
酪農と漁業が盛んな別海(べつかい)町。北海道の東側に位置し、野付湾と根室海峡に面したこの町は、実は道内出生率が2位という子育てがしやすい町でもあります。そして、この町のインフラを支えている高玉建設工業株式会社の常務取締役、吉岡正幸さんと総務部次長の蟻戸喜世治さんにインタビュー。高玉建設工業の業務内容はもちろん、社内の雰囲気、未来の部下への思い、別海での暮らしや子育てなど、おふたりに伺いました。
農業も漁業も支える、別海町の「縁の下の力持ち」
高玉建設工業は、土木工事を元請けで請け負う地域密着型の建設会社。施工する工事の種類は、道路事業、海岸事業、河川事業、農業農村整備事業、水産基盤整備事業、港湾整備事業など多岐に渡り、国土交通省北海道開発局(釧路開発建設部)、北海道(根室振興局、釧路総合振興局)、別海町等から工事を受注しています。
こちらが、常務取締役・吉岡正幸さん。地域のインフラ整備を通じて、未来を担う人材育成にも力を注いでいます。
「年間受注額の90%以上が、国や地方自治体との直接契約(請負)によるもので、牛の糞尿を肥料化する肥培かんがい施設の建設や用水路の整備など、農家さんの営農を支えるための施設を作ることが多いですね」
ここ数年はICT技術の導入による作業の効率化も進めており、重機の自動化やドローンを使用した測量、空撮した画像データの3D化などに取り組み、機械化も進んでいます。
別海町は、漁業も盛んな地域。そんな別海町ならではの工事も多いといいます。
20代の社員も増え、別海町の未来を支える担い手として成長しています。
「野付半島が波に浸食されるのを防ぐために、コンクリートブロックを海岸線に敷設して流失した海岸の砂を補充する工事を受注したこともあります。侵食を放置すると野付半島が消失したり、野付湾内の生態系に重大な影響を及ぼす可能性があります。この工事には、国土の保全、漁場の保全、生態系の保護など、様々な目的があります。また、最近は台風や高潮などによる被害から、漁業関連施設や地域の方々の生活を守るための工事、いわゆる国土強靭化の取り組みも増えています。そうした地域の人々の暮らしや産業の基盤を守るためのインフラ整備に携われるのは、建設業ならではのやりがいだと思っています」
こうした工事に携わる建設業の仕事は、一歩間違えば大きな事故にもつながります。高玉建設工業では、安全管理への意識を徹底しています。
「何はなくとも、安全第一です。従業員が安全に仕事に取り組めるよう、責任を持って指導しています」
働きやすい環境で未来の技術者を育てる
高玉建設工業の技術職の多くは、50代以上のベテラン勢。ただ、最近は20代の若手社員も少しずつ増えており、若返りも進んでいるそう。とはいえ、30代・40代の中堅層が少ないことが課題だといいます。
「今のベテランが退職した後を担う世代が、もっと育ってくれたらと思います」と吉岡さん。
現在、従業員のほとんどが男性ですが、女性の技術職も活躍しています。
「高卒で入社し、今年で2年目の女性技術職が一人います。書類管理や発注者との打ち合わせなど、デスクワークが多いので性別は関係ありません。外での作業もあるので、夏の暑さや冬の寒さに対応できるくらいの体力があれば大丈夫です」
若手女性社員も第一線で活躍!入社2年目にして『この仕事が天職』と語るほどのやりがいを実感しています。
高玉建設工業の技術職は、現場を動かす施工管理全般を担います。品質・工程・安全・原価などを管理し、工事を滞りなく進める司令塔の役割です。最近は、書類作りや写真管理などを専門で担当する建設ディレクターの育成も視野に入れているそう。
「建設ディレクターが現場管理の仕事をサポートすることで、技術者の負担を少しでも軽減できたらと考えています」
工事現場には、多くの人が出入りします。そうした現場を管理する技術者にはコミュニケーション力が欠かせないと吉岡さんは語ります。社内でも、従業員同士のコミュニケーションを大事にしているそうです。
「ベテラン社員たちも若い世代も、それぞれコミュニケーションは取れていると思います。ただ、現場に出ると別の場所で働くことが多いので、あまり顔を合わせる機会がないんですよね。だから、若手向けに研修会を開いたり、食事会を企画したりして、交流できる場をつくっています。釣り好きの社員同士で釣りに行ったりすることもありますよ」
「うちは福利厚⽣もかなり充実しているので、⼦育て世代の⽅も働きやすい環境だと思います。産休や育休はもちろんのこと、住宅取得祝⾦制度もあります。勤続10年以上で⼀定の資格に合格した社員が、別海町内に住宅を新築または購⼊した場合には、100万円を祝い⾦として⽀給しています。町内であれば中古住宅の購⼊も対象です。今いる若⼿社員や、これから⼊ってきてくれる⽅たちが⻑く働いて家を建てるときに、ぜひ利⽤してほしい制度ですね。それから、⼊社のときには新卒者を対象に⼊社準備⾦制度も⽤意しています。新しい⽣活の拠点を構える費⽤にあててもらえるもので、⼤卒は100万円、短⼤卒は75万円、⾼卒は50万円を⽀給しています」
また、社員の成長を後押しする制度も用意しているそうです。
「⾼卒で⼊社する⽅には、企業委託⽣制度という仕組みもあって、給与を受け取りながら1年間⼟⽊の専⾨学校へ⼊学することができます。その企業委託⽣を希望する場合には⼊社準備⾦は利⽤できないのですが、学びながら安⼼してキャリアをスタートできるのが特徴ですね。実際に、⾼卒で⼊社した⼥性技術職もこの制度を活⽤して、今年ついに現場デビューを果たしました。さらに、⼊社後の資格取得も⼿厚くサポートしています。講習費や受験費⽤はすべて会社が負担しますので、成⻑したい社員にとってはとても⼼強い環境になっていると思います」
現場で頼もしく活躍する社員たち。高玉建設工業では、ベテランが築いた経験を次世代に伝えながら、入社2年目の女性技術職もすでに重要な役割を担っています。世代や性別を問わず挑戦できる環境が、笑顔あふれる職場をつくっています。
税理士を目指した学生時代から畑違いの業界へ
次にお話を伺う総務部所属の蟻戸さんは、別海町に隣接する中標津(なかしべつ)町の出身です。高校卒業までは地元で過ごし、その後、札幌の経理専門学校に進学。2年制の税理士コースに通いながら資格取得を目指しました。税理士の資格を取得するには、全11科目中5科目の試験に合格する必要があるそう。しかも、試験は年に1度だけです。
「2年生の年に最初の試験を受けて何科目かは合格したんです。でも、その後また9月から勉強を始めても、2年目には就職活動も始まるので集中して勉強できないと思い、専門学校は1年で中退しました。その後も勉強して受験しようと思いましたが、札幌での暮らしの楽しさに負けてしまって(笑)。アルバイトや遊びに忙しく、結局は断念しました」
その後、札幌市から別海町に転居し、高玉建設工業に入社した蟻戸さんですが、もともと土木業界への思い入れはなかったといいます。
総務部次長・蟻戸喜世治さん。税理士志望から建設業界へ。未経験からの挑戦を語ってくれました。
「父が高玉建設工業を知っていて、先代の社長に話をつないでくれたんです。正直、その時は会社の名前も場所も知らずに、父に連れられて試験を受けました。合格通知が届いたときも、軽い気持ちで札幌から戻ってきたんです。ものすごく土木の仕事をしたいという気持ちはなかったんですよ」
税理士を目指していた蟻戸さんにとって建設業界はまったくの畑違い。未経験の業界で働くことにとまどいは感じなかったのでしょうか。
「事務職として入社したこともあって、まったく気にならなかったです。当時は、先輩たちも20代から30代前半の人がほとんどで、いわゆるノミニケーションの時代。先輩方と接する機会も多かったですし、仕事が終われば飲みに行って、そこでいろいろな話をしながら現場のことを覚えていきました。知らない業界だからと身構えることもなく、仕事を続けるうちに、気づけば自然になじんでいましたね」
建設業界だからこそ味わえる、地域を支えるやりがい
ここからは、おふたりにお話を伺います。
高玉建設工業は、地域に根ざした建設会社として、長く別海町で信頼を築いてきました。そんな会社だからこそ、地元への貢献を特に大事にしていると吉岡さんは語ります。
「お祭りがあれば会場の設営を手伝ったり、地元のイベントにも積極的に関わったりしています。そういう活動をしているところが、うちのいいところじゃないかと思いますね」
蟻戸さんは、少し考えた後にこう話しました。
「外から見れば『すごいですね』と言われることも多いんですが、私たちにとっては当たり前のことなんです。だから、入社した人に実際に現場を見てもらい、『ああ、こういう会社なんだ』と実感してもらえたらと思います」
多くの人と関わりながら働く仕事だからこそ、得られるものもあるといいます。
「現場では本当にいろんな会社の人と出会います。10社が入れば、それぞれの担当者がいて、延べ100人規模の人たちと一つの現場を作り上げるんです。長い時間をかけてたくさんの人と関わりながら働くわけですから、工事が終わる頃には自分も成長できている。若手の技術者たちを見ていても、同じようにその楽しさを実感しているのが伝わってきます」
吉岡さんは、建設会社ならではのやりがいを教えてくれました。
「建設の仕事は、道路を作ったり橋を架けたりと、結果が形になって残るんですよ。インフラを整えて人の暮らしを支えているというやりがいは、この業界じゃないと味わえないものだと思います」
また、土木系の建設会社は土木構造物の建設だけでなく、道路維持・除雪のほか、地震・異常気象などによる
災害復旧を担う、重要な役割を持っています。別海町は豪雪地帯ではないとはいえ、多い時には5~6台の除雪車を出動させることもあるそうです。オペレーターやパトロール員も加わると、1回の出動で20人近い人数が動くこともあるといいます。
「急遽人手を手配しなければならないこともありますし、朝早いから現場に出るスタッフも大変です。それでも、地域の皆さんの生活を守っているという誇りを感じます」
蟻戸さんは、現場で多くの人と関わるからこその、ちょっと気恥ずかしいエピソードを話してくれました。
「たくさんの人と会うので、現場だけじゃなく街中でも声をかけられるんですよ。でも、こっちは相手のことを覚えていなくて。『どこどこの現場の人だよね』って言われて、『あれ、この人誰だっけ?』ってなることも多いです(笑)」
意欲があれば未経験からでも成長できる
高玉建設工業が考える会社の未来は、これからも地域に根ざした仕事を続けていくこと。その上で、吉岡さんは今後の展望についてこう語ります。
「仕事をより効率化させるために、ICT技術の導入も含め、技術面で他社をリードできるような仕組みを考えていく必要があると思っています」
現場の空気を近くで見てきた蟻戸さんは、年齢層の高い職場の中で、若手がのびのびと成長できる環境をつくりたいと考えているそう。
「今、うちにいる20代の先輩となるのは40代のベテラン社員です。世代の違いを言い訳にしたくないんですが、やはり年齢が離れると、どうしても考え方にギャップが生まれてしまう。無意識のうちに、仕事に対する先入観を持ったり、自分の経験だけでものを言ってしまったりすることもある。それがすべて悪いとは思いませんが、若い人たちの意見をきちんと聞けるような雰囲気をつくることも大事だと思います」
そんなお二人に、別海町での暮らしについて尋ねてみました。
「最近は道路が整備されて札幌や釧路にも行きやすくなったので、ちょっと出かけるにはちょうどいい環境だと思います。私も時間があればドライブしたいと思うんですが、今は小学校のバドミントン部の外部コーチをしていて、休みはだいたいそれで終わっちゃう。子どもが入っていたときに、軽い気持ちで手伝いだしてから、本人たちが卒業した後もそのまま抜けられなくて(笑)。バドミントンは未経験なんですけどね」と蟻戸さん。
一方、𠮷岡さんは...。
「別海町は食の宝庫。濃厚な牛乳やチーズ、バターなどの乳製品に加え、北海シマエビやホタテなどの新鮮な味覚がいっぱいです」
行政の子育て支援も手厚く、小中学生までは医療費や給食費がかからないのも魅力です。別海町で子育てをしてきた蟻戸さんも、暮らしやすさを実感している一人。
「放課後には、子どもたちが元気に外を駆け回っています。それに別海の圧倒的にいいところは土地の値段が安いこと。会社の住宅取得祝金を使えば、家を建てたい人も手が届きやすいと思います。スーパーやコンビニもあって、日常生活に困ることはありませんね」
高玉建設工業では、次代を担う若手や中堅層が来てくれるのを待っています。お二人はどんな人と一緒に働きたいと思っているのでしょうか。
「元気で、人と話すことが好きな人がいいですね。土木の経験がなくても、先輩がしっかりサポートするので心配は無用です。建設業に興味を持って、一緒に仕事に向き合ってくれる方なら大歓迎です」と吉岡さん。
蟻戸さんも、こう続けます。
「コミュニケーションを取るのが苦手でも、現場を支える建設ディレクターとして後ろでサポートするポジションがあるので、元気さえあれば大丈夫です。学生のうちに建設業を学ぶ人の方が少ないので、未経験でも問題ありません。転職者ならこれまでの経験がきっとプラスになります。建設業は働きながら仕事を覚えることが多いので、意欲さえあればどんどんステップアップしていけると思います」
地域のインフラを支え、人々の暮らしを守る高玉建設工業の技術者たち。現場でのやりがいや誇りは、想像以上に奥深いものがあります。頼りがいのあるふたりの上司と未経験からでも挑戦できる環境が整っている高玉建設工業で、新しいキャリアを始めてみてはいかがでしょうか。
ICTを活用した測量や施工も導入。最新技術と職人の技で、安全で確かな工事を進めます。
- 高玉建設工業株式会社
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