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Vol.11〜渓流で海のことを考えるのです。〜20221101

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こんにちは!くらしごと編集部です。今回は釣りのお話。関西出身の筆者は、北海道へ移住し趣味のフライフィッシングを楽しんでいます。道東の美しい渓流でロッドを振っていると、ある時、思わぬ魚の大群に出くわして...山から海へと流れが繋がっているということを実感し、思いを馳せるのでした。


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Vol.11〜渓流で海のことを考えるのです。〜


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今回は趣味のフライフィッシングのお話です。

今年も北海道の渓流釣りのシーズンは終盤となりました。新緑が美しくなることから始まって、紅葉が終わる頃に終わります。

私が時々釣りに出る川に、道東の西別川があります。摩周湖の伏流水が源流と言われ、根釧台地を70キロほど下って根室海峡に流れ出しています。イワナやヤマメ、ニジマスなどの魚影が濃いことや、夏には白い花で水面を美しく飾る梅花藻(ばいかも)が繁茂することで有名な、フライフィッシャー垂涎の清流です。

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私はその西別川の最上流域が大好きなのです。まず梅花藻の揺らめく渓相がとっても美しい! その渓流に立っているだけで幸せなぐらい美しい渓流です。とはいえよく釣れる川なので、ゆっくり立っているだけというわけにはいかないのですが(笑) ともかく、そこでフライロッド(釣竿)を振るのは、人生最高の幸せと言っても過言ではないぐらいなのです。

そんな西別川の、お気に入りのポイントに入渓したある時のこと。ロッドを振り始めた途端、周囲の異変を感じました。60〜70センチぐらいの魚が大量に群れて泳ぎ回っているのです。サケでした。大量のサケが遡上して、メスとオスがペアリングしながら産卵場所を探し回っています。正直言って、川中が大騒ぎなのです。

ふと考えてみれば、私が立っている少し上流には「さけますふ化場」があります。そこから放流されて3〜4年前にここを下って行ったサケが、今ここに戻ってきているのです。オホーツクの大海を回遊して大きな魚体となって、生まれ育った川に戻り、50キロ以上遡上して産卵しているわけで、それを考えただけでその姿には感動を覚えます。ということで、その時は全く釣りにはならず、この時ばかりは「西別川に立っているだけ」の感動を味わったのでした。

漁師の友人からは、サケの不漁が続いていると聞きます。産卵床を探すサケを眺めながら、再びここから大海に旅立って大きく成長して戻ってきてくれることを願うばかりでした。

イワナも海と行き来するアメマスと呼ばれる個体があったり、ヤマメは海に下ってサクラマスという高級魚となったり、この川幅数メートルもないような渓流も、大海とつながっていていて、そこを行き来する魚たちの営みがあるのですね。美しい渓流でサケの大群に取り囲まれて立ち尽くしながら、遠い海のことを考えたのでした。

文・森末 忍(もりすえ しのぶ)
(株)北海道アルバイト情報社  EMS(環境マネジメントシステム)、SDGs担当。編集者・プランナー・ギャラリーオーナー。岸和田生まれ。大阪名古屋東京を経て、北海道へ移住。弟子屈 & 札幌の二地域居住。好きな魚はアジとヤマメ。

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Vol.11〜渓流で海のことを考えるのです。〜

この記事は2022年11月1日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。