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北海道で暮らす人・暮らし方
羽幌町

人々の大らかさがゆとりを生む海のまちで、のびのび子育て20250806

人々の大らかさがゆとりを生む海のまちで、のびのび子育て

北海道の日本海側、北部にある羽幌町。豊かな海に恵まれ、日本でもトップクラスの水揚げ量を誇る甘エビをはじめ、タコ、ホタテといった海産物が自慢の町です。また、夕日の美しさでもよく知られており、海鳥の聖地と呼ばれる天売(てうり)島、天然記念物の森がある焼尻(やぎしり)島という二つの離島を有する町でもあります。今回は、甘エビ漁師のもとに嫁ぎ、現在、子育て真っ最中の東谷(あずまや)りなさんに取材。「羽幌は道も土地も広いけど、人の心もとても広くて。自分も大らかな気持ちでいられるので暮らしやすいですよ」と話す東谷さんに、羽幌町での暮らしや子育て環境について伺いました。

横浜からたどりついた羽幌町

2017年に結婚し、羽幌町へやって来た東谷さん。横浜出身と伺っていましたが、「転勤族だったので、あちこち引っ越しを経験して、羽幌へ来る前は札幌にいました」と話します。

20250623_azumaya_haboro_18.jpg小樽から稚内までを結ぶ「オロロンライン」の途中にある羽幌町。オロロンラインという名称は天売島に生息するウミガラスの別名「オロロン鳥」にちなんだもの。

札幌の美容の専門学校へ通い、卒業後は札幌で美容師として働いていました。専門学校時代の友人が羽幌町出身で、そのつながりで旦那さんと知り合ったそう。

「知り合ったときから夫は甘エビ漁の漁師で、付き合い始めてからは、いつか結婚したら羽幌へ行くことになるのだろうなと、ぼんやり思ってはいました」

最初は羽幌町がどこにあるか知らなかったと笑う東谷さんですが、旦那さんとお付き合いをはじめ、少しずつ羽幌町のことも分かるように。

「移住に関して抵抗はありませんでした。夫と結婚する時点で、そこはもう腹を括っていたので。そして、もともと転勤族だったこともあり、田舎だろうが、大都会だろうが、どこに住んでも何とかやれちゃうタイプなので、大した不安もなかったんです。どう転んでも大丈夫!と思っていて、羽幌には羽幌の良さがあるだろうくらいの感覚で来ちゃいましたね」

20250623_azumaya_haboro_12.jpgとっても明るく快活な東谷りなさん。周りも元気にさせちゃう雰囲気をお持ちです。

そう言って笑う東谷さんを見ていると、とてもたくましい印象を受けます。現在は、事務仕事などで旦那さんの甘エビ漁のサポートをする傍ら、2人のお子さんの子育てに奮闘しています。

過剰な気遣いも、遊ぶ場所を探す必要もナシ!子どもも犬ものびのび

東谷さんの2人のお子さんは、小学3年生と今年小学校に入学したばかりの男の子。次に羽幌町での子育てについて伺っていこうと思います。

「羽幌で子育てをしていて、イイなと思うのは、子どもたちが騒いだり、走り回ったりすることがあっても、神経質に怒る人がいないところ。ご近所の皆さんが大らかで心が広いおかげで、犬も含めて家族みんな自然体で過ごせています」

20250623_azumaya_haboro_17.jpg二人とも走るのが早い!元気いっぱいです!

都会に暮らしていると、隣近所が気になって、子どもや犬の声も含め、音を出さないようにできるだけ静かに生活をしなければならないと考えてしまいがち...。でも、羽幌町では、リラックスしてのびのびと子育てができていると東谷さん。

「あとは、とにかく町のいたる所に遊ぶ場所があるというのも魅力かな。遊ぶところと言っても、都会のようなアミューズメントパーク的なものはありませんが、この辺はどこででも遊ぼうと思えば遊べるんですよね。私自身が外で遊ぶのが好きだったこともあって、天気がいい日は、『外で遊ぼう!』と子どもたちを連れ出しています。夏なんか、毎日のように海へ行っていますよ」

20250623_azumaya_haboro_6.jpg日本海が一望できる超絶景のお庭!なんとお家の敷地は875坪とのこと!羨ましい〜!

都市部だと子どもが遊ぶ場所は限られています。公園や施設など、年齢に見合った遊び場を常に親が探さなければなりません。中には、お金を払わなければ遊べないような場所もあります。しかも、その場所がいつも空いているわけでもないですし、ときにはとても窮屈で、親子共々ストレスを感じることも...。

「羽幌にいたら、そういうのはまったくないですね。わざわざ広場や公園を探さなくても、どこででも遊べますから。子どもたちも自分たちで遊びを考えて楽しそうにしています。あ、犬もそうですね。うちはゴールデンレトリバーを飼っているのですが、家の裏を走らせ放題なので、ドッグランに行く必要もないです(笑)」

子どもも、犬も、毎日のびのびできるなんて羨ましい環境です。「静かにしなさい!」と目くじらを立てて、お母さんが怒る必要がないのは、親にとっても子にとってもノンストレスです。

20250623_azumaya_haboro_3.jpgゴールデンレトリバーのきなこ1歳。人が大好きなワンちゃんです。

海のすぐ目の前にあるという東谷さんの自宅。子どもたちは、夏は海で遊ぶことが多く、上のお兄ちゃんは海で潜って遊ぶうちに自然と泳ぎを覚えたそう。「遊びを通じて、そういうことを身につけられるのはいいなと思います」と話します。一方、冬は家の周りに積み上げられた雪山で遊び、それに飽きたら、車で15分ほどのところにあるスキー場へ行くそう。「雪が多いので、好きなだけ雪遊びできますよ」と笑います。わざわざ遊ぶ場所を探す必要もなく、自由に遊べる自然豊かな環境が家の周りにあるということがよく分かります。

また、「町内で定期的にいろいろなお祭りやイベントが行われるのも、メリハリがあってちょうどいい」と東谷さん。5月に子どもフェスティバルがあり、6月はバラ園のバラフェスティバル、7月は羽幌神社の例大祭と、毎月のようにイベントごとがあります。「神社の例大祭は、町の人たちが神輿を担いで練り歩く、昔からある伝統的な祭り。それを次の世代を引っ張っていく子どもたちに見せられるのもいいなと思います」と話します。

haboro_matsuri202507.jpgまちが活気づく羽幌神社例大祭。本神輿と加賀獅子がぶつかる「練り合い」の迫力は圧巻です!

出産前から保健師さんがしっかり丁寧にサポート

では、ちょっとさかのぼった話になりますが、赤ちゃんのときの町のサポートはどうだったのでしょう?

「羽幌には、小児科はあるのですが産婦人科がないので、車で1時間ほどの留萌市の市立病院で子どもたちを出産しました。ただ、妊娠中から常に羽幌町の保健師さんらがサポートに入ってくれていたので、それはありがたかったです」

上のお兄ちゃんの出産のときは、初めて暮らす土地で、初めての出産。旦那さんも漁でいないことが多く、右も左も分からない状態の中、不安もあったそう。

20250623_azumaya_haboro_14.jpg取材のこの日、旦那さんはエビ漁の真っ最中。夜中に出港し約20時間後に戻ってくるのだとか。

「でも、保健師さんたちがとてもきめ細かくサポートして、見守ってくださっていたので、心強かったです。札幌で子育てをしている友達が、生後数カ月の小さい赤ちゃんを抱っこして、一人でおどおど地下鉄に乗って、乳幼児健診に行って、しかも混んでいて大変だった...なんていう話を聞くと、羽幌はいいなぁと思いました。保健師さんがお母さんと赤ちゃんをきちんと丁寧に見てくださっている感じがして、人の温かさもすごく感じました」

羽幌町では赤ちゃんが生まれると、町からベビー布団のプレゼントがあります。焼尻島で飼育されている焼尻めん羊の毛を使用したこの布団は、町内で緬羊工房を営む方が発起人となり、町の事業者さんとともに試行錯誤ののちに作られたメイドイン羽幌の布団。「羽幌に産まれて来てくれてありがとう」という想いが込められています。

「幼稚園に入る前までは『すこやか健康センター』によく行っていましたね。この施設の中に、赤ちゃんがいるママたちが集まって保健師さんらとお話ができたり、情報交換ができる子育て支援センターがあるので、ここの存在にも助けられました」

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幼稚園に入る前の乳児を抱えたママたちの中には、赤ちゃんのお世話に追われ、ほかの人との交流がなかなかできず、孤独に陥るケースも...。でも、子育て支援センターがあり、妊娠中から出産後も伴走してくれる保健師さんらがいることで、乳児期の子育ての不安は随分解消されたと東谷さんは振り返ります。

親同士も子ども同士も。いい関係性が築ける町

赤ちゃん期が終わると、次は幼稚園、小学校と続いていきます。町内に幼稚園は2つありますが、小学校は1つ。ひと学年1クラスなので、同級生はもちろん、親たちもだいたいお互いのことは分かるそう。

「上の子が幼稚園に入ったころ、ちょうどコロナの感染が広がっている時期で、園でもイベントとかは一切なく、親同士の積極的な交流もなかったのですが、この1、2年でようやく制限がなくなり、親たちも交流できるようになりました。子ども同士だけでなく、家族ぐるみの付き合いもしています。休みの日に一緒にバーベキューしたり、外にプールを出して子どもたちを遊ばせて、親は横でお茶したり...。冬も子どもたちが外で雪遊びしている間、親は部屋の中でおしゃべりしています(笑)」

子どもたちだけでなく、親同士も自然といい関係性が築けているのが伝わってきます。中には高校まで一緒というケースもあるそうで、赤ちゃんから知っている場合、18年の付き合いに。ここまできたら、わが子もよその子もみんなで一緒に子育てをしているような感覚になりそうですね。

現在、上のお兄ちゃんは、羽幌町内のダンス教室「Smugface(スマグフェイス)」に入って、ブレイクダンスを習っています。レッスン自体は週に1回ですが、イベント出演や大会があるときは、毎日のように自主練などを行っているとのこと。「楽しいんでしょうね。すごく一生懸命やっています」と東谷さん。

20250623_azumaya_haboro_15.jpg大人顔負けのかっこいいダンスを見せてくれました!先生は町内で飲食店を経営する小野寺さんです。

一方、下のお子さんはダンスには興味がなく、「先日見学したバレーボールの教室に興味が湧いたようで、バレーボールをやってみたいと言っています。2人とも少しずつ、習い事などを始めて、今までのように外遊びだけというわけにはいかなくなってきたかな」と話します。

とはいえ、毎年楽しみにしている家族での恒例行事があるそう。

「夫は市場の休みに合わせて漁を休むので、土日も漁に出ることが多いのですが、お盆の時期はまとまった休みが取れるので、毎年必ず家族で焼尻島へ渡ってキャンプをしています」

羽幌の港から、高速船なら35分、フェリーなら1時間で焼尻島に到着。すぐ近くの島なのに、羽幌とはまた違った豊かな自然が広がっているそう。「特に海の透明度がすごく高くて、潜るのが楽しいんですよ」と東谷さん。今年も家族で過ごす夏の休日が待ち遠しいところです。

新鮮な食材に囲まれ、美しい夕日に感動する豊かな暮らし

さて、前のほうで「ご近所の皆さんが大らかで心が広い」とありましたが、どんなご近所さんがいらっしゃるのでしょうか?

「地方都市の多くがそうであるように、確かに高齢の方が多いのかもしれませんが、羽幌のおじいちゃん、おばあちゃんはみんな元気。朝早くから夏は畑仕事して、冬は雪かきをしています。体を動かしているからか、みんな若々しいんですよね。そして、優しい人ばかり。子どもを連れて散歩していたら、『おいで、おいで』と手招きしてくれて、お菓子や飲み物をくれるのはしょっちゅう。ジャガイモがいっぱいできたからと言ってジャガイモを大量にいただいたこともあります(笑)」

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羽幌の子どもはみんなの子どもという接し方で、「分け隔てなく子どもたちをかわいがってくれている感じがする」とも話します。

ジャガイモをいただいたという話が出ましたが、羽幌の食事情はどうなのでしょう? 

「札幌に比べたら、海のものも、畑のものも新鮮なものがたくさん手に入ると思いますよ。そうそう、ご近所さんと物々交換するときもあります。うちは甘エビ漁師だから甘エビがいっぱいあるので、エビに飽きちゃったなぁと思ったら、ホタテ漁師さんのホタテと交換したり、散歩途中にジャガイモをもらったら、そのお礼にうちの甘エビを持っていったり。おすそわけでいろいろな野菜をいただくこともよくあります」

202507photoac_amaebi.jpg市場にはあまり出回らない希少な魚介が食べられるのも、漁師町ならでは。

時期によっては、「家の中がアスパラまみれ、大根まみれというときもある」と東谷さんは笑いますが、「でも、鮮度の良いものをたくさんいただけるのは本当にありがたいですね」と続けます。

買い物事情はどうなのかを尋ねると、「最初、羽幌へ移るとき、田舎と言ってもどのレベルの田舎なのかよく分かっていなかったんです。もし、店とかなかったら困るなぁと身構えて来てみたら、ドラッグストアもスーパーもコンビニもあって、何も不自由はありませんでした。子育て世代に欠かせない100均もあるから、買い物で困ることはありません」と話します。

最後に、羽幌で特に好きな場所や景色はありますか?と質問。東谷さんは、「そうですね、外で遊べるところはどこも好き(笑)」と言ったあと、「一番好きな時間は、海沿いを子どもたちと犬と散歩しているときかな。あと、家から見える景色も好きです。特に夕方、太陽が海に吸い込まれていく様子は、毎日見ていても飽きないし、毎日キレイだなぁと感動しています」と、とてもいい笑顔で教えてくれました。

20250623_azumaya_haboro_2_2.jpgまだシーズン前の「はぼろサンセットビーチ」で、はいポーズ!

羽幌町 東谷さんご家族

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人々の大らかさがゆとりを生む海のまちで、のびのび子育て

この記事は2025年6月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。