな立場からの意見が聞けるので、町を多角的に見られるようにもなったとも言います。
「若い人だけでなく、年配の先輩の中にも『実はこんなことを考えていた』とアイデアを持っている人はたくさんいて、これまでそれを表に出す機会がなかっただけで、実はみんなが町のことをすごく考えているということも分かりました」
宮崎さんは、共創チーム、タスクフォースチーム、「ひまわりの里」の冬の有効活用の3チームに所属しています。ひまわりの里というのは、200万本近いひまわりが咲く東向きの斜面の丘のこと。
「共創チームでは、庁舎内の空いているスペースにリラックスルームを造ろうと動いています。もう工事もはじめていて、その空間に町で林業と木工をしている上井達矢さんが手掛けた白樺のライトなどを置こうと計画しています。あと、タスクフォースチームでは、役場の中の無駄をなくそうと一つひとつ精査しているところです。ひまわりの里の冬の活用に関しては、スノーシューを履いて丘を上がって町を一望できる眺めを堪能してもらおうと考えているほか、ゆくゆくはスノーパークのようなものを作ろうと話しています。あと、長期的な計画では熱気球を上げて北竜の町を上空から見てもらおうという企画もできていて、町長へのプレゼンも終わったところです」
北竜町役場は、今まさに進化の真っ最中。だからこそ、仕事がめちゃくちゃ面白いんです!前例がないことに挑む楽しさ、部署を横断して生まれる新しい繋がり。この場所には、若い感性を必要としているフィールドが無限に広がっています。
ひまわりの里の活用に関しては、本州にある民間の会社に伴走してもらっており、「外からの視点の大切さも勉強になりました。この辺りは雪が多く、大人になってからは除雪が大変で、雪はやっかいものというイメージしかありませんでした。でも、本州の人からするとこの雪が観光資源になると聞いて、新しい発見でした」と話します。
通常の仕事もこなしながら、各チームの取り組みも行っているということですが、「すごく忙しいんですけど、すごく楽しいんです!」と、とびっきりの笑顔。
「大変なこともあるし、ヘトヘトになる日もありますけど、それ以上にみんなで町をよくしていこうという動きに自分ごととして関われているのが楽しいんですよね」と話します。テンポよく話すその口調からも充実ぶりが伝わってきます。
「僕自身が以前そう思っていたように、公務員の仕事はお堅くて、面白味に欠けると思う人もいるかもしれませんが、今の北竜町役場にいたら、そんな風には思わないと思います。部署も技術職の壁も超えて、職員みんなで同じ方向を向いて、町のために動いている真っ最中。公務員だけど、こんなにいろいろなことにチャレンジできるのは地方の小さな町だからこそと思います。大きな市町だと職員の数も多いし、こんなに意見も聞いてもらえないと思うんです。町づくりや町の活性化に関わりたい人や新たなやりがいを求めて転職を考えている人がいるなら、一般職であろうが、技術職であろうが、今がチャンスだと思います」

これからは町民のやりたいことを掘り起こし、町民主体の町にしていきたい
仕事だけでも多忙な宮崎さんですが、実は少年野球の監督も務めています。チームは、北竜町、雨竜町、妹背牛町の合同チーム「北空知JBCエンジェルス」。北竜町の子は3人所属しているそう。
「北竜町に来てすぐのころ、元の監督に呼ばれて見学に行ったら、その場でいきなり『コーチの宮崎さんです』と紹介されて(笑)、そのままコーチに。その後、元の監督が転勤で北竜町を去ることになり、僕が監督にという流れです。でも、子どもも好きだったので、楽しくやらせてもらっています」
監督と言っても、子どもたちと年齢が親ほど離れてもいないため、「兄弟のような感じで接していますね」と笑います。ワイワイと子どもたちに囲まれている様子が目に浮かびます。
「野球が好きで、僕も小学校から高校までやっていたんですけど、どちらかと言うと自分が野球をやるより、人に教えるほうが向いていると思っていて。今は子どもたちと過ごすのがとても楽しいです」
仕事に、野球に、多忙ですが、ゆっくりできる日はあるのかと尋ねると、「合間を見てリフレッシュしていますよ」と宮崎さん。カフェでコーヒーを飲むのが好きで、時間があれば町外のカフェに足を運ぶこともあるそう。
「残念ながら北竜町にはそういうカフェがないので、カフェができたらいいのにな...と思います。僕以外にもそう思っている人多いんじゃないかな?需要はあると思うんだけど。副業できるなら自分でやりたいくらい」と笑います。
北竜門は、「道の駅サンフラワー北竜」の入口にある、2頭の龍が向かい合う印象的な中華風ゲートです。町の守護神とされる「青龍」が鎮座しており、温泉やホテル、名物のひまわり畑観光の拠点となるランドマークです。(写真提供:北竜町)
町全体が大きな転換期を迎えている北竜町、それこそカフェをやりたいという人が現れそうな予感も...。
「そうですね。チャレンジしてみたいという人はいるかもしれませんし、移住してやってみたいという人もいるかもしれませんね。これからは、こういうことも含め、もっと町民のやりたいことの掘り起こしをしていきたいです。そして、役場の人間としてそれを叶えるためのサポートをしっかりしていきたいと思います。一番の理想は、人口も店も増えて、町が活気づくことですが、現実的に難しいことも分かっています。でも、それぞれの顔が見える小さな町だからこそできることを考え、町民一人ひとりに役割があり、一人ひとりが主役である町民主体の町になればすごくいいなって思っています。町民のだれかだけがすごいのではなく、あの人もこの人もすごいんだという町を作っていけたら、町の人にもいいことだし、周りからも一目置いてもらえるんじゃないかなと思います」
宮崎さんの話を聞いていて、北竜町にはいろいろな可能性が眠っていると感じました。宮崎さんのような熱意と意欲のある若い役場の人たちが、町の人たちと一緒にどんな北竜町を築いていくのか、これからが楽しみです。
「教育委員会としても野球少年団としても、一番大切にしたいのは子どもたちが主役であることです。この時期に養われる心の土台が、将来の彼らを支えます。一人ひとりの成長に寄り添い、自分で判断し行動できる力をじっくりと、土台から丁寧に育んでいくお手伝いをしたいと思っています」と最後に語ってくれました。

- 北竜町教育委員会
教育課生涯学習推進係兼新しい学校づくり推進室推進係 - 住所
北海道雨竜郡北竜町字和10番地1
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