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厚真町

自分は何者か?が見えてくる、リアルを感じるローカルビジネス。20190924

この記事は2019年9月24日に公開した情報です。

自分は何者か?が見えてくる、リアルを感じるローカルビジネス。

新千歳空港や苫小牧港からほど近い厚真町。太平洋に面し、山にも畑にも恵まれた風光明媚な場所ですが、実はここで今、ベンチャービジネスが熱いんです!地域でビジネスを始めるって、実際どうなんでしょう?

実際に厚真町で起業に挑戦している成田智哉さんにお話を聞いてみました。

順調な会社員生活の中、「自分は何者なのか?」

お話を聞いた場所は、厚真町にあるシェアオフィス。シンプルな空間で、コンパクトなタブレットを開いて仕事をする成田さんの姿からは、フットワークの軽さを感じます。


atsuma_narita2.JPGこちらが成田さんです。

千歳市出身の成田さんは、東京大学を経て、トヨタ自動車に入社。ブラジル駐在員も経験し、順風満帆な会社員生活を送っていました。しかし30歳になった時に、「自分は何者で、何を成し遂げられるのか」と思い、起業を決意し、会社を退職。

起業を決意したと言っても、何をするのかは全く決まっていない状態でした。そこで日本に戻った成田さんは、日本中の地域を回り、いろいろな人に会って話を聞くことにしました。その人数は、1,000人にも上ります。その中で、「地域にこそ最先端がある」と気づいたそう。

成田さんは、自身を「イエスマン」といいます。人から誘われたら、躊躇せずにイエスと言い、とにかくやってみる。そんな姿勢で、「明日、岡山県の西粟倉村に行ってみる?」と言われ、「行きます!」と即答。

そこで出会ったのが、株式会社エーゼロの社長・牧大介さんでした。株式会社エーゼロは、西粟倉村と厚真町で、「ローカルベンチャースクール」というプログラムを開催し、地域で新たな価値創造にチャレンジする人をサポートしています。

西粟倉村に続き、2016年からは北海道厚真町でもローカルベンチャースクールの事業を開始。牧さんは株式会社エーゼロ厚真を設立し、運営に当たっています。
この事業は「厚真町で起業したい人」を募集し、一次審査、最終審査を経て起業への決意やビジネスプランをブラッシュアップし、合格した人は最大3年間、厚真町で地域おこし協力隊として町から財政的支援を受けながら、起業して自立を目指す制度です。成田さんもこのローカルベンチャースクールに3期生として参加した一人です。

ローカルで起業する価値を見出し、チャレンジ

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「起業し、自立して稼ぐ場所として、ローカルは面白いと思いました。また、地域を回っている中で社会起業家という言葉も知り、興味を持っていました。机上でアプリを作って稼ぐよりも、地域で目の前にある困りごとを解決する。人のためというと押し付けになるけれど、それを自分が楽しめて生活も成り立つという環境は、やりがいがあるだろうと思ったんです」

特に、地元の北海道で募集していることも、成田さんの心を動かしました。平成30年北海道胆振東部地震の時は、ブラジルにいた成田さん。その時から、地元の千歳市に近い厚真町のことは気にかかっていたのです。目前に迫っていた厚真町のローカルベンチャースクールの話を牧さんから聞き、「どうにかねじ込んでもらって応募しよう」と急きょ準備を開始しました。

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地域を知る中で浮かんでいたビジネスプランは、地域の交通インフラの問題を解決する事業でした。北海道の高齢・過疎地域では採算性の問題で交通網が衰退していますが、行政と協力し、ITを駆使して既存のバスや自動車を活用して解決に結びつけるというプランです。一次審査、最終審査に合格した成田さんは、厚真町でこの事業を実現させるべくスタートすることになったのです。

厚真町の充実した伴走・サポート体制

「まずは、こういった制度で人を受け入れようとする柔軟な行政が面白いと思いましたね。新しいことをやろうとしても行政が歯止めをかけるという話はよく聞きますが、行政が率先してやっているのですから、人の輪は広がりますし、地元の人とうまくやっていくことで長く続いていく事業が作れると思いました」

成田さんが作った会社の名前は、マドラー株式会社。レガシー(遺産)×テクノロジー、都会×地方、ベテラン×ワカモンなど、相反するものを混ぜ合わせ、お互いをリスペクトしていいところを引き出し、新しい価値を生み出すことを目指しています。

atsuma_narita9.JPGここは厚真町にあるシェアオフィス。マドラー株式会社もここから始まりました。

また、株式会社エーゼロ厚真の取締役である花屋雅貴さんが、必要な場面で助言してくれるのも大きな支えになっています。
「決して過保護ではなく、まさに伴走してくれるという感じです。相談に応じてくれて、軌道修正してくれる。スタートアップがここでできてよかったと思います」

atsuma_narita4.JPGこちら写真左がエーゼロ厚真の取締役花屋さん。フランクに話せる間柄です。

地域だから、課題の手触り感が得られる

成田さんは、都市にいたら見えない地域の『手触り感』を何より大切にしています。
交通インフラ事業は、地域の自治会長と面談し、高齢者の困りごとを直接ヒアリングします。「直接見聞きすることで、課題の『解像度』が上がっていきます。顔が見えているから、現地ならではのサービスを形にできる。それは、大企業にはできないことだと思います」


atsuma_narita6.JPG厚真町のある日の風景

地域の既存の事業者とも競争関係になるのではなく、合意形成しながらお互いに補完できる関係を目指しています。厚真町で成功したら、他の地域でも同じように課題をあぶり出し、展開していけるのではと考えています。

厚真町に住んでみて、良いところを見つけようと思ったという成田さん。結果、「良いところしかない」という結論に。

「空港から近く、山、畑、海がある。気候も過ごしやすく、美味しいものもたくさんあります。五右衛門風呂に入ったり、山菜を採って天ぷらにしたり、マウンテンバイクで本当の山道を走るなど、自然が多いからできる体験もたくさんさせてもらいました。こんなに素晴らしいのに、もともと住んでいる人には当たり前で、こんなに価値があるということに気づいていないんです。これは、東京からどんどん人を呼び寄せて体験してもらいたいと思っています」

そう熱っぽく語る成田さんから聞くと、「なんと贅沢な場所!」と改めて思えてきます。

不透明な世の中、「ローカルビジネス最強説」

atsuma_narita8.JPG楽しそうにエーゼロ厚真の花屋さんとビジネスについて語り合う姿


「ローカルビジネス最強説」を唱える成田さん。「東京にいたら、起業しても注目されるのは至難の業ですが、人口4,600人の厚真町で起業すれば一瞬で目立てます。名もなき人が名を持つことができるんです」
それを武器として使い、ボランティアではなくビジネスとして成り立たせることに意味があると考えています。「お金を払う人がいるということは、ニーズがあるということ。ビジネスとして回せれば、持続可能性が生まれます。だから、地域の中でビジネスをする価値があるんです」

「組織の中で疲弊している人が、そこから離れるならローカルベンチャー」と提唱する成田さん。大企業という枠から出ると、「あなたは何者か」と問われることになるといいます。成田さんも会社を辞めてたくさんの人に会う中で、人に尋ねられ、自問自答してきました。

「組織の中にいた時は考えたこともないことを考えるきっかけになります。今の世の中、大企業にいても今後はどうなるかわかりません。そんな中、自分の名刺、自分の居場所を見つけ、将来の戦略を立てることができます。さらに、厚真町にはサポートしてくれる枠組みがある。自分はこのままでいいのか?と疑問を持っている人には、やらない理由はないと思います」

誰もがうらやむようなキャリアを捨て、地域に飛び込んだ成田さん。そこには、自身が本当に納得できる、自分と仕事に対し手応えの感じられる世界がありました。

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成田智哉さん(厚真町起業型地域おこし協力隊)
URL

http://muddler.mystrikingly.com

◎ローカルベンチャースクールを担っている株式会社エーゼロ厚真の連絡先

住所:北海道勇払郡厚真町字上厚真18-1

電話:070-1226-0980

https://www.a-zero.co.jp/


自分は何者か?が見えてくる、リアルを感じるローカルビジネス。

この記事は2019年7月10日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。