皆さんこんにちは!
「水産の未来を考える若者を増やす!」をモットーに活動する学生団体 レディ魚ーです!
レディ魚ーの漁村訪問活動では、実際の水産現場を訪れて自らの体で漁を体験し、第一線で活躍されている漁師さんのお話を伺うことで、学生が水産に関わるきっかけを創る。そして大学での学びをさらに深めることを目指しています。今回は、11月に行った北見市常呂への漁村訪問の様子を、訪問メンバー4人でご紹介させていただきます。
今回の訪問メンバー!左から船橋(北大3年)、宮坂・中拂・福留(北大2年)の4名でそれぞれ分担して執筆させていただきます!
今回の常呂漁村訪問のきっかけは、私たちにとって嬉しい一本のご連絡から始まりました。連絡をくださったのは、オホーツク海に面した北見市常呂で活動する漁師団体マスコスモ合同会社の代表、柏谷晃一さん。以前ご縁をいただき訪問させていただいた際のつながりから、「新しい取り組みも始まり、初めての女性社員が入社しました」という近況を教えてくださいました。
マスコスモは、漁業を軸に、加工や食育といった多様な取り組みを通して、オホーツクの海の恵みのおいしさと価値を発信している団体です。単に魚を獲るだけではなく、地域や次世代とどう向き合うかを真剣に考え、実践されている姿勢に、私たちは以前から強く惹かれてきました。今回のご連絡を受け、「マスコスモが描く新しい水産の流れとは何か」「オホーツクならではの漁業のあり方とはどのようなものなのか」、そして、水産業の現場に飛び込んだ「水産女子」の想いに直接触れてみたい...。そんな学びへの期待が膨らみ,常呂への訪問が実現しました。
マスコスモで見て、聞いて、感じたことは、水産業の未来を考える上で多くのヒントを与えてくれました。ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
マスコスモ代表の柏谷晃一さん。今回の訪問でも優しくマスコスモやオホーツクの水産業について教えてくださいました。
北見市常呂ってどんなとこ?
所在:北海道オホーツク総合振興局管内
人口:3264人(令和8年12月31日時点ー北見市常呂地区)
特産品:ホタテ、カキ
観光名所:サロマ湖、アドヴィックス常呂 カーリングホール、ワッカ原生花園

北見市常呂(旧常呂町)は、道東のオホーツク海沿岸に位置し、サロマ湖に面した漁業のまちです。豊かな海と湖の恵みを受ける常呂では、古くから水産業が地域の暮らしを支えてきました。特にサロマ湖は国内におけるホタテ養殖発祥の地として知られ、その養殖や加工、流通といったホタテ産業は地域を代表する存在です。ホタテ養殖は、常呂の水産の歴史そのものとも言える営みで、人々の生活と結びついて町を支え、発展を遂げてきました。
一方で近年は海洋環境の変化により、サロマ湖のホタテ養殖もこれまで通りとはいかなくなっています。安定して続いてきた営みが揺らぐなかで、常呂の漁業は今、新たな在り方を模索する局面を迎えています。
(執筆:船橋)
魚を「獲る」から「食卓へ」まで
今回訪れたのは、北海道・常呂町にある水産加工会社「マスコスモ」さん。ホタテ漁が主力産業であるこの地域で、加工・流通・発信までを一貫して行いながら、「魚を食べる文化」を次の世代につなごうとしている会社です。マスコスモのホームページには、魚食普及への強い思いや、試行錯誤の歴史が丁寧に綴られています。けれど今回の訪問で私たちが強く持っていたのは、その物語を「実際に現場で働く人の言葉として聞きたい」という気持ち。
「どうして、この会社が生まれたのか」
「魚を食べてもらうために、どんな工夫をしているのか」
そんな問いを投げかけながら、多くの学びを得ることができました。
ホタテの水揚げの様子
魚食普及のためにできることを、全部やる
魚離れへの危機感から立ち上がったマスコスモでは、未利用魚や地域であまり流通しない魚を積極的に扱い、加工の工夫によって「家庭で食べやすい形」へと変えています。3Dフリーザーの導入や、加工工程の改良もその一環です。鮮度を保ち、魚本来の美味しさを届けるための投資を惜しまない姿勢には「魚をもっと身近に」という一貫した想いがあります。
加工だけでなく、イベント出店や発信活動にも力を入れているのは、「つくって終わり」ではなく「食べてもらって初めて意味がある」と考えているからだといいます。その姿勢から、十数年前の立ち上げ時から変わらず続いてきた、想いを行動に落とし続けてきた積み重ねが今のマスコスモを形作っているのだと、強く感じました。
底建網漁という、静かなチームワーク
マスコスモのメンバーの一人、川口さん。この地域では珍しい「魚を主に獲る」漁師でもあります。今回私たちは、彼らが行う底建網漁を見学させていただきました。
まだ空が真っ暗な早朝、港に集まる漁師たち。言葉は少なく、必要以上の会話はないけれど、その沈黙には、長年積み重ねられてきた仕事のリズムがあるように感じられました。ただ、いざ集まったとしても、潮の状況によっては出港できないこともあります。実際、この日は一度判断が保留になり、時間を置いて再出港することになりました。
誰も不満を口にすることなく、淡々と受け入れる。その姿からは、自然の不確実さを前提に生きる人たちの「慣れ」と「余裕」が感じられました。
作業が始まると、合図は最小限、しぐさで伝わる意思疎通。学生である私たちは、作業中ほとんど「透明人間」のような存在にも思えましたが、作業全体の流れが最優先される合理的な空間だなと感じながら夢中になって彼らの様子を見ていました。

揚がった魚は、その場で選別され、良い魚は活〆されていきます。
「これをすると、新鮮なまま持って帰れるからね」
川口さんはそう言いながら手際よく処理を進めました。中には30kgほどもある大きなタコもいて、学生の私たち学生は大興奮でした。
作業の合間、親方が小さなタコイカを無言で差し出してくれました。

ただ笑顔で渡し、すぐに作業へ戻っていきます。そのさりげない行為に、この場の人間関係の近さが滲み出ていました。また、作業後にはクーラーボックスから配られる飲み物と飴。緊張がほどけ、漁師さんと学生が魚の名前や料理法を話す時間も生まれていました。
マスコスモがやっていることは、単なる水産加工ではありません。漁の現場と加工の現場、そして食べる人の暮らしを、一本の線でつなぎ直す試み。魚を獲る人、加工する人、伝える人。その一つひとつの営みが重なって、ようやく「魚を食べる」という日常が成り立っています。魚を食べるという行為の向こう側に、こんなにも豊かな世界が広がっているのだということを教えていただいた、濃密な一日でした。
(執筆:福留)
水産女子に会いに行く
「水産女子」と聞くとどんなイメージが湧きますか?私はたくましく力強い女性という姿を思い浮かべていました。しかし、私のイメージと異なり「何でも聞いてください」と事務室でニコニコしているまどかさんは「明るく柔らかい雰囲気をまとったお姉さん」という印象でした。
まどかさんは札幌の大学を卒業後、一般企業での就職を経てマスコスモに入社されたそうです。入社のきっかけはマスコスモでのアルバイト。漁師の旦那さんのつながりで加工のアルバイトをするうちに「自分でもできるかも」と思ったのがきっかけです。現在は加工、広報、商品開発など様々な分野で活躍されており、競りにいったり船に乗ったりという仕事もこなします。
加工場で作業をするまどかさん。その目はとても真剣です。
「思い立ったらすぐ行動すること!」
大切にしていることを尋ねるとまどかさんはこう答えました。
「今死んでもいいと思えるくらい自分のしたいことをするんです。今できることを一生懸命する」
柔らかな雰囲気とは裏腹に、その言葉を語るまどかさんのまなざしからは静かで揺るがない強さが垣間見えました。
「自分にできることって何だろう?」から始まるまどかさんの取り組み
商品開発や地元の子供たちに向けた食育、LINEでの商品販売などまどかさんの仕事は非常に多岐にわたります。商品開発に目を向けたきっかけは、もともと料理が好きだったことだそうです。
「ホタテまんやタコまんとか...テレビショッピングとかするのも面白くないですか??」
まどかさんから次から次へとアイディアがあふれ出てきます。そのたびにこちらまでワクワクして、気づけばあっという間にインタビュー時間が過ぎていました。そのどこからアイデアが湧いてくるのでしょう?
「自分ができることって何だろうっていつも考えています。水産業と掛け合わせられるのは何だろうって」
事務所でインタビューをさせていただいている様子。仕事や水産業について、にこやかながらも真っすぐに語るまどかさんの姿が印象的でした。
まどかさんが今一番やりたいと思っていることは亡き先代の社長のレシピの復活だといいます。「マスコスモには「人の想い」が詰まっていると思うんです。マスコスモの商品ひとつひとつには気持ちや想いがある」そうまどかさんは語ります。
マスコスモ代表の柏谷さんは、これからの水産業界を変えていくためには、女性の進出が欠かせないと考えています。実際に、まどかさんがマスコスモに加わったことで、商品開発やイベント、広報活動などの場面でこれまでにはなかった新しいアイディアが生まれたそうです。職場の雰囲気も明るくなり、社内に良い影響を与えているといいます。「まどかさんの存在が会社や業界に新しい風を吹き込んでいる」そんな風に感じました。

「馬鹿者、よそ者だからこそ出来ることがある」とまどかさんは語ります。水産業の最前線で前向きに挑戦するその姿はとにかくかっこよかったです。
(執筆:中拂)
マスコスモが描く、若者が躍動する水産のミライ
マスコスモの加工場を訪れてまず印象的だったのは、働く人たちの若さでした。この日現場に立っていたのは、初の女性社員であるまどかさんに加え、20代の男性スタッフ、そして東京農業大学に通う学生の女性スタッフ。加工場には終始軽やかな空気が流れ、誰が一番多くホタテの身を外せるかを競い合ったり、年齢差を感じさせないフラットなやりとりが交わされたりと、活気ある現場が広がっていました。
常呂を含むオホーツク地域には、東京農業大学北海道オホーツクキャンパスがあり、水産を学ぶ学生が身近に存在します。ホタテ養殖の繁忙期になると、浜が学生アルバイトでにぎわう光景はこの地域ならではの風物詩です。若者の担い手不足が課題とされる漁村が多い中で、毎年新しい若者が現場に関わるこの環境は常呂の大きな特徴であり、水産業界のさらなる発展のためのヒントが数多く存在する大変魅力ある場所だと言えるでしょう。
そうした若い人材が持ち込む新しい技術や発想は、地域に少しずつ変化をもたらすと、マスコスモ代表の柏谷さんは言います。「これからの水産を変えていくのは若者たち。望みある若者が入りたいと思ってもらえるように、まずは自分たちが道を切り拓いていきたい」とこれからの意気込みを語ってくださいました。マスコスモの現場には、その言葉を裏付けるように、若者が主役となって動き出す水産の未来が確かに息づいていました。
作業される若い女性従業員の方々。手前の方はアルバイトの大学生。作業中の会話も明るい雰囲気の中で行われていました。
取材の中で、マスコスモ代表の柏谷さんは、「大学生ともっと連携して、オホーツクの水産業を盛り上げていきたい」と語っていました。その高い研究力や専門性を現場に取り込みながら、学問とビジネスが密接に関わる産学連携を進めていくことが、これからの水産業界の発展に欠かせないといいます。
実際に常呂の現場には水産分野を専門的に学ぶ学生も多く入り、研究や将来の進路において深く水産に関わることも多いとのこと。一方で今後は、水産以外にも多様な視点やバックグラウンドを持つ若い学生が集い、活躍できる場をつくっていくことも重要だといいます。そうした柔軟な発想やそれぞれの強みが、水産業に新たな風を吹き込んでいくのです。マスコスモでは、昨年初めて学生インターンの募集を行い、マスコスモのInstagramでの情報発信力向上に貢献しました。現場と学生が関わることで生まれる相乗効果は、これからもさらに広がっていきそうです!
水産業界の未来について語る柏谷さんと、真剣に耳を傾ける私たち。学生たちに向けられた希望について様々な思いや考えに触れることができました。
ホタテ養殖によって圧倒的な地位を築いてきたオホーツクの水産業。しかし近年、海洋環境の変化により、そのホタテ養殖にも少しずつ異変が見え始めています。これまで地域を支えてきたホタテに依存した構造からの脱却に向け、次なる一歩の模索が求められています。
そうした中でマスコスモは、ホタテに加え、オホーツクの海がもたらす多様な魚に目を向けています。フグの加工といった新たな取り組みや、子どもから大人までを対象とした魚食普及活動を通して、海の恵みの可能性を広げようとしています。過渡期に差し掛かった今だからこそ、若く、広い視野を持つ人材が現場に関わることが重要だと、柏谷さんは強調します。それは一企業の挑戦にとどまらず、地域全体、そして水産業界が望むことでもあります。マスコスモの取り組みは、オホーツクの漁業が次の時代へ踏み出すための、小さくも確かな一歩なのかもしれません。
ホタテの水揚げの様子。クレーンいっぱいのホタテが左の大型トラックの荷台に何十回と往復して積まれていく。このシーンだけで私たちは一生分のホタテを目の当たりにした。
今回の訪問を振り返って
今回の訪問では、水産の現場を実際に体験させていただいただけでなく、まどかさんの想いや、マスコスモが描く柔軟で多様性に富んだ、水産の未来の輪郭に触れることができました。マスコスモが目指す水産業の姿は、これまでの枠にとらわれない革新的なものであり、水産業界が抱える課題の解決にむけた画期的なものでした。すでに次の行動を見据えた構想が語られている点からも、強い意志と勢いを感じます。今回の取材を通して、マスコスモは、未来の水産業を考え、実際に動かしていく力を持った場所なのだと実感しました。
お忙しい中での取材をはじめ、さまざまなご対応をいただき、この場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。私たちレディ魚のメンバー一同も、今回の訪問で得た学びを胸に、これからの水産業界の発展に向けて活動を続けていきたいと思います。
先代社長の思いが綴られた壁掛け。常呂の水産、そして北海道の水産の未来が明るいものであることを私たちは真摯に願い、これからも学びを続けていきたい。
(執筆:宮坂)

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