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【北海道へ移住 生活費のお話】vol.11 美唄市20250711

【北海道へ移住 生活費のお話】vol.11 美唄市

この春、予定より早めに美唄の地域おこし協力隊を卒業し、個人事業主として独立したKdoクリエイティブラボの工藤裕さん。

妻の由里子さんの実家が美唄だったことがきっかけで、美唄に暮らすようになりましたが、「美唄の町は前を向いている感じがして、これから町がどう変わっていくかが楽しみです」と話します。

移住前は横浜や東京に暮らしていた工藤さんファミリーのこれまでと、今の美唄での暮らし、その先に描いている未来について、そして気になる生活費についても伺いました。

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工藤さんご家族 基本データ

〈家族構成〉
夫・工藤裕さん、妻・由里子さん、長女・朱華ちゃんの3人家族

〈移住情報〉
裕さんは横浜出身で、由里子さんは美唄出身。裕さんは大手飲食チェーン店に勤務し、店長まで務めていたが、通勤時間の長さや家族と過ごす時間がないなどを理由に、家族で移住を検討。由里子さんがいつか美唄に戻りたいと考えていたこともあり、美唄へ。空いていた亡き祖母の家をリフォームして暮らすことに。

移住してみての感想

  • 家族と過ごす時間が増えた
  • 自然が近くにあり、静かで暮らしやすい
  • 花火やBBQが堂々と家の前でできる
  • 子育てに関する制度が整っていて手厚い
  • 奥様がパートで就業できるようになり、家族収入が年間約130万程度増えた
  • 人との距離がいい意味で近い
  • 札幌駅まで特急で35分、札幌中心部まで車で60分とアクセス便利

移住前の生活費と移住後の実際の生活費(月額)

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※左側は横浜在住時の生活費、右が美唄市に移住してからの生活費です
※市内の小中学校に在学する児童生徒の保護者を対象に、学校給食費が無償化されています
※幼稚園の利用料は無償です(入園時から小学校入学前まで)
※交際費・嗜好品等の出費はふくまれていません

合計支出が移住後に5万円も減少していることからもわかるように、住居費や医療費だけでなく、教育費や場合によってはその他の生活費も助成制度や地域の特性によって抑えられています。これにより、全体的な家計の負担が軽減され、経済的なゆとりが生まれています。

やりがいもあり、収入も良いが...。娘の寝顔しか見られない生活に悶々とする日々

2022年に東京の府中市から妻・由里子さんの故郷である美唄へ移住してきた工藤さん一家。裕さん、由里子さん、そして5歳になる一人娘の朱華ちゃんの3人家族です。現在は、由里子さんの両親の家と棟続きになっている亡き祖母の家をステキにリフォームして暮らしています。

美唄へ移るきっかけについて、まずは裕さんにこれまでの歩みも含めて伺いました。

「僕は横浜出身で、大学を出たあとはスポーツクラブでトレーナーをやっていましたが、ちょうど30歳になる年に、以前から興味があった飲食の仕事がしたいと思って、大手のチェーン店に転職しました」

裕さんの父親が料理の仕事をしていたこともあり、その背中を見て育った裕さんは、学生時代も飲食店でアルバイトをしていたそう。

kudousan_02.jpg地域おこし協力隊を卒業し、個人事業主として独立したKdoクリエイティブラボの工藤裕さん。

「さらに同じ業界で転職をして、移住前は横浜の店舗で店長もさせてもらっていました」

好きで就いた仕事はやりがいもあり、収入も多かったそうですが、「通勤に1時間近くかかるし、帰りも終電というのが当たり前の日々。結婚して娘が生まれてから、こんな生活をしていていいのかなと悩むようになったんです」と振り返ります。

収入はあるけれど、その分、高い家賃をはじめ支出も多い都会での暮らし。さらに、多忙を極めていたため、朱華ちゃんが起きる前に出勤し、寝ている時間に帰宅。かわいい盛りの朱華ちゃんの成長を見ることができないというジレンマもありました。

「正直、都会の暮らしも、好きな飲食の仕事も、もうお腹いっぱいという感じもあったんです。それで、妻の実家の美唄へ移ろうかという話になりました」

kudousan_03.jpg自宅に飾られた、娘・朱華ちゃんの可愛らしい作品の数々。

生まれ育った美唄にいつか戻りたい。家族のことも考えて移住を決意

次に由里子さんに話を伺いました。由里子さんは、札幌にあるデザイン系の短大を卒業後、そのまま札幌で就職。しばらくして、テレビドラマの衣装の仕事がしたいと東京の会社に転職し、テレビドラマの制作現場の第一線で活躍してきました。リフォームした部屋がオシャレなのも、由里子さんと朱華ちゃんの服のコーディネートがさりげなくお揃いになっているのも納得です。

「衣装の会社に18年ほど勤めたあと、グルテンフリーの生地に世界各国の惣菜を巻いたデリラップを販売するキッチンカーを始めたんです。その傍ら、前職の伝手もあったので、依頼があればフリーのスタイリストとしても仕事をしていました」

朱華ちゃんを授かり、一旦仕事はすべて手放しますが、子育てをしながら「夫が忙しすぎて、子どもの寝顔しか見られないのはかわいそうだなと思っていました」と話します。

kudousan_04.jpg移住前の横浜や東京での暮らし、そして美唄での現在の生活について話す工藤さん夫妻。

「私はもともと美唄がすごく好きで...。ドラマの仕事をしていたときも、1本ドラマが終わると連続で休みが取れるので、しょっちゅう美唄に帰ってきていました。いつか地元に戻りたいと考えてもいましたし、娘をのびのび育てたいという思いもありました。そして、このままだと夫が家族と過ごす時間を取れないと思い、美唄に引っ越すことにしました」

美唄へ移るにあたり、夫婦で話し合いを重ね、美唄に暮らした場合の生活費のシミュレーションもしたそうです。

「でも、祖母が暮らしていた家が空いていたので、とりあえず住む場所はあるし、あれこれ考えていてもなんだから、もう行っちゃおうか!という感じで、娘が幼稚園に入るタイミングで美唄に移りました」

kudousan_05.jpg美唄市でのびのびと成長している朱華ちゃん。美唄市は子育てに関する制度が手厚いと由里子さんは話します。

求職中に地域おこし協力隊の募集を知って応募。広報の仕事を通じて町の人と交流

移住してきて、次にやらなければならないのが仕事探しでした。裕さんは美唄や近郊で飲食業の経験を生かした仕事を探しましたが、条件に合うところはなかなか見つからなかったそう。

「収入のことも考えたら、札幌まで働きに出ないと難しいかなとはじめは思いました。でも、札幌まで通うとなると、結局、横浜の店で働いていたときと変わらない生活になってしまうと考え、飲食にこだわらずに探すことにしました」

そんなとき、ちょうど美唄市で地域おこし協力隊を募集していると知ります。

029_bibai.jpg美唄市役所の外観。工藤裕さんは地域おこし協力隊として市役所の広報業務支援を担当していました。

「妻は美唄出身なので友達も知り合いも多いけれど、僕自身はまだまだ美唄のことを知らなかったので、協力隊として市役所の仕事に従事しようと応募しました」

そして、裕さんは地域おこし協力隊として、2022年10月から役場の広報業務支援を担当することになります。

「広報の仕事なので、地域のさまざまなイベントに赴いて取材をして、広報誌やSNSに記事をアップしたり、町の人やほかの協力隊の人たちに取材をして情報発信をしたりするのが主な仕事。おかげで美唄の町のこともよく分かるようになったし、町の人たちとも交流ができるようになりました」

美唄は、ほかの地方都市と同様に高齢者が多く、若者離れが顕著。もっと若い人たちにも美唄の良さや魅力を知ってもらいたいと、工藤さんは公式のYouTubeも始めます。

kudousan_07.jpg地域おこし協力隊として、美唄の魅力を発信してきた工藤裕さん。YouTubeチャンネルも開設しました。

協力隊を経験したからできることを事業に。個人事業主として独立を決意

「2年間はとにかくできることをやろうと、これまで経験のないことも町のPRになるならとたくさんチャレンジしてきました。協力隊3年目に入ったあたりから、卒業後のことをそろそろ考えなければと思うようになりました。このまま役場の仕事に携わるという選択肢もありましたし、経験のある飲食で起業をするという選択もありましたが、ふと、僕がこの町でできることってほかにもあるのではないかと思ったんです」

これまで多くの協力隊メンバーが美唄にやってきましたが、協力隊の任期が終了すると、その多くが美唄を去っていったそう。定住してほしいと考える市の期待とは逆で、残る人が少ないというのが課題でした。

「なぜ残らないのかを考えたとき、もっと協力隊へのフォローが必要だったのではないかと思ったんです。地方で暮らすには、地元の人との関係性作りが大事。外からやってきた協力隊が町に溶け込むためには、役場や担当者の協力隊メンバーへのサポートがもっと必要だと常々感じていました。でも、役場も忙しいのでなかなか十分なフォローをできていないのが現状。そこで、役場のことも分かっていて、協力隊の経験がある僕だからこそできる協力隊のサポートを事業にできないかとひらめきました」

kudousan_08.jpg地域おこし協力隊をサポートする事業を立ち上げた工藤裕さん。

協力隊としての任期はまだ残っていましたが、役場のほうに提案をすると、役場は快諾。協力隊を早めに卒業し、市から委託を請ける形でこの春から個人事業主になりました。

裕さんの名刺には、「美唄市定住支援員」「美唄市地域おこし協力隊サポーター」「映像クリエイター」と肩書が記されています。今は、20人近くいる協力隊メンバーを取材し、その様子を動画にして市のYouTubeにアップしているそう。ほかにも、協力隊メンバーの面談を行ったり、メンバー同士の繋がりができるような機会を設けたり、美唄に愛着を持ってもらえるよう活動中です。

「まだはじまったばかりですが、協力隊のことはもちろん、今後は移住者を対象とした交流会なども行っていきたいし、地域のコミュニティづくりや地域の人同士も繋いでいきたいと考えています。町自体に可能性はいろいろあると感じているんです。役場にも美唄を盛り上げていきたいと精力的に活動している職員がいて、前を向いている感じがあるので、僕としてもそこに関わっていけたらと思います」

250615_144.jpg「Bibai Beautiful Movement」と記されたリーフレット。美唄市の魅力を伝える活動に力を入れています。

実は、移住して最初の2年は、横浜にいたときに比べると収入も減ったそうですが、「コツコツやっていれば何とかなるだろうと思っていました。個人事業主となってから、横浜時代とそう変わらないレベルにやっとなり、時間もお金もゆとりができてきました」と裕さん。

ちなみに生活費について尋ねると、府中で暮らしていたときに比べると、家賃が1/4になったそう。

「家賃の差は大きいですね。でも、水道費は正直ちょっと高めだし、東京のような激安店がないので、食費もそんなに下がってはいません。ただ、自宅の横に両親がやっている家庭菜園もあるし、親戚の農家から野菜をもらうことも多くて、その点は助かっていますね」と由里子さん。

kudousan_08.jpgキッチンに立つ由里子さん。実家の家庭菜園や親戚の農家から野菜をもらうことで食費を助けられているとのこと。

家族と過ごす時間がある幸せを実感。いい意味で人との距離が近いのも町の魅力

裕さんは、美唄での暮らしをとても気に入っていると話しますが、美唄の魅力はどのようなところにあると考えているのでしょうか。

「自然に恵まれた、静かな環境というのもいいところですけど、美唄の人も魅力だと思います。僕はもともと人見知りしないタイプなので、誰とでもすぐ仲良くなれるんですけど、美唄の人はみんな親切なんですよね。横浜や東京に住んでいたときは、隣に誰が住んでいるかも知らないような生活をしていましたが、美唄は昔ながらのご近所付き合いもあるし、声もかけてくれるし、すぐに馴染めました。いい意味で人との距離が近いのが魅力なのかなと思います」

雪道を運転している際、慣れない運転で滑って車が雪山に突っ込んだことがあったそう。スピードを出していなかったので、ケガなどはなかったそうですが、「雪山から車を出す際に、近くを通りかかった地元の若い人たちがやって来て、『大丈夫ですか?』と一生懸命雪をかいて、助けてくれたんです。そのときも、こういう人情味があるというか、親切な感じが美唄の人らしいなと思いました」と話します。

また、美唄に移り住んで一番良かったことは、「家族との時間をゆっくり取れるようになったこと」とニッコリ。「本当に来て良かったと思います」と、遊んでいる朱華ちゃんを優しく見つめます。通勤時間も随分と短くなり、暮らしに時間的余裕ができたことで、気持ちにも余裕ができたと話します。「東京や横浜にいるときは気軽に家の前で花火やバーベキューなんてできませんでしたが、美唄では堂々とそれらができるのも越してきて良かったことのひとつかな」と笑います。

250610_097.jpg明るく元気いっぱいの朱華ちゃん。

一方、もともと美唄出身の由里子さんは、美唄が住みやすく居心地のいい町だというのは重々知っていましたが、母親になって美唄に戻ってきて思うのは、「思っていた以上に子育てがしやすい環境だということ。幼稚園は共働き家庭の場合、預かりの料金が格安だったり、給食が無償化されていたり、いろいろと制度も手厚いんです」と話します。

現在、市役所でパート勤務しているという由里子さん。「今はとにかく娘と過ごす時間を大切にしたいと思っているので、パートで十分と考えています。でも、いつかカフェと雑貨店が一緒になっているような店ができたらいいなと思っています」と話すと、裕さんも「そうですね。今の仕事をベースにしながら、何かしらの店を始めてみたいというビジョンはあります」と続けます。

取材の間、そばで楽しそうに遊んでいる朱華ちゃんを温かく見守っていた工藤さん夫妻。都会ではなかなか実現できなかった親子水入らずの時間は、お金では買えないものです。美唄に移住したことでその時間を手に入れることができた喜びが、話の端々から伝わってきました。

ここがポイント、移住して良かったこと!

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移住をお考えの方へ

移住 生活費シミュレーション 北海道美唄市

北海道美唄市に移住したら今の生活費はどうかわるの?
どのくらいの生活費がかかるのか、シミュレーターをつかって計算してみよう!

美唄市 工藤さんご家族
URL

https://www.city.bibai.hokkaido.jp/

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【北海道へ移住 生活費のお話】vol.11 美唄市

この記事は2025年6月10日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。