札幌と旭川の中間に位置する北海道滝川市。石狩川と空知川という大きな川が交わる平野に町が広がり、稲作も盛んです。日本有数の作付面積を誇る菜の花畑や、グライダー愛好者が集まるスカイスポーツの拠点としても知られています。
空知管内のほかのまち同様に滝川も豪雪エリアですが、地元の土木建設業者の皆さんがしっかり除雪を行ってくれるので、冬の間も暮らしで不自由を感じることはありません。
今回は、そんな除雪も担っている株式会社新谷組へおじゃましました。滝川市内でさまざまな事業を展開している北星グループの一員でもある新谷組。代表取締役社長を務める藤森雅雄さんに会社のことなどを伺いました。
砂利の販売から始まった会社。令和元年から北星グループに仲間入り
「新谷組は、もともと個人で砂利の販売をしていたのが始まりです。砂利の運搬に必要だからとダンプによる運搬業務もはじめ、さらに土木工事も担うようになりました。滝川では昔から除雪作業や土木工事を手掛けていたので、まちの人たちも名前はよく知っていると思います」
会社の成り立ちをにこやかに教えてくれる藤森社長。正式に社長に就任したのは昨年なのだそう。
㈱新谷組の代表取締役社長を務める藤森雅雄さん。
「新谷組は、令和元年にM&Aで北星グループとなりました。私自身は、もともとグループ内の居林建設工業で長らく土木建設業に携わってきました。今は砂川にある同じ北星グループのマル星運輸の代表も兼務しています」
滝川市に拠点を置く北星グループは、タクシー事業からスタートし、現在はフランチャイズ事業、不動産賃貸事業、介護福祉事業、土木建設業、ダンプ輸送や自動車整備業、保険代理店業など、幅広く事業展開を行っている一大グループ。フランチャイズ事業では、びっくりドンキーやTSUTAYAなどのフランチャイズを手掛けています。地域に根差し、滝川の人たちの暮らしを幅広く支えているグループです。
北星グループの中で、土木建設分野、ダンプ輸送分野に従事してきた藤森社長は、「新谷組のM&Aもそうですが、まちの人口が減っていく中で人々の暮らしに密着しているインフラに関するものは誰かが引き継いでやっていかなければなりません。グループの一員になることで、1社ではできなかったこともできるようになるなど、スケールメリットはあると考えています。たとえば、私が代表を務めている2つの会社(砂川のマル星運輸と新谷組)のダンプの所有数を合わせると14、5台になります。空知エリアでこれだけのダンプの数を抱えている会社になりますので、大型工事の案件にも関われるというメリットは十分あります」と話します。
敷地内にずらりと並ぶショベルカーなどの重機と青いダンプカーです。新谷組では、北星グループの他企業と合わせると空知エリアでも有数となる14、5台のダンプを所有しています。このスケールメリットを活かし、砂利の運搬や大型土木工事、除雪作業など幅広い業務に対応しています。
新たに始めた林業。冬場の仕事を確保でき、従業員の通年雇用も可能に
土木工事、ダンプ輸送を主に事業を行っている新谷組ですが、21年前から新たな事業として林業にも着手。立木の伐倒、枝払い、玉切りなどを一台で行えるハーベスタと呼ばれる高性能の林業機械を導入するなど、少しずつですが規模を大きくしていけるように取り組んでいるそう。
「平成17年頃、土木工事を通じて知り合った指導林家に勧められたことをきっかけに、苗木の植え付けや下刈りから林業を始めることになりました」
山での伐倒作業については、従業員にチェーンソーの講習を受けてもらうなど必要な技術習得を図りました。一方で重機に関しては、土木工事で大型機械の扱いに慣れた従業員が多かったこともあり、比較的スムーズに導入することができたそう。

「その後、林業機械であるグラップルやハーベスターを順次導入し、間伐や皆伐にも対応できる体制を整えました」
これまで土木工事の通年雇用が難しかった従業員もいましたが、冬に林業の仕事ができるようになったことで、数名が通年雇用に切り替えられたそう。
「ハーベスタを導入したことでこなせる仕事量が大幅に増えたので、林業を軌道に乗せて、全員を通年雇用できるようにしたいと思っています。社会インフラに携わっている以上、事業をきちんと継続させていくことが大切。そのためには従業員が安心して年間通して働ける環境を整備していくことが重要だと考えています」
また、新谷組が林業に携わる上で大きな強みがあるそう。
「山に入って伐倒する前に、まず林道を造る仕事があるのですが、うちの場合は公共事業としても森林土木工事を自社で施工できるので、これらを一貫で行うことができるのはほかにはない強みですね」
ゆくゆくは、伐るだけでなく、植栽から携われるようになれればとも話し、「林業というジャンルも新谷組の事業のひとつに加えて定着させていきたいし、その専門の人材も育成していきたい」と構想を語ってくれました。

AI導入などで働きやすい環境を整備。現場経験があるからこそ分かることもある
「従業員が安心して働ける環境を」という話が出ましたが、新谷組では現場の業務効率化のため、DX化を進め、AIの導入も取り組んでいる真っ最中だそう。
「この春からダンプのほうで、国交省が認可している運行管理チェックのAIを導入しました。ダンプの仕事は、必ず運行管理者が点呼して管理チェックしなければならないのですが、うちの場合は早朝や深夜の仕事もあるため、点呼のために朝と夜に運行管理者を1人置いておくのが厳しく、早朝や夜はAIで自動点呼ができるようにしました。ただ、すべてAIとは考えていなくて、やはり顔と顔を合わせてコミュニケーションを取ることも大事だと思っているので、必要に応じて今まで通り運行管理者が点呼を行っています」
このほかにも働きやすい環境整備に向け、動いていきたいと藤森社長は話します。
従業員がモニターに向かい、導入されたばかりのAI自動点呼システムを利用している様子です。早朝や深夜の業務における管理者の負担を減らすため、国土交通省認可のAIを導入し業務効率化を図りました。一方で必要に応じて対面での点呼を残すなど、最新技術と人間味あるコミュニケーションをバランス良く取り入れています。
「新谷組の社長になってまだ2年目なので、これから就業規則や賃金、手当などの部分も改善できることは積極的に改善していき、従業員がやりがいを持って安心して働ける職場にしていきたいですね。あわせて人材育成や人材確保もしっかり行っていきたいです」
藤森社長の名刺に「1級土木施工管理技士」と記されていたので、もともと現場にいた方なのかと思いきや、「入社したときは経理事務だったんです」と笑います。
北海道川上郡弟子屈町生まれの藤森社長は、父親が道庁職員で転勤が多かったため、子どもの頃は紋別市などで暮らしたこともあったそう。中学時代から滝川に移り、大学に進学し、卒業後は北星グループへ。
「父親が土木部だったので、建設や土木は身近ではありました。ただ、転勤がイヤだったので道庁職員を目指さず、地元に根差した北星グループへ入社し、建設や土木の会社に配属してもらいました。最初は総務で経理をやっていたんですけど、私が入社した頃はまだ会社の規模が小さく、人手が足りないと現場にいつも借りだされていました」

ショベルの免許を取りに行くように言われ、冬になったら土場の除雪や、砂利をダンプに積む仕事を任されることもよくあったそう。さらに水道工事も人が足りないときは手伝いに行くようになり、そのうち一人で水道修理もできるように。水道管の敷設時も呼ばれて現場へ行くと、スコップで道路を掘るように言われたこともあったと笑います。
「事務をやりながら現場のことも経験させてもらって、今となっては結果として良かったと思っています。ただね、お正月に当番で出ていたときに、水道管が凍結したって連絡がきて、猛吹雪の中で工事したときは辞めようかなと思いましたけどね(笑)。でも、こうした現場の経験があるからこそ、現場で働く従業員の気持ちも分かるし、経理として数字も見てきたから経営のことも分かるのが自分の強みかなと思います。この経験を生かして、少しでもみんなが働きやすい環境を整え、売上もきちんと上げていけるようにと考えています」
写真撮影時、急なお願いにも関わらず従業員の皆さんが快く応じてくださる様子を見ていて、会社の中の風通しの良さを感じました。現場のことが分かっている藤森社長だからこそ、従業員の皆さんにも寄り添えるのでしょう。和気あいあいとした雰囲気がとても印象的でした。
美しい雪原と山並みを背景に並ぶ、新谷組の皆さんです。急な撮影のお願いにも快く応じてくれるなど、社内の風通しの良さと和気あいあいとした雰囲気が伝わってきます。除雪作業をはじめとする土木工事を通して地域のインフラを守りつつ、新たに林業にも参入し、従業員が通年で安心して働ける体制づくりを進めています。
暮らしやすい滝川の魅力を発信して、移住者を呼び込みたい
人手不足が顕著な土木業界、新谷組もそれは同じ。少しでもそれを打破するため、藤森社長は「土木や建設、林業の経験がある移住者をまちへ呼び込み、新谷組で働いてもらいたい」と考えているそう。経験がなくとも興味がある人であれば未経験でももちろん歓迎すると話します。
「北海道という場所は本州の人にとって魅力的だと聞きます。湿度が少なくて涼しいし、食べ物もおいしいし、ウインタースポーツをする人にとっては最高の場所ですよね。そして、広い北海道の中でも、自然豊かな場所で子育てをしたい人にとって、滝川はすごくいい場所だと思うんです。この近隣の自治体の中ではまちの規模も大きいし、高校も3つあるし、大手のチェーン店系の店もひと通りそろっています。歩いて行ける範囲に必要最低限のものはほとんどそろいますしね。旭川や札幌もそう遠くはないですし、田舎すぎないのがポイント。暮らすのにはちょうどいいまちだと思うんですよね」
去年、北星グループが運営しているTSUTAYAにスタバが入り、地元にもスタバができたと周りはみんな喜んでくれているそうで、「うちの娘もアルバイトしています」と笑います。

「移住の人は住む場所、家やアパートの心配もあるようですが、うちはグループで不動産賃貸業をやっているので、その辺りも心配無用。本当は市と一緒にタッグを組んで、滝川の魅力を発信し、移住促進に関することもできたらと思ってはいるのですが...」
長く滝川に暮らし、地域の発展に尽力している北星グループで活躍してきた藤森社長。人口減はすぐには止められませんが、地元の企業としてこれからもできることを取り組みたいと考えています。そんな藤森社長、休みの日には自宅の庭で焚火を楽しむそうです。
「庭の目の前に田んぼが広がっていて、その後ろにはピンネシリの山が見えるんです。その眺めはいくら見ていても飽きないし、夜は星がキレイ。住宅街は静かなので、そんな中で焚火の炎を見ていると癒やされます。いつも当たり前のように暮らしていますが、あらためて考えてみると、キャンプ場にわざわざ行かなくても家の庭で焚火ができるなんて贅沢ですね。こういうところが滝川の魅力でもあるのかな」
取材を終え、新谷組の事務所の外に一歩出ると、目の前には素晴らしい山並み。周りを山に囲まれている平野ならではのロケーションです。毎日こんな眺めを見ながら生活できるなんて!と少し羨ましく感じました。
















