冬の北海道といえば、「さっぽろ雪まつり」「ニセコのパウダースノー」「層雲峡の氷瀑まつり」など、冬ならではの環境や自然を活かしたイベントが各地でたくさん開催されています。北海道十勝エリアにある上士幌町では、全国からチームが集い、冬の美しくも厳しい白銀の世界に、空高く熱気球を上げるイベント「上士幌ウィンターバルーンミーティング」を開催しています。上士幌町はカントリーサインに熱気球が描かれいるように、日本でも有数の熱気球のまち。夏には「北海道バルーンフェスティバル」という一大イベントもあります。2019年は2月9日・10日に開催されたウィンターバルーンミーティングですが、なんとこの日は大きくニュースにもなった、10年に1度の大寒波が北海道を襲った日でもありました。そんなことはなんのその、くらしごと編集部はこのイベントをレポートすべく上士幌町に向かったのでした。
上士幌で真冬の空に上がる熱気球
大寒波とはいえ天気は快晴の中、十勝と道東を結ぶ国道241号線を走らせていると遠くに見えてきました、熱気球!イベントの会場はパークゴルフ場やキャンプ場を併設する上士幌町航空公園。会場には車がずらりと並び、たくさんの人で賑わっています。そんな中、到着を迎えてくださったのは、北海道バルーンフェスティバル組織委員会(以下、バルーン委員会)の佐藤泰将さんです。
笑顔で編集部を迎えてくれる佐藤さん。
「ようこそ、お待ちしておりました。今まさに競技の真っ最中ですから、まずはご覧になってください」
空を見上げると3機ほどの熱気球が少しずつ会場の方へ向かってくるのが分かります。ただ、しばらく眺めていると会場とは異なる方向へ向かっていく機体も。不思議そうに見ていると佐藤さんがこう教えてくれます。
「この競技はFIN(フライ・イン)といいます。会場敷地内の地上に設けられたターゲットに、上空からマーカーと呼ばれる小さな砂袋を投下して、ターゲットとマーカー着地点との距離を競う競技です。なので各チームまずはこの会場を目指して飛行しているんですが、実は熱気球の移動は風まかせなんです。風の流れる方向に風の速さで飛行するだけで、自由に方向を変えることは出来ません。ですが、バーナーで球皮内の温度を変え、上下移動はコントロールができるので、高度によって異なる風向きを利用して進みたい方向へ移動するんです」
赤い×印がターゲットで、かすかに見える黄色の紐状のものがマーカー。
ただ、風向きを利用するといっても決して簡単なことではないそう。熱気球は大きいため高度をコントロールするといってもすばやく上下移動できません。パイロットは高度により異なる「風向き」「風の速さ」「上下移動のタイムラグ」を読み移動するという、かなりハイレベルな技術が求められるそうです。
ところで、熱気球のパイロットといってもあまり一般的に馴染みがありませんが、どのようにすればなれるのでしょう?
「日本気球連盟公認の『熱気球操縦士技能証』というライセンスを取得する必要があります。このライセンスは車の免許と同様、実技と筆記の訓練、そして試験を受け合格すると取得できます。ちなみに、パイロット以外の搭乗者には特に資格は必要ありません」と佐藤さんが教えてくれました。
2019年のウィンターバルーンミーティングに参加したチームは全部で20チーム。道内では十勝を中心とした市町村から参加のチームが多く、地元上士幌高校の熱気球部も参加しています。また道外からは東京や埼玉、そして最も遠方となるのは、福岡から参加しているチームです。
青い空に優雅にたたずむカラフルなバルーンはなんとも幻想的な光景です。そして地上から眺めていると、7F建てビルに相当するという高さの熱気球がどんどんこちらに近づいてくるのは、とても迫力があります。
地元の人たちで作り上げるお祭り
競技も少し落ち着いたところで、イベント会場も案内をしていただきました。案内をしてくださったのは、佐藤さんと同じくバルーン委員会の平岡崇志さん。
バルーン委員会を統括している平岡さん。
「今朝は大寒波ということもあってか、気温が−24度まで下がりました。それでも、早い時間からたくさんのお客さんにご来場いただいています。競技の観覧をして楽しんだり、熱気球体験搭乗もできます。また、ご家族でいらっしゃる方が多いので、小さなお子さん向けのイベントも開催しています。他にも出店があるので、ラーメンやカレー、焼き鳥といった食事もできますよ」
体験搭乗はロープで係留された熱気球に乗ることができるというもの。この体験搭乗にはたくさんの人が列をなしていて、小さなお子さんも非日常的なバルーン体験に心躍らせていたのが印象的でした。
このウィンターバルーンミーティングはバルーン委員会が主催してるのですが、この委員会、上士幌町役場の方々が大半を占めているそうです。そして、実は佐藤さんや平岡さんも役場で商工観光を担当している職員さん。商工観光課のメンバーが中心となり、役場のいろいろな課や教育委員会、商工会などの方々、そしてボランティアの方々で組織されています。
「バルーンのイベントは今年で冬は37回目、夏は46回目を迎えますが、上士幌の一大イベントですから、基本的にはまちの人間たちが主となって、汗をかいて作ってきました。イベント運営する中で熱気球に興味を持ち、パイロット免許を取得した人もいます。若手からベテランまで一緒に作ってきたお祭りなんです」
そう話してくれたのは、バルーン委員会でもあり、上士幌町役場商工観光課の杉原祐二課長です。
「例年、冬は2月に2日間、夏は8月に3日間、年2回の熱気球大会を開催しています。実は、1974年に日本初の熱気球フェスティバルが開催されたのが、ここ上士幌町なんです。東北や九州などでも大会が開催されていますが、こうして広々と熱気球を飛ばせる環境は本州ではなかなかないそうです。北海道の広大な土地ならではの醍醐味ですね」
左から、平岡さん、杉原課長、佐藤さん。みなさん楽しそうです!
上士幌町の基幹産業は畑作、酪農、林業などの一次産業です。地目別土地面積では山林が約76%を締め、次いで農用地が約15%となっており、実は熱気球を飛ばすのに適した土地でもあるのです。先にも触れましたが、熱気球は風まかせの乗り物です。そのため、必ず同じ場所に着陸できるとは限りませんので、広大な農用地が活かされます。(もちろん地主の方に許可を得て着陸させていただくそうです)
「そうそう、2日目の明日も快晴の予報です。きっと気持ちの良いフライトになりますよ」と杉原課長。
実は編集部、なかなか体験できない、この熱気球に乗せていただけたのです!真冬の極寒の中、熱気球でのフライトという貴重な経験をさせていただきましたので、このフライトの様子はVRカメラでも撮影してきました。こちらの様子は別記事にてレポートいたしますので、ぜひご覧ください。
上士幌で繋がる輪
この日の競技を終えた後は、上士幌町の市街地にあり、2018年度北海道赤レンガ建築賞を受賞した「生涯学習センター わっか」で競技者向けに交流会も開催されました。総勢およそ100名程の競技者、そして竹中貢町長を始め、運営に関わったまちの方々が一堂に会した交流会。おいしい料理やお酒もあり、みなさん話が弾んでいる様子で、いろんな方々との交流を楽しんでいらっしゃいました。
こうして、上士幌ウィンターバルーンミーティングを存分に楽しませていただた編集部ですが、さらに上士幌町の魅力を届けるべく、行って参りましたました糠平湖!上士幌の冬といえば、タウシュベツ&ワカサギ!ということで、Part2の記事に続きます。
少しだけお見せしちゃいます、こちらはタウシュベツ川橋梁。
そしてワカサギ釣りのテント群の様子です。
- 北海道バルーンフェスティバル組織委員会
- 住所
北海道河東郡上士幌町字上士幌東3線238番地(上士幌町役場 2階商工観光課)
- 電話
01564-2-4291