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このまちのあの企業、あの製品
岩見沢市

北海道産のバラを残すため、事業を継承。ビオトープ北海道の挑戦20250915

北海道産のバラを残すため、事業を継承。ビオトープ北海道の挑戦

古くからたくさんの人に愛され続けている花・バラ。北海道は冷涼な気候でバラの栽培に向いているとされ、庭にバラを植える家庭も多く見られます。ただ、切り花として市場に出荷する花き栽培となると少し事情は異なります。

日本におけるバラの生産地として有名なのは愛知県。北海道でも栽培は行われていますが、その生産量自体は下降傾向にあるそう。そのような中、「北海道産のバラを絶やしたくない」という強い想いで、バラの生産を引き継ぐ会社があります。

それが、今回取材させていただいた「ビオトープ北海道」。事業推進室長を務める北村徹夫さんにその経緯や想いを伺いました。

儲けうんぬんではなく、使命感を持って道内屈指のバラ農園を引き継ぐ

岩見沢市内でバラの生産を30年続けてきた「吉田ばら園」。主である吉田誠さんは、業界内でも質の高いバラ作りをすることで知られる人物でした。バラ以外の作物も作っていましたが、バラの栽培には特に力を注いできました。

ほかの花きを栽培したこともあったそうですが、手間のかかるバラ作りを続けてきたのは、「誰かが続けなければ北海道産のバラがなくなってしまう」という危機感と情熱があったからでした。

028_kitamurasan.jpgバラは人気がある一方で、栽培に手間がかかるため、生産をやめてしまう農家が増えています。ビオトープ北海道は、30年にわたり高品質なバラを生産してきた「吉田ばら園」の事業を継承していきます。

誇りを持ってバラ栽培を続けてきた吉田さんですが、70代になり、これまでと同じように栽培を続けることが体力的にも難しくなり、続けるか否かを思い悩んでいたそう。

そんな中、いろいろなタイミングが重なり、縁あって、そのバラ栽培を引き継ぐことになったのが、ビオトープ北海道でした。

ビオトープ北海道は、2024年に立ち上がった農業法人。今年の2月ころ、吉田さんから会社のほうにバラの事業に関して相談がありました。

017_kitamurasan.jpgこちらが、株式会社ビオトープ北海道 事業推進室長の北村徹夫さん。

事業推進室長の北村徹夫さんは、グループ会社が花きに関する事業を行っていたこともあり、吉田さんのバラの素晴らしさは以前から聞いていたそうですが、「吉田さんの想いを直接伺って、これは北海道の企業として、儲かる・儲からないということではなく、地域貢献という意味でも使命感を持ってやるべきだと思いました」と話します。

実は、バラの生産は、北海道だけでなく日本全国で見ても生産量は下がっています。

「バラは人気のある花ですが、生産となると手間がかかる花なので大変なんです。それもあり、バラ生産を辞めてしまう農家さんも増えています。花き関連の事業を手掛けるグループ会社がある当社としても、北海道産、国産のバラをなくしたくないという想いはありました」

059_kitamurasan.jpg岩見沢市で30年間バラを生産してきた吉田誠さんは、業界でも質の高いバラ作りで知られていました。体力的な問題でバラ栽培の継続を悩んでいた吉田さんの事業を、ビオトープ北海道が引き継ぐことになりました。

小樽で花き栽培をスタートした法人。理想の農場作りのため、試行錯誤の真っ最中

「ビオトープ北海道」は、2024年4月に設立した農業法人。7年ほど放置されていた小樽の離農地を買い取り、花き栽培をスタートしました。

「自分も含め、スタッフは3人。農業に関しては未経験で、周りの方たちに教えていただいたりしながら、実験的に栽培を始めたところです」と話す北村さん。

「自然相手なのでマニュアル通りにはいかないし、つきっきりで指導してくれる人がいるわけでもないので、とにかく日々手探りです」と続けます。約7000坪ある小樽の農地には、枝物を中心に、ハーブやほかの花を実験的に植えています。

049_kitamurasan.jpg温暖化が進むにつれて本州での花き栽培が難しくなっており、北海道の気候は花き栽培に適していると、ビオトープ北海道の北村さんは考えています。ビジネスとしての可能性も感じており、北海道産の花を絶やさないという強い想いのもと、花き栽培に取り組んでいます。

「いまは枝物を植えたばかり。それが大きく成長し、出荷できるようになるまでにまだ3~4年かかると見ています。ハウスはなく、すべて露地なので、今は花きの周りに次々と生えてくる雑草との戦いですね」と日焼けした顔で苦笑します。

雑草のほかにも、地形や気候のこと、近くに暮らす野生動物のことなど、課題は山積み。場所の特徴を知り、対策を考えなければならないことがたくさんあります。

「この場所を活用した将来的なビジョンも描いているのですが、それを形にする前に、まずはこの場所のことをよく知り、いろいろ試してみて、長い目で見て、描いている未来の形に繋いでいくことができたらと思っています。今は実験段階というところですね」

011_kitamurasan.jpg吉田ばら園の技術と想いを引き継ぐ予定のビオトープ北海道は、花き農家やJAと良好な関係を築き、地域に馴染んでいくことを目指しています。

ゆくゆくは花きの残渣を肥料にして土に戻すなど、循環型の畑にしていきたいとも構想しているそう。さらに理想としては、「ヨーロッパの花農場の中には、畑から採ってきた花をフローリストがアレンジメントしてその場で販売しているところもあり、うちでもそういう自然なスタイルを取り入れてやっていけたらといいねと話しています」と続けます。

ビオトープ北海道が花き栽培に取り組むのは、もちろん北海道産の花きを絶やしたくないという想いが根底にあるからですが、国内全体の花き栽培の状況を考えたとき、今後北海道が花き全体の一大産地になる可能性が高いと考えているからでもあります。

「温暖化が進み、本州の花き栽培は年々厳しくなってきています。特に露地ものに関しては、暑すぎて生育に大きく影響を与えており、生産者の方たちも苦労していると聞きます。そういう状況を鑑みて、北海道の気候が花き栽培に適してきたと感じています。ビジネスとしても今後可能性が広がっていると考えています」

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物語のあるものが支持される時代。想いを引き継ぎ、次世代に繋いでいく

ビオトープ北海道を立ち上げて1シーズンで、岩見沢の吉田さんから声がかかり、来春からバラ栽培の事業継承をすることになったわけですが、現在、北村さんは小樽の畑と岩見沢の吉田さんのバラ園を日々行き来しながら、花の栽培について目下勉強中。吉田さんのところでは出荷前の選花の仕方も教えてもらっているそう。

「吉田さんは年間30万本以上のバラを生産。これは道内でもトップレベルの生産量になります。事業を継承すると言っても、すぐに吉田さんと同じことはできないので、しばらくは吉田さんに教えてもらいながら栽培に取り組んでいくという感じです。地域の方からすれば僕らは新参者ですから、地域の花き農家の方たちやJAともいい関係性を築き、地域になじんでいけたらと考えています」

ビオトープ北海道の事業推進室長でもある北村さん、最近は畑に出て作業する日々ですが、畑作業ばかりしているわけにもいきません。

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「特にバラに関しては、岩見沢に住んで、専従でバラ栽培に取り組みながら、ゆくゆくは経営のことも含めて、一緒に新しいことにチャレンジしてくれる次世代を担うようなスタッフがいてくれたらなぁと考えています。経験がなくても、花が好きで、何か新しいことをやってみたいという意欲のある人なら大歓迎です。決められたことを淡々とやるというより、バラのことを勉強しながら、ワクワクすることを一緒に考えてくれる仲間が増えたらいいなと考えています。面白いことや意義のあることを思いついても、個人だと資金のことも含め、それを一人で形にするのは難しいじゃないですか。でも、うちのようなチャレンジ精神の強い企業なら挑戦できることがいろいろあると思うんですよね。イメージとしては社内ベンチャーみたいな感じかな」

「これからは、物語やストーリーのあるものが選ばれる時代。花も同じだと思います」と北村さん。そこには物語の背景となる想いや志、歴史が刻まれています。

「道産のバラを絶やさない」という吉田さんの想いを引き継ぎ、そのバトンを繋いでいこうと考えるビオトープ北海道のバラもきっとたくさんの人の共感を呼ぶことでしょう。そして、小樽の畑も含め、北村さんたちが考える未来予想図が形になる日が楽しみですね。

065_kitamurasan.jpg岩見沢に住み込みでバラ栽培に取り組み、経営も任せられるような次世代のスタッフを求めています。

株式会社ビオトープ北海道
住所

北海道岩見沢市栗沢町栗部308(吉田バラ園)

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北海道産のバラを残すため、事業を継承。ビオトープ北海道の挑戦

この記事は2025年8月13日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。