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石狩市

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第6弾 石狩市浜益再訪20240830

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第6弾 石狩市浜益再訪

皆さんこんにちは!
「水産の未来を考える若者を増やす!」をモットーに活動する学生団体 レディ魚ーの、ふなっしーこと船橋河輝です!
愛知県名古屋市出身の北海道大学水産学部海洋生物科学科2年生で、レディ魚ーでは主に漁村訪問を担当しています!漁村訪問の活動では、大学にいるだけでは知ることができない実際の水産現場を訪れて自らの手で漁を体験し、第一線で活躍されている漁師さんのお話を伺うことで、参加メンバーにとって水産の「今とこれから」を考えるきっかけを作り、大学での学びをさらに深めることを目指しています。

redexigo_hamamasu200004.jpg今回も記事を書かせていただくふなっしーです!よろしくお願いします!

今回レディ魚ーメンバー3人(ヒロム、くろちゃん、ふなっしー)で3月末の6日間、石狩市浜益(はまます)の漁師 藤巻 信三さんと門脇 弥さんのもとを訪問してニシン漁を体験させていただきました。レディ魚ーは一カ月前にも浜益を訪れニシン漁を体験させていただく予定でしたが、あいにくの悪天候で出漁できず、今回はそのリベンジに燃えての訪問となりました!

前回の記事はこちら!

明治~昭和初期にかけて北海道の一大産業として発達し、資源の枯渇によってその規模が縮小したニシン漁。近年は懸命な資源保護の甲斐もあり漁獲量が回復しているのですが、その現状や課題について注目して見てきました!またレディ魚ーのもう一つの活動販売活動にも今回の学びを繋げ、その様子についてもまとめましたので、是非最後まで読んでいただけますと嬉しいです!

石狩市浜益ってこんな町‼

『基本情報』
所在:石狩振興局
人口:1030人(令和6年7月時点)
特産品:ニシン、サケ、ホタテ、浜益牛
観光名所:はまます郷土資料館(旧白鳥番屋)、はまますピリカビーチ、黄金山

石狩市浜益(旧浜益村:2005年に石狩市と合併)は石狩市の北側、札幌からは車で1時間半ほどの場所に位置し、日本海の豊かな恵みを受け昔からニシン漁が盛んな町です。ニシン漁最盛期には、人口が1万人近くにまで上っていたと記録されています。浜益周辺は海岸線ぎりぎりまで険しい山々がせり出した独特な地形になっており、トンネルが開通する前は交通手段が徒歩に限られ、かつては「陸の孤島」と呼ばれていました。そんな浜益ですが、今はその豊かな自然や水産物を求めて訪れる札幌近郊からの観光客・海水浴客や、都市部からの移住者で賑わいを見せています!

redexigo_hamamasu200020.jpg険しい山々が海岸線沿いまで連なる浜益までの道のりはこのような覆道やトンネルの連続で、現在でもかつては「陸の孤島」と呼ばれた所以が感じられます。

今回の漁村訪問で学びたいこと!

今回の漁村訪問では、荒天に泣かされた前回に引き続きニシン漁とニシンの利活用の現状について学びに行ってきました。

明治~昭和初期にかけて北海道の浜に賑わいをもたらし、「ソーラン節」など民謡にもうたわれ文化的にも重要であったニシン漁。乱獲などの影響で資源が枯渇してしまい一時は衰退してしまったものの、1996年から北海道が主導して行った「日本海ニシン資源増大プロジェクト」による厳格な資源管理・稚魚放流・産卵場整備の甲斐もあり、近年は着実に資源量が回復しており、漁獲量も大幅に増加している傾向にあります。ニシンの産卵(放精)で海が真っ白に染まる、「群来(くき)」とよばれる現象も近年は再び毎年のように観察されるようになり、かつての北海道を代表する風物詩の復活がニュースや新聞で報道されて喜ばれています。
そこで私たちは、資源に配慮された漁がなされているのか、そして厳しい冬の日本海で行われるニシン漁とは一体どのようなものなのか興味を持ち、今回の訪問をさせていただきました。またオスのニシンは、数の子(ニシンの卵)が入っていないがためにメスと比べ非常に価値が低く、食べられていないと聞いたことがあり、その実情を現場で学びレディ魚ーとして何かできないかとの思いもありました。

redexigo_hamamasu200008.jpg浜益漁港とオスのニシン

念願のニシン漁に出漁!

それでは今回の漁村訪問の様子をご紹介させていただきます!
前回の無念を晴らすかのような好天に恵まれた訪問初日。早朝4時、藤巻信三さんの船に乗せていただき念願のニシン漁に出漁することができました。
ニシン漁の漁法は「刺し網」と呼ばれるもので、海中に網をカーテン状に張り、そこを通過しようとする魚をからめとり漁獲します。現在は過去の反省を活かして刺し網の目の大きさには制限が設けられ、獲りすぎにならないよう資源保護に配慮されていました。

港を出てすぐ漁場に到着して早速、海中から刺し網が巻き上げられると虹色に輝くニシンが大量に水揚げされていきます!レディ魚ーメンバーは続々とニシンが船上に上がってくる中、刺し網からニシンを外す「網外し」という作業をさせていただきました。漁師さんにコツを教えていただきながら網外しを続け、最初はメンバー全員が苦戦していましたが徐々に上達。しかし揺れる船上で限られたスペースの中行う作業はかなり大変で、ヒロムさんは途中から船酔いでノックダウンされてしまいました...。

redexigo_hamamasu200009.jpg早朝4時、まだ暗い中ニシン漁に向け出港!
redexigo_hamamasu200013.jpg虹色に輝くニシン(右上はマイワシ)。その美しい姿の虜になってしまいました。
redexigo_hamamasu200021.jpg船上で網外しを行っている様子。この時まだヒロムさんは元気でしたが...

網外しされたニシンの中で活きがいいものは船上で素早く血抜き処理が施され、生食用として出荷されていきます。エラを切り海水に入れて十分に血を抜くことで鮮度が維持されやすくなり、商品価値が高くなるそうです。しかし高値で出荷できる生食用ニシンですが、需要が低いためにごく少量のみの出荷にとどまっているのが現状であるようです。

大量のニシンと共に帰港!網外しと選別作業を体験!

大漁に恵まれ、船上一杯にニシンを積んで帰港!
帰港してからは作業場で大勢の地元の方々と網外しをさせていただきました。また網から外したニシンをオスとメスに選別していくのですが、藤巻さんに「どうやって見分けるかわかるか?こうやってお尻らへんを押してみろ!白いのが出てきたらオス、数の子が出てきたらメスだ」と教えていただき、意外と簡単で大胆な見分け方に驚かされました。この時にはヒロムさんも船酔いから復活して元気を取り戻していました!

redexigo_hamamasu200011.jpgオスかメス、どっちかわかりますか? 正解は白子(精巣)が出ているのでオスです!

redexigo_hamamasu200018.jpgこちらは数の子(卵)が出ているのでメスです!

オスとメスを選別しましたが、その価値の違いについて伺わせていただきました。するとなんと、メスとは異なり数の子が入っていないオスのニシンは、メスのニシンと比べて三十分の一程しか値段がつかないそうです。さらにオスのニシンのほとんどが食べられておらず、養殖飼料や肥料とされている現状についても伺い衝撃を受けました。

なぜ壊す?地道な「網壊し」を体験!

藤巻さんにお世話になったあと、続けて門脇さんにお世話になりました。
悪天候で出漁できない日が続いたのですが、陸(おか)仕事の一つ、「網壊し」を体験させていただきました。その名前の通り刺し網を壊す、解体する作業なのですがいったいなぜ壊すのでしょうか?それは浜益周辺によく出没するトドが、刺し網に誤って絡まって逃げる際に暴れたり、網に掛かったニシンを食べようと刺し網ごと食い荒らし、網に大きく穴が開いてしまったからだそうです。トドに破られた網を取り払って錘や浮き、ロープを回収し、また新しく刺し網を作る際に再利用されます。近年はトドが南下傾向にあり漁業被害が深刻化しており、被害を防ぐために網を早く上げなければならないなどの影響も出ているといいます。

redexigo_hamamasu200007.jpgお世話になった門脇弥さん

redexigo_hamamasu200022.jpg「網壊し」をしているくろちゃんとヒロムさん

最終日、荒れる冬の日本海に向け出港!ニシン漁の厳しさを体感

訪問最終日、何とか天気が回復して出漁することができました!
しかし前日までの荒天の影響で海は荒れており、私は手すりにつかまっていないと立っていられないほどで、冬の日本海の厳しさを痛感させられました。私は船酔いには強い方であると自負していましたが、かなりきつかったです。
最終日、私以外は札幌に帰っていて、船酔いに弱いヒロムさんは「助かった」と安堵していました。
この日も大漁で、初日に比べ上達した網外しや選別をさせていただきました。

オスのニシンを何とかしたい!

オスのニシンはメスに比べ三十分の一ほど、一匹当たり10円もしない程度の値段しかつかず、その大半が食べられることなく飼料や肥料になっている現状に衝撃を受けたメンバー一同。しかし実際に刺身やなめろう、塩焼き、煮つけにして食べさせていただくと脂のりが抜群で、その美味しさの虜になりました。もともと明治~昭和初期にかけてのニシン漁は食用のほかに、肥料の原材料生産が主な役割でしたが、食料自給率の問題やSDGsが叫ばれる現在において違和感を覚えざるを得ませんでした。また一匹の価値をあげることが収益の増加につながり、少ない漁獲量でも経営が成り立つようになり、ひいては乱獲の防止や資源保護につながるのではとの意見も上がりました。
今回の訪問を通して、せっかく美味しいのに、そして大変な苦労をして獲られているのにも関わらずオスのニシンが食べられていないのはもったいないと強く感じ、何かレディ魚ーとしてできないかと考え、より多くの人にオスのニシンの現状や美味しさを知ってもらおうと6月7~9日にかけて行われる第66回北大祭で提供することを決断しました。漁師さんの「食べてもらわなくては何のために大変な漁をしているんだろう」という言葉に強く胸を打たれたことも、そのきっかけのひとつです。

門脇さんにご相談させていただいたところ、ニシンの提供や加工への協力をご快諾いただき、札幌に帰ってすぐ提供メニューの開発に取り掛かりました。ニシンにはどうしても昔の魚というイメージがあり、また小骨が多く敬遠されがちであるという弱点がネックだと考えた私たちレディ魚ーメンバー。そこでそれらを払拭するため、ニシンの脂と甘辛いたれがよくマッチしてクセになる「ヤンニョムニシン」という創作メニューを考案し、骨切りや一夜干しをしっかり施し小骨が気になりにくいように工夫しました。

redexigo_hamamasu200014.jpgニシン料理(左からお刺身、なめろう、塩焼き、煮付け)。どれも絶品でした!

redexigo_hamamasu200003.jpgヤンニョムニシン

北大祭でヤンニョム"ニシン"を販売!3日間で約千本が完売!

門脇さんのご協力を受け無事北大祭での販売が実現しました!
実際に召し上がっていただいたお客さんからは、「甘辛いたれとニシンがよく合いクセになって、これまでのニシンのイメージを打ち破る新感覚だった」や、「脂がよく乗り香ばしく焼きあがっていて、ニシンの美味しさに気づかされた」などと言っていただき、とても嬉しかったです。また骨切りを施したことで小さなお子様にも召し上がっていただくことができ、「小骨が気にならず食べやすかった」などのご感想もいただき、ニシンの弱点を一つ克服できた気がしました。
初日にはテレビ中継でも取り上げていただき反響を呼んだことで、最終日には準備していた約1,100本が無事に完売し大成功で3日間を終えることができました!完売という結果も嬉しかったですが、お客さんにニシンの現状や私たちがヤンニョムニシンに込めた想いを伝えさせていただくと真剣に耳を傾けていただき、さらに美味しいと言っていただいたことに何よりも手応えを感じた北大祭での販売でした。
今回の販売ではレディ魚ーがお世話になっている東京海洋大学の学生団体 水産人(すいさんちゅ)カレッジの代表 三露蓮太郎さんにお手伝いに来ていただき、交流を深めることができました!

改めまして今回ニシンや加工場をご提供くださいました門脇さん、本当にありがとうございました。

redexigo_hamamasu200017.jpg最後の一本を提供!無事完売できました!

今回の漁村訪問を振り返って

今回の訪問では念願だったニシン漁へのリベンジを果たすことができ、その大変さやニシンの資源管理の現状、そしてオスのニシンが食べられていないという衝撃的な事実について学ぶことができました。また移動式鮮魚店レディ魚ーとして漁村での学びを販売に活かし、多くの方々にそれらを伝えることができた今回の経験は非常に手応えのあるものでした。ただ漁を体験して終わりの漁村訪問ではなく、そこで得た学びや経験をそれからの活動や自身の研究などに活かし繋げていくことをこれからも特に意識し、より意義のある漁村訪問活動の在り方を追求していこうと思います。
今回漁でお世話になった藤巻信三さん、門脇弥さん、そして藤巻さんと門脇さんをレディ魚ーに紹介していただき宿泊場所もご提供くださいました徳地克実さん、改めまして本当にありがとうございました。
これからも頑張って参りますのでよろしくお願いいたします!

それでは次回の漁村訪問もお楽しみに!

移動式鮮魚店レディ魚ー×くらしごと
移動式鮮魚店レディ魚ー×くらしごと
住所

札幌市北区北20条西5丁目2-50(レディ魚ー事務局)

URL

https://www.instagram.com/ready_5500/

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『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第6弾 石狩市浜益再訪

この記事は2024年8月22日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。