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北海道の小さなマチから「旅」の価値を変えていく!20221017

この記事は2022年10月17日に公開した情報です。

北海道の小さなマチから「旅」の価値を変えていく!

北海道の新千歳空港からクルマで20分にある町。人口7,000人ほどの安平(あびら)町。そんな小さなマチで、ゲストハウスを始める準備をしている若者に出会いました。今回はそんな彼の物語。知り合いもいない場所で、20代の彼がなぜ事業を始めようと思ったのか、紐解いていきます。

コロナに翻弄された若者。ROYくんのこれまで。

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彼の名前は青木 良祐くん。旅好きの彼が外国を訪れる過程で、外国の方々が呼びやすいようなニックネームができました、それが「ROY(ロイ)」というセカンドネーム。ここでもROYくんと呼ぶことにします。

ゆるさのある服装に、ピアスをして、イマドキの若者!って雰囲気のROYくん。でもマスク越しにもニコニコな雰囲気がわかる素敵な第一印象。まずは生まれから、安平町にやってくることになった経緯をたずねてみます。

roykun001.png画像提供:ROYくん

「僕の生まれは北海道です。ずっと札幌で暮らしていて、大学在学中にオーストラリアのワーキングホリデーに行ったのが人生の大きな転機でした。オーストラリアでは自転車で1万Kmを走破して各地をまわり、それがキッカケで『旅』に目覚めたんです。そんなことがあって、就職したのは東京の旅行会社でした。が、普通の就職活動と違ったのは、正社員ではなく1年限定の契約社員に応募したってところですね。1年働いてから、世界一周の旅に出ようと決めてたからなんですよね」と笑うROYくん。話し方もどこか人懐っこい雰囲気をどんどん出してきて、たくさんの人が彼のまわりに集まってくる要素もすぐに感じました。

しかし、その世界一周の夢も、残念ながら延期...ということになりました。

「契約社員として満期となったのが2020年2月。もうコロナのまっただ中ですよ。世界一周どころか、旅行っていう風潮でもなくて悔しかったですね。それで東京でそのまま映像や撮影、Webマーケティングなどをフリーランスとして取り組み、もう1年ほど東京に住むこととなりました」

激変の世の中で気がついた自分が本当にやりたいこと

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東京でのさらなる生活の延長や、コロナによる世の中の閉塞感は、ROYくんにとっては、自分自身を見つめ直す時間となり、「北海道愛」を思い出させるのには充分な出来事だったようです。「自分が本当にやりたかった『旅』を仕事にすること、それを大好きな北海道で実現したい!とそう強く思うようになったんです」と。

北海道に戻ってくると決めたなかで、ROYくんのなかには「ゲストハウスをつくりたい」という強い気持ちも醸成されていました。でも、どちらかというと、旅に出たい側の人が、旅をする人を受け入れる側になるという違和感が話のなかで感じ、それも聞いてみます。

「そうですよね、よく旅をする側の『風の人』、受け入れる側の『土の人』っていう表現でくくられるんですが、そう長い経験ではないものの、これまでの自分人生を振り返ってみたときに『観光をしたいわけじゃない、旅を提供したいんだ』ということに気がついたんです。もっと具体的に言うと、多くの人々に対して『こんなすごい人に会ってみないかい?』とか『人生の学びに至るインパクトのある経験をしてみないかい?』ってことを伝えていきたんだって。コロナで動けないなら仕掛けるなら今だっていうのもありました」

ゲストハウスを地域活性化のツールに

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そんな深イイ話をするROYくんですが、これまでの体験の組み合わせが表現されていることがわかります。オーストラリアを含めた旅行先で出会ったスゴイ人々と、東京で働いていた際に出会った若くしてフリーランスの仕事を始めたすごい先輩や仲間たちの生き方がROYくんのなかでオーバーラップし、そもそも「旅って行く場所だけじゃなくて、出会いがあること」ということに気がついたからです。だからこそ、そんなディープな「人と人と出会う価値を提供する」という、ものすごく難しくもあり、でも目指すべきゴールだと知ったからこそ、ゲストハウスという人と人がつながれる場所をつくろうと考えたのは、むしろ自然なことだったのかもしれません。

「北海道で、ゲストハウスをやる!人と人の出会いを創出する!そんなディープな価値を提供するには、自分自身がその地域に溶け込んで地域の人々とも深いつながりをつくらないと、心から自分が関わって欲しいと思う人との出会いなんて演出できないと考えていました。でもコンセプトだけは決めていたんですけど、『どこで』というのは当時全く決めていませんでした(笑)。この安平町も北海道内を見て調べてまわっていた地域のホントにひとつで、この地域に決めたのも実は『役場の方々との出会い』でした」とROYくんは言います。

チャンスをくれた安平町。起業家支援ファンファーレ事業

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「こんな若造な自分の考えを実直に受け止めて聞いて下さり、このゲストハウスを運営するための古民家の情報もすぐに探して教えてくれました。安平町には不動産事業を専任でやっている会社もない環境なんですけどね。さらに、安平町が起業家を支援するための『ファンファーレ』という事業があることも知り、もはや自分のためにできたプロジェクトなんじゃないか?と思うくらいすぐにこの町だって決めました(笑)。知り合いもひとりもいない町だったんですけど」

ROYくんが説明する安平町の事業Fanfare(ファンファーレ) 〜あびら起業家カレッジ〜というプログラム。簡単に説明すると、安平町で事業を興したいと考えていて、それが町の活性化につながるのであれば、町が全面的に支援しますよ!という制度。2021年から始まったばかりの、まだ新しいプロジェクトで、ROYくんがこの事業の1期生にも選ばれることとなったそうです。

266391554_3041146442796891_7181059012193612961_n.jpgプレゼン時の様子 画像提供:「Fanfare(ファンファーレ) 〜あびら起業家カレッジ〜」事務局

「ファンファーレの事業を通じて、僕は『地域おこし協力隊』として採用をしてもらっています。最大3年間、地域を活性化するために取り入れられた総務省の制度なんですが、それを活用することで、ゲストハウスを開業するまでの準備期間として活用して構わないとのことでした」

安平町では、人口減少問題や後継者問題など、地域が元気であるために何ができるのかというのを模索しており、「地域の活性化につながる起業もひとつのテーマ」ととらえ、主に外から安平町で新たに経営を行いたい方々に対して、コンテスト形式で募集をしているそうです。無事にそのコンテストでプレゼンをし、ROYくんが採択されたというのが経緯のようでした。

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物件から先にこの安平町!と心で決めていたなかでのプレゼンでしたので、ファンファーレ事業の対象者として落ちるわけにはいかなかったと振り返って笑うROYくんでしたが、実際にこの事業で雇い入れられ稼働し始めてからこそわかったこと、感謝しなければいけない理由も話し始めてくれました。

「そもそも、ゲストハウスを開業するために毎日DIYとかしてるんですけど、その作業をしていても協力隊として給料をもらえますから、安心して作業ができるっていうのがあります。普通にひとりで開業を目指すなら、営業を開始する前は身銭を切って準備や自分の生活を支えるのが当たり前ですが、こんなに恵まれていて本当にいいんだろうか?と思うこともあります。でも、町や住民のみなさんが、このゲストハウスが軌道に乗れば、地域の活性化につながると信じて投資してくれているっていう側面もありますから、感謝しながら日々作業しています」

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物件探しから、開業に関わる準備期間ですらサポートしてもらえるなんてすごい制度です。さらに、副業OKという地域おこし協力隊の採用とのことで、他の収入があっても問題ないということだそうなので、開業後も協力隊でありながら、安心して事業のベースをつくっていくこともできそうです。そんなROYくんですが、このファンファーレ事業のメリットはもっと他のところにあると説明してくれます。

「Uターンでもない、地域に知り合いもいないような若造が『ゲストハウスをつくります!』なんて、ローカル地域で動き出したら、きっと地元住民のみなさんから不審な目でみられると思うんです。そもそもゲストハウスって何?みたいな方にとっては、怪しさしかないですよね(笑)。でもこのファンファーレの事業を通じて、地域のみなさんに対してプレゼンをし、地域おこし協力隊としての活動を通じて、多くの地元の方々に関われることこそが、この事業の最大の価値だと今は思っています」

20代でなんでそんなことにまで気がつけちゃったの?と思うようなお話しですが、きっとROYくんが、これまで出会ってきた方々や、安平町が進めるファンファーレ事業での経験がそんな価値観を形づくっているんだろうなと思います。

知り合いのいない町で

entrance01.JPG安平町コミュニティスペース「ENTRANCE」

ここまでお話しを聞いていて、ふと疑問に思ったことを聞いてみます。協力隊とはいえ、「知り合いがいない町で人とのつながりはどうつくったの?」と。この答えもまた安平町ならではのものでした。

「安平町には、すごくいい場所があるんです、ちょっと見にいきませんか?」とROYくんに連れて行ってもらったのが、

ENTRANCE

というコミュニティスペースでした。

おじゃますると、小さなこどもたちが遊んでいたり、青年たちが何かを打ち合わせしていたり、地域の情報などが貼り出されていたりと、秘密基地感がいっぱいなワクワクする雰囲気の空間。

「僕が地域のいろんな人とつながったり、話せるようになったのは、ここのおかげでもあるんですよね」とROYくん。聞くと北海道胆振東部地震によって、甚大な被害を受けた安平町に、「復興へ向けた未来の安平町を語る場、つくる場」としてできた場所だそう。「復興への未来の入り口」であり、「一人一人の未来への入り口」であるために「エントランス」という名前がつけられたそうです。

「僕みたいに、安平町に知り合いがいない、北海道に知り合いがいないって方も、いろんな人々が集まれるスペースがあるので安心して来て欲しいですね。あ、ちなみにファンファーレ事業のプレゼンもここで行われました」

ゲストハウスの構築の過程もみんなで楽しむ

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さて、そんな安平町にゲストハウスをつくるプロジェクトですが、10月のグランドオープンを目指し、着々とDIYが進んでいるようです。

「このゲストハウスを立ち上げるプロジェクトは、安平町のみなさんに支えられているのももちろんなのですが、クラウドファンディングを通じた出資も募りました。物件が200万円でしたので、ちょうどその金額にあわせてはじめたのですが、大変ありがたいことに、その目標もクリアさせていただきました。さらには物件を改装するDIYについても、総勢40名以上の人々に関わってもらって、ほとんど北海道外から手伝いにきてくれました。今、手伝ってくれている彼は、ここの内装デザインを考えてくれた女性の旦那さん。ボランティアでいろいろ活動してもらっています。10月のオープンになんとか間に合うかな、いや、どうだろう(笑)。引き続き必死に作業を続けます!(笑)」。取材におじゃましたのが2022年9月下旬。確かに間に合うのかは微妙な雰囲気でもありましたが(笑)、泊まる人がDIYしてというのがこれからも繰り返されるような気がするので、物件が完全に完成する!ということはもしかしたらいつまでもないのかもしれません(笑)。

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そうそう、ゲストハウスの名前は「VACILANDO(バシランド)」。音で聞いた時は、うん?なんだって?ってなっちゃう聞き慣れない単語でしたので、その意味も聞いてみました。

「VACILANDOというのは、スペイン語が語源の言葉なんです。『どこに行くかよりも、どんな経験をするのかを重視した旅をする』という意味合いです。これまでお話しした通りで、ホントに自分の考えをそのまま宿名にしたって感じですね」

これから

まだ、宿としての運営が始まってはいないなかではありますが、今後の展望についても語ってもらいました。そして、全国的にゲストハウスは価格破壊が進んでいる状況で、ゲストハウスだけで収益を向上させていくのは難しい世の中。マネタイズをどう考えているのかについても聞いてみます。

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「まずはオープンをちゃんとさせて運営することが直近の目標なのは間違いないですね(笑)。ドミトリーと個室をあわせて最大で10人までの宿泊規模で、価格レンジは時期にもよりますけど、3,000〜5,000円くらいで考えています。たしかに宿泊業としてだけでは、収益が難しいかもしれませんね。なので今、僕が考えていることは『スキル育成合宿』みたいな学びコンテンツなんかも準備していきたいと考えています。他にも、移住体験やワーケーション、シェアオフィス的な使い方とか、地域にとって必要なプログラムを提供できたらというのも考えています」

考えにブレのないROYくん。ゲストハウスはキッカケのひとつであり、そこでの出会いや学びを通じて、本当の「旅の価値」を提供したいことがよくわかりました。

301550192_2650863098382617_1441556699393277591_n.jpg画像提供:ROYくん

最後に、安平町に来てみて実際どうなのか、安平町事業ファンファーレを活用した起業についてを聞いてみました。

「知り合いも誰もいない町だったんですけど、人との出会いでここまできました。起業という意味でも、『どこで』よりも『誰と』というのが、すごく大事だと思います。そういう意味では安平町は役場も地域の人々も『熱い』んですよね(笑)。実際どうなの?は、ぜひ僕のゲストハウスに泊まってみてください。強烈な人たちとの出会いを提供できると思います(笑)。それとファンファーレの事業は本当に起業を考えている人やフリーランスで動いている人なんかにもバッチリな制度だと思いますから、ぜひ利用を考えてくれたらと思います。ファンファーレ事業に参加するための合宿でもしましょうか!気軽に相談してください!」

ROYくんの北海道安平町での「新しい旅」は始まったばかり。スゴイ人たち、面白い人たちが北海道内外から集まる場所になっていくことを期待したいですね。

※安平町「Fanfare(ファンファーレ) 〜あびら起業家カレッジ〜」については、こちらから。

https://fanfareabiraentrepreneurshipprogram.com/

安平町ゲストハウス VACILANDO 青木 良祐(ROY)さん
住所

北海道勇払郡安平町追分本町1丁目45-1

宿のご予約やお問い合わせについてはInstagramよりお願いします。

▽ゲストハウスVACILANDO

https://instagram.com/vacilando_gh?igshid=YmMyMTA2M2Y=

▽ROYのInstagram

https://instagram.com/roy_world81?igshid=YmMyMTA2M2Y=


北海道の小さなマチから「旅」の価値を変えていく!

この記事は2022年9月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。