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別海町

ストレスフリーが、特別なA2ミルクを生む。別海ミルクワールド20250910

ストレスフリーが、特別なA2ミルクを生む。別海ミルクワールド

酪農が盛んで、生乳の生産量全国1位を誇る道東の別海町。人口に対して7倍近くの乳牛が飼育されています。町内で酪農を営む法人や個人経営の酪農家たちが日々おいしい生乳を出荷するために切磋琢磨しています。

別海の中でもトップクラスの規模を誇る酪農業の会社が、今回おじゃました「株式会社別海ミルクワールド」です。会社の成り立ちや目指しているところなどを副牧場長の佐藤守さんに伺ったほか、実際に現場で仕事に取り組んでいる女性スタッフの増田みさきさんにも仕事内容ややりがい、別海での暮らしなどを伺いました。

おいしい牛乳作りにこだわり、牧草や環境も徹底して管理

東京ドーム約85個分に相当する敷地面積を有する「別海ミルクワールド」は、もともと中山貞幸社長の祖父が入植し、酪農業をスタートさせたのがはじまり。法人化したのは15年ほど前なのだそう。

「敷地面積も広くなり、乳牛の頭数もどんどん増え、規模が大きくなり、人を雇っていかないと現場を回していけない状況になり、法人化に踏み切ったと聞いています」と話すのは副牧場長を務める佐藤守さん。

「僕は法人化したあとの2013年に入社したのですが、当時で900頭近くの牛を飼っていました。その後も牛の数は増え、それに伴い設備を拡大し、規模はさらに大きくなっていき、現在は約1500頭の牛を飼育しています」

325_bmw.jpgこちらが、(株)別海ミルクワールド 副牧場長の佐藤守さん。

別海ミルクワールドの特徴について尋ねると、「いちばんはA2ミルクを大量ロットで生産できるという点ですね」と佐藤さん。このA2ミルクとは、おなかにやさしい牛乳と言われ、乳糖不耐症によるおなかのゴロゴロが緩和されることで知られています。牛乳を飲んだ際に消化不良を起こす原因が、牛乳に含まれているタンパク質ベータカゼインのA1型。そのA1が混在しないよう徹底した品質管理のもと、A2ミルクを大手の乳業メーカーと連携して全国に出荷しています。

「当社の生乳を使っている乳製品で、皆さんによく知られているものとしては、すっきりして飲みやすいと評判のカネカの『パン好きの牛乳』や、神奈川の近藤乳業の『北海道A2別海牛乳』でしょうか」

A2ミルクの生産にこだわったのは、「法人化し、単独で販路を拡大するには、おいしい牛乳を作らなければならないという社長の強い想いがあったからなんです」と佐藤さん。おいしくて、質の高い生乳を作るため、牧草や飼育環境に配慮し、場合によってはアメリカまでハイグレードな牧草を買い付けに行くこともあるそう。

307_bmw.jpg牛たちのストレスを軽減するため、寝床には高価な砂を使用。きめ細かな配慮と、課題を見つけて解決するチャレンジ精神が、別海ミルクワールドの強みです。

「もちろんすごく高価な牧草なのですが、おいしさを保つためには必要だと考えて購入しています。また、牛たちのベッドに砂を使用。砂だと糞が取りやすい上、清潔を保ちやすいですし、コンクリートと違って牛が移動する際に滑りにくいという特徴もあります。少しでも牛たちのストレスを軽減できればと考えています」

おいしい生乳を作るため、社長は今でも毎年のようにアメリカへ視察に行っています。ウィスコンシン州の大学で専門的に学び、いいと思ったものは帰国後すぐに取り入れ、果敢に挑戦するそう。

「今では飼料用のデントコーンを作っている牧場も増えましたが、うちは10年以上前からデントコーンを栽培していました。当時、周りの酪農家からは変わっている牧場と思われていたようですが、ほかと違っていても、挑戦する価値があると思ったら、社長はチャレンジするんです。そういうタイプの社長なので、スタッフが『こんなことを試してみたい』と提案すると、挑戦してみたらいいと言ってくれるんです」

294_bmw.jpg未経験で入社した佐藤さんは、今では多くの仕事を任され、やりがいを感じているといいます 。新しいことに挑戦できる風土が、スタッフの成長を後押ししています。

佐藤さんも一昨年、猛暑が原因でどのエリアでも生乳の生産量が下がった際、搾乳の仕方を変えることを提案。

「うちは搾乳ロボットを使っていないのですが、僕が考案した搾り方によって、周りの優秀な牛よりも平均10キロは多く生乳を出すことができました。このように、挑戦の機会を与えてもらえるのはうちのいいところかなと思います」と佐藤さん。

言われたことをただやるのではなく、課題を見つけ、それを解決するためにどうすればいいかを自分たちで考え、実践できるというのは、仕事のやりがいにもつながっていきます。

278_bmw.jpg「この人ならついていってもいいかも」そう思わせたのが、副牧場長の佐藤さん。酪農の常識にとらわれず、社長と共に新しいことに挑戦し、高品質な牛乳づくりを追求しています。

未経験からでも活躍できる会社。ストレスのない別海での暮らしも満喫

現在、35人の従業員が働いており、約半分が日本人で、あとは外国人。エサ作り、ベッドメイク(掃除)、搾乳、哺育、繁殖、牧草作りのための畑作業と仕事内容は多岐に渡りますが、すべて分業制で行っています。

「外国人スタッフの中には、高いスキルと知識のある就労ビザを持つエンジニアも4名います。獣医の大学を出ている子など、とても優秀なんです。日本人は、ほとんどが地元出身ですが、僕を含め3名が道外出身者ですね」

佐藤さんは横浜出身で、別海に来る前は大手コンビニの社員として働いていたそう。

272_bmw.jpg別海ミルクワールドが生産する生乳は、お腹にやさしいとされる「A2ミルク」として出荷されています 。身近な商品では、カネカの「パン好きの牛乳」に使われています。

「小売りや流通に関しては十分見てきたけれど、店に並ぶものを作るための原材料を作る1次産業の現場のことは全然知らなかったので、ちょっと見てみたいと思ったんですよね。正直、酪農がしたかったとか、北海道に来たかったというわけではなく(笑)、ここに入社したのは、ちょうど農業系転職サイトのトップページの一番上にミルクワールドの求人掲載があったのがきっかけなんです。連絡をして、社長と話をしてみて、『この人ならついていってもいいかも』と思ったので入社を決めました。もし、一番上に違う会社が載っていて、その会社の社長がいい人だったら、そこにいっていたかもしれません」

ここに来る前日に地図を見て初めて別海町の場所を知ったという佐藤さん。「中標津空港の中標津も読めませんでした」と笑います。

「もともと旅が好きで、海外にもよく行っていたんです。家を借りて3か月ほど滞在する長期型の旅が好きだったので、別海に来るときもそんなふうに旅の延長的な感覚だったんです。ダメだったらほかへ行けばいいくらいの感じで」

佐藤さんは、牛を間近で見たのもミルクワールドに来てからというくらい、酪農に関してはまったくの未経験。「最初は牛の糞の上を歩くなんて...と思いましたよ。長靴で一歩踏み出すのに勇気がいりました」と振り返って笑います。

「未経験からのスタートでしたが、周りに教えてもらいながら少しずつ仕事を覚えていく中で、達成感もやりがいも感じながら仕事ができていたと思います。今はいろいろ任せてもらえるようになって、さらにやりがいを感じています」

別海での暮らしについて尋ねると、「ストレスはないですね。都会にいたころは、ストレスがいっぱいでした。ネクタイもしたくなかったし、満員電車にも乗りたくなかったので、こちらに来てからそういうストレスは皆無。確かに都会に比べればモノが手に入りにくいとかは多少ありますが、今はネットで何でも買えますし、暮らしに関して困ることは何もありません。強いて言うなら、ガソリンスタンドが早く閉まることくらいかな」と話します。

293_bmw.jpg都会でのストレスから解放され、別海での暮らしを満喫する佐藤さん 。休みの日には、車で道東を巡り、雄大な自然を満喫しているそうです。

ドライブが好きな佐藤さんは、休みの日には車を走らせて道東を巡るそうで、最近は4時間かけて襟裳岬まで足を延ばしたとか。

「横浜にいたら、襟裳岬に行こうとは思わなかっただろうし、ちょっと流氷を見に行こうかなんて考えもしないでしょうし、そういう意味では別海に来たことで貴重な経験をしている気がします」とニッコリ。

別海への移住や転職を考えている方へメッセージをお願いすると、「別海は中標津空港まで車で30分だし、そこから羽田空港まで1時間40分ほど。僕なんて横浜の実家まで3時間以内で着いてしまいます。同じ自然あふれるところへ行くなら、沖縄の離島に行くよりずっと交通アクセスもいいし、便利。そして、食べ物がおいしいのも魅力だと思います。うちの会社に関しては、いろいろなことに好奇心がある人ならば、僕のように未経験でも活躍できる会社だと思います。とりあえず普通免許があれば大丈夫。ゲストルームに泊まって職場体験も可能なので、興味がある方がいたらぜひ。そうだ、次に登場するスタッフの増田もゲストルームに泊まって職場体験をした一人です」と、最後は次の増田みさきさんへ繋いでくれました。

動物と北海道が好きで、別海へ。一番好きな作業は、仔牛の世話

佐藤さんからの紹介で次に登場していただくのは、入社7年目の増田みさきさんです。今年の4月から牛の飼料となる畑の作業を担当しています。

静岡出身の増田さんは、子どものころから動物が好きで、中学時代には酪農に興味を持ち、高校は静岡県内の農業高校へ進学します。

「高校で酪農体験などもしたのですが、授業で知った実験動物にも興味が湧いて、大学は東京農業大学の網走キャンパスに進みました。北海道の雄大な景色とかに憧れがあったので、北海道の大学を選びました」

327_bmw.jpgこちらが、入社7年目の増田みさきさん。

卒業後は、神奈川県にある実験動物に関わる会社に就職。酪農とも、北海道とも離れた生活を送っていましたが、「やっぱり酪農がしたい、北海道に暮らしたいという思いが募ってきて、転職サイトをチェックするようになりました」と話します。

条件などを見て、転職先を帯広、佐呂間、そして別海の3つの酪農業の会社に絞った増田さん。

「全部回って、職場体験をさせてもらい、直接話も伺ってから、どこに転職するか決めようと思いました」と振り返ります。

佐藤さんが話していたように、ゲストルームに泊まって、職場体験をした増田さん。別海ミルクワールドを選んだ理由について、「ほかの2カ所が肉牛の牧場だったんです。搾乳がやりたかったので、ミルクワールドがいいかなと思いました。あと、もともと『パン好きの牛乳』が好きだったので、その原材料を作っているならいいかもと思ったのもあります(笑)」と話します。

264_bmw.jpg幼い頃から動物が好きだった増田さん 。搾乳の仕事がしたくて、北海道の酪農会社を巡る中、別海ミルクワールドの職場体験を経て入社を決めました。

「そして、面接してくれた佐藤さんの印象がとても良くて、こういう方がいる会社なら働きたいなと思ったのもありますし、将来性もある会社だなと感じました」

佐藤さんが社長と話をして、ついていってもいいかもと思ったように、増田さんも佐藤さんと話をしてそう思ったそう。会社の魅力がきちんと社員に浸透し、受け継がれているのが分かります。

入社してすぐは、哺育を担当していたという増田さん。

「今でも一番好きなのは、仔牛たちの世話なんです。ちょっとした変化を見逃さないとか、風邪をひかせないようにとか、とにかく元気に育ってくれたらと思いながら世話をするのが楽しくて」と話します。

さらに、「自分が世話をした仔牛が大きくなって搾乳牛になっても、私のことを覚えていてくれて、バーッと近づいてきてくれたりするとやっぱり嬉しい」と目を細めます。

哺育のあとは搾乳も担当し、今は畑の仕事を担当。

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「牧場の仕事をいろいろ体験した方がいいということで、この春からは畑作業に従事しています。ついこの間、けん引の免許を取りました」と増田さん。免許を取得したことで、トラクターにいろいろなアタッチメントを取りつけてさまざまな作業ができるようになるほか、牛を運ぶ作業もできるようになったそう。

「牧場の仕事は力仕事もたくさんあるし、実際、私も入社してから体重が減って、筋肉が増えました(笑)。作業をしていると、汚れることもありますけど、私は牛たちと触れ合えるので楽しくやっています」

職場の雰囲気を尋ねると、「和気あいあいとした感じです。中には祖父くらい年齢が離れている方もいるんですけど、孫のようにかわいがってもらっています」と笑います。山菜や畑で採れた野菜のおすそ分けもよくもらうそう。外国人のスタッフとも仲が良いそうで、「インドネシアの子たちが社員寮でインドネシア料理を振舞ってくれたり、ベトナムの子が香辛料をプレゼントしてくれたり、別海にいながら国際交流をしています」と話します。

299_bmw.jpg入社してから力仕事で筋肉が増えたという増田さん 。ベテランスタッフから可愛がられ、外国人スタッフとの交流も楽しんでいるそうです。

景色の良さも別海の魅力。これからも牛が快適に過ごせる環境を整えたい

最初は別海にある牧場近くの寮に入っていましたが、今は隣の中標津町で暮らしているという増田さん。

「首都圏に比べるとかなり家賃が安いと感じます。別海も中標津も、町全体が潤っているような印象があって、田舎だけど、暗さはなくて活気があると思います。中標津には大きなスーパーもあるし、必要なものは揃うから特に不便もないですよ」と話します。

また、仕事帰りに別海や中標津の近場の温泉に寄って、疲れを癒やすこともあるそう。

296_bmw.jpg都会に比べて家賃が安く、生活に不便を感じないという増田さん 。休日には、温泉に行ったり、道東を観光したり、猫と遊んだりと、別海での暮らしを謳歌しています。

休みの日は2匹の猫たちと家でのんびりしたり、知床など道東観光や温泉に出かけたり、釧路まで買い物やエステに行ってリラックスして過ごしていると言います。

「あと、年に1回、冬になると飛行機で札幌まで行って1泊して、円山動物園へ行ったり、観光スポットを回ったりもします。飛行機だと新千歳空港まで1時間ほどなので」。充実した休日を過ごしているのがよく分かります。

別海町のいいところを尋ねると、「牛乳やソフトクリーム、ホタテなど、食べ物がおいしいというものありますけど、私は景色が好きです」と話します。

332_bmw.jpg増田さんが語る別海の魅力は、空の青さと牧草の緑が広がる雄大な景色 。野生のタンチョウに出会えるのもこの土地ならではです。

「空の色が違うんですよね。すごく青いと思うんです。そして、遮るものがないので、見渡す限り、牧草の緑と空の青さが広がっていて、その眺めが町の至る所で見られるのが好きです。あと、野付半島の景色も好きですね」

また、動物好きな増田さんらしく「あちこちでタンチョウに出会えるのもこの辺りの魅力かな。本当に絶滅危惧種?って思うくらい、野生のタンチョウのつがいや親子を町内の畑や牧場で見かけるんです」と話します。

最後にこれからの目標などを質問すると、「牛たちがもっと気持ちよく過ごせる環境を整えたいという思いは常にあります。もっと勉強して、経験も積んで、上のポジションを目指しつつ、牛たちのために環境を良くしていきたいと思います」と力強く語ってくれました。

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株式会社別海ミルクワールド
株式会社別海ミルクワールド
住所

北海道野付郡別海町中西別137-21

電話

0153-75-6737

URL

https://www.youtube.com/watch?v=G5-yigrgUvM

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ストレスフリーが、特別なA2ミルクを生む。別海ミルクワールド

この記事は2025年8月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。