こんにちは!
今回の漁村訪問体験記ではレディ魚ー2年のふなっしーに代わり、レディ魚ー1年の後輩2人にそれぞれ佐呂間町のホタテ漁と、広尾町の昆布漁を紹介してもらいます!
それではまず佐呂間町のホタテ漁をご紹介します!
【佐呂間・ホタテ漁編】
はじめまして!北海道大学水産学部一年の星野在冬(ほしのあると)です!今回、レディ魚―の活動で漁村を訪問してきたので、実際に漁の現場で私たちが体験して感じてきたことについて記事を書かせていただきます!
筆者の星野です
レディ魚―とはなんぞやという人のために軽く説明すると、水産に対する学びを深めるため、実際に水産の世界を体験し、水産の未来について考えよう!という趣旨の学生団体です! まだまだ新人で先輩に頼る場面も多いですが、誰かにとっての水産への架け橋になれる よう、日々活動しています。
さて、今回の漁村訪問では、レディ魚―のふなっしー先輩、ヨコミク先輩とサロマ湖のホ タテ養殖に行って来ました!
実はヨコミク先輩のご実家であり、前回は春にふなっしー先輩たちが訪問したのですが(春に訪問した際の記事はこちら)、今回は秋に行って来ました。作業内容も全く異なるので、よろしければ見ていってください!!
いざ、ホタテ養殖体験へ!!
ここから実際の体験記に移ります!!午前3時、まだ暗い中、ヨコミク先輩のお母様に案内してもらって作業場に向かいます。 10月とはいえもう気温は低く、手をこすり合わせながら吐いた息は白くなっていました。
作業場につくと、すでに作業を始めている親方(ヨコミク先輩のお父様)とバイトの人たち。この時期は繁忙期であり、足りない人手を補うためにアルバイトを募っているそうです。バイトとして経験を積んだ地元の大学生からコツを教わって、網(ポケットといいます)からホタテを揺さぶりだす作業に入ります!
ホタテを取り出す筆者。ホタテが入っているので想像以上に重いです。
このポケットの中には稚貝から育てたホタテが入っていて、今回は耳吊りによって出荷で きる状態まで育てます。
※※ ざっくり解説~耳吊り~※※
ホタテ養殖の手法にも種類があるのですが、今回行っていたのは耳吊り。詳しくは後述 しますが、ホタテをたくさんつるしたロープを海中に垂らし、そのまま成長させる方法です。 ホタテを直接海に撒いて栽培する地撒きではホタテが自由に運動するため、身が引き締まるのが特徴ですが、耳吊りのホタテは柔らかくて甘い身になるのが特徴だそうです...!
おいしそうですね!!!
耳吊りに没頭
ホタテを出し終わったら次は耳吊りならではの作業へ!
ひもにたくさんついている針に、穴を空けたホタテをかけていきます。プラスチック製の針には返しがついており、ホタテが落ちないよう工夫がなされています。このほかにもホタテに穴を空けるのにも専用の機械が用いられており、ホタテ養殖の規模の大きさに改めて驚かされました。
ちなみにホタテに穴なんてあけて大丈夫?と思ったあなた!大丈夫です!穴を空けるのはホタテの画像の部分。ホタテにとって特に害はありません。
ホタテの蝶番ともいうべき部分の端っこにつけます。
話を戻します。
先述したひもですがとても長いです。1本に何十枚ものホタテをつけていくのですが、最初のほうは僕にとっては根気のいる作業でした。しかし、何度も繰り返すうちに手慣れてきて、気づけば夢中になっていました...! 作業場に流れている曲を口ずさみながらひたすらホタテを取り付けていく仕事は実は、 ある種のストレス解消になるのかもしれません。
通し終わったらこんなかんじになります!!
一本のロープにホタテを取り付け切ったら、ロープを画像のように束ねて結んでかごに入れていきます。初日はひたすらこの作業を繰り返しました。一杯になったかごがたまったら、親方が船を出し、ホタテを吊るす工程に入ります。
船に乗ってホタテ吊るしへ
漁船に乗るのは初めてだった筆者。 初体験へのわくわくと船酔いへのどきどきを抱えながら船に乗り、風に思い切り吹かれながらポイントへ向かいます!(親方の操縦のおかげで船酔いはしませんでした!!)
移動中も濡れた布をかぶせ、ホタテを保護します。
ポイントにつくと湖中からロープ(のし、とよばれる養殖施設です)を引き上げ、ホタテのついたひもを括り付けていきます。湖中に張り巡らされたのしを伝いながら取り付けるこの作業では、流れるのしに置いて行かれずに結んでいく、手際の良さが求められます...!こ のときの結び方が特殊で、何度も親方に教えてもらい、覚えることに成功。親方と先輩 大学生に助けられながら括り付けに参加しました。
作業の様子。独特ですが慣れれば早く結べます。
この穴あけから吊るしの作業を何度も繰り返して、耳吊りは行われています。
スピード勝負!!耳吊り大会
今回伺った作業場はとても雰囲気がよく、アルバイトの人たちも親方のご家族たちも和気あいあいとしながら作業に取り組んでいます。そんな空気感を象徴するイベントがあり ました。耳吊り大会です!! ルールは簡単。ひもにホタテを一番早く通し切った人が勝ちです。大会はとても白熱して、 序盤の上位争いでは誰も一言もしゃべらず、みんな黙々と針を通し続けていました。 そのうち上位の人たちが通し終わり、だんだんにぎやかになってくると、今度は最下位争い...つまり、筆者とふなっしー先輩の一騎打ちがはじまりました...。 たくさんの声援の中、筆者はこの争いに敗れ、結局最下位となってしまいました。
最下位争いの様子。両者真剣にホタテと向き合っています。
このイベントは突発的に始まったものなのですが、この一幕からも作業所のにぎやかな雰囲気がうかがえると思います。 実際、一日の作業が終わったあと、みんなでカップラーメンとヨコミク先輩のお母様が作ってくださったおにぎりを食べながら談笑する場面があったり、みんなで船釣りに行く場面があったりと、とても居心地のいい場所でした。
さいごに
サロマのホタテはたくさんの工夫が詰まった、漁師さんの宝ともいえる存在です!!もし興味をもった方がいればサロマのホタテを食べてみたり、ホタテの産地を普段から気に してみるのもいいかもしれません。
今回訪問させていただいたヨコミク先輩のご家族の皆さま、そして丁寧に教えていただいたアルバイトの方々、本当にありがとうございました!!お世話になりました!!
【広尾町・昆布漁編】
左からインターンで来ている大友彩加さん、今回記事を書かせていただく相良八雲、角谷穏生、中野伸哉皆さんこんにちは!水産を学び理解を深めることで自ら水産の課題に対して考え行動する水産系サークル、レディ魚―1年の相良八雲(さがらやくも)です!北海道大学水産学部1年です。漁村訪問を通して、大学などで学んだ水産業の知識を体系化するのと同時に水産業における6次産業化などの試みから新たな発見を得ています。
今回記事を書かせていただく相良です!よろしくお願いします。
今回は、道東の広尾町に昆布業界に革新を起こしている漁師さんがいると聞き8月上旬に訪問させていただきました。その名は保志弘一(ほしひろかず)さんです!今回は私、相良と、レディ魚―2年の中野伸哉(なかのしんや)先輩と角谷穏生(かどやしずき)先輩の3人で訪問させていただき、拾い昆布漁や昆布干しなどを見させていただきました。広尾の昆布漁には工夫と情熱、そして知恵が詰まっていました!
また、10月には空知管内北部の町、秩父別(ちっぷべつ)にて、保志漁業部さんのインターン生と共同でハロウィンステーション祭りに出店しました。是非最後まで読んでください!
広尾ってこんなところ!
『基本情報』
所在:十勝総合振興局
人口:5910人(令和6年9月30日現在)
特産品:日高昆布、シシャモ、サケ、ケガニ、ウニ
観光名所:フンベの滝、黄金道路、広尾町郷土文化保存伝習館
広尾町は道東・襟裳岬の東側に位置し、山と海の恵みを存分に受けられる場所にあります。夏には沖合を流れる暖流、寒流と季節風の影響で霧が発生することで夏でも気温が低いです。また、外洋に面しているため波は比較的荒れています。
霧で覆い隠された妖しいこの雰囲気が好きです
昆布業界の革新!星屑昆布と保志さんの試み
今回訪問させていただいた保志さんは、昆布漁師として商品開発を行うなど6次産業化の取り組みをされています!昆布漁で収穫された昆布は出荷前に決められた長さに切りそろえるため、どうしても切れ端が残ってしまいます。通常なら捨てられてしまうこの切れ端に、保志さんは新たな価値を見いだしました。こうして生まれたのが「星屑昆布」というブランドなのです!星屑昆布は、切れ端の昆布を出汁が一番出やすい粒径にまで砕いたもので、出汁をとらなくても料理に軽く振りかけるだけで風味が増し、料理がまるで高級料理店の味に様変わりする「魔法の粉」なのです!名前の通り料理にまぶすと星屑のように見え、美しい見た目も楽しめます!また、完全に天然素材なので、健康に配慮されています。星屑昆布という名前は保志(ほし)さんの名前になぞらえて命名され、細部に至るまで昆布への愛情と工夫が詰め込まれています。この星屑昆布を作るために、昆布を細かく粉砕する特注の機械を導入しました。その機械は驚くほど高価で、なんと車が買えるほどの値段がするそうです!それでも保志さんは昆布の新たな価値を創り出すためにその機械を導入し、ブランドを立ち上げたのです!また他にも、昆布を使った「噛む噛む昆布」など、様々な商品を開発しており、広尾町の昆布の魅力を広めようと精力的に取り組んでいます!
私も料理によくかけています
緊迫の拾い昆布漁、こだわりの昆布干し
昆布漁では「まっけ」と呼ばれるフック状の針が3本ついた道具を投げて、海に浮かんでいる昆布を引っかけて手繰り寄せるという方法が用いられます。ここでとれる昆布はミツイシコンブで、いわゆる日高昆布です。それと近年スジメコンブが獲れているのですが、価値がつかないので捨てているそうです。この漁法は比較的荒れている海岸で行われるため、保志さんの場合はウエットスーツを着用し、力強く「まっけ」を投げては昆布を引き寄せていました。さながら砲丸投げ選手のよう。見ているこちらも緊張感を覚えるほどで、保志さんが「毎日が運動会だ」とおっしゃられていたことが現場の様子と相まって強く印象に残っています。
まっけを投げている様子。波の中に昆布が見えるそうで、そこをめがけて全力で投げます。
右がミツイシコンブ、左が使われないスジメコンブ
収穫した昆布は、ロープで束ねた後、クレーンで昆布をトラックの荷台にあげて運搬されます。天気によってその後の処理が若干変わります。雨が降っていた場合は十勝港に運び、浮子(あば)という浮きをくくりつけて海水につけて保存します。一方で天気がよければ、そのまま干場(かんば)と呼ばれる、石が敷き詰められた場所に運び、そこで天日干しします。この干場の石には川の石が使われています。海の石と比べると表面が粗いため、昆布が貼り付かず最適なんです。
広尾町の伝統的に、昆布は天日干しというこだわりがありましたが、保志さんはそこに疑問を持ち、巨大コンテナを用いて作った乾燥機を導入しました。昆布は乾燥途中に雨で濡れると品質が落ちてしまうため、乾燥機も使うことで安定して品質を保つことができ、また以前よりも効率よく生産できるようになったのです。乾燥が終わった昆布は大きな袋に入れて保存されます。そして、昆布漁がない時期に加工作業が行われます。星屑昆布の開発背景や昆布漁の実際の作業を見学する中で、保志さんが昆布に注いでいる情熱と、自然に向き合う真摯な姿勢に感銘を受けました!
道路と浜には高さの差があるため、クレーンがあると効率よく昆布を運ぶことができます。
丁寧に並べます
灯油を焚いて、扇風機を回して乾燥させるそうです。
イカ×星屑昆布のコラボを実現したイカ焼きの販売
見学後、10月中旬に私たち3人は空知管内の秩父別町で保志漁業部さんと出店を共同で行いました。当日は保志さんの元へインターンしている茨城大学の学生、大友彩加さんが来てくれました!大友さんは、昆布漁の時にも保志さんと共同作業をしており、保志さんの仕事に対する熱意を近くで感じています。
昆布漁師の顔である保志さん、元から昆布漁師な訳ではなく、かつては全国を飛び回るイカ漁師として働いていたそうです。しかし、イカの漁獲量が減少し年々漁へでる期間も短くなって行きました。地元広尾町で昆布漁の道へと進むことになっ たそうです。このように、保志さんは広尾町への 愛情と地域の自然を生かした漁業に対する強い思 いを持っており、それが星屑昆布の誕生の誕生に もつながっています。
今回の出店では私たちレディ魚―が発案した「イカ焼き」を販売しました。このイカ焼きは、焼いたイカに甘辛い蒲焼きのタレを絡めた後、星屑昆布を贅沢にまぶして仕上げるというものです。このように今回出店した「イカ焼き」はまさにイカと昆布が運命の出会いをしてできたものなのです。
左の鍋で加熱したイカを右の鍋のタレにくぐらせることでイカ焼きを作ります。
当日は多くの来場者にイカ焼きを手に取っていただいたおかげで完売しました!また、星屑昆布をかけたイカ焼きを試食したとき、掛けていないものと比べて明らかに味が変わり、改めて星屑昆布が料理の風味を引き立てていることを実感できました。来場者からも「美味しい!」という声が多数寄せられ、星屑昆布の魅力が十分に伝わったと感じました。
タレにつけマヨネーズをつけたあと、星屑昆布をふんだんにまぶして完成です!
今回の漁村訪問・出店を振り返って
この出店を通じて、広尾町の昆布漁の魅力や、保志さんが手がける星屑昆布の可能性を多くの人に知っていただくことができました。また、今回の訪問では保志さんの活動について学ばせていただきましたが、保志さんの昆布や広尾の自然に対する熱意に心を大きく動かされました。昆布の6次産業化における思考プロセスや効率化を求める姿勢が、これからの漁業に必要なのかと思いました。
今回は昆布漁のピークの時期で忙しかったとは思いますが、私たちに貴重な経験をさせていただきありがとうございました。これからも頑張って参りますのでよろしくお願いします!
それでは次回の漁村訪問もお楽しみに!
- 移動式鮮魚店レディ魚ー×くらしごと
- 住所
札幌市北区北20条西5丁目2-50(レディ魚ー事務局)
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