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学校と学生の取り組み
美深町

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第13弾 美深町20250729

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第13弾 美深町

こんにちは!
「水産の未来を考える若者を増やす!」をモットーに活動する学生団体、レディ魚ーの桑原綾杜(くわばらあやと)です!岐阜県岐阜市出身の北海道大学水産学部の1年生です!

レディ魚ーの活動の1つである漁村訪問、今回は北海道北部の上川地方北側に位置するまち、美深(びふか)町のチョウザメ養殖を見学。訪問後、イベントに向けてチョウザメを用いたメニューの開発を行い販売を行いました。今回はそんなチョウザメ養殖とそこに込められた想い、そして気になるチョウザメの味も...書かせていただきます!是非最後までお読みください。

readygo13_02.png今回記事を書かせていただく桑原です!よろしくお願いします!

5月の下旬、チョウザメの養殖を行っている美深町に、私とレディ魚ーメンバーの相良八雲(さがらやくも)と齋藤大泰(さいとうひろやす)の3人で訪問させていただき、美深町の町役場でチョウザメ養殖の担当をしている紺野哲也(こんのてつや)さんから様々なお話を聞かせていただきました!

美深町ってこんなところ!

所在:上川総合振興局
人口:3651人(2025年5月時点)
特産品:じゃがいも かぼちゃ 小麦 チョウザメ
観光名所:トロッコ王国美深 松山湿原 天塩川カヌー・ラフティング

美深町は北海道北部の上川地方に位置し、天塩川や松山湿原という北海道最北の高層湿原など、美しい水と森林に囲まれています。栗のように甘い味のするジャガイモ「くりじゃが」、白樺の樹液、地元産の小麦を使った「美深麺」など様々な特産品があります!
 
そんな美深町では、天塩(てしお)川から流れる豊富で綺麗な水を利用して40年ほど前からチョウザメの養殖が行われており、地元ブランドとして町内のレストランや旅館でチョウザメの上品な身を生かした様々な料理が提供されています!

readygo13_03.png美深町を流れる天塩川

サメ?サメじゃない?チョウザメのあれこれ

チョウザメと聞いて、まずみなさんが思い浮かべるのは「キャビア」ではないでしょうか?チョウザメの卵「キャビア」は、トリュフ、フォアグラと並んで世界三大珍味であり、超高級食材でもあります。「キャビア」の親であるチョウザメ、皆さんは想像できますか?

実はチョウザメはサメという名前を持ちながら海にいる「サメ」とは全く違う種類に分類され,サメのように鋭い歯もなく、どちらかというとコイやサケのような魚の方が近い仲間なのです!また美深町にゆかりのある魚であり、かつて明治時代までは、美深町を流れる天塩川にチョウザメが自然に生息していて、その魚肉や魚卵(キャビア)は、当時の人々にとって貴重な食料源となったといいます。

readygo13_04.png昔、北海道に生息していたミカドチョウザメの剥製

ここからは今回の訪問の様子を紹介させていただきます!

札幌から車を走らせること4時間、ようやく美深町に到着した私たちは、びふか温泉に宿泊しました。温泉宿と言えば、美味しい料理!長距離移動の私たちの前に並べられたのは、なんと豪華なチョウザメの懐石料理でした!

美深のチョウザメその味はいかに...?

チョウザメの刺身は綺麗なピンクの皮目に脂が非常に良く乗っており、噛み締めると旨みが溢れ出てきました。てんぷらは刺身とは一転して、脂がなくタンパクな味わいで、非常に食べやすく、天つゆにも塩にもマッチする美味しさです。白身でたんぱくなチョウザメの身はどんな料理にも合う最高の食材だと実感しました。またキャビアも、塩気が強いと思いこんでいましたが、美深町のキャビアは一般的なキャビアよりも塩分を低くして製造されているため、塩気をほとんど感じず、濃厚で純粋な魚卵の旨みを実感できました。

readygo13_05.pngチョウザメがふんだんに使われた懐石料理

美深町のチョウザメ養殖の様子

翌朝は待ちに待ったチョウザメの養殖場見学!昨晩食べたチョウザメがどのように養殖されているのか、心を躍らせて向かいました。養殖場に着くと、町役場の紺野哲也(こんのてつや)さんが出迎えてくださり、養殖場の案内をしてくださいました。

養殖場に入ると、目の前に現れたのはたくさんの円形の水槽!絶え間なく水槽に流れ落ちる水の音が養殖場に響きわたります。チョウザメは種類ごとに分けられて水槽に入れられ、どの個体も大きさが均等になるように分けられていました。チョウザメの数も多すぎず、密度にもとても配慮されていました!また、今回見学させていただいた施設の中には廃校となった小学校を使った施設もあり、プールの跡地を用いた施設には驚きました。

readygo13_06.png元小学校のプールを利用した施設

チョウザメに対する紺野さんの想い

美深町ではもともとチョウザメの養殖を行っていたのですが、実はキャビアを用いた産業化が始まったのはここ最近の話なのです。町が産業化に乗り出す中で、チョウザメ養殖の白羽の矢がたったのが紺野さんでした。しかし、紺野さんは水産と関わりのない町役場の職員。もちろんチョウザメ養殖に関しての知識もほとんどありませんでした。右も左も分からない状態で始めたチョウザメ養殖、たくさんの苦労もありましたが、全国のチョウザメ養殖場に赴いたり、北海道大学の教授に話を聞いたりしながら試行錯誤を繰り返し、ようやく正解が見つかりつつあると言います。

養殖場を案内してもらう中でチョウザメ養殖に対する紺野さんの2つのこだわりを知ることができました。

1つ目のこだわりが、「餌に北海道の魚を使うこと」です。チョウザメのエサの一部として,北海道の沿岸部から直接、魚を仕入れることで地産地消、そして持続可能性のある養殖を目指しています。

2つ目のこだわりが、「天塩川からの掛け流し養殖」です。美深町では河川水を引き入れ、常に新鮮な水を水槽に流し続ける「掛け流し方式」を一部で採用しています。これにより水質が安定し、チョウザメにとってストレスの少ない快適な環境が保たれ、健康的な成長と高品質なキャビアの生産ができています!「この2つをこだわることで美深町では一般的なチョウザメよりも、臭みが少なく、さらに美味しいキャビアが生産できている」とおっしゃっていました。

readygo13_07.pngチョウザメ養殖場の内部

チョウザメの魅力を伝えたい美深町の取り組み

美深町では、町の特産であるチョウザメについて多くの人に知ってもらうため、さまざまなPR活動に力を入れています!

まず1つ目の取り組みは、道の駅での「チョウザメフライ」の販売です。チョウザメの上品な白身を使ったカツを道の駅で提供することで、「チョウザメって美味しいんだ!」という驚きとともに、チョウザメの魅力を広く伝えています。クセが少なく淡白な白身は、サクサクの衣と相性抜群で、リピーターも増えています。

2つ目が「美深チョウザメ館」です。チョウザメの生態,歴史を伝える施設として道内各地や道外からも多くの人が訪れ美深のチョウザメを伝えています。

このように、美深町ではチョウザメの"食べる魅力"だけでなく、"使う・楽しむ"という新たな価値を見出し、発信して地域資源としての活用を行っていました。

readygo13_08.pngチョウザメ館の水槽

チョウザメの魅力を知って欲しい!チョウザメサンドの開発

チョウザメを食べ、チョウザメに対する紺野さんのこだわりや、美深町のチョウザメの様々な魅力発信の話を聞き、「もっと多くの人に美深町のチョウザメを知って欲しい」と強く感じました。その思いを形にするために6月の上旬に開催される大学祭に出店することを決め、大学祭に向けて「多くの人にチョウザメを食べてもらえてチョウザメの魅力を伝えられるレシピ」を開発することに!

チョウザメの身の特徴である淡白でクセのない味わいや、上品な脂を活かせるレシピはないか...手軽に食べられて、大学祭での食べ歩きにもマッチしたものはないか...

そこで、私たちが考えだしたのは「チョウザメサンド」でした!チョウザメの上品な味を引き立てるために、下味のつけ方に工夫し、独自に配合した特性オリジナルソースをかけるなど、約1か月に及ぶ試行錯誤によりついに「チョウザメサンド」が完成しました。

readygo13_09.pngチョウザメサンド試作の様子

その後、私はチョウザメ養殖の現状や課題をもっと多くの人に知って欲しいという理由から、チョウザメ養殖についてまとめたパネルを作成しました。パネルには美深町の説明やチョウザメの栄養素、様々な料理方法について記載し、なるべく興味を持ってもらえるように作りました。

迎えた学祭当日、予想以上に多くの人にお越しいただくことができました。普段なかなか目にすることのないチョウザメに興味をもつ人も多く、たくさんの方に食べていただくことができました。食後、「美味しかったよ」と言っていただけて、とてもうれしかったと同時にチョウザメのポテンシャルを再確認しました。そして、なんと最終日には用意していたチョウザメサンドを完売させることができました!買ってくださった方にチョウザメの現状や今後の展望を話すことができ、チョウザメについて知ってもらうきっかけになったのではないかと思います。

readygo13_10.pngイベント出店の様子

総括

今回は美深町に2日間訪問させていただき、チョウザメを目や舌で堪能することができました。チョウザメ養殖の現状や課題、未来について多くのことを知ることができ、知見を広げることができました。生産の現場に行ったことで思い入れが強くなったものを売るという体験は、初めての体験でとても新鮮なものでした。

また、イベントに出店したことで、実際に様々な人たちと関わることができて、チョウザメに対してどんな認識を持っているかを確認することができました!今後はこの経験を活かして、さらにチョウザメの魅力を広めていく活動に尽力していきたいです!

北大水産サークルレディ魚ー×くらしごと
北大水産サークルレディ魚ー×くらしごと
住所

北海道札幌市北区北20条西5丁目2-50(レディ魚ー事務局)

URL

https://www.instagram.com/ready_5500/

株式会社美深振興公社

北海道中川郡美深町字紋穂内139番地

01656-2-2900

http://www.bifukaonsen.com/

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『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第13弾 美深町

この記事は2025年7月11日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。