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大樹町

穏やかな先輩たちのもと着実に育つ、南十勝森林組合の若手ホープ20251208

穏やかな先輩たちのもと着実に育つ、南十勝森林組合の若手ホープ

全国各地に「森林組合」と呼ばれる組織があります。何となく分かるけれど、何をやっているところなの?という人も多いのではないでしょうか。簡単に言うと、森林組合法という法律に基づき設立された協同組合で、組合員は森林所有者になります。それぞれの地域に根差し、組合の職員は組合員や地域の森づくり、森林経営のサポートなどを行っています。さて、どの業界も若手の人材不足が深刻ですが、道内各地の森林組合も若手の獲得には苦戦。そんな中、大樹町に本所がある「南十勝森林組合」には将来を期待されている若手職員がいると聞き、早速取材に伺いました。

森林整備や、おが粉や木質チップの製造も

まずは「南十勝森林組合」について、同組合の業務部・長谷川幸博部長に伺います。

20251010_m_tokachishinrinkumiai_22.jpgこちらが南十勝森林組合 業務部の長谷川部長(写真左)。取材中も若手・石原さんのサポートを欠かさず、優しさが伝わってきます。

「うちは、2023年10月に大樹町森林組合と更別森林組合が合併してできた組合です。こちらの大樹町が本所で、更別村にも事業所を置いています。大樹も更別も森林整備事業、販売事業を主に行っています。大樹では加工事業も行っており、おが粉や木質チップを製造して販売しています」

森林整備に関しては、大樹も更別も、町有林・村有林、民有林を中心に行っています。

「地形的に割と平らなところが多く、自生している木の種類としてはミズナラ、カシワ、シラカバ、ヤチダモなどが多いですね。戦後に植樹したカラマツ、トドマツなどの苗木が、ちょうど今、伐採する時期にきていて、これからどんどん伐り出していく感じになります」

2025年の今年は戦後80年。戦後に植えられたものをこれから伐り出すということは、植えてから何十年も経っていると分かります。木が大きくなるまでに長い年月がかかるということをあらためて実感します。

photoAC_taikitown20251027.jpg大樹町は、北海道の東部・十勝エリアの太平洋に面したまち。ロケットの打ち上げなど宇宙の分野でも有名です。

「伐採したあとには、また植栽をしていきます。今植えたものが伐採できるようになるまで自分はもう生きていないだろうなと思いますが...」と長谷川部長は笑いますが、伐ったあとに植栽し、下刈りや枝打ちなどを行って森林を整備していくことが、次世代に豊かな森を残していくのだと分かります。

木を育み、木を伐り、森を循環させていくには、人の手が必要となります。「どこも人手不足だとは思いますが、機械化が進んでも機械を動かすのは人ですし、うちも若い人に来てもらいたいと考えています」と長谷川部長。組合の職員には、森林整備はもちろん、木材販売、経理事務や加工場のことなど、組合で行っている仕事全般を覚えてもらいたいと考えているそう。「森をゆっくり育てていくように、うちも慌てずに若手を育てていきたいと思っています。次に出てくれる石原くんはその大事な若手の一人です」と続けます。

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21歳、期待の若手は好青年!

さて、山から伐り出した木材は製材所に運ばれ、建材などに用いられますが、建材に使用できないようなサイズのものなどは、同組合の加工場でおが粉や木質チップに加工します。

「うちの加工場で製造しているチップは、大樹町内にある晩成温泉と生涯学習センターのバイオマスボイラーの燃料に使われています。生涯学習センターのボイラーでは、昨年から近隣の温水プールや大樹小学校にも地下の温水パイプを通して、熱源が供給されています。一方でおが粉は、地域の牧場で飼育している牛たちの寝床の敷料に用いられています」と長谷川部長。

20251010_m_tokachishinrinkumiai_17.jpgバイオマス燃料として使われるチップは、カーボンニュートラルな燃料として注目されています。

このチップやおが粉を製造しているのが、同組合の若手職員の石原麗王さんです。組合の職員になって4年目という21歳。「仕事も一生懸命だし、礼儀正しくて、どんなに遠くにいても姿が見えると大きな声であいさつしてくれる好青年」と、長谷川部長も期待しているホープです。

ここからは石原さんに林業の道を選んだ理由や仕事の話などを伺っていこうと思います。

帯広出身の石原さん。帯広農業高等学校の森林科学科を卒業後、南十勝森林組合に就職しました。そもそも、森林科学科を専攻した理由は何だったのでしょう?

「親は会社員で、農家だったわけでもないのですが、家から高校が近かったこともあって、農業高校を選びました。5つの科があるのですが、農業や酪農の科は跡取りの子が多いので、それ以外の科の中から選ぼうと思って、一番面白そうだなと思った森林にしました。チェーンソーの体験があったんですけど、それが面白かったんですよね」

20251010_m_tokachishinrinkumiai_14.jpg「自分の親より年上の方が多いけど話しづらさもないし、穏やかで優しい方ばかりです」と、石原さん。

高校では実習の時間が半分近くありましたが、石原さんが在学していたときはコロナ禍だったこともあり、予定よりも実習が少なかったそうで、「本来なら高校時代に取得できていたチェーンソーの資格も就職してから取らせてもらいました」と話します。

高校2年のときには、十勝管内にある何社かの林業会社をインターンシップのような形で訪問。山の中に連れて行ってもらったり、工場を見学させてもらったりして、林業の世界で働くというイメージは掴んでいたそう。

高校卒業後の進路を考える際、「せっかくなら3年間学んだことを活かしたい」と考え、林業の仕事に就くことに決めます。ちなみに、約40人いたクラスメイトのうち半分は違う分野の大学や専門学校へ進学し、半分は石原さんのように林業系の会社に就職したり、林業について学べる学校へ進学したりしているとのこと。

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「南十勝森林組合を選んだのは、いろいろなタイミングが重なったというのが一番の理由ですが、3年生になって見学に来たとき、皆さんがすごく優しくて、ニコニコしていて、雰囲気が良かったんですよね。すごく緊張していたので、皆さんの穏やかな感じにホッとしました」

石原さんが高校を卒業するときに両親が転勤で札幌へ行くことが決まっていたそう。でも、石原さん自身は友達がたくさんいる十勝管内を出たくないと思っていました。そんなとき、祖父母が暮らす大樹町の南十勝森林組合で人を募集していると知り、祖父母がいる町なら心強いからと、見学に訪れました。

免許を取得し、ショベル作業にも挑戦

石原さんが南十勝森林組合に入って配属されたのが、今も在籍している業務部の加工係。ショベルで運ばれてきた丸太の状態を見ながらベルトコンベアに移動させ、粉砕する機械にセットし、チップにしたり、おが粉にしたりしていきます。

「右も左も分からない状態からのスタートでした。機械のことも分からなくて、教えてもらいながら少しずつ覚えていきました」

丸太に泥がついているときは自分の手で落とすこともあるほか、木が曲がっているときや枝が残っているときはチェーンソーでカットすることも。木の状態を確認し、自分で判断して機械にセットしていくそう。

「まだまだ覚えることはたくさんあるんです。毎日稼働する機械なのでこまめなメンテナンスも必要だし、今は刃の研磨や洗い方なども教えてもらいながらやっているところです。昨年の夏に大型特殊の免許を取ったので、最近はショベルにも乗るようになりました」

20251010_m_tokachishinrinkumiai_19.jpg大型特殊などの免許は、組合の費用負担で取得できます。

石原さんに加工作業の仕事を教えているのが、加藤正さんです。60代の加藤さんは組合の職員になって13年ほど。前職でも機械を操作する仕事をしていた経験があり、加工の作業をすべて任されています。

加藤さんは、「石原くんは明るいし、教えたことをしっかりやるし、飲み込みもいいので、教えがいがあります」と話します。「機械の操作は実際に動かしてみないと分からないことが多く、少しずつ経験を積む必要があるんです。石原くんは3年経って、製造の機械の扱いはほぼ完ぺき。のこを研いだり、洗ったりする作業も教えているところです。あとはショベルかな。原木を運んだり、積み上げたりする仕事がしっかりできるようになれば...と考えています」と続けます。

20251010_m_tokachishinrinkumiai_12.jpg石原さんの大先輩、加藤正さん。

また、加藤さんは、「ここの組合は割と現場の人間に任せてくれるし、自由度が高めなので、仕事がしやすい環境だと思います。石原くんもひと通り仕事ができるようになって、自分の裁量で作業ができるようになるともっと仕事が楽しくなるんじゃないかな」と話します。

休憩時間には2人でスポーツの話や車の話などをするそうで、加藤さんは「彼はあいさつもしっかりしているし、本当に稀に見る好青年だよね」と目を細めます。石原さんの成長を楽しみにしているのが伝わってきます。

働く喜びも充実したプライベートも

長谷川部長からも、加藤さんからも評価の高い石原さんですが、仕事をする中で嬉しいと感じるのは、「ここのおが粉じゃなきゃダメなんだよ」と酪農家のお客さんに言われたときと話します。同組合では、丸太からおが粉にするので、製材工場で作るおが粉と違い、粒状で取り扱いしやすいのが特徴。現在、30軒ほどの酪農家と取り引きしており、その大半は大樹町内ですが、中には日高から取りにくる酪農家さんもいるそうです。

車が好きという石原さん。休みの日には購入したばかりの愛車に乗って道内各地へドライブに出かけたり、帯広へ行って友人たちと遊んだりしていると言います。「休みも取りやすいし、残業もほとんどないから、オンとオフのメリハリがあっていいですよ」と話します。ちなみに昼休みは、車で5分の自宅へ戻って昼食を取るそう。

20251010_m_tokachishinrinkumiai_16.jpgピカピカの愛車を見せてくれた石原さん。かっこいい〜!

長谷川部長が「いつもね、石原くんは昼休みや終業時間になると全速力で作業場からこっちに走ってくるんだけど、若いなぁって思う」と笑うと、石原さんは「小学校の高学年から高校3年の夏までずっとサッカーやっていたんで」とニッコリ。外での作業が苦ではないのも、体を動かす仕事が好きなのも、サッカーの経験があったからだと思うと話します。

将来を期待されている石原さんですが、「組合の職員の皆さんは優しい人が多いし、みんな温かく見守ってくれるので、自分も頑張ろうって思います。加工の仕事を全部マスターしたら、加工場以外の仕事もどんどん経験したいですね。山の中に入って森林整備もやってみたいと思います。あとは、自分と年齢の近い人が職員に一人でも入ってくれたらうれしいです」と最後に話してくれました。

20251010_m_tokachishinrinkumiai_11.jpgクリスマスにはケーキを食べたり、暑い日にはアイスを食べたり。時にささやかな楽しみを仲間と共有しながら仕事に精を出す南十勝森林組合のみなさんでした!

南十勝森林組合
南十勝森林組合
住所

北海道広尾郡大樹町字下大樹225番地

電話

0155-86-3108

URL

https://silvertiger2526.sakura.ne.jp/index.html

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穏やかな先輩たちのもと着実に育つ、南十勝森林組合の若手ホープ

この記事は2025年10月10日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。