HOME>学校と学生の取り組み>北海道唯一!林業の専門学校で学ぶ、バラエティ豊かな生徒たち

学校と学生の取り組み
旭川市

北海道唯一!林業の専門学校で学ぶ、バラエティ豊かな生徒たち20200831

この記事は2020年8月31日に公開した情報です。

北海道唯一!林業の専門学校で学ぶ、バラエティ豊かな生徒たち

2020年4月。北海道旭川市に待望の林業・木材産業の専門学校が開校しました。
その名も「北海道立北の森づくり専門学院」。略称「北森カレッジ」です。

道外には林業系の専門学校が数多くありますが、北海道の森林は全国の森林面積の約1/4を占めているにも関わらず、専門学校はありませんでした。
北海道にはかつて1万人いたと言われる林業事業者は、過疎化や高齢化等により現在は4200名前後まで減少しています。
そこで、北海道では林業の担い手を確保することを急務とし、企業の中核人材を育て、これからの森林づくりを背負う若者が学べる専門学校をスタートさせるために2020年4月に開校したという訳なのです。
(この専門学校の立ち上げについてや生徒に授業を行う先生にスポットを当てた記事コチラ→『生徒への期待を胸に、羽ばたく時まで全力で支える道職員たち』!)

kitamoricollege5.JPG

さて、北森カレッジは2020年4月に開校しましたが、新型コロナウィルスの影響により、授業をスタートさせることができたのは6月1日からでした。
少し当初の予定がズレることになりましたが、無事に授業をスタートさせた北森カレッジ。
そのとある6月の某日に授業風景の見学と生徒さんへのインタビューを行いました。
第一期生となった生徒たちは34名。そのうちの6名にお話を聞き、この学院や林業の魅力について語ってもらいました。

まずは、高校でも森林科学科で学び、卒業後に北森カレッジへの進学を選択した3人のフレッシュな18歳に注目です。

卒業後に即戦力になるべく進学を決意!山の中で伐倒する姿に憧れて

kitamoricollege35.jpg

旭川農業高校の森林科学科を卒業し、就職する同級生が多いなか進学を選んだ佐々木駿斗(はやと)さん。
高校で学んだ勉強を土台に、さらに知識を深めて即戦力となりたい。と目を輝かせて語ります。

「高校2年生のときに、この学院ができるので学校名称を募集します、と学校で通知がきていたのでなんとなく気にはなっていたんです。名称は応募しなかったんですけど(笑)いざ進路を考えたときに、他の同級生の誰もこの学院を選んでいなくて、一人くらいは進学して、後輩たちに道標、、、というか道をつけてあげれるといいかなぁとも思いました。それに、この学院を卒業する頃には即戦力になって活躍出来ると思ったんです」と佐々木さん。
なんともすごい応募動機!自分の高校の後輩たちのことも気にしていたとは。視野の広さに驚きます。

高校の時との授業の違いを聞くと「同じ森林科学という授業でも先生によって教えてくれる内容が違って、北森カレッジでは樹木の種類や葉っぱの形など、実際に神楽岡公園に実習に行って実物を見たりというのがこの学院ならではで、とても面白いです。まだ授業がスタートしたばかりなのでこれからが楽しみです」と話してくれました。

北森カレッジでは外部講師の先生も豊富で、色々な山の知識を持ったたくさんの専門家から教えてもらえることもこの学院で学ぶ強みだそうです。

そもそも佐々木さんが林業に惹かれたきっかけはなんだったのでしょう。

「某大手住宅メーカーのCMを見て、社名に林業って入っていたんです。林業って言葉は聞いた事があるけどどんなものなんだろう?って調べだしたのがきっかけです」

学校の図書館のパソコンなどで調べた佐々木さんは「がっつり山の中に入っていって木を伐採するシーンがあって、その迫力とカッコよさに憧れました」と輝く目で話します。
卒業後は、旭川を離れ今まで住んだことのない人口の少ないまちへ行き、林業に従事しながらまちづくりやまちおこしにも関わりながら生活したい!と近い将来の事を語ってくれました。

森を管理する知識を身につけて森林組合で働きたい!

北森カレッジで学べることは、実際に山で木を伐ったり、植えたり、下草を刈るなどの施業技術面だけではありません。
森を営むには欠かせない最新の森林分析や持続可能な森林経営への視点など、北海道の森林を管理・経営するには欠かせない林業経営についても学ぶことができます。
浦河町出身で、帯広農業高校で森林科学を学び、更に知識を深めて森林組合で森を管理する仕事に就きたい!と話すのは寺越大将(だいすけ)さんです。

kitamoricollege18.JPG高校2年生の就職セミナーで学院の事を知り、興味を持った!と話す寺越さん。

「北森カレッジでの今の勉強は、高校で習ったことのあることも出てきますが、高校とは違い一日中林業の事を勉強しているので頭に入ってきやすいです。これから本格的な実習も増えていくので本当に楽しみ!」と笑顔を綻ばせます。

「林業と言うと木を伐るというイメージが一般的だし木を伐ることも好きだけど、出来れば管理する側として働き、地元である帯広方面の森林組合で働きたいです。その為に知識を身につけるよう頑張ってます!」と意気込みを語ってくれました。

チェーンソーや高性能林業機械を使って「主伐」をメインとした企業で働きたい!

寺越さんのほかにもう一人帯広農業高校から入学したのは青砥愉高(あおとゆたか)さんです。金髪が眩しい好青年です。
中学生の時に見た映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』で林業に興味を持ち、森林科学科への進学を決めました。
高校時代のインターンシップ先の社長さんから北森カレッジ開校の話を聞き、オープンキャンパスに参加。そしてこの学院への進学を決めたのです。

「最初はまわりのみんなと同じように民間企業に勤めようと思っていたのですが、進学に悩んでいたところ北森カレッジ開校に携わっていた先生からも後押しがあり、この学院への進学を決めました。十勝は林業が盛んで、会社もたくさんありますし、高校時代の友達もたくさん働いているので、地元で働きたいと思っています。自分は将来主伐をメインとした職に就きたいので、高性能林業機械を扱えるような技術をしっかりと身につけて、頑張りたいと思います」と語ってくれました。

kitamoricollege17.JPG名字が「あ」から始まるので1期生で1番になれるかも!と思ったのも進学を決めた理由の一つなのだとか

北森カレッジではハーベスタと呼ばれる高性能林業機械の最新式のシミュレーターを導入し、生徒たちに課外時間も自由に使えるよう開放しています。
朝練をする生徒や、授業が終わった放課後に練習する生徒もいるのだとか。もちろん青砥さんも練習を頑張っている一人です。
北森カレッジでは生徒達にとっての好きを伸ばし、就職に役立つ勉強ができる環境が整っているようです。

kitamoricollege15.JPG帯広農業高校森林科学科を卒業してやってきた二人。二人とも十勝へ戻りたいという思いを持っています

一度社会人として経験を積んだ上で学び直すことができる魅力。一次産業そして林業で地域づくりに還元できる

北森カレッジには、高校を卒業して入学してきた生徒ばかりではありません。
一度社会人経験を経て入学してきた方も1期生34名の中には6人も!
武田麦(たけだばく)さんもその6人の中の一人。一度社会人を経験したからこそ見えるこの学院の魅力や林業の面白さについて語ってもらいました。

kitamoricollege14.JPG

武田さんは現在34歳。倶知安町出身です。
北海道職業能力開発大学校の建築科を卒業し、塗装からスタートし、その後は大工・施工管理などを身につけ、一人で家を一軒建てられる技術を身につけました。
当初は親方の元について技術を学び、一人親方としても独立。
そんな建築を極めつつあった武田さんが、なぜ林業を学び直そうと思ったのでしょうか。

「きっかけは世帯を持ったことです。これからの北海道について考えるようになり、建築業界の課題なども見え始め、持続可能な社会のためには、建築だけでなく広い視野で地域づくりを考えなければと思っていました。そこで、一次産業の中でも建築と関わりの深い林業を学ぶことができる北森カレッジの開校情報をインターネットで知り、学院の考え方と自分の考えが重なったので入学を決めました」と武田さんは語ります。
「林業が土台となって建築が成り立っている、その建築からも林業へ何か還元される仕組みにすることで、建築業界も林業業界も持続可能な業界となると思うんです。まだまだ自分に何ができるのかは考え中ですが、まずは林業を学ばないと、と思って」と優しく笑います。

建築業界を経験した武田さんならではの視点です。社会を経験しているからこそ俯瞰的に業界の課題や未来を見据えています。
久しぶりの勉強も「社会人を経験しているからこそ、新鮮で要点が見えるので勉強しやすいですよ」と語ります。

「クラスに色々な世代がいることも魅力ですし、先生と世代が近いので話をしやすいというのもあります。一期生になれたので、先生と一緒に学院を創り上げていく感覚もあって、すごく楽しさを感じながら日々を過ごしています。先生達はそんなこと求めてないかもしれないけど(笑)。でも僕はそんな気持ちで取り組んでいます」
さすが、北海道の林業・建築業の未来を憂い、この学院への進学を決めた武田さん。
スタートしたばかりの北森カレッジの未来も持続的に循環することを考えているようです。

こういった熱い思いを語る生徒がいることで、クラス全体の士気が上がることは間違いないでしょう。
お話を聞いた生徒さん皆さんのまなざしがキラキラしている理由がわかった気がします。

憧れの北海道で大好きな林業を学ぶ

北森カレッジに入学した生徒は北海道出身の方たちばかりではありません。
「ザ・北海道!」を求めて入学した生徒も。
香川県出身、普通科の高校を卒業し、この学院への進学を決めた真木淳(まきあつし)さんです。

kitamoricollege12.JPG「とにかく憧れの北海道に来たかった!」と話す真木さん。

小さいときからよくご両親にキャンプに連れて行ってもらい、自然が好きだったと話します。
北海道と言えば「雪!」「美味しい食べ物!」というイメージがあったそうで、北海道に行ってみたい!という願望が小さい頃からあったのだとか。
大自然のなかで働きたい、と考えているときに北森カレッジの募集を知ったと話します。

「単純な理由なんですけど(笑)北海道といえば大自然!っていうのに小さい時から憧れていて。両親も『行ってこい!学んでこい!』と背中を押してくれました。林業の勉強は毎日が刺激的で、わからないことだらけなので日々勉強が楽しいです。卒業しても北海道で自然に携わる仕事に就けたら・・・と思っています」

初めての一人暮らしも、クラスには歳の近い友達も増え楽しんでいると笑顔で話します。
「今は座学が中心ですが、この学院は2/3が実習!とのことなので、本当に楽しみです。北海道の樹木の種類などを知る授業もあるので、自然が好きな人にとってはとても面白いと思います。今一番楽しみなのは・・・「雪」ですね」と話してくれました。

kitamoricollege13.JPG

真木さんが初めての雪(しかも旭川!!)と凍てつく寒さを経験する時がくるのはあと数ヶ月後。
きっと友達とはしゃぎながら北海道の大自然と雪を満喫するのでしょうね。
雪で覆われる山は、実は林業にとっては草に邪魔されずに山の中へ入っていき作業ができるチャンス。
きっと実習などで雪山も経験することでしょう。ガンバレ真木さん!

資格・技術が身につくことに魅力を感じて

この北森カレッジには2名の女性生徒も入学しました。
そのうちの一人である下谷亜記(しもたにあき)さん。
なんと小学5年生と3年生の子どもを育てるママです!

kitamoricollege19.JPG

下谷さんは神奈川県出身ですが、自然の豊かなところで子育てしたいと考え、お祖父さまと叔父さまの住む旭川方面への移住を考えたのだとか。

「最初はこちらに移住するために仕事を探したのですが、祖父や叔父に聞くとあまり仕事はないと聞いて、それなら勉強して資格を手に入れて長く働けるようにしたい!と考えたんです。北森カレッジの募集をみて、14つの資格がとれる!というところに魅力を感じて子どもと3人で旭川にやってきました。子どもを育てながら、技術や資格を身につけ森林組合か林業の会社で働きたい!」と下谷さんは意気込みます。

kitamoricollege16.JPG

取材を進めていると生徒みんなが口にすることがあります。
『色々な経歴の人や幅広い年齢層・出身地の人が居て、面白い!』ということ。
取材させていただいた方たちのほかにも、本当に色々な経験をして北森カレッジに入学してきた方もいらっしゃいます。
時間の都合で全員は取材できませんでしたが、林業のことを学べる!だけじゃない魅力が北森カレッジにはたくさんあるのだと一期生の目の輝きが物語ります。
二年後にこの34名の生徒達がそれぞれの夢に向かって林業・木材産業に携わり、たとえ卒業後バラバラになったとしても一期生の絆が途切れることはなく、北海道の林業・木材産業の未来を担っていくことでしょう。

北海道立北の森づくり専門学院
北海道立北の森づくり専門学院
住所

北海道旭川市西神楽1線10号

電話

0166-75-6161(代表)
0166-75-6163(教務課)

URL

http://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/kms/index.htm


北海道唯一!林業の専門学校で学ぶ、バラエティ豊かな生徒たち

この記事は2020年6月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。