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まちおこしレポート
厚真町

持続可能な社会を目指す会社が次に取り組むのは未来のコンビニ!20231101

持続可能な社会を目指す会社が次に取り組むのは未来のコンビニ!

少し前まで、地域おこし協力隊のざっくりしたイメージは、「若者が田舎へ行って、役場から依頼された仕事をする」というものでした。しかし、近年は地域おこし協力隊も多様化し、起業型や企業協働型(企業派遣型・連携型)と呼ばれるものが登場。それを導入する地方自治体が増えています。自らの夢も叶えながら地域活性化に貢献できる、あるいは地元の企業に在籍した形で地域に貢献できるなど、活躍の幅が広がっています。

今回の主人公である今廣佐和子さんも、厚真町の企業協働型地域おこし協力隊の隊員として活躍中です。今廣さんが所属しているのは、厚真町で事業を展開する株式会社sonraku。以前、くらしごとでも紹介したsonrakuは、厚真町で木質バイオマスを利用した地域エネルギー事業を展開している会社です。しかし、今回はこれまでと少し異なる事業に取り組むそう。その事業のことを含め、今廣さんのこれまでのことやこれからのことなどを伺いました。

林業に造詣が深い、くらしごとに縁があるマルチ女子

sonraku_imahiro00003.jpgこちらが今廣佐和子さん

実は今廣さん、くらしごとに登場したこともあれば(今廣さん登場の記事)、ライターとして取材・原稿作成もしてくださっているという、くらしごとと深~いご縁のある方。今年の春から厚真町の地域おこし協力隊として赴任していますが、今廣さんが株式会社sonrakuを取材した(株式会社sonrakuの記事)のがきっかけだったそう。

今廣さんは、鹿児島で生まれ、すぐに宮崎へ。父親が転勤族だったため、横浜や長崎で暮らした経験もあるそう。宮崎の高校を卒業したあとは、仙台の東北大学理学部へ進学し、植物生態学を学びます。同大の大学院を経て林野庁に入り、1年目は霞ヶ関、2〜4年目は北海道へ配属。5年目、6年目の2年間は福島県喜多方市に出向し、市の職員として役場の仕事に携わりました。その後、林野庁を退庁し、2018年に道庁職員として再び北海道へ。

「林野庁は国の公務員。転勤が多く、1か所でじっくり仕事に取り組むというより、短期間で皆さんのお役に立てることをしていかなければなりません。子どものときから転勤には慣れていましたし、そういうものだと割り切って仕事もできていましたが、喜多方市に出向した際、腰を据えて、地域の皆さんの役に立てる地方行政のほうが自分には向いているかもと思ったんです」

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人生は一度きり。公務員とは違う働き方もしてみたい

道庁職員になってからは、道産木材の利用を推進し、それを山に還元していく仕事に取り組みます。道産木材製品の販路拡大PRのためのブランド「HOKKAIDO WOOD」の構想から携わり、道産木材製品のプロモーションのために奔走してきました。

「HOKKAIDO WOODの仕事は本当に楽しくて、不満は何もありませんでした。でも、その人にしかできない、属人化した施策にはしたくないと常々感じていて、立ち上げた人がいなくても成り立つ施策にしたいと思っていました。だから、4年携わって、HOKKAIDO WOODが広く認知されてきた時点で、そろそろ自分がこのポジションから動くべきだと考えていたときに、公務員を辞めるという選択肢が自分の中に出て来ました」

「HOKKAIDO WOOD」の事業から離れるのなら、別の部署へ異動という形もあると思いますが、「今以上に自分が行きたい異動先が思いつかなかったので、辞めるという選択をしました」と話します。

「ずっと公務員でいることもありだと思う反面、公務員にこだわっていたわけでもなく、公務員としてやりたかったことをやりつくした感があったんです。人生一度きりだし、違う働き方もしてみたいなと思って」

自分に正直な今廣さんは清々しくもあります。とりあえず1年間はフリーランスで仕事をしようと、自分のペースで依頼された仕事をこなす日々。くらしごとのライターとしての仕事もこのときに請けてくださっていました。

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取材での出会いがきっかけで、次のステップへ

そのくらしごとの取材で出会ったのが、株式会社sonrakuの代表取締役・井筒耕平さん。夏に取材をしたのち、井筒さんから今廣さんに連絡がいきます。ちょうど11月頃でした。

「厚真町の地域おこし協力隊として、うちでコンサルできる人を募集しているのですがどうですか?と声がかかって。実際、sonrakuという会社には興味がありましたが、でも組織に戻って仕事ができるだろうか...と思って迷いました」

まずは、3カ月間、地域おこし協力隊のお試しができるインターン型地域おこし協力隊の制度を利用して仕事をしてみることに。冬の間、札幌の家から通ったり、厚真町に滞在したりしながら、仕事を体験しました。

sonrakuは、木質バイオマスの事業とコンサルを行っているほか、最近は林野庁からの受託で、CLTという木の板の繊維方向が垂直に交わるように重ねて接着したパネルの利用を普及させるための実証実験なども行っています。

「自分の得意分野でもある林業や木材に関わることができ、コンサル事業を通じていろいろなところの人たちに出会えるのもいいなと思ったので、この春、正式に厚真町の企業協働型地域おこし協力隊の隊員としてsonrakuに入社しました。正直、バイオマスだけの会社だったら入らなかったと思います(笑)」

これまでの経験を生かしながら、コンサル修業中!

sonraku_imahiro00014.jpg(株)sonraku代表の井筒さん。自らも地域おこし協力隊の経験もあります。

さて、今廣さんに声をかけた張本人・井筒さんの登場です。なぜ今廣さんに声をかけたのかを尋ねると、「うちは士別のイトイGHDのグループ会社(イトイGHDの記事はこちら)なのですが、そこに今廣さんのことを知っている人がいて、『誰かコンサルができるいい人いないですか?』って話をしていたら、今廣さんの名前が出てきて。僕も彼女に取材をしてもらっていたので、会社のことも理解してくれているし、いいなと思いました」と井筒さん。

また、コンサルを担当している自治体から林業について専門性を求められることが多く、「僕は林業の専門家ではないので、同じ志を持った林業の専門家が欲しかったんです。コンサルの経験はなくても、林業については詳しいですし、今廣さんならできるって思いました」と話します。それを聞いていた今廣さんは、「今はコンサルの修業中です」とニッコリ。

sonrakuの一員になった今廣さんは、井筒さんの右腕として厚真町に導入した木質バイオマス発電(CHP)の運用を行うほか、全道各地の林業に関するコンサルや林野庁の受託事業などにも携わっています。

sonraku_imahiro49.jpg厚真町に建設した、バイオマス発電所

また、地域おこし協力隊として町の力になりたいと、「一般社団法人ATSUMANOKI96」が行う活動の全体ディレクションを自らやりますよと手を挙げたそう。一般社団法人ATSUMANOKI96とは、胆振東部地震で被災した木々をプロダクトとしてよみがえらせるプロジェクトから派生した団体。厚真町の林業関係者らがプロジェクトメンバーですが、全員がプレイヤーであるため、想いはあってもマンパワーが足りず、やりたいことができない状態に...。そこで、HOKKAIDO WOODなどのプロジェクトを成功させてきた今廣さんの出番というわけです。

まちづくりや地域活性化の視点から取り組むコンビニの経営

sonrakuの新事業についてお話を伺うと、なんと某大手コンビニエンスストアの運営。これまでの話の流れからいくと、意外な気もしますが...。

経緯を伺うと、厚真町にあったAコープが閉店し、町は町民が買い物をできる場所をなんとかしたいと考えていました。地域の課題解決に取り組んでいる某大手コンビニエンスストアのプロジェクトチームと繋がりができたのをきっかけに、企業協働型地域おこし協力隊の制度を使って、sonrakuで運営をやってみませんかと声がかかったのだそう。

「仕事はやりたいことを叶える手段。sonrakuはバイオマスのコンサルだけでなく、まちづくりや地域活性化という部分で、いろいろな実業もしていきたいと考えています。確かにコンビニは、バイオマスや林業とは一見無関係ですが、まちづくりの視点で考えると、アウトプットの仕方がコンビニなだけのこと」と井筒さんは話します。

sonraku_imahiro50.jpgもとAコープの建物。ここが、これからどんな素敵な場所になるのか、ワクワクします

コンビニのFC店ではありますが、地域のエッセンシャルストアにしたいという考えが根底にあるため、仕入れなど店舗運営に関しては自由度が高く、地域のニーズに合わせた展開を自分たちでできるそう。内装も厚真町の木材を使ったものにし(もちろんHOKKAIDO WOOD!)、太陽光パネル、蓄電池も設置する予定です。

現在、井筒さんと今廣さんは来年4月のオープンに向けて、このコンビニエンスストアの担当者や町と動いていますが、箱だけできてもそこを動かす人がいなければ始まりません。今廣さんと同じように地域おこし協力隊として厚真町に移住し、sonrakuのスタッフとして地域密着型のお店づくりを一緒にしていきながら、コンビニを切り盛りしてくれる人を募集するそう!

「将来、自分で店をやってみたいという人にはすごくいいチャンスだと思います」と井筒さん。
その理由をこのように話してくれました。

「上厚真という地域は、面白いヒト・コト・モノが揃っている地域です。昔から住んでいるお年寄りもいれば、新しく住み始めたファミリー層も多くいます。そこに、地域をもっと良くしたいとコミュニティを作ったり活動している人もいれば、厚真町の制度を活用して、農林漁業やアクティビティなど様々な分野で新しい事業にチャレンジしている人もいます。そういった個性豊かなヒト・コト・モノがそろう地域で、決まったオペレーションをまわしていくのではなく、自分たちで考えて、地域の人と一緒に試行錯誤していく。その上で、地域の人に喜んでもらえるような、ここならではのコンビニを作りあげていく、という面白さがあります」

さらに、実務の経験値として、仕入れ、商品展開、店づくりと、数字の管理も含め、自分で店を回す経験ができますし、地域の活性化のためにはもちろん、売上をアップするにはどうしたらいいかという自分のアイデアを店に反映させ、チャレンジすることができるとのこと。

ただし、ぜひとも挑戦したい!という人は、まず「厚真ローカルベンチャースクール」の合宿に参加し、採用のための審査をパスしなければなりません。ちなみにこのスクールは、厚真町で起業したい人を募集し、審査を経て合格すると、町から財政的支援を受け、起業を目指すことができる厚真町独自の事業で、企業協働型地域おこし協力隊とも連携しています。

厚真の魅力は、夢を追う人をサポートしてくれるところ

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厚真ローカルベンチャースクールや企業協働型地域おこし協力隊の取り組みなど、ほかの市町村と比べても、多様な人材、多様な事業を広く受け入れる体制が整っている厚真町。今廣さんは、「厚真町は、挑戦したい、可能性を広げたいという人たちに対して、門戸が広く、町にプラスになる事業をやってくれたらそれでいいよ!という懐の深い町。地域おこし協力隊に対しても、まずはやりたいことを厚真町で形にして輝いてほしいという風土があるように感じます」と、町の魅力を話します。

そんな今廣さん、地域おこし協力隊として厚真町に移住して半年近く経ちましたが、「働き方が違うだけで、やっていることも、地域の役に立ちたいという想いも、公務員時代とほとんど変わっていないんです。厚真の町で、地域活性化や林業など、自分が興味関心のあることに携わることができ、よりプレイヤーとして動けるのが今はうれしいです。任期中に、『これがあってよかったね』と町の人たちに思ってもらえるものを作りたいです」と、笑顔で語ってくれました。

株式会社sonraku 今廣佐和子さん
住所

北海道勇払郡厚真町新町105
※本社/北海道士別市朝日町中央4527-89

URL

https://note.com/sonraku


持続可能な社会を目指す会社が次に取り組むのは未来のコンビニ!

この記事は2023年10月20日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。