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学校と学生の取り組み
浜中町

『レディ魚ー×くらしごと』番外編:浜中町水産ツアー前編20251204

『レディ魚ー×くらしごと』番外編:浜中町水産ツアー前編

皆さんこんにちは!
「水産の未来を考える若者を増やす!」をモットーに活動する学生団体レディ魚―の中野伸哉です。2025年9月、私中野とレディ魚―メンバーの角谷が中心となり、3つの大学の学生が参加するツアーを行いました。

初めての試みで、準備も当日もドタバタのツアーでしたが、浜中町の多くの方に支えられ、町の魅力がぎゅっと詰まった濃密なツアーになったと感じています。本記事では、これまでの「レディ魚―×くらしごと漁村体験記」から一歩離れ、9月に開催したツアー「浜中町へレディ魚―!」を特集!企画が形になるまでの背景や準備、当日の出来事、そしてメンバーが感じた余韻まで。その一部始終をお届けします。

浜中町ってどんなところ?

人口:5171人(2025年6月末時点)
特産品:コンブ、ウニ、ホッキ、牛乳、ソフトクリーム
観光名所:霧多布湿原、霧多布岬、モンキー・パンチ・コレクションなど

浜中町は、厚岸町と根室市に挟まれ、太平洋に面した自然豊かな町。町の約3分の1を霧多布湿原が占め、夏には町全体が霧に覆われることから「霧と湿原のまち」として知られています。古くから漁業と酪農が盛んで、コンブやウニなどの海の幸のほか、生乳の生産地としても有名であり、ハーゲンダッツの原料にもなっています。

また、漫画『ルパン三世』の原作者モンキー・パンチ氏の出身地でもあり、町内には作品にちなんだモニュメントが点在しており、豊かな自然や、『ルパン三世』の聖地を求めて多くの観光客が訪れています。

readygo_hamanaka02.png快晴の霧多布岬

ツアー『浜中町へレディ魚ー』の目的・概要

6月末、ツアーの運営担当を私と角谷を急遽引き継ぐことになり、浜中町でのツアーについて本格的に考えることになりました。しかし、レディ魚―でツアーを企画するのは初の試み「行ったことのない浜中町でツアーを開催できるんだろうか...」と不安な気持ちが抑えられない時間が続いていました。

そんな中ある日の新聞で、「危機感を将来の力に」というタイトルで浜中漁業協同組合やウニの加工会社、町長、それぞれの水産に対する想いがつづられており、浜中町の皆さんの水産に向き合う熱さに心を打たれました。「浜中町に行ってみたい」「話を聞きたい」「浜中町のあれも見たいこれも見たい」という好奇心があふれだし、ツアーのコンセプトや目標から決めることにしました。

とはいっても、「どういった内容のツアーを行えばよいのか」「何のためにツアーを行うのか」という事すら頭に浮かんでいない状況。まずは、ツアーの目的を決めるために、私が漁村訪問を行っている理由から考えてみることにしました。

レディ魚―メンバーに相談しながら、漁村になぜ行っているのか考えます。

食材を見たときや地名を見たときなど、ふとした時にその生産地の様子(漁師さんの顔や町の空気感)が思い浮かぶ。そんな時「幸せだな。またあの町に行きたいな」と感じる。私が漁村訪問を行う理由は水産の現場を学びたいからという気持ちの他に、より深く、より鮮明に漁村の様子を感じたいから。そんな想いが強く存在していることに改めて気づかされました。

そして、今回のツアーでも、ふとした時に浜中町が思い浮かび、普段の生活や勉強の時に食材、生産地への思いや興味がより深まるものにしたい。

ツアーの目的は「一次産業から食の生産地浜中町を感じる」に決まりました。

readygo_hamanaka05.png

ツアーの目的を軸に、いよいよツアーの内容を考えます。ラジオパーソナリティーやテレビでご活躍されているとついようこさんの紹介から、浜中町の本当に多くの方とお話させていただき、「あれも見たい、これも見たい...」私自身、好奇心があふれてしまい、気づけば、浜中町の一次産業を堪能できる4日間のツアーの大枠が完成しました。(ツアー内容は次章『ツアーを改めて振り返る』を参照)

その後ツアーの参加者の募集を行い、東京海洋大学、北海道大学、北海道文教大学から水学生計5人の参加が決定しました。参加者の多くが「水産」や「食」に関わることを学ぶ学生であり、改めて今回のツアーで食の生産地浜中町の様子をより深く、より鮮明に持って帰れるものにしたいと感じました。

ツアー開催一週間前、本当に浜中町の多くの皆さんの協力のおかげでようやくツアーの計画が完成。
訪れたことのない町、会ったことのない参加者、不安だらけの中、いよいよツアー当日です!!

ツアーを改めて振り返る

ここからは、角谷がお送りいたします!さっそくですが、4泊5日のもりだくさんなツアーが一体どんなものだったのか??その全貌を簡単にご紹介します。

readygo_hamanaka06.pngツアーの時程をテレビ番組風にまとめてみました!

こうやって振り返ってみると、我ながらなかなか濃いツアーだったなと思います。4日間を息つく暇もなく走り切った浜中町ツアー、これから一緒にみていくことにしましょう!

Day1-1 いきなり全開!浜中町ツアースタート!

9月1日AM4:30、コンブ漁師石塚さんの昆布漁の見学に向かいました。昆布漁に間に合うように前日入りした一行でしたが、空も紫がかった雲が見えるばかりで、いつもならまだ寝ている時間。眠い目をこすりながら前浜に集合すると、夏とは思えない冷たい風に目を覚まされます。8月だというのに温度計はなんと15℃、いきなり道東の洗礼をうけます。

readygo_hamanaka07.png浜中町の昆布漁師、石塚さん。親子三代でコンブ漁を営んでいます。

思いがけない寒さに震えながら、出船していく石塚さんを見送ること数分、一隻の船が東から全速力でやってくるのが目に入りました。一隻、見えたかと思ったら、驚いたことに、船が次から次へとやってきます。60隻を超える大群はあっというまに前浜一体に広がり、コンブ漁が始まりました。船上では自分の身長を遥かに越す長い竿を器用に使いながら、昆布が揚げられていきます。

readygo_hamanaka08.pngコンブ漁を見学!奥にはたくさんの船が!!

船上で次々に昆布が収穫されていく間、陸も大忙し。船で獲らない、陸で行うもう一つの昆布漁。浜に打ちあがった昆布を集める「拾い昆布漁」です。この日、石塚さんのお父さんと息子さんは、浜に打ちあがった昆布を集めて、機械車に乗せていきます。見事な連携プレーにより次々に昆布が運ばれていくのでした。

readygo_hamanaka09.png浜から昆布を運ぶ専用の機械

出船から3時間後、昆布漁を終えて船が戻ってきます。船一杯に積まれていたのは、黒々と艶がある立派な昆布!採集された昆布は、軽トラに乗せられて丘の上の干場へと運ばれていきます。

ここから、ツアー参加者みんなで昆布干し体験をさせてもらいました!今回獲られた昆布は実は二種類。長昆布と厚葉昆布です。二種類の昆布を見分けながら重ならないようにコンブを並べていきます。コンブを見分けるのに苦戦しながらも、どうにか干し作業を完了させることができました。

Day1-2 太さ50㎝!?幻の鬼昆布

石塚さんの作業場を後にして急いで次の目的地、昆布漁師の徳光さんの作業場に車を走らせます。

現場に向かうと目の前に現れたのは、先ほどの昆布とは全く違って非常に幅広く厚い昆布。幻の昆布、鬼昆布です。その名前にふさわしく、大人の男性すらすっぽり覆い隠せてしまいそうな迫力に思わず声を失ってしまいます。

水洗いが終わると今度は乾燥作業に入ります。大変厚くて大きなこの昆布は、なかなか天日干しだけでは乾燥しにくく、乾燥機が必須といいます。昆布の乾燥のお手伝いが終わると、手作りのおにぎりをいただきました。一緒に体を動かした後に食べるご飯は本当に本当に美味しかったです。

readygo_hamanaka14.png鬼昆布干し!でかい!分厚い!!

Day1-3 浜中町の「もう一つの顔」酪農の現場へ!

一次産業が盛んな浜中町は漁業だけではなく、酪農も盛ん!午後からは鈴久名牧場さんにお邪魔しました!

鈴久名牧場さんでは、なんと約1,800頭の牛の飼育を行っているんです。2023年にできたばかりの最新のロボット牛舎を見せていただきました。ロボット牛舎というと、なんとなく人の手のかかっていない、温かみの無いものなのかと最初は感じていました。しかし、お話を聞いていくと、ロボットの24時間搾乳により効率よく、牛のペースに合わせた搾乳ができ、健康管理により時間をかけることができるそうです。

readygo_hamanaka15.png広すぎて端から端が見えない...これが何棟もあるから驚きです

今では20名の従業員を抱える鈴久名牧場さんですが、もともとは160頭ほどの牛を飼育する家族経営の牧場でした。「人口の減る町で産業を維持していきたい、町の人口が減っても生産量を維持するために牧場の大規模化を進めてきた」と言います。町の社会課題に向き合い、ロボット牛舎といった新しい形の酪農で町を引っ張る姿はとても頼もしく見えました。

Day1-3 夜の交流〜カレーと笑顔と語らいと〜

お風呂に入った後,最後は待ちに待った夕飯です。夕飯はバンガローの炊事場でカレーを作りました。ツアーほぼ初日にしての共同作業でしたが、チームワーク良く見事完成!夕食時には、浜中町の地域おこし協力隊のお二人にお越しいただき,お話を伺いながら団らんを楽しみました。

北海道外から浜中町に惹かれて地域おこし協力隊になったというお二人、きっかけは浜中町へのインターンでした。年齢が近いこともあり,浜中町の魅力や趣味,学んでいることなど様々なことを話し夜遅くまで盛り上がりました。

いやぁ、充実したツアーでしたね...
て、まだ一日しか終わってませんでした!

ということで前編はここまで。二日目以降の様子は後編にてお伝えいたします!

北大水産サークルレディ魚ー×くらしごと
北大水産サークルレディ魚ー×くらしごと
住所

北海道札幌市北区北20条西5丁目2-50(レディ魚ー事務局)

URL

https://www.instagram.com/ready_5500/

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『レディ魚ー×くらしごと』番外編:浜中町水産ツアー前編

この記事は2025年9月15日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。