HOME>このまちのあの企業、あの製品>苫小牧のソウルフード・カレーラーメンを広め伝える。味の大王

このまちのあの企業、あの製品
苫小牧市

苫小牧のソウルフード・カレーラーメンを広め伝える。味の大王20250530

苫小牧のソウルフード・カレーラーメンを広め伝える。味の大王

いまや苫小牧のソウルフードと呼ばれるカレーラーメン。地域で受け継がれてきた食文化として、2022年には文化庁の「100年フード」にも認定されました。このカレーラーメンを最初に考案したのが、苫小牧の「味の大王」です。今回は、カレーラーメンの話を中心に味の大王について、同社代表取締役の中江友紀さん、同社社員で味の大王生粋店の店長を務める石田拓夢さんにお話を伺いました。

カレーラーメンの誕生から、苫小牧のソウルフードと呼ばれるようになるまで

「とまこまいカレーラーメン振興局」のホームページによると、苫小牧を中心に胆振エリアでカレーラーメンを提供する参加店は28店舗(2025年5月現在)。各店それぞれ個性的なカレーラーメンを提供していますが、カレーラーメン発祥の店「味の大王」のそれは、とろみがあり、程よくスパイシーなカレースープが特徴です。北海道らしいちぢれ麺にいい塩梅でカレーが絡み、トッピングのわかめとたっぷりのネギが、カレーライスとは違うカレーラーメン独特のおいしさを引き出しています。


daiou_curryramen_hashiage059.jpg

「果物や野菜、香辛料を練りこんだベースとなるカレーペーストは、カレーラーメンが誕生したときから変わりません。味付けは、香味油を変えるなど時代のニーズに応じて少しずつマイナーチェンジをしていますね。最初の頃は、カレーがもっと甘かったそうですが、今は甘すぎず、辛すぎず、ちょうどいいバランスに仕上げています」

そう話すのは、昨年8月に3代目社長に就任した中江友紀さんです。カレーが絶妙に絡む麺は、初代のころから変わらず同じ製麺会社(苫小牧にある株式会社こんの)の中太ちぢれ麺を使用。その話からも、カレーラーメンが長い間、「味の大王」で大事にされてきたメニューであることが伝わってきます。

さて、まずはカレーラーメンの歴史について。誕生したのは1965年。東京オリンピックの年でした。その頃から北海道のラーメンと言えば、今と同じく札幌・味噌、旭川・しょう油、函館・塩が定番だったそうです。味の大王の創業者であった高橋一郎さんは、味噌でもしょう油でも塩でもない、看板メニューになるものを探していました。そして、大衆に根強い人気のカレーライスとラーメンを融合させてはどうかと考え、試行錯誤の末にカレーラーメンを誕生させたのでした。

「最初のころは邪道だと言われ、評判はよくなかったそうですが、初代はカレーラーメンを作り続け、苫小牧にカレーラーメンを定着させていきました。そして、それを広めたのが2代目である息子の高橋浩一(現在の会長)。カレーラーメンの伝道のために精力的に動き、2013年にはとまこまいカレーラーメン振興局を有志メンバーで立ち上げ、全国で開かれるイベントに出て、一気に全国区になりました。カレーラーメンは、カレーのイベント、ラーメンのイベント、どちらからも声がかかるというレアなメニューなんですよね。でも、そうしたイベントに出させてもらった甲斐あって、今は苫小牧のソウルフードと呼ばれるまでになりました」

全国ご当地カレーのイベント「よこすかカレーフェスティバル」に、とまこまいカレーラーメン振興局として出場し、2017年はカレーラーメンで準優勝、2018年にはみそカレーラーメンで優勝を獲得したこともあったそう。

スカウトされ味の大王へ。一筋に勤め続け、気づけば3代目社長に

daiou_nakaeshacho041.jpg


さて、中江社長が3代目を引き継ぐまでの話を伺いましょう。中江社長は釧路出身。味の大王が旧札幌エスタにあった「さっぽろラ~メン共和国」に出店する際、別のラーメン店で働いていたところ、2代目社長に声をかけられて2007年に入社したそう。

「それまでカレーラーメンを食べたこともなかったし、苫小牧発祥ということも知らなかったんですが、2代目にカレーラーメンについて熱く語られて...(笑)。2代目はとにかく熱い人で、カレーラーメンを伝道していくのが自分の使命といつも言っていました」

中江社長は、まずホールスタッフとして入社し、数か月後には厨房へ。エスタ店で店長になり、その後、札幌市内のほかの店舗でも店長を任されます。そして、2012年に苫小牧総本店の店長に。

「総本店は席数も多く、自分よりもキャリアの長いベテランのパートさんらがいて、札幌の店舗とはすべてが違っていて大変でした。僕もまだ若かったから、ベテランの人たちに頼ればよかったんですけど、上手に頼れなくて...。苫小牧に来てからの1年は壁にぶち当たることが多かったですね」

懐かしそうに当時のことを思い出していた中江社長ですが、そのころは自分が将来社長になるとは夢にも思っていなかったそうです。

「2代目にはお子さんがいなかったので、先輩のうちの誰かが跡を継ぐのだろうとずっと思っていました。自分はせいぜい役員くらいかなと思っていたのですが、気が付いたら自分がいちばんの古株になってしまい...」

遠慮がちにそう話しますが、早い段階から店長として店舗を任されるなど、2代目からの信頼も厚かったようです。

「2代目は、カレーラーメンへの熱量はすごいものがありましたが、店の運営に関して細かいことをいろいろ言ってくるタイプではなく、各店長に采配を任せてくれる人でした。だから、自分で考えてどうやって売り上げを伸ばすかといった工夫を自由にできたのが僕にとってはよかったんだと思います」

3代目に課せられた使命は、カレーラーメンも味の大王も発展させていくこと

この数年で、「カレーラーメンは苫小牧のソウルフードですね」といろいろな人から言われることが増えたと中江社長。そのような状況下で3代目となり、「それなりに重責を担っていると感じる」と話します。


「初代社長が作り続けたカレーラーメンを、2代目が頑張って苫小牧に定着させ、それを全国に広げてきました。ソウルフードと認識されるということは、初代、2代目と努力してきたことが実を結び、花を咲かせたことになります。それをさらに定着させ、発展させていくことが自分の役割。カレーラーメンも、味の大王もどちらも残していきたいと思っていますし、残していかなければという使命も感じています」

味の大王という会社を引き継ぐことは、カレーラーメン発祥の店としてその文化を守り、発展させ、次に繋いでいく役割も担っているということ。経営者としての責任と、苫小牧におけるカレーラーメン全般に対する責務もあると話します。

「確かに大変な部分もありますが、だからと言って止まってはいられません。会社としては苫小牧で一番のラーメン屋でありたいと思っているし、カレーラーメンに関しては、それを通じて苫小牧をもっと盛り上げていきたいとも思っています」

店の営業以外に、カレーラーメンを広く知ってもらうためのイベント出展などもあり、とにかく多忙な中江社長。ストレス解消になっているのはアイスホッケーなのだそう。釧路に住んでいたころからアイスホッケーをやっていて、ポジションはキーパー。キーパーが少ないため、今は苫小牧市内の3つのチームの掛け持ちをしているそうです。

「釧路もアイスホッケーが盛んな町で、苫小牧もアイスホッケーが盛ん。雪が少ないとか、港があるとか、大きな製紙会社があって町が発展したとか、釧路と苫小牧って共通点が多いんですよね」

苫小牧と、生まれ育った釧路が似た雰囲気であることは、あとになって気付いたそう。「札幌で2代目に声をかけてもらったことも含め、苫小牧とは何か縁があったのかなと感じています」と最後に笑顔で話してくれました。

1杯1杯を丁寧に作り、また来たいと思われる店づくりをすることが大切

daiou_ishidatencho032.jpg


さて次は、中江社長のもと、実店舗の切り盛りをしている味の大王 生粋(きっすい)店の店長・石田拓夢さんに現場のお話を伺いました。

地元出身の石田店長は、高校を卒業してから味の大王に入社。もともと料理を作るのが好きで、飲食業の仕事に就きたいと考えていたそう。

「高校の先輩が働いていたのがきっかけで入社しました。最初は総本店に勤務し、1年後には知新店の主任になって、総本店に戻って4年目で店長になりました」

若くして店長に抜擢された理由は、お客さまからの評価が高いことや売上アップに大きく貢献しているからでした。

「上司に言われたことを忠実に守っていたら、常連さんも増え、売上も上がったんです。それは、自分たちは1日に何杯も同じラーメンを作るから、つい、なあなあで作ってしまいがち。でも、お店に来るお客さまはその日初めて店に来て、初めてラーメンを食べるのだから、1杯1杯、丁寧に心を込めて作るようにというもの。当たり前のことなのですが、今もそれを忘れず、常に100%の気持ちでラーメンを作り、お客さまに提供するようにしています」

3年前に今いる生粋店へ店長として配属されます。そのときの生粋店は、売上もイマイチで、常連客も減っていたそう。そこで石田店長は、「また来たい、また食べたいと思ってもらうことが大事だと思ったので、店をキレイにし、初心に戻って丁寧にラーメンを作るようにしました」と振り返ります。「また来たい」と思ってもらえる店づくりを実践したことで、売上は回復。リピーター客の数も増えていきました。

「この仕事をしていてやりがいを感じるのは、『おいしかったよ、また来るね』とお客さまから言われたとき。それから、売上の数字が上がっているときや、麺の数がたくさん出たときはうれしいですね」

ゴールデンウィークやお盆の時期はいつも大忙しで、1日で最大220玉ほどの麺が出たこともあるそう。生粋店はこれまで地元のお客さまが大半でしたが、最近は観光客も随分増えたとか。

常にどうすればリピーターになってもらえるかを考え、工夫をしていると話す石田店長。ある程度店の采配を任せてもらっているため、スタッフへの指示も含め、店をどう切り盛りするかは店長の腕の見せ所でもあります。今は生粋店だけでなく、知新店のほうも見ているため、行ったり来たりと忙しいそうですが、仕事に対する根っこはブレません。

「社員でもアルバイトでもパートでも、新しい人が入ってきたら、とにかく丁寧に根気よく仕事を教えます。そして、お客さまがまた食べに来たくなるような店づくりを一緒にしていきましょうと話しています」

daiou_ramenTewatashi063.jpg

今いるパートさんらも同じ気持ち、同じ方向を向いているので、店の雰囲気もチームワークもいいそう。ラーメンが好きという想いと、お客さまに喜んで食べてもらいたいという気持ち。そしてまた食べに来たいと思ってもらえるキレイな店づくりと丁寧な接客を実践しています。

「まだまだカレーラーメンを食べたことがないという方も多いので、苫小牧はもちろん、各地からたくさんの人に食べに来てもらいたいですね。カレーラーメンを初めて食べるという方は、まず元祖であるうちのカレーラーメンを食べてほしいです。僕自身は毎日のようにカレーラーメンを食べていますが、飽きないんです。チーズをトッピングするともっとおいしくなります。社長にはかけすぎでしょって言われますけど(笑)」

屈託のない笑顔でカレーラーメンのおいしさを語ってくれた石田店長。もっと店の知名度、カレーラーメンの認知度を上げていきたいとも話してくれました。中江社長、石田店長、二人ともこの仕事に誇りと熱い想いを持っているのがよく伝わってきたインタビューでした。

daiou_futaritenpomae037_.jpg

味の大王 生粋店
味の大王 生粋店
住所

北海道苫小牧市春日町3丁目16−19

電話

0144-35-5533

URL

https://curryramen.com/

GoogleMapで開く


苫小牧のソウルフード・カレーラーメンを広め伝える。味の大王

この記事は2025年5月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。