HOME>このまちのあの企業、あの製品>世界を駆け巡り、超ニッチな機械を探求!株式会社コーエキ

このまちのあの企業、あの製品
旭川市

世界を駆け巡り、超ニッチな機械を探求!株式会社コーエキ20251222

世界を駆け巡り、超ニッチな機械を探求!株式会社コーエキ

旭川市といえば動物園や酒蔵を真っ先にイメージしますが、「旭川家具」に代表されるものづくりも盛んなまち。昔から家具メーカーや製材所(丸太を、角材や板材といった建築材や家具材などの用途に加工する施設)が多く、木材の集積地として発展してきた横顔もあります。

木工製作をする上で、丸太を切ったり、チップ状にしたりするのに欠かせないのが木材加工機械です。この分野で北海道トップクラスのシェアを誇り、日本国内でもニッチな輸入機械の「探求」に力を入れているのが株式会社コーエキ。狭くて、深くて、楽しいビジネスの秘密を探るべく、代表の野田正峰さんにお話を伺いました。

新製品がバンバン売れないからこそ、メンテナンスや修理が大切。

株式会社コーエキを創業したのは野田さんのお父さん(現会長)。もともと旭川市内でも大きな木材会社に勤めていて、木材加工機械を販売する機械部という部門に所属していたと振り返ります。

「父が働いていた会社には貿易部があり、丸太といった材料だけではなく、面白い機械があると積極的に輸入して販売していたそうです。その派生から輸入機械を扱う機械部が立ち上がり、仕入れや貿易を任されていったと聞いています。こうした経験を積んだ後、1992年に独立するかたちでコーエキを創業しました」

koeki_001.jpg代表取締役の野田正峰さん。笑顔からやさしさがにじみます。

森林大国の北欧やデザイン性の高い家具づくりを行うイタリアの輸入機械は、性能が優れている一方で「高価なのでは」「壊れた時にどうしたら良い?」という不安がつきもの。けれど、コーエキは創業当初から商社や卸といった間を挟まずに安心の価格を心がけ、フェイス・トゥ・フェイスの訪問からメンテナンスや修理の困りごとを解決するスタンスを貫いています。

「木材加工機械は長く大切に使われる傾向があり、私よりも年上の製品と出会うことも日常茶飯事。つまり、新たな商材がどんどん売れる業界ではない反面、メンテナンスに付随する部品の供給や修理が大切です。このニーズに細やかに対応することが信頼につながり、『そろそろ買い替えようかな』というチャンスにようやく巡り会えるのです。柔軟性と機動力の高さは、なかなか大手には真似ができないと自負しています」

koeki_002.jpg修理に取り組む若手スタッフ。

海外で実物の機械を見て、取引先を見極める、経費以上の価値。

メンテナンスや修理のニーズを小まめにつかみ、実際に対応するのが同社の営業スタッフ。一つひとつの関係性を丁寧に構築しながら、「どうしたらスムーズに修理できるのか」「求められる性能をより安く提供できないか」に真摯に向き合っています。

「当社はフィンランドやイタリアなどの木材加工先進地だけではなく、最近では中国や台湾、さらにはトルコといった国にも直接足を運んでいます。お客様は性能だけではなく、当然ながらコスト面も重視するもの。トルコのような第三国にまで良い機械を探しにいくというスタンスは全国広しといえども片手でおさまる程度しかないと思います」

koeki_003.jpg【PADE ベロックス】両端にツールを装着可能なダブルスピンドルモーターをクロスに配置した、コンパクトな主軸ヘッドを持つベロックス。ワークを5方向からアクセスでき、かつ迅速なツール交換、柔軟性に優れた加工プログラムを作成できます。オプションも豊富でご要望の加工に最適なデバイスを揃えています。

とはいえ、近年はオンライン会議も増え、コロナ禍をきっかけに現地に行かずしても商談ができる環境は整っています。わざわざ現地まで「探求」に行くのには、何か理由があるのでしょうか?

「私自身もコロナ禍の時にWeb会議を取り入れ、今後は海外に出かける頻度も激減するだろうと考えたこともあります。ただ、機械の思想や使い方は実際にモノを見てみないと分からない部分も多いですし、取り引きしやすい相手かどうかを見極めるにも直接顔を見て話すのは非常に重要。『YouTubeで見たんですが...』と『現地でこんな使い方をしていました』と伝えるのではお客様の納得感も違うはず(笑)。経費はかかりますが、それに見合う以上の価値が現地にはあると思っています」

koeki_004.jpg

こうした海外視察には、スタッフも積極的に同行させているとか。当初、多くの人は「海外に興味がない」「パスポートすら持っていない」と興味が薄い状態で入社してくるようですが、一度、二度と海外出張に出かけるにつれて楽しみにするようになるといいます。

「当然、新しい技術や知識を身につけるのも面白いと思いますが、見たことのない風景、おいしい食べ物、日本と異なる文化にふれるのも純粋に楽しいのではないか...と。社員同士で『ドイツどうだった?』と話したり、友人に海外出張に出かけていることを伝えて『スゲー!何してるんだっけ?』と言われたりするのもクセになるのかもしれませんね(笑)」

koeki_005.jpg会社の近所の食堂で昼食をとる時も「ドイツは...」「フィンランドは...」といった国際色豊かな話題が飛び出すとか。

やらされ仕事はツマラナイ。だから、仕事の進め方や動き方は自由。

木材加工機械のメンテナンスや修理は非常にニッチな分野ということはこれまで聞いた通りです。現在働くスタッフはほぼ全員が未経験からのスタートで、右も左も分からない中から面白みや手応えを見つけていったと語ります。

「当社はメーカーとは異なり、国内製、北欧製、アジア製とさまざまな機械を自分たちの手で直さなければなりません。入社後しばらくは先輩に同行して故障の原因は電気系や動力系か、それらをどう修理するのか手取り足取り教えてもらうことになります。最初は悪いところを見つけるのに1時間かかっていたところが、経験を積むにつれてすぐに対応できるようになり、お客様も『あぁ、良かった!本当にありがとう』と喜んでくれるようになる...そして急激に距離感が近くなるのが全員に共通する楽しみだと思います」

koeki_006.jpg機械で使用するベアリング。きめ細やかなアフターサービスがコーエキの強み。海外製機械のスペアパーツを弊社倉庫に常時ストックしています。

木材加工機械の修理やメンテナンスはケガにつながるケースもあるため、安全面の確認を怠ることには厳しい声がかかることもあるのだとか。一方で、修理の仕方や仕事の進め方、スケジュールの組み方はかなり自由だといいます。

「命令や指示に従うスタイルだと、どうしてもやらされ仕事になりがちです。当社はお客様先に顔を出し、メンテナンスや修理のニーズを拾い上げていくのがメインでもあるため、一人ひとりの好きなように動いたほうが結果として楽しく働けるのではないかと考えました。もちろん、社内規定やルールはありますが、その上で何をするかは社員に任せています」

自由な分だけ、自分で考えて動く力は必要となります。当然、一人のアイデアには限界があるため、雑談の中で商材の広げ方をディスカッションしたり、昼食を一緒にとる時に働き方についての提言があったり、フラットな雰囲気で話し合う機会も多いそうです。

「出張ですれ違いが多いけれど、顔を合わせちゃったら、ずっと話してしまうんですよね(笑)」

koeki_007.jpg談笑するスタッフの皆さん。

ガツガツしておらず、淡々としているけれど助け合えるレアな雰囲気。

「前職は消防士です。旭川にUターンするためにコーエキに転職しましたが、正直、決め手は何となく。学校も工業系ではないですし、機械に興味があるかといえばそうでもなく...(笑)」

率直に入社当時の気持ちを教えてくれたのは、同社で一番若いセールスエンジニアの小田航大さん。入社後は1年間の研修があり、メインで教えてくれた上司は安全面や段取りから丁寧に指導してくれたと笑います。

koeki_008.jpg同社で最若手の小田さん。保育園に通うお子さんがいます。

「最初は何も分かりませんでしたが、例えば壊れた部品を交換したり、割れた部分を溶接したり、さまざまな現場に同行するうちに少しずつ成長していけたと思います。そのうちに不具合の原因をつきとめる面白さやお客様の役に立つやりがいを感じるようになりました。修理の間はお客様の生産を止めることになるので、プレッシャーも大きい分、直った時の手応えは格別。単に修理するといっても、より安く済ませる方法を考えるなど深い面白さもあります」

一人立ちしてからも、分からないことは上司に電話すると「ココを調べてみた?」など的確にアドバイスしてくれたとか。フォローの体制はしっかりと整っている一方で、仕事の内容や失敗についてマイクロマネジメントされることはないと語ります。

koeki_009.jpg

「自分のやり方や動き方を自分で決められる自由度の高さが僕には魅力。社長は家族が第一優先と言ってくれるので、子どもが熱を出した時、突発的に『明日休みをもらいます』と休むことができます。誤解を恐れずにいえば、やることをやっていれば何をしても良い会社です(笑)」

待遇面でもコーエキに入社してからクルマも家も買うなど、頑張りが跳ね返ってくる環境。「自由」「稼ぎ」「家族」をバランス良く大切にできるとにっこり。

「仕事内容自体もニッチですが、ガツガツした雰囲気がないところも、淡々と仕事をしているようでいて困った時には助け合える人間関係も、レア度がかなり高いと思います」

旭川家具の技術や熱意を、もっともっと多くの人に知ってほしい!

最後にインタビューのマイクを野田さんに戻し、地元でもある旭川市についての思いを伺いました。

「実は祖父が家具メーカーを経営していた過去もあり、やはり旭川家具については商売抜きで応援したいと思っています。今でも全国に名を馳せているものの、職人の技術や熱意を知る者としてはもっともっと知名度が高まっても良いはずです」

koeki_011.jpg

旭川家具のようなデザイン性や設計思想に優れた家具は、最後の仕上げは人の手でないとできないそうです。とはいえ、人手不足は業界を問わず共通した課題のため、機械で置き換えられるところは機械の力で応援したいと、家具メーカーとともに海外視察に出かけることもあるといいます。

「私自身は旭川家具に少なからず縁があり、働く原動力の一部になっています。ただ、社員の大半は旭川生まれ、旭川育ちで、このまちに居心地の良さを感じているようです。転勤がイヤだからとUターンしてきた人も少なくありません。北海道第二の都市なので買い物や医療の面で困ることはありませんし、ちょうど良い都会具合が落ち着くのかもしれません」

大きな企業ではないと前置きした上で、野田さんは移住者については引っ越しや家探しのサポートをするのは当然と表情を緩めます。「どの地域にどう住むのがオススメかということも教えてあげたいですね」と言葉を継ぎました。

野田さんが話すトーンは終始穏やかで、過剰なアピールや背伸びした発言もなく、ただただフラットに自社のことを見つめているようでした。けれど、社員のことを紹介する時には表情が緩み、海外の木材加工機械を探す面白さを話す目つきは真剣そのもの。楽しく働いていることが自然と伝わってくるインタビューでした。

koeki_012.jpgこの日、会社にいる皆さんで記念撮影。実に楽しそうな表情。

株式会社コーエキ
株式会社コーエキ
住所

北海道旭川市工業団地2条1丁目2番22号

電話

0166-36-4809

URL

https://www.koeki.jp/

Instagramはこちら

GoogleMapで開く


世界を駆け巡り、超ニッチな機械を探求!株式会社コーエキ

この記事は2025年11月5日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。