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別海町

酪農を目指す若者たちの夢をサポート。ASAHIサポートセンター20250912

酪農を目指す若者たちの夢をサポート。ASAHIサポートセンター

「酪農ヘルパー」という言葉を知っていますか? 酪農が盛んな地域では知られている仕事のひとつで、その字の通り、地域の酪農家の方たちをサポートする仕事です。牛たちは生き物なので、毎日お世話が必要。そのため、かつて酪農家さんたちはなかなか休みが取りにくいと言われてきました。しかし、昨今はケガや病気になったとき、休みが取りたいときも酪農ヘルパーが代わりに仕事をしてくれるようになったため、随分と働き方も変わりました。今回は、全国屈指の酪農地帯である道東・別海町でこの酪農ヘルパー事業を行っている「ASAHIサポートセンター」におじゃましました。

JAの子会社として誕生。地域の酪農を支えるヘルパー事業とコントラクター事業

まず、会社の事業内容についてASAHIサポートセンターの業務部部長である三ツ木 洋史さんに伺っていきたいと思います。

asahisapo-to00015.jpgこちらが、三ツ木洋史さん。お隣の根室市出身です

「当社は、JA道東あさひの子会社として7年前にできた会社で、今年で8年目に入ります。JA道東あさひは、この別海と根室の4つのJA(西春別、べつかい、根室、上春別)が合併して誕生したJAで、当社は4つある支所のうち、上春別を除く3つの支所の酪農家さんのところに酪農ヘルパーを派遣しています」

酪農ヘルパーの仕事は、冒頭で触れたように、酪農家さんが休みを取りたいときや病気などで仕事ができないとき、牧場の仕事を代行するのが仕事です。作業はだいたい、朝と夕方の2回に分かれています。その内容は、搾乳、牛のエサやり、清掃、そのほか仔牛の哺育もあります。

同社では、酪農ヘルパー事業のほか、コントラクター事業も行っています。これは、大型の高性能機械を活用し、専門のスタッフが牧草地の収穫や草地管理に関する仕事を行うというものです。

asahisapo-to00035.jpgコントラクター事業も、酪農業を支えるために欠かせない事業です

「酪農家さんたちは牛たちが食べる牧草作りも行います。夏の間、牛の世話のほかに、牧草の収穫や次の牧草を育てるための糞尿散布、播種などを行います。このエリアの酪農家さんは、広い牧草地を所有しているところが多いのですが、近年はさらに面積が広くなったり、牛の頭数が増えたりして、牧草の収穫や管理を外注する酪農家さんも増えているんです。それを当社でも行っており、これがコントラクター業務になります」

質の良い生乳を生産するためには、牛たちが食べる牧草の質も大切。より良い牧草作りのためには、定期的に牧草地の土壌の状態を改善させる草地更新が必要になります。耕したり、肥料をやったり、それらを大型の機械を稼働させて行っていきます。酪農業においてコントラクター業務も重要なのが分かりますね。

日本一の生乳生産量を誇る町。未来の地域を支える新規就農の後押しも積極的

JA道東あさひの組合員の酪農家は法人も含め約550戸。そのうち、ASAHIサポートセンターを利用しているのは半分近くの200戸ほどだそう。

asahisapo-to00034.jpgASAHIサポートセンターでは、JA道東あさひの4地区(別海町上春別・西春別・別海/根室)のうち、上春別地区を除く3地区のヘルパー業務を請け負っています

「酪農地帯ということもあり、ほかの地域に比べると利用している方の数は多いほうだと思います。大規模な牧場や機械化も進んでいますが、まだまだ家族経営をしている酪農家さんも多いですし、機械化といってもその機械を動かすのは人間なので、人手が必要なことにかわりはなく、酪農ヘルパーやコントラクターの需要はまだまだあります」

別海町は小さな町ですが、日本一の生乳生産量を誇る町。「地域の酪農を支える仕事だと自負しています」と三ツ木さん。また、別海町には新機就農をしたいという若い方たちも多くやってきます。そういう方たちに、まずは酪農ヘルパーで経験を積んでもらいながら、新規就農に向けてのサポートも行っているそう。

「JAの子会社ということもあり、これから地域を支えていく若い方たちの将来の夢を会社としてサポートしていこうという考えです。実際、酪農ヘルパーを経て新規就農した方たちも数名います。酪農業というのは、基本作業は同じですが、それぞれやり方や工夫していることなどが酪農家さんによって異なるんです。だから、ヘルパーとしていろいろな酪農家さんの仕事の仕方を見せてもらうことで、新規就農する際にも役立つと思います」

asahisapo-to00037.jpgヘルパーは、広いエリアを移動しなくて良いように、それぞれの担当地区を決めて、地区内の契約酪農家さんのもとにうかがいいます

現在、同社に勤務しているのは、酪農ヘルパーが14名、コントラクター業務が10名ほど。年齢層は20代から40代後半までと幅広く、酪農ヘルパーに関しては道外や札幌圏から来た人も多いそう。

「どうしても人手が足りない時があり、その場合は臨時ヘルパーさんにお願いすることもあります。ヘルパーとして個人で活動している方もいるので、当社もそういう方たちと契約をして、必要なときにお願いをしています。臨時の方たちの中には、経験を積むためという理由でヘルパーをしている酪農家の跡継ぎや、実家が酪農をやっているという方もいますね」

三ツ木さん自身も実家が根室で酪農を営んでいたそう。「子どものときは人手の一人として手伝いをしました。でも、それが嫌で、高校を出たあとはまったく畑違いのサービス業に。しばらく酪農から離れていたのですが、約20年ぶりに実家に戻ったときに牛を見たら、なんだかかわいく見えてね」と笑います。実家はお兄さんが継いでいたこともあり、酪農ヘルパーとして同社に入社しました。

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実家が酪農業だったので酪農家の気持ちも理解できるという三ツ木さんは、どうしたら酪農家さんが喜んでくれるかも分かるそう。「子どものときはイヤイヤやっていたこともあったけれど、今はこの仕事が楽しいと思います。そしてヘルパーは、酪農家さんから『今回はゆっくり休めたよ』とか『助かったよ』と感謝の言葉をかけてもらえるので、さらにやりがいも感じられるし、やっぱり役に立っていると思うと嬉しいですね」と話します。

まだまだ伸びていく道東エリアの酪農業。ヘルパーの労働環境もきちんと整備

酪農業のサポートを通じて地域の未来を支えていこうという理念も持っている同社は、人材の育成も丁寧に行っています。従業員が安心して働けるように環境も整備。

「酪農ヘルパーは酪農経験がない方も多いので、試用期間の3か月間は研修のような感じで、酪農家さんに協力をお願いして、現場で実践的に経験を積み、段階的に仕事に慣れてもらうようにしています。酪農家さんとコミュニケーションを取ることで、皆さんがどのような想いで仕事をしているかとか、ヘルパーにどのように期待しているかも肌感覚で分かると思うので」

asahisapo-to00007.jpg三ツ木さんからは、新しく来る人が少しでも仕事やこの地域になじんでもらいやすいようにできることは無いか、と常に考えているのが伝わってきました。

独り立ちして現場へ行く際は1人のこともあれば、2,3人のときもあります。個々で動くことが多めではありますが、定期的なミーティングなどを通して、現場の状況や課題について話すこともあるほか、新しい機械の研修会なども実施。また、焼肉や忘年会など、従業員同士の交流の場も設けています。

「会社なので、福利厚生は一般的な会社と同じように整っています。休みに関しても、年末年始の12月31日から1月5日は完全に休みにしています。道外出身者も多いので、ゆっくり帰省でもして家族と過ごしてほしいと思ってそうしています。前後に有休を取って、もっと長く休む従業員もいますよ」

道外や町外からやってくる従業員に関しては、自社で所有しているアパートなどを社宅として利用できるようにしているそう。

「試用期間があるとはいえ、やはり自分にできるのか心配という人も多いので、学生のインターンシップや中途採用者の事前の職場体験は常時受け入れています。学生に関しては旅費などをこちらで負担。中途採用者も上限はありますがいくらかは負担しています。その間に泊まる場所も事務所に専用の部屋を用意しているので、そこを使ってもらっています。テレビ、エアコン、ベッド付きです。自分で宿をとるのは費用的にも大変ですからね」

asahisapo-to0.jpgきれいな社宅は快適そのもの

インターンの学生は、平均で1年に5~6人やってきますが、2~3人という年もあるそう。「メディアで酪農業はこの先厳しいと報道されると応募が減るんですよね。でも別海の酪農を実際に見てもらえば分かると思いますが、実際はそんなことはないんですよ。むしろ、道東エリアの酪農はまだまだ伸びていくと可能性が感じられると思います」と話します。

実際に、別海町のある道東エリアでは、大手乳製品メーカーの施設が増えています。

公務員志望がひょんなことから酪農の道へ。縁があってたどり着いた別海町

さて次に、将来的に就農を目指し、現在は酪農ヘルパーとして活躍中の従業員・池永真大(まひろ)さんに仕事のことやこれからのことを伺っていきます。

入社して今年で4年目になる池永さんは兵庫県出身。もともと高校卒業後は地元で公務員になろうと考えていたそうですが、「試験に落ちてしまい、どうしようかなと思って先生に相談したら、『動物は好きか?』と聞かれたんです。馬とかはもともと好きだったので、『好きです』と答えたら、愛知県立農業大学校を勧められたんです」と話します。

asahisapo-to00023.jpg最初は、牛よりも馬に興味があったと教えてくれた、池永真大さん

2年制の農業大学校へ進んだ池永さんは、学校で初めて牛を間近で見て、触れたそう。「思っていたより牛が大きくてびっくりしました」と笑います。

「授業の8割が実習で、最初の半年は体力的にもキツくて、やっていけないかもしれないと思いました。特に牛のエサを作るのが大変だったんです。袋に入った重たい飼料を運んだり、持ち上げて機械に入れたりするのが、慣れるまで本当にキツかったですね」

ところが少しずつ慣れ始めると、「牛の仕事をやっていけるかも」と自信が付き始めます。2年生になったタイミングで進路を考え、就職するか、農業系の大学へ編入するか迷っていたそうですが、「ちょうどJAEC(国際農業者交流協会)のプログラムを知って、アメリカへ農業留学しようと思ったんです」と振り返ります。

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ところが世界的にコロナがまん延し、プログラム自体が1年延期に。池永さんはSNSで北広島市の牧場の短期間従業員の募集を見つけ、9カ月間北広島で勤務します。そして、満を持してアメリカのミネソタ州の牧場へ。

「僕が入った牧場は、結構古いやり方で酪農をしているところで、慣れるまで結構大変でしたね」

約9カ月滞在し、その後日本へ帰国。北広島の牧場で知り合った公益財団法人北海道農業公社の方に連絡をすると、就職先として勧められたのがASAHIサポートセンターでした。池永さんは、そのころすでにいつか独立して自分で牧場経営をやりたいと思っており、それならとASAHIサポートセンターを紹介されたそう。

初めて別海へ来たときは夏だったため、「本州と比べると随分涼しくて過ごしやすいなと思いましたが、冬になって雪の多さには驚きました」と笑います。「自分は育ったところが都会だったこともあり、こっちに来てから、山がすごく近くに見えたり、海が近かったり、身近な自然に心が癒やされます。だから、雪の量はびっくりするけど、雪景色の美しさには癒やされます」と続けます。

asahisapo-to00033.jpeg仕事の行き帰りに見る朝日と夕日は、遮る物がない広大な牧場ならではの雄大さです

目指すは、別海町での新規就農。酪農ヘルパーとして働きながら酪農を学ぶ日々

職場の環境や雰囲気を尋ねると、「会社の皆さんも、酪農家の皆さんもとてもウェルカムな雰囲気ですぐになじめました。職場の年齢の近い人たちとご飯に行ったりもしますし、すごくよくしてくれる酪農家さんもいて、今も仕事のあとにご飯をごちそうしてくれたり、食事に連れ出してくれたりするんです」と話します。

酪農ヘルパーの仕事は、朝と夕方の2回に作業が行われると冒頭でも触れましたが、朝の仕事が終わると夕方までは自由に過ごせるそう。買い物に行ったり、病院に行ったり、家事をしたり、それぞれが有意義に活用しているとのことですが、池永さんは食事をして仮眠を取ったり、ゲームをしたりしてくつろぐようにしているそう。

仕事内容に関しては、「北広島の牧場にいたときは同じ作業だけを繰り返していたのですが、酪農ヘルパーは覚える仕事内容が結構多く、酪農家さんごとにやり方も違うので覚えるのに苦労しました。でも、ひと通り覚えた今は、楽しんで仕事に取り組んでいます」と話します。

asahisapo-to00019.jpgこの日も、朝の業務と夕方の業務の合間に、取材にこたえてくれました。

「牛たちがリラックスした様子で休んでいるのを見ると、ストレスを感じずに過ごせているんだなと思って嬉しくなりますし、依頼してくれた酪農家さんからも『頼んで正解だった』とか言ってもらえるとやりがいを感じます。ありがたいことに指名をいただくこともあって、それも嬉しいですね」

普段、仕事で心がけていることを尋ねると、「牛に対してはとにかく優しく接するように気を付けています。牛も生き物なので、こちらがきつく接するとイヤだと思うんです。だから優しい気持ちで接するようにしています」とニッコリ。さらに、「ヘルパーだけで行く牧場に関しては、酪農家さんを休ませてあげたいので、機械のことなどを事前に把握しておいて、当日にできるだけ電話をしないようにしています」と配慮しながら仕事にあたっていると話します。

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「高校までは公務員を目指していましたが、まさかこんなに酪農に夢中になるとは思ってもいませんでした」と池永さん。「今は、ヘルパーの仕事を通じてたくさん学ばせてもらっている最中。この経験を活かして、できるだけ早くこの別海エリアで就農したいと考えています。将来的には自分のところの牛乳を使ってチーズなども作ってみたいですね」と最後に素敵な夢を語ってくれました。

株式会社 ASAHIサポートセンター
株式会社 ASAHIサポートセンター
住所

北海道野付郡別海町別海緑町116番地12

電話

0153-77-9951

URL

https://asahi-support-center.com/

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酪農を目指す若者たちの夢をサポート。ASAHIサポートセンター

この記事は2025年8月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。