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このまちのあの企業、あの製品
別海町

最初はみんな初心者。サポートするのも私たちの仕事。寺井建設20250913

最初はみんな初心者。サポートするのも私たちの仕事。寺井建設

北海道の東側に位置し、オホーツク海(根室海峡)に面した別海(べつかい)町。広大な大地を活かした酪農と、豊かな水産資源に恵まれホタテやエビなどが有名です。この別海町で、50年以上続く「寺井建設株式会社」の代表取締役、寺井範男さんと土木技術者の田中大貴さんにお話を伺います。橋をはじめとした大型の構造物から、道路や農地造成、漁港の工事まで幅広い分野に対応している寺井建設。この会社を寺井さんが父から会社を継ぐことになった時の心情や、「最初は、土木に興味はなかったんです」と話す田中さんの今をお届けします。

現場技術者として経験を積み、父の跡を継いで二代目に

別海町の海岸沿いにある本別海で、寺井さんは生まれ育ちました。地元の高校を卒業後、栃木県にある工業大学に進学します。


teraikensetu27.jpgこちらが、寺井建設株式会社の代表取締役、寺井範男さん

「父からは『何でもいいから自分の好きなことをやれ』と言われていたし、当時は会社を継ぐなんて、まったく考えていませんでした。でも、中学生の頃からアルバイトで父の現場に出ていたので、土木の仕事自体は好きでしたね。大地を削ったり道路を整備したり、ダイナミックじゃないですか」

特に惹かれたのが、完成後には見えない「裏側」に隠れた技術の奥深さです。

「土木工事って道路でも何でも、完成した後は表面しか見えないですよね。でも、その下には排水や凍結防止など、さまざまな工夫が施されています。そうした見えない部分に技術が詰まっているところが面白いんです」

卒業後は、栃木での就職が決まっていたといいます。しかし「北海道に帰ってきてほしい」という家族からの強い後押しがあり、地元に戻ることを決意。そのときもまだ、「会社を継ぐため」というより、「家に戻る」という気持ちの方が強かったそうです。

帰郷後は、父が経営する寺井建設で現場技術者として経験を積みました。現場に出て学びながら一人前を目指した日々を、こう振り返ります。

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「最初は現場代理人として、任された現場を最初から最後まできちんと納めるということだけを考えていました。でも経験を重ねるうちに、原価管理や品質管理など、現場仕事以外のことも覚えるように。技術も磨かなければいけないし、施工管理の方法も時代によって変わりますから、常に勉強でした」

そして、35歳のときに突然の転機が訪れます。先代である父が体調を崩し、急遽経営を引き継ぐことになったのです。

「それまで営業や契約など、現場のことは一通りやってきましたが、経営の経験なんてまったくありませんでしたからね。正直かなり大変でした。何カ月かは本当にドタバタでしたよ」

先代から会社を引き継いで、約30年。社長となった今でも、寺井さんの現場への思いは変わりません。

「やっぱり現場はいいですよ。今でも戻りたいと思うことはあります」

土木工事で地域を支える現場技術者たち

現場技術者だった当時を懐かしむように話していた寺井さんですが、事業内容について聞くと、会社を率いる経営者の顔に戻ります。


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「経営者にとって、一番重要なのは仕事を取ることです。仕事を受注しないことには現場は動きません」

寺井建設が手がけるのは、100%が官公庁からの公共工事。橋をはじめとした大型の構造物から、道路や農地造成、漁港の工事まで幅広い分野に対応しています。現場ごとに専門的な知識を持つ協力業者と連携しながら、管理するのが寺井建設の仕事です。

「舗装が古くなった道路の補修や修復といった、メンテナンス作業も請け負っています。国道沿いの草刈りをすることもありますよ」

別海町は、生乳の生産量では日本一。そんな酪農が盛んな別海町ならではのプロジェクトにも携わっています。それが、別海町バイオマス産業都市構想です。

「バイオマス産業とは、簡単にいうと家畜の排せつ物を液肥やガスにリサイクルしようという取り組みです。別海町でも数千億規模の予算をかけており、地元にとって非常に大きなプロジェクトでした」

こうした現場を支えているのが、現場技術者です。受注した公共工事を仕様書や図面通りの形にするまで、品質・安全・工程などの管理業務を一手に担います。現場ごとに、施工物の形状や強度など、多くの基準が定められており、それらをすべて満たさなければなりません。そのためには、仕様書や図面を熟知しておくことが必要です。

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「管理方法自体は決まっていますが、品質の高さは会社によって違います。そこが差別化になりますし、うちでも精度を上げるための工夫をしています」

現場技術者として一人前になるには、3~5年かかるのが一般的だそう。こう聞くと、現場技術者になる道のりは遠く、難しいのでは...と感じてしまいます。

「大丈夫、誰でもなれますよ。一番大事なのは経験です。経験すれば自信がついてきますから。そして、私たちも全力でサポートします」

人がいて会社は成り立つ。そのためには努力を惜しまない

寺井建設には現在、37名の社員が在籍しています。主力となるのは現場で働く技術者たち。50~60代が中心ですが、20代の若い世代の人もいます。隣町の中標津(なかしべつ)から通う社員も多いとのこと。

技術者たちは現場に直行直帰することが多く、日頃顔を合わせる機会は少ないそう。それでも社内の雰囲気は明るく、仕事以外の場での交流が盛んです。釣り同好会やツーリングクラブといった趣味のコミュニティがあり、パークゴルフや花見など季節ごとのイベントも楽しんでいます。

「釣り船を借りる費用やツーリングのガソリン代・食事代・宿泊費・宴会費まで会社が負担しています。現場単位で飲み会を開くことはあっても、会社全体で集まる機会は少ないですからね。時代には逆行しているかもしれませんが、そういう機会があれば会社としては補助したいと思っています。それに、みんな楽しく参加してくれている顔も見れますしね」

福利厚生面も充実しています。社会保険や退職金制度はもちろん、家賃補助制度もあり、会社が所有する物件に入居する場合は、なんと家賃が半額になるとのこと。資格を持った技術者を町外から中途採用する場合は、入社祝い金として100万円を支給しています。また、大学や専門学校を卒業した新入社員には、奨学金の返済を支援する制度もあります。

さらに、資格取得も全面的にバックアップしており、キャリアアップのサポートも万全です。外部講習の受講料や出張費、宿泊費などもすべて会社が負担しています。なぜここまで手厚い支援を?という質問に対し、「人がいなければ会社は成り立たないですから」と寺井さん。

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「働き改革も進めていて、土日休みの完全週休2日制を導入していますし、給与面でもできる限り上げていけるように考えています」

さらに、作業効率を高めるために、ICTの導入も積極的に進めているといいます。

「ICT重機は、操作さえ覚えてしまえば女性でもオペレーターとして活躍できますからね。山の測量も、ドローンを使えば短時間で安全に行えます。今は外注していますが、将来的には社内で完結できる体制を整えていきたいですね」

若手技術者から見た寺井建設

寺井建設では、技術者見習いとして入社した若手社員たちも着実に成長しています。その一人が、入社5年目の田中大貴さんです。田中さんは、中標津町で生まれ育ち、高校卒業と同時に寺井建設へ入社。会社の制度を利用し、就職後1年間は札幌の専門学校で土木の基礎を学びました。

teraikensetu71.jpgこちらが、入社5年目の田中大貴さん。企業委託生制度を利用し、資格を取得しました

「専門学校に行かせてもらえると聞いて決めました。正直、最初は土木のことなんて何も知らなかったんですよ。道路工事をしている人たちを見て、あれがそうなのかなくらいの意識でしたね」

意外にも、土木への熱意はなかったという田中さん。しかし専門学校では、2級土木施工管理技士の一次試験に合格。現場経験が必要な二次試験は、実際に現場に出て土木施工管理の補佐として働きながら挑戦しました。

「覚えることが多くて大変でしたが、同じ年の同期がいたので、励まし合いながら頑張れました」

現場に初めて出たのは19歳のとき。土木工事の現場では、仕様書通りに工程を進めていくことが何より大事です。施工物には厳しい基準も設けられており、少しのミスが致命的になることも少なくありません。現場に出始めた頃の田中さんも、緊張の連続だったと話します。しかし、そのような状況で助けられたのが、先輩や職人さんたちのやさしさでした。

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「もちろん怒られることもありましたけど、何でも相談できる雰囲気でした。僕自身は、ミスをしたときにも隠さず、気づいたらすぐに報告するように心がけていました」

初めて道路工事の現場を一任されたときの経験は、今でも忘れないと語ります。

「もちろん、緊張しました。でも、うまく現場を回せたときはうれしかったですね。規格値に収まるよう施工するだけではなく、予算や利益率の管理もしなきゃいけない。大変でしたが、先輩たちに教えてもらったことを思い出しながらがんばりました」

最初は「3年続けばいいかな」という気持ちで仕事を始めたそう。しかし、今では辞めたいと思うことは一度もないといいます。その理由は、やはり社員同士の仲の良さ。釣り同好会でカレイやワカサギを釣ったり、キャンプイベントの企画を進めたりと、仕事以外の場でも上司や先輩たちと楽しく過ごしているそうです。

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「新しい人が入ってきても、年齢関係なく歓迎される会社だと思います。困ったことがあったときも相談しやすいですし。毎年新入社員が入るたびに歓迎会をしているんですよ。誰でもウェルカムっていう感じです」

どんな人に向いているか尋ねてみると、「コミュニケーションが取れる人なら誰でも大丈夫」と即答。技術管理者はそこまで体力を使うことはないので、年齢もあまり関係ないといいます。そして、現場で働く魅力をこう語ってくれました。

「道路工事で、舗装がビシッときれいに仕上がると本当に気持ちいいんです。その達成感がたまらないですね」

KSI01396.jpg舗装前の段階の現場作業。様々な過程を積み重ねて、みなさんが見慣れている道路の姿へと変えていきます。

技術を磨き、これからも地域に貢献できる会社に

おふたりに、それぞれ今後について質問すると、

「これからも、常に高品質な施工管理ができるような会社づくりをしていきたいですね。同時に、安心・安全に働ける環境づくりも進めていきたいと思っています」と寺井さん。

土木工事の現場では、完了後に施工・工程・品質・出来栄えなど、あらゆる管理に評点がつけられるそう。その平均点が入札の評価に直結するため、会社の存続にとって、高い技術力を備えておくことが重要だと寺井さんは語ります。

また、寺井建設では創業時から、幼稚園の遊具の修理や小学校の駐車場整備、線路跡地の整備といった地域貢献事業にも力を入れています。

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「地域の方たちが手がけている工事の中には、土木にしかできないこともあるんです。先代の頃からそうした工事に協力してきました。工事以外では、図書館への寄付も20年ほど続けています。うちは、別海という地域の力で成り立っている会社ですからね。これからもずっと継続していくつもりです」

一方の田中さんは、「まずは、現場を一人で当たり前に回せるようになりたいですね」
と、まっすぐに現場技術者としての目標を語ってくれました。

経営や仕事の話題から別海での暮らしの話に変わると、二人の表情は和らぎます。二人が口をそろえて挙げた別海の魅力は、豊かな自然と食べ物のおいしさです。

「私はバイクが趣味なんです。別海の自然の中を風を切って走るツーリングは最高ですよ。海があって、内陸に入れば地平線まで続く草原が広がる。絶景の中を走るのは本当に気持ちいいです。食べ物なら、エビやホタテ、鮭、ほっき貝。どれも本当においしいですよ」と寺井さん。

26713.jpgツーリングクラブのみなさんの相棒がズラリ

車で海を見にドライブすることが多いという田中さんのお気に入りは、アイスクリーム。

「別海は乳製品が有名ですからね。あと、あまり知られてないけど地元の焼肉屋もおいしいです(笑)」

人の温かさも、別海の魅力です。移住者にとっても暮らしやすい土地だと話す寺井さんは、未来の仲間に向けてこう呼びかけます。

「やる気があれば大丈夫です。土木に興味があるとか、現場で一人前になりたいとか、そういう気持ちがあれば仕事の楽しさを感じられると思います。土木の仕事ってスケールが大きいんですよ。億単位の規模の工事にも携われる。完成したものは後々まで残りますし、地域の人たちに長く使ってもらえます。作り終わったときの達成感は、本当に大きいです」

地域に根ざし、技術を磨きながら成長できるのが寺井建設の魅力です。経験がなくても、やる気があれば一歩ずつ前に進めます。自然豊かな別海で、仲間と共に大きな現場を作り上げる。そんなやりがいを味わってみませんか。

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寺井建設株式会社
寺井建設株式会社
住所

北海道野付郡別海町別海130−18

電話

0153-75-2009

URL

http://terai-kk.com/

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最初はみんな初心者。サポートするのも私たちの仕事。寺井建設

この記事は2025年8月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。