森林を維持管理しながら、育った樹木を伐採し、木材資源を生産する林業。そして、その木材を使って製品を作る木工業、製材業、木材加工業など...。「木」にまつわるあらゆる産業が世の中にはあります。このようなさまざまな木材産業に携わる人たちが集まり、木材産業の普及・振興を目的に活動しているのが、「日本木材青壮年団体連合会」(略して日本木青連)です。全国8地区に協議会があり、北海道をまとめているのが「北海道木材青壮年団体連合会」(略して北海道木青連)。今回は、この北海道木材青壮年団体連合会の札幌地区の活動に携わっている役員とOBの方に話を伺いました。
略して「北海道木青連」。一体どんな組織? みんな経営者?

今回、集まっていただいたのは、北海道木材青壮年団体連合会(略して北海道木青連)の札幌地区の田家元明さん(田家木材株式会社代表取締役社長)、髙篠孝介さん(堀川林業株式会社代表取締役)、そして会長経験もあるOBの江崎亮さん(株式会社北成中林代表取締役社長)の3人。名刺の肩書きを見ると、皆さん会社の代表ですが、北海道木青連は経営者だけの集まりなのでしょうか? まずは北海道木青連がどのような団体なのかを教えてもらいましょう。
「まず、日本木材青壮年団体連合会という全国組織があります」と、最初に説明をしてくれたのはOBの江崎さん。「木材産業に携わっている会社の経営者やその跡継ぎ、社員らが集まっている組織で、会員数は全国で800人ほどですね。設立から70年になります」と続けます。
こちらが、株式会社北成中林 代表取締役社長の江崎亮さん
この日本木材青壮年団体連合会(日本木青連)の下に全国を8地区に分けた連合会があり、そのひとつが北海道木青連になります。さらに、北海道木青連も札幌地区、旭川地区、東北海道地区、函館地区と4つに分けられているそう。「細かいことを言うと、北海道木青連は一回解散したことがあり、再結成をしてちょうど来年20年になります」と江崎さん。現在、北海道木青連の会員数は約80人とのこと。
もともと若手の経営者らが集い、活動を通して互いに親睦を深め、木材業界の普及と振興を立ち上げた団体がゆえに、参加しているのは経営者が多いそう。江崎さんは「経営者に限っているわけではないのですが、経営者や役員らが多いですね。実は、参加するには会員の紹介が必要なため、どうしても世襲のような形で入ってくる人が多くなってしまうのだと思います。実際、今は2代目、3代目と呼ばれる世代がほとんどですね」と話します。さらに、「『青壮年』とあるように、会員には定年がありまして、地区によって異なるのですが自分が所属していた札幌地区は50歳で定年。実はちょうど定年を迎えたので今年はOBとして関わっているんです」と笑います。加盟している木材産業の会社はさまざま。造林を行い、育った樹木を伐採する会社から、製材を行う会社、木材加工の会社、本州では工務店なども加盟しているそうです。とにかく「木」にまつわる仕事に従事している会社に所属している人たちが集まっている団体というわけです。
木材産業の普及と振興のため、ワークショップなどを開催。今後は出前授業も
どんな人たちが集まっている団体かは分かりましたが、具体的にはどのような活動をしているのでしょうか。
「全道大会を開いて、木材に関する有識者の方を呼んだ基調講演を行ったり、木育活動の一環として日本木青連が主催する児童を対象とした木工工作コンクールの北海道地区の大会を主催したり、あとは、テーマを決めて北海道や森林管理局など木材に関する機関との意見交換会なども行っています。最近は道産材の活用について話をしました」と田家さん。2カ月に1度は役員たちが集まって活動報告を行ったり、親睦を深めたりもしているそう。
こちらが、田家木材株式会社 代表取締役社長の田家元明さん
また、地区ごとで木育など木材産業の普及・振興につながる活動も行っており、「活動内容は地区で異なりますが、私たちの札幌地区は毎年北海道が主催する木育フェスタに参加してワークショップを行っています」と田家さん。ちょうど10月に札幌市東区の「さとらんど」で行われた「北海道・木育フェスタ2025 道民森づくりの集い」に、北海道木青連として出展し、木材を使ったワークショップを無料で行ったそう。
「このワークショップはちょうど僕が北海道木青連の会長をやっていたとき、木工工作コンクールについて小・中学生にどうやって周知しようか悩んでいたら、道木連(北海道木材産業協同組合連合会)から、木育フェスタというイベントがあるから、これに出展して告知をすれば?と声をかけてもらったのがきっかけで、それ以来続いているものになります」と江崎さん。

今年のワークショップでは、トドマツの椅子づくりを行ったそう。写真を見せてもらいましたが、とてもしっかりした造りの小さなベンチのような椅子で、これが無料だなんて...と参加できた人が羨ましいと思ってしまうほど贅沢なもの。「今年参加してくれたのは40人。一度に40人で作業はできないので、木札を配らせてもらって、時間制で体験してもらったんですけど、無料ということもあり、すぐに定員が埋まりましたね」と田家さん。関連団体から協賛をもらっているので、無料で行うことができるそう。
毎年このワークショップでは、自社でDIY用の製材製造も行っている田家さんが大活躍。「ワークショップとかやったことがなかったので最初は手探りでスタート。初年度は、うちで扱っていた商品のベンチを作ることにして、半日かけてDIYを体験してもらったんだけど、色塗りまでやったものだから、教えるほうも体験するほうも大変で(笑)」と振り返ります。翌年からは5~10分もあれば作れるものに切り替えたそうですが、それでも参加した人たちからは「すごく楽しかった!」と喜んでもらえているとのこと。「普段の仕事とは違うので大変なこともありますけど、こうやって木に触れてもらうことで、少しでも多くの人に木材産業について知ってもらえるならやりがいもありますね」と続けます。
今年からはこのワークショップのほかに、木育活動の一環として、札幌市内の中学校で出前授業を実施することになりました。これは三笠市で林業会社を営む髙篠さんが、知人の繋がりでリアルな林業の話を子どもたちにしてほしいという依頼を受け、2年前から行っていたもの。
こちらが、堀川林業株式会社 代表取締役の髙篠孝介さん
髙篠さんは、「今年で3年目になるのですが、林業だけでなく、川上から川下まで木材業界全体のことも知ってもらったほうが、より子どもたちに山や森のこと、木にまつわる職業のことを認識してもらえるのではないかと考え、今年から北海道木青連の札幌地区の活動として、出前授業の内容の幅を広げようと思っています」と話します。
川上から川下まで、普段会うことがない人たちも「木」を軸に集う団体
木材産業に従事する人たちが集い、親睦を深め、木材産業の普及と振興のために活動し、社会に貢献することを目的としている日本木青連、北海道木青連の活動。具体的な活動内容も分かったところで、今日集まってくださった3人の仕事についても少し伺おうと思います。

江崎さんが代表を務める「株式会社北成中林」は、札幌に本社を置く製材流通の会社。「自分で3代目になります。北海道産のトドマツやカラマツを使った製材品、集成材などを取り扱っています。メインは、大手ハウスメーカーの指定業者としてプレカットした製材品の卸。あとは、珍しいものでいうと、自衛隊で使う銃弾を詰める箱なんかも作っています」と江崎さん。関東エリアへの納品をスムーズに行えるよう6年前には群馬県に製材工場も設けたそう。3代続くということで、先代、先々代も北海道木青連に参加していたのかと思いきや、「実は違うんですよ。僕はたまたま同じ業界の先輩から声をかけてもらって入ったんです」とのこと。「OBになりましたが、これからもできる範囲で関わっていきたいと思っています」と続けます。

次に田家さんの田家木材株式会社について伺いましょう。もともと根室市からスタートした会社で、今も本社工場は根室市にあるそう。「先代が北海道木青連に入っていたときは、東北海道地区に所属していたんですけど、僕自身は札幌支店にずっといたので、僕は札幌地区所属なんです」と笑います。「うちの会社は製材と加工を行っています。もともとサンマや鮭を入れる魚箱を作っていて、今は魚箱のほかにもホームセンターに置いてあるDIY用の素材や、ガーデニング用品、キャンプ用の薪なども作っています」。根室市のほか、阿寒町にも工場があり、田家さんは定期的に道東と札幌を行き来しているそうです。
インタビューを行ったのは、くらしごと編集部の会社にある会議室。実はこの会議室の壁面を装飾する木は、新十津川町にある社有林のカラマツを堀川林業さんが製材してくださったのでした!
最後は髙篠さんの堀川林業株式会社。三笠を拠点に、山を管理し、素材生産、造林、そして製材も行っています。くらしごとでも山で作業している社員の方たちの取材を何度かさせてもらいました。「うちは先代の父が北海道木青連に入っていて、約10年前に自分も入りました」と髙篠さん。「北海道木青連には、うちのような川上と呼ばれる造林や素材生産の会社が実は少ないんです」と話します。国有林や道有林が多い北海道の特性もあり、道内には山の管理や造林しかやっていないという会社も多いそうで、「川上の会社は自分たちが伐った木がどこに売れて、どこに使われているか知らないことが多く、江崎さんや田家さんのような製材や加工の会社との繋がりもほとんどないんです。でも、自分は北海道木青連に参加しているおかげで、製材や加工を担う消費者に近い会社の人たちとも交流ができ、木材業界全体を知ることができ、仕事でも役立っています」と北海道木青連に参加しているメリットも教えてくれました。
以前、山で取材させていただいた時の様子です
江崎さんも「自分たちは山側のことは分からないけれど、北海道木青連で髙篠さんのような山のプロの人たちの話を聞くことは、仕事でもプラスになります。木材を扱っているすべての人が繋がれるのは北海道木青連の魅力だと感じます」と話します。
最後に、これからの北海道木青連についてどのように活動を展開していきたいかを尋ねると、髙篠さんは「北海道木青連のことをもっと知ってもらいたいし、メンバーも増やしたいですね。人が増えると活動の範囲も広がっていくと思うので」と話し、江崎さんも「OBとしては、次の世代の人たちにもたくさん入ってもらって、木材産業全体の発展に繋がるような新しいことにも積極的に挑戦してもらえたらと思います」と話してくれました。

- 北海道木材青壮年団体連合会
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