HOME>このまちのあの企業、あの製品>東川の暮らしと地続きのシゴト。株式会社藤田組

このまちのあの企業、あの製品
東川町

東川の暮らしと地続きのシゴト。株式会社藤田組20260402

東川の暮らしと地続きのシゴト。株式会社藤田組

北海道のほぼ中央、旭川市からクルマで20〜30分ほどの距離に位置する東川町。大雪山系の山々を望み、その自然の恩恵から上水道を持たず全世帯が「天然水」で暮らす全国でも珍しいまちです。写真文化を軸にしたまちづくり、丁寧な移住サポート、そして「ここが好きだ」という共感を何より大切にした施策によって、移住者が次々と「定着」していることでも知られています。

ここ東川町で昭和24年に創業し、地域のインフラを支え続けているのが株式会社藤田組。「スローに働いているうちに、自然とこのまちに貢献できる」という移住者にとっても耳寄りなキーワードについて、まずは代表取締役の藤田裕司さんに語っていただきます。

地域の小さな声に応え、丁寧に施工する東川らしいペース感

旭川市街からのどかな田園風景を走り、東川町のカントリーサインを越えてほどなく、藤田組の社屋が見えてきました。建設会社の代表というと失礼ながらイカツイ人物像を思い描いていましたが、「ようこそ」と出迎えてくれた藤田さんは実に柔和な笑顔。やさしい人柄が表情からも見て取れます。

「当社の仕事は道路の補修や橋の架け替え、河川の整備といった公共工事がメインです。少し特徴的なのは水力発電所の維持管理として水の通り道を整える他、大がかりな農業土木ではなくても、地域の農家さんの依頼からあぜ道を補修することもあります」

このようにまちの小さな声にも応えることで信頼関係を積み重ね、地域に貢献することも大切にしていると笑います。とはいえ、建設の世界ではあちこちに出張するのが通説。東川エリアの工事ばかりではないのでは...。

033_fujitagumi.jpgこちらが、株式会社藤田組 代表取締役の藤田裕司さん。

「上川地方といっても北は中川町、南は占冠村まで広範囲です。昔は遠くの工事を請け負うこともありましたが、社員にとって宿泊を伴う出張は負担になります。その軽減のためにも、ここ最近は町内や旭川、遠くても富良野というように敢えてエリアを絞っているんです」

さらに、同社は冬場でも仕事を確保しているため、建設会社にありがちな除雪作業を請け負うこともありません。夜間の急な呼び出しなどがないことも社員には好評です。

「当社が手がける工事は都市部とは違って周りに何もない場所が多く、大らかに仕事が進められるのもポイント。丁寧な施工を心がけているため、『これだけ利益を出さないと』と急かすこともありません。都会の建設会社よりも時間やプレッシャーに追われることなく、目の前の現場に集中できるところも、東川らしいペース感だと思います」

188_fujitagumi.jpg建設現場や測量現場で使用される最新鋭の計測・測量機器です。

10年がかりでも一人前へ育んでいく、「スローな教育」

藤田組のもう一つの大きな特徴が、人材育成に対する姿勢です。例えば、工事のまとめ役となる施工管理の仕事は、写真の撮り方から始まり、資材管理、測量、そしてコスト管理へと段階を踏んで覚えていくもの。藤田さんはその道のりをこう表現します。

「施工管理は10年、20年かけて、中小企業の社長に匹敵するスキルがようやく身につくもの。2〜3年で結果を出せというのは無理な話ですし、そういうつもりもありません。最初の1年は何が何だかわからないまま終わってもそれで十分。10年がかりでじっくり育てていくのが当社のスタイルです」

資格取得は会社の費用負担でサポートし、先輩が常に横でフォローできる体制が整っているからこそ「失敗する前」にリカバリーできるのも安心につながるとか。実際、施工管理の鈴木涼太さんは入社から7年で2級土木施工管理技士を取得し、今では単独で現場を担当するまでに成長しました。

091_fujitagumi.jpgこちらが、施工管理者として活躍している鈴木涼太さん。

「とはいえ、分からないことだらけなので、まだまだ先輩に手取り足取り教わりながらです。一人立ちとは言えないかもしれませんね(笑)」

急かさない、比べない、それぞれのペースを尊重する。そうした姿勢が社員の長期定着にもつながっているのでしょう。

オペレーターとして勤続15年目を迎える中島淳さんは「人間関係に悩んだことは正直ありません。冗談を言いながら助け合える雰囲気が、長く続けられている一番の理由ですね」と表情を緩めます。

143_fujitagumi.jpgこちらが、オペレーターとして勤続15年目を迎える中島淳さん。

社員が地域のお祭りで氷の滑り台をつくる手応え

「人間の集中力はそんなに長く続きません。8時間の間で集中すれば、9.5時間分の仕事はできるもの...これ、精神論ではないですよ(笑)」と笑う藤田さん。この考えのもと、完全週休2日制・残業少なめの環境を整えてきました。

働き方改革の法改正が後押しになった面もありますが、藤田さん自身は「制度が変わる前から、無駄を省けば8時間でも十分だと思っていました」と話します。子どもの運動会や平日の参観日への参加も柔軟に対応。

「保育園のお迎えに妻が行けない日は、自分が有休を取ることも少なくありません」と語るのは施工管理サポートの佐藤侑斗さん。前職は配送業と飲食店で、家族との時間がなかなか取れなかったとか。

120_fujitagumi.jpgこちらが、施工管理サポートの佐藤侑斗さん。

「土日が固定で休めて、給与も上がりました。言うことなしです」と笑顔を見せます。

こうした働き方のゆとりは、社員が地域の活動に参加する余裕にも直結しています。毎冬開催される「ひがしかわ氷まつり」では、会場の除雪から氷の滑り台づくりまでを藤田組も担当。佐藤さん自身も今年初めて参加し(土曜日出勤の分は平日に振替!)、「子どもたちが喜んでくれる姿を見て、純粋にうれしかったです」と語ります。

仕事の現場ではなく、地域のお祭りの場でも「自分たちがつくった」という手応えを感じられるのは、東川という小さなまちならではの経験です。

128_fujitagumi.jpg全週休二日制(土日休み)の「働きやすさ」と、未経験スタートでもゆっくり着実にキャリアアップできる「成長」環境。資格の勉強は社内で行うこともでき、プライベートを大切にしながら資格取得を目指せます。

インセンティブだけに頼らない、「共感」を大切にした移住施策

藤田組のような地域と社員を大切にする企業の存在は、まちにとってどのような意味を持つのでしょうか。東川町企画総務課の藤井貴慎さんに取材のマイクを向けました。

このまちの移住推進スタンスは少々ユニーク。自治体による補助金や助成金が移住の目玉施策となるケースも多い中、あえてその方向に進まない理由をこう語ります。

172_fujitagumi.jpgこちらが、東川町企画総務課の藤井貴慎さん。

「私たちが大切にしているのは『共感』という言葉です。東川町には都会のように何でもあるわけではありません。けれど、美しい自然が広がり、ゆとりがあって、おいしい水が飲めます。そういう暮らしが自分にとって幸せだと本気で思ってくれる方に来ていただけると私たちもうれしいです。このまちが好きだという共感が、長く暮らしてもらえる一番の要因だと思っています」

その言葉通り、東川町への共感をベースに移住してきた人々は、まちへの定着率が高いのだとか。移住相談窓口を充実させ、住まいや学校、生活に関するさまざまな不安に寄り添う体制も整える中、移住後もまちのことを知り続けられる「住民バスツアー」といった仕組みが用意されているのも特徴的です。

「強制的に来てくださいということではなく、このまちで夢が叶えられるかもしれないと思ってくれた方の夢を叶えるお手伝いができれば」と藤井さんは話します。

177_fujitagumi.jpg東川町での暮らしの根底にあるのは、まちの価値観への「共感」です。都会的な華やかさや多機能さはありませんが、美しい自然環境や良質な水、そして精神的なゆとりといった、この土地ならではの豊かさがここには存在します。

移住者の働き方も、カフェを開く人、フリーランスとして活動する人、そして地元の企業に就職する人など多種多様。どんなかたちであれ、このまちが好きだという気持ちが根っこにあれば、自然と居場所ができていくと藤井さんはお話しします。

「例えば、建設業という雇用の受け皿があることで、技術や経験を持った方が移住後すぐに力を発揮できる場合も多いでしょう。藤田組さんのような会社が地元にあることは、まちの人口を維持するという意味でも大きな支えになっています」

「東川に住む幸せ」と「その会社に勤める幸せ」

東川町は全国的に見ても珍しく、人口を維持できているまち。それを支えるにはインフラの整備が欠かせません。さらに、藤井さんは建設業の役割についてこう続けます。

「東川町は上水道がなく、地下水で生活しているまちです。環境を守ることと生活基盤を整備することが一体でなければならない土地といえます。地元の建設会社では自分たちの暮らしを守る感覚と、地域のインフラを作る仕事が深くつながっていることが感じられるはずです。ただ単に開発するのではなく、美しい自然を守ることもプラスされるため、やりがいも大きいのではないでしょうか」

近年、東川町では人口増加に伴う建設需要も高まっています。

181_fujitagumi.jpg東川町には、所属や肩書きを超えて「みんなで町を良くしよう」という空気が根付いています。会議で方針を固めるよりも、一人ひとりが「自分にできること」を自発的に実践する。その自然な行動の積み重ねこそが、この町の強さです。

藤井さんは「地元をよく知る企業が、このまちの環境や想いを理解した上で整備してくれることが大切。そういう意味では、地場の建設業界に対するまちの期待も高まっていると思います」と話します。

自分が住むまちの橋や道路を、自分たちの手で整備していく。その手応えを日常の仕事の中で自然に感じられるのは、都市部の建設現場とは異なる魅力があるからでしょう。さらに、藤井さんは、東川町のまちづくりの在り方についてこう補足します。

「東川町には自分がどこに所属しているか、何者かに関係なく、みんなで良くしていこうという空気があります。会議で大きな方針を決めるというより、『これができるからやるよ』と自然に動く人が多いんですね。その積み重ねが、東川の強さだと思っています」

166_fujitagumi.jpg人口が増え続ける小さな町・東川町。北海道で唯一上水道がなく、すべて山の地下水を使っており、日本一コンビニのコーヒーが美味しい町とも言われています。冬はスキーやスノーボード、夏は釣りやキャンプなど自然を満喫できます。豊かな自然と恵まれた生活環境に魅了された移住者も多く、人口は微増傾向。だからといって人で混雑しているわけではなく、ゆとりある暮らしが叶う土地です。

そうした風土の中には、地域の経営者たちの価値観も息づいています。

「東川には、魅力的な経営者が多いと感じています。自分たちだけが儲かればいい、という発想ではなくて、みんなが良くなったらいいよね、と自然に考えている方ばかり。そうした会社の理念に共感して『ここで働きたい』と思う人は、きっといるはずです」

町への共感と、会社への共感。その二つが重なったとき、「東川に住む幸せ」と「その会社に勤める幸せ」が両立する状態がきっと生まれます。

186_fujitagumi.jpg東川町への移住や滞在を検討されている方は、東川町役場までお気軽にご相談ください。制度の詳細はもちろん、実際の生活環境や町の雰囲気など、具体的な情報提供を通じて、皆さんの新しい一歩をサポートさせていただきます。

仕事と暮らしと地域が地続きに感じられる会社

最後に取材のマイクを藤田組に戻します。藤田さんは東川町商工会の副会長として夏のお祭りの運営に携わる他、交通安全協会や写真のまちの取り組みにも関わり続けています。けれど、「まちに貢献したいというよりも、自然にやっていると表現するほうが近いと思います」と率直に語ります。

とはいえ、藤田さんのお話からは、社員にも地域との関わりを実感してほしいという思いがにじんでいます。お祭りの会場設営を担い、まちの人たちと一緒に何かをつくり上げる経験は、都市部の現場ではなかなか味わえないもの。仕事と暮らしと地域が地続きであることを感じられるのも、藤田組で働く特徴でしょう。

補助金で人を呼ぶのではなく、まちの魅力そのものへの共感を大切にする東川町。そのまちで、じっくりと人を育て、地域とともに歩んできた藤田組。

130_fujitagumi.jpg藤田さんの言葉からは、社員一人ひとりに地域との結びつきを肌で感じてほしいという願いが伝わってきます。お祭りの設営など、住民と汗を流して何かを作り上げる経験は、効率が優先される都市部の現場では得がたいものです。仕事、暮らし、そして地域。それらが分断されることなく「地続き」であることを実感できるのが、藤田組という職場の大きな魅力です。

「ゆっくりでいい、でもしっかりやる」という姿勢は、建設業の現場だけでなく、東川町というまちが持つ空気感とも、どこか重なって見えます。

移住先としてのまちを選ぶとき、「どんな自然があるか」「どんな暮らしができるか」と同じくらい、「どんな仕事があるか」「どんな会社があるか」は大切な問いです。

藤田組のような存在が東川町にあることは、このまちで暮らすことを真剣に考える人にとって、一つの心強い答えになるかもしれませんね。

155_fujitagumi.jpgAIがどれほど発達し、シミュレーションが精緻になっても、実際に土を動かし、コンクリートを打ち、建物を組み上げるのは「人の手」です。建設業は、物理的な世界で私たちの命と暮らしを守る、代えのきかない聖域と言えるでしょう。

株式会社藤田組
株式会社藤田組
住所

北海道上川郡東川町北町7丁目1番3号

電話

0166-68-4055

URL

https://f-gumi.co.jp/

GoogleMapで開く


東川の暮らしと地続きのシゴト。株式会社藤田組

この記事は2026年2月20日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。