
製紙したものと聞くと、どんな製品を思い浮かべますか?ノート、コピー用紙、新聞紙、段ボールなどいろいろありますよね。その中でも、家庭紙と呼ばれるジャンルがあります。家庭紙とは、トイレットペーパーやティシューペーパー、キッチンペーパーなどを指します。
大王製紙は、家庭紙の「エリエール」ブランドで知られる製紙業界の大手。家庭紙における国内シェアでトップクラスを誇ります。そのエリエール製品を製造するのが、大王製紙のグループ会社・エリエールペーパー株式会社です。
北海道内で流通するエリエール製品を作っているのが、同社の赤平工場。今回は、この赤平工場におじゃまし、生産管理で頑張っている若手社員の方の話を伺い、工場内の見学をさせていただきました。
地域に密着しているエリエールの赤平工場。社会科見学で訪れる子どもたちも多数
豊かな緑に囲まれた赤平工業団地内にあるエリエールペーパー株式会社赤平工場。1990年に大王製紙のグループ会社「赤平製紙」として創業しました。2023年にグループの再編成に伴い、エリエールペーパー株式会社と合併。
「赤平製紙時代から皆さんがご存じのエリエール製品を作ってきました。社名は変わりましたが、製造しているものは変わりません。道内のドラッグストアやスーパーなどに並んでいるトイレットペーパーやティシューペーパーはここで作られたものばかり。赤平工場は地産地消するための役割を担っています」と教えてくれたのは、総務部総務課の関藤龍徳さんです。
現在、この赤平工場には約70名の社員が在籍。地元・赤平をはじめ、近隣の中空知エリアの人たちが通っているそう。
赤平工場の総務部総務課で活躍する関藤龍徳さん。道内のエリエール製品は、ここ赤平で作られているって知っていましたか?
「この辺りの子どもたちは、小学校や中学校の社会科見学でうちの工場を訪れるのが定番。コロナ禍は工場見学がストップしていましたが、再び見学受け入れを始めたので、毎月のように見学したいと各学校から予約が入っています」
見学後、子どもたちからお礼の手紙やレポートが届くと、すべて社員に回覧。これが「社員のモチベーションアップにも繋がっている」と関藤さん。また、工場で勤務する社員の中には、社会科見学で来たのがきっかけで入社を決めた人もいるそう。
「地元で長く工場を稼働していることもあり、地域貢献にも力を入れています。赤平のふるさと納税にもエリエール製品を出させてもらっているほか、昨年から北空知地区のミニバス大会のメインスポンサーとして協賛させてもらっています。また、今年は赤平市内の保育園、幼稚園、小学校、中学校に1年分のトイレットペーパーとティシューペーパーとポケットティシューを寄付させてもらいました」
ドラッグストアやスーパーでよく見かけるあの商品も!「エリエール」製品がずらり。
大手グループならではの安定した労働環境と、風通しも良く和やかな社内の雰囲気
赤平で30年以上稼働している同工場。高校を卒業したばかりの10代の社員もいれば、創業時から勤務しているベテランスタッフも多くいます。
「平均年齢は43歳。70人いる社員のうち、20人は創業時からいる社員です。うちは、創業当初から使っている古い機械もまだまだ活躍中。細かな調整をしながら製造にあたるのですが、その調整には経験やスキルが必要になってきます」
機械のメンテナンスなどに長けたレジェンドと呼ばれる人もいるそう。そのレジェンドたちが現役でいる間に、次世代の若手にそのスキルを継承していかなければならないのが、今の課題のひとつ。
若手からベテランまで!チームワーク抜群の職人たちが、高品質な紙製品を生み出しています。
「あとで工場を見てもらったら分かると思いますが、風通しはいいと思います。年齢はバラバラですがチームワークもいいし、和やかな雰囲気。工場なのでもちろん安全第一で、紙作りに励んでいます」
会社全体での慰労会などもありますが、班ごとで実施する職場レクリエーションに関しては会社から補助も出るので、班ごとの歓迎会や忘年会などでみんな活用しているそう。
また、合併を機に、本社がある本州と同レベルの給与体系となり、「道内の製造業の中では平均よりも10%以上高いと思います」と関藤さん。福利厚生も手厚いほか、消化しきれなかった有給休暇を積み立てできる保存年次有給休暇制度も設けています。
「また、大王製紙グループは国内外に約30の会社があるのですが、希望があれば転籍も可能。赤平からキャリアアップもできます」とのこと。
大手企業のグループならではのイベントが、大王製紙グループの会社が集まって中部地区で開かれるソフトボール大会。
「距離的なこともあって、赤平工場として出場はしていないのですが、野球経験者が呼ばれて大会には出ています。実は、本社の総務チームのメンバーとして、自分も大会に出場しました」と照れ臭そうに話します。滝川出身の関藤さんは、小学校から大学まで軟式野球の選手として活躍した経験があり、それを買われて招集されたそう。
いろいろ話を伺っていると、働きやすい職場環境が整っているとよく分かります。
頼れる先輩と和やかな雰囲気!社員の働きやすさを追求する、風通しの良い職場環境が自慢です。
大好きな地元で就職を。周りに支えられている分、自分も役に立ちたい
さて次に、同社に入社して3年目を迎えた若手社員で、第三製造部製造課で生産管理の仕事に従事している髙橋快吏(かいり)さんに話を伺いました。
髙橋さんは赤平の隣、歌志内市出身。砂川の高校を出たあと、総合職として入社しました。今は歌志内の実家から通っているという髙橋さん、「会社まで車で25分ほどの距離。この辺は自然が多くて、空気もいいし、いいところだと思います。地元が好きなので、空知を出ようという気はなかったんですよね」と話します。
「地元で就職先を探していたとき、高校に求人が来ていて募集しているのを知りました。エリエール製品は子どものときから家で使っていたこともあり、慣れ親しんでいるものでしたし、父が取引先に勤務していて、『いい会社だと思うよ』と背中を押してくれたこともあり、応募しました」
地元愛が止まらない!第三製造部製造課の髙橋快吏さん。見慣れたエリエール製品が、入社のきっかけに。
無事採用となり、ちょうど合併して社名が変わった年に入社した髙橋さん。入ってすぐに静岡にある本社で、全国の同期と一緒に約1か月半の研修を受けたそう。1年目はオンラインでフォローアップ研修もあり、「研修制度はとてもしっかりしていると思います」と話します。
今は、工場で使うパルプなど資材の発注や管理、品質管理などを行っています。事務所でパソコンに向かう時間もあれば、工場や倉庫に行って在庫チェックや操業員とやり取りを行うことも。
事務職ですが、フォークリフトと玉掛け(クレーンを使ってフックに荷物を掛けたり外したりする作業)の免許を入社してから取得。「この2つの免許は、男性社員はほとんど持っています。パルプ室で資材を運ぶことがあるので、自分もフォークリフトは運転しています」と話します。
「関藤さんが話していたとおり、風通しはいいと思うし、先輩たちは皆、優しいんです。資材の在庫が足りなくなりそうになるなど、ピンチになったときも先輩たちがフォローしてくれて乗り切れました」
工場の現場での経験がない分、現場のことが分からないため、「日ごろから積極的に操業員(現場スタッフ)の人たちと話をするようにして、現場のことを教えてもらっています」と話します。
仕事の話はもちろん、雑談もしながら、コミュニケーションを取るようにしているそうで、「この間、キャンプ好きな操業員の方と話をしていたときに、『キャンプ行く?』と声をかけてもらい、連れていってもらったんです。すごく楽しかったです」と続けます。
また、休みに買い物に出かけた際、ドラッグストアなどでエリエール製品を購入している人を見かけると、とても嬉しくなると話します。
「家庭紙という暮らしに密着した生活必需品を作っているので、日常的にそういうシーンに遭遇することが多く、自分の会社で作っているものをたくさんの方に使ってもらっていると思うと、何だか誇らしく思います」
周りの人から「安定しているいい会社だね」「すごいね」と言われることが多いそうで、「外の人からそう言われると、あらためてエリエールというブランド力の強さを実感しますし、労働環境も整ったいい会社に勤めているのだなと感じます」と話してくれました。
最後に「いつも周りの人たちに支えられているので、もっと現場のことを理解し、スムーズに仕事を進めていけるようになって、役に立てるようになりたいです」と話してくれました。
1日に2万パックずつのティシューペーパーやトイレットペーパーを製造する工場内を見学
ひと通り話を伺ったあと、実際に工場内を見学させてもらいました。学校の社会科見学のときは、関藤さんが一人で案内するそうですが、人数が多いときはグループに分け、髙橋さんも案内係として子どもたちに説明をするそう。
赤平工場では、原料のパルプから紙を作る「抄紙(しょうし)」という工程と、その紙を切る、折りたたむといった「加工」の工程を行っています。
まずは、原料となる大量のパルプが積み上げられているパルプ室へ。国内だけでなく、海外からも届くパルプを中心に仕入れています。
こちらは原料のパルプ室。積み上げられた膨大なパルプが、私たちが使う紙製品へと生まれ変わります。
次に抄紙工程のエリアへ。水で溶かしたパルプを大きく広げ、乾燥させて、製品の元となる大きな原紙のロールを作っていきます。巨大なトイレットペーパーのような感じですが、すごいスピードで大型ロールに巻かれていく様子は圧巻。この抄紙の段階で、商品ごとに紙の柔らかさをプラスする成分や強度を保つ成分を加えて調整するそうです。もちろん品質チェックも怠りません。
「この原紙のロール1本の長さは約50㎞あります」と関藤さん。想像がつかないくらいの長さですが、とにかく長いということは分かります。しかもこのロールを1日20から25本近く作るとか。
そして、ロール状の原紙を保管する原反倉庫へ移動します。積み上げられたロールが高い壁のようになっています。それぞれロールの横には、どの商品に使うものかが記載されています。
次に加工室へ。私たちが手にする製品の状態にするため、原紙をカットしたり、巻き上げていったり、折りたたんだりと、加工していきます。私たちが普段使っている箱型のティシューペーパーは、1枚引っ張ると、次の1枚が顔を出しますよね。それは、この加工工程で交互に折りたたむようにセットされているからなのだそう。
ここでも品質の細かいチェックが機械を使って行われ、最後は見覚えのあるパッケージに入って商品が完成。段ボールに詰め、全道各地へ運ばれていきます。
「赤平の工場では、1日にティシューペーパー、トイレットペーパーをそれぞれ2万パック製造しています」と関藤さん。すごい量の家庭紙がここで作られているのが分かりますよね。当たり前のように日々使っている家庭紙ですが、不自由なく使えているのは、24時間フル稼働で動いている工場とそれを動かす社員の方たちがいるからこそ。髙橋さんが誇りに思うというのも分かる気がしました。
- エリエールペーパー株式会社 赤平工場
- 住所
北海道赤平市共和町199番地5
- 電話
0125-32-2250
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