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まちおこしレポート
安平町

ローカル移住したい、地域おこし協力隊に興味のある全ての方へ20221013

ローカル移住したい、地域おこし協力隊に興味のある全ての方へ

北海道に移住したい! 田舎暮らしをしたい! そんな方々が情報を調べていくなかで、必ずチェックすると思うのが「地域おこし協力隊」の制度。総務省主導のもと、2009年に始まりました。全国各地の自治体がその制度を活用し、移住促進を行うための仕組みです。簡単に説明すると、最長3年間、自治体が雇用や委託契約などで収入を保証し、地域活性化につながるような仕事を受け持つことでミスマッチを減らし、スムーズに移住につなげていくためのものです。

最近では、大学を卒業した新卒の方がチャレンジをしたり、ご夫婦で採用になったり、ものづくりやIT系エンジニアなどのフリーランスの方が活用したりなど、さまざまな地域おこし協力隊が誕生しています。北海道総合政策部地域政策課が発表した最新の情報によると、令和3年度(2021年度)で北海道には809人の地域おこし協力隊員が活動しています。2009年の調査時には北海道に10人しかいませんでしたので、どれだけ移住を考えている方々に活用されているかがわかる数字になっています。北海道には179市町村がありますが、そのうち147市町村が制度を利用していることから、むしろ北海道へ移住したい方々、地域おこし協力隊を検討したい人にとっては、地域が多すぎて選べない...という状況にもなっているかもしれません。

独立開業を目指す「起業支援型」の地域おこし協力隊

今回、くらしごと編集部が教えてもらったのは、そのなかでも「起業支援型」の地域おこし協力隊の募集でした。それはどんな制度で、どんな募集なんでしょうか。今お住まいの地域から離れ、移住する=転職するということであれば、どうせなら自分で事業をしてみたい!なんて方もいるかと思いますが、なんとなくの軽い気持ちでも検討していいものなのか、リスクは? これまでの実績は? などの疑問や不安があるはず。そんなみなさんが聞いてみたいことを代わりに聞いてきました。

結論から言うと、北海道に移住を考えている、田舎暮らしをしてみたい、子育て中心の暮らしをしたい、なんか面白いことしてみたい、そんな方々全てに知っておいてもらいたい情報です。

北海道「安平町」はご存じですか?

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北海道にある「安平町」。漢字を読めますでしょうか? 「あんぺい」でもなく「やすだいら」でもありません。「あびら」と読みます。人口7,000人ほどの小さなマチの安平町は、新千歳空港からクルマで20分という場所にあり、雪の降る量も北海道内では少なめなことなどもあり、今、北海道への移住を考える人々から注目が高まっているエリア。今回の「起業支援型」のプロジェクトを始めた町です。なぜ始めることになったのか、その経緯から聞いてみたいと思います。

お話しを聞いたのは、安平町 政策推進課 政策推進グループの内藤 貴之さんと木村 誠さん。残念ながら人事異動で内藤さんは、令和4年度の秋口には部署が変わってしまうとのことでしたが、このプロジェクトの立ち上げに関わった1人として、その想いなどもアーカイブさせてもらおうとお話しを聞かせていただきました。

abira01.JPG木村 誠さん

「安平町は、2006年(平成18年)に、早来(はやきた)町と追分(おいわけ)町という2つの町が合併してできた、まだ新しい町なんです。私はもともとは早来町の役場職員で、内藤さんは追分町の職員でしたので、合併してから同じ自治体のメンバーとして仕事をしています」と、木村さん。木村さんは旧早来町出身。苫小牧の高校を経て東京の大学に進学。東京の企業の内定もでていたそうですが、「50歳、60歳になったときに東京で暮らしているという自分をイメージできなかった」ということと、大学では行政に関する学びをしていた経験から、「どこに住むのか?」というよりも「何をしたいのか?から場所を選ぶ」という考え方に至り、漠然とながらも故郷の地域に貢献したいとの想いが高まり、企業の内定を辞退し、Uターンしてきたとのことでした。

abira03.JPG内藤 貴之さん

「合併をして16年(2022年現在)。今でも早来地区とか追分地区という感じで区切りをつけて呼ばれることもありますが、だんだんひとつの町として文化も醸成されつつあるという感じがしています。ただ、2町が合併しても人口は現在7,000人ちょっと。全国のほとんどの自治体がそうであるように、安平町も年々人口が減ってきているのが現状です」と、内藤さん。北海道江別市出身ということで、生まれは安平町ではないものの、町の移住施策や企業誘致などを11年担当してきたベテランです。2019年には、雪ダルマプロジェクトとして、ブラジルに渡航し、サンパウロに2mの巨大雪だるまを輸送し、お祭りを開催するなど、行政だからできないという壁を壊していけるようなバイタリティのある方です。

Fanfare(ファンファーレ) 〜あびら起業家カレッジ〜

abira12.jpg2021年 オープンニングカンファレンスの様子。 画像提供:ファンファーレ事務局

さて、そんなお二人が軸となり、2021年6月に始動したのが、「Fanfare(ファンファーレ) 〜あびら起業家カレッジ〜」という事業。それが冒頭にご紹介した「起業支援型」の地域おこし協力隊の募集につながる事業です。詳しくご説明いただきましょう。

「人口減少問題は、どこの地域も抱えるものですが、私たちが特に感じたのは、人口が少なくなってきているからどうしよう...ということだけでなく、2018年におきた『北海道胆振東部地震』での被害において、特に早来地区の商店街が倒壊・半壊した被害によって事業が継続できずに空き地が広がってしまったことや、経営者の高齢化による後継者問題などもあり、地域活性化につなげていくためには、この町であらたに起業していただける方々がきてくれることが重要なのではないかと考えました」と木村さん。

内藤さんがお話しを続けます。

「移住の施策をこれまで続けていく中で、特に若い世代については『仕事』がなければなかなか移住していただけないこともわかってきて、町内企業の雇用だけでは吸収しきれないという課題も見えてきたことから、この起業型という選択肢も選べるようにという側面もありました。できれば安平町の移住施策の骨格にもおいている『子育て世代』や『若者』に特に興味をもってもらえると、将来の安平町にとって絶対に財産になる!という考えでもありました」

abira igarashikun.JPG株式会社大人  五十嵐 慎一郎くん

とはいえ、これまでに取り組んだことのない施策。役場のみなさんもその事業を形成していくために、知識の足りなさや人手の問題などがありました。そこで、当サイト「くらしごと」ではおなじみのあの人が登場します。五十嵐 慎一郎くんです。株式会社大人の屋号で、「北海道移住ドラフト会議」を仕掛けたり(北海道移住ドラフト会議×くらしごとのイベントの様子はコチラ)、最近では、積丹町の「岬の湯 しゃこたん」の再生に乗り出したりなど、北海道の地域活性化のための事業に数多く関わっています。

「さっき、安平町の飲食店でお昼を食べてたら、大将から『あんた、ウチの店を引き継がないか?』って声かけられちゃいました(笑)」と豪快に笑う五十嵐くん。安平町さんから、お話しがあったときのことも聞いてみます。

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「『起業型』のプロジェクトって、どこのマチでもできるか?って考えたら、そう簡単じゃないって思ってたんです。でもこの安平町は、新千歳空港からも激チカで、まず場所がとても良かった。そして起業を考える世代って、20代・30代・40代が中心ゾーンになると思うんですけど、安平の場合、『子育て環境』『教育に力を入れていること』というポイントがありました。なので、これはいけるんじゃないか?というのを感じました。首都圏などの都会でフリーランスで働き始めていたり、駆け出しの人とかと話すと、子育ても考えた『ちょうどいい田舎暮らし』を検討する人も多いので、いろんな条件が整ってると思いました」

なるほどなるほど。うちのマチで起業しませんか?で勧誘して、あとはお任せ!自己責任でお願いします!では、人はなかなか振り向かないですもんね。起業することだけでなく、その方々の暮らしや生活、子育て環境などの良さも含めて提案していくという流れはとても共感できます。ということで、五十嵐くんを始め、さまざまな方がこのプロジェクトにジョインし、事業がスタートすることとなります。

「起業型支援」の事業がついにスタート!

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「いろんな議論が交わされまして、最終的には起業したい方々のプレゼンテーションをお聞かせいただき、そのなかから安平町として地域の活性化につながるであろう内容を採択させてもらうというスタイルとなりました」と内藤さん。

木村さん「地域おこし協力隊として雇い入れるという制度も活用することによって、最大3年間は給与・報酬というカタチで月額20万円のベーシックインカムを保証する制度も整えましたので、個人で起業するよりもかなりリスクを減らしたスタイルで経営者の道の一歩を踏み出していただけるかと思います」

abira09.jpg2021年のプレゼンテーションの様子  画像提供:ファンファーレ事務局

それはすごい。でも、飲食店をやりたいとか、IT企業を設立したいとか、どんなジャンルでもいいのかも気になります。その点は五十嵐くんから。

「そうですよね、なんでもいいですよって言われても迷う人がでてくるのも事実ですよね。この点もすごくみなさんと議論しました。例えば『商店を開いてもらう分野』とかってカテゴリをつくったとしたら、わかりやすいかもしれません。でも僕らが至った結論は、全方位型。『あなたの夢を聞かせて下さい』って感じで、どんな分野でも1度聞かせて欲しいというスタイルをとりました。でも昨年、その第1回目の募集を行ったのですが、やっぱりそのスタイルで正解だったと思っています。ゲストハウスの開業と、カフェの開業というのが最終的に採択となりましたが、お菓子屋さんをやりたい!とかグラレコで起業したい!とかって思ってもみない提案もありました。ちなみにそのお二人は起業型ではなくて、僕らとのセッションを重ねていく上で起業ではなくて、就職という方向になり、お二方とも地元企業で働くという道を選択されました」

聞くと単に起業のことをプレゼンするだけでなく、町を知るイベントやビジネス合宿なども準備されているそうで、そういった「学び」や「地域のみなさんとの交流」を通じて、最終的に提案したい内容を固めていくという伴走支援もあるそうで、起業じゃない結論に至ることもあるのは、すごいことかもしれません。ちなみに起業型ではない一般的な協力隊としての採用の道もあるそうです。

abira07.jpg2021年 プレゼンをするROYくん  画像提供:ファンファーレ事務局

「起業についての度合いをクラスに分けて検討するプログラムにしており、自分はこういう起業をしたいんだ!とガチガチに決まっている方でもいいですし、割とふんわりとイメージはあるけれど、安平町でそれが実現できるだろうか?という探求型の方もまずは関わってもらおうという感じです。なのでまずは北海道で、安平町で、何か一緒にやっていきたい!こんな僕らみたいな人たちと一緒に地域を盛り上げていきたい!と思う方がいらっしゃったら、問い合わせして欲しいなという感じです」と木村さんも内藤さんも口を揃えます。

abira06.jpg2021年 プレゼンをする浅野さんご夫婦  画像提供:ファンファーレ事務局

ただ、地域おこし協力隊としての採用として、「どんな人を採用したいか?」ももちろんあると思いましたので、そこも聞いてみます。

「そうですね、決して大きな町ではありませんので、いろんな方々とコミュニケーションをとるのが好きな人が向いているかと思います。地域のみなさんとつながりが増えていけば、必ずその地元のみんなが助けてくれるという動きもでてきますので、地域とのつながりを大事にしてくれそうな方かどうか...という点は選考でみることになります」

確かにその点は重要ですよね。それは起業型ではなくてもどこの自治体においても見られるポイントなのかもしれません。ただ、逆に言うとその点だけとのこと。起業経験や学歴、これまでの職歴なども基準はないそう。そんなことからも北海道に移住を考える方や地域おこし協力隊になりたい全ての方に興味を持ってもらえたらいいなと思います。

ちょっと待った! 美味しい話に裏はないの?

abira08.jpg2021年 プレゼンを聞く審査員のみなさん 画像提供:ファンファーレ事務局

事業が軌道に乗るようにいろいろと相談に乗ってくれて、採択されたら月々の収入も最大3年間保証してくれるなんて、本当に本当?? 美味しい話には裏があるのでは?と、ちょっと意地悪な質問もしてみます。言ってしまえば安平町がそれだけ投資するので、預託金を入れて欲しいとか、何か途中であったらお金を返して欲しい!とかはないんですか? 町の施策なので、突然事業が終了となって、放置されるとかはないんですか? と。

「地域おこし協力隊の制度上、住民票は移して住んでもらう必要はありますが、お金を負担させるなど、そういうことは一切ありません。副業OK型の協力隊となりますので、任期中に起業した事業で収入が発生してもご本人の収入になり、町が回収することもありません。そんな背景ですので、事業が行き詰まったりしないか、安平町で事業が実現可能なのか、計画に無理はないだろうか?という点をしっかりと見させていただくために、プレゼンテーション形式をとっているんです。プレゼンの審査側には多くの方々の目線が入りますから、そういった点もリスクヘッジになるのかと考えています。事業についても起業家を育てていくという視点からも何カ年事業というのも設定していません。継続性が大事だと思っていますから。さらに言うと、何人採用という枠も決めていません。極端な話し、100人エントリーがあって100通りの起業が町にフィットする!となれば100人採用するっていう感じでもあります」と、意地悪な質問にも内藤さんが笑って答えてくれました。

abira11.jpg2021年 ビジネスブラッシュアップイベントの様子  画像提供:ファンファーレ事務局

それでも「事務局側は良いこと並べられるじゃん!」と、必要以上に疑心暗鬼になる、くらしごと編集部(笑)。2年目ってことは、1年目で採択された人にもお話しを聞かせてくださいよ!とおねだり。この打ち合わせにも一緒に同席してくれたゲストハウスの開業を準備しており、地域おこし協力隊として採用されたROYくんと、カフェを開業した浅野さんもご紹介してくれました。こちらは別の記事にてご紹介します。ファンファーレの事業に関わって実際どうなの?は以下のリンクからご確認ください。


「あびらカフェ」を開業した浅野浩司さんの記事このテキストをクリック!
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ゲストハウス「VACILANDO」を開業するROYくんの記事はこのテキストをクリック!
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北海道に移住したい、協力隊や起業に興味のあるみなさんへ

最後に、安平町に興味でたんですけど! 起業を考えているですけど! 北海道に移住したいんですけど! というみなさんに、メッセージを代表して五十嵐くんからいただき締めたいと思います。

「このファンファーレ事業に関わってもらうことだけで、学びだったり気づきだったり、人とのつながりだったりという感じで、なんらかのお返しができるんじゃないかなって思っています。もちろん『起業』を目指すプロジェクトですので、参加された方が事業を興して軌道に乗ることが一番のゴールなんですけど、この事業を通じて、まずはこの安平町っていう町を知って欲しいし、できれば来て欲しい。で、みなさんがやってみたい事業だったり、暮らし方であったりをとことん僕らと話していったら、お互いに何か見えてくるんじゃないかなって。まだまだプロジェクトも始まったばかりだけど、1期生、2期生って増えていくことで今度はそこのコミュニティや経験の蓄積もできていくので、たくさんの人に関わってもらえたらいいなって思ってます」

abira10.png2021年 プレゼン後の交流会の様子  画像提供:ファンファーレ事務局

取材を終えて感じたのは、これは本当に何年も続けていったら、安平町、超面白い町になるんじゃないか?ということ。行政あるあるな、ガチガチな枠組みがあったり、協力隊だからということでいろんな課題を押しつけられるようなこともなく、外から面白い人たちも巻き込んで、なんか地域が元気になるような楽しいことをみんなでやっていこう!という気概を感じました。とりあえずこれからフィーバーしそうな安平町に、まずは接触してみてはいかがでしょうか?(ちなみにこの記事はステマではありません。非営利記事です笑)。年度、年度でさまざまな仕掛けや、紹介してもらったようなプレゼンに関する募集などは、下部にあるリンクから参照してもらえたらと思います。

もうちょっと詳しく聞きたいってことも、気軽に答えてくれるみなさんなので、少しでも気になったら「くらしごとを読んだ!気になった!」と問い合わせてみてください。そのやりとりだけでも、きっといろんな学びが生まれると思います!

安平町「Fanfare(ファンファーレ) 〜あびら起業家カレッジ〜」
安平町「Fanfare(ファンファーレ) 〜あびら起業家カレッジ〜」
住所

北海道勇払郡安平町早来大町95番地(安平町役場 政策推進課 政策推進グループ)

電話

0145-22-2751

URL

https://fanfareabiraentrepreneurshipprogram.com/


ローカル移住したい、地域おこし協力隊に興味のある全ての方へ

この記事は2022年9月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。