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まちおこしレポート
札幌市

人と人をつなぎ、地域の大切なものを残す。㈱北加伊道【前編】20210708

人と人をつなぎ、地域の大切なものを残す。㈱北加伊道【前編】

それぞれの志とスキル、そして「北海道の179市町村で新たなコミュニティーと価値を生み、残す」という強い思いを持った4人の起業家が結集し、「株式会社北加伊道(きたかいどう)」が誕生しました。活動内容は、「一次産業を中心とするワーケーション」「副業人材のマッチング」「地域の関係人口を増やす」「アプリを通して地域のアーカイブを残す」「地域でコミュニティーを作る」。一体どんな会社なのか、4人は一体どんな人物なのか、これからどんな活動をしていくのか...気になることを根掘り葉掘り伺いました。

北海道と、それぞれの地元を後世に残したい

社名の「北加伊道」は、明治維新後に「蝦夷地に代わる名前を」と依頼された松浦武四郎がつけた名前で、「北の大地に住む人の国」という意味。そこから明治政府により現在の「北海道」となりました。「地方にスポットを当ててアーカイブを残し、北海道という名前を含めて後世に残していきたい」と話してくれるのは、代表取締役の一戸隆毅さん。

kitakaido_6.JPG代表取締役 一戸隆毅さん

根底にある思いは、故郷の村の名前がなくなったことからきています。

「私の故郷は椴法華村です。平成の大合併の第一弾で、2004年に函館市に編入されました。子どものころは都会への憧れもあり札幌に出てきましたが、大人になった時にいざ地元がないとなったら、想像以上にダメージが大きかったんです。だからこそ、地域で変えなければいけない部分は変え、残すべきものは残すという活動をしていきたいと考えています」

ワーケーションで第一次産業を体験

一戸さんは、採用代行を始めとする人事労務コンサルティングを行う株式会社コアリレーションの代表でもあります。常に人材不足に悩んでいる農業や林業など第一次産業の事業主、地方の会社からの相談を多く受ける中で、特に第一次産業はまだまだ職業として認識されていないと感じたといいます。そこで、北加伊道の事業として、ワーケーションを通じて第一次産業や地方の会社での就業を体験してもらおうと考えているとか。ワーケーションとは、ワーク(働く)とバケーション(休暇)を合わせた造語で、観光地などで働きながら休暇を取ること。ワーケーションといえば、パソコンを持ち込んで都会の会社の仕事をするテレワークのイメージが強いですが、一戸さんたちが考えるワーケーションは、地方に行ってその地域の仕事をするというスタイルです。

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「酪農業を始めとする第一次産業や地方の建設会社は事業がうまく動いていても、働く人材がいないというのが共通の悩みです。最終的には直接雇用が望ましいですが、まず前段階としてこういう仕事があるということを知ってもらうため、体験や副業で働いてもらうマッチングを行います。事業主側には副業として頼めるものと頼めないものを仕分けするなど交通整理をお手伝いし、働く人の側には酪農業のPRをして、地方の関係人口(地域や地域の人々と多様に関わる人々)を増やしていきたいと考えています」

宿泊場所を拠点に仕事をコーディネート

地方で「人事労務コンサルティングをします」というと、「都会から来て自分たちを食い物にされるのでは」という誤解をされることもありますが、札幌に居ながらコンサルティングをするのではなく、民泊などの拠点を作って、中に入り込んで並走すると一戸さんは強調します。
地域での宿泊拠点を含めた全体像をオーガナイズするのは、合同会社Staylink創業者の柴田涼平さん。柴田さんは、2014年に札幌でゲストハウスwayaをオープンし、その後ゲストハウスやシェアハウスをオープンしたり、ゲストハウスと一体型の学童保育を運営するなど地域で人をつなぐ事業を次々に展開しており、くらしごとでもたびたびお世話になっている方です。

kitakaido_4.JPG取締役 柴田涼平さん

北加伊道でも必要に応じて地域にゲストハウスなどを作ることも想定していますが、地域の資源を生かすことが最優先。

「大事にしたいのは、必要なもの・人を必要な場所にしっかりと丁寧に届けること。もし、対象の地域に既存の簡易宿泊所や民泊があるなら、そこを基地としてワーケーションをコーディネートします。テレワークの合間に手伝ってもらって一次産業の繁忙期の人手不足を解消したり、ひいては継承者が見つかるきっかけになるようなマッチングをしていきます。もし、宿泊施設がないためその地域にお金が落ちないという課題があるなら、宿泊施設のデザインを視野に入れています」

学生起業家がアプリ開発を担当

地域のアーカイブを残す手段が、アプリ開発です。開発担当は、学生起業家である近澤徹さん。現在、北海道大学医学部に在学しながらウェブやアプリ開発で起業し、北加伊道の立ち上げメンバーにも加わっています。
北加伊道で使うアプリは、場所に紐づいたSNSです。テキストや画像、動画などがその場所に行かないと見られないという仕組みになっています。
発信する情報も、「この店が美味しい」など地元の人だからこそわかる生の情報を地元に密着して仕入れていきます。もちろん、新型コロナウイルス終息後に向け、インバウンド向け仕様も計画しています。

kitakaido_3.JPG取締役 近澤徹さん

「旅行で訪れた外国人が、その国の言語で日本の情報を調べても、ちょっと地方に行くと出てこないんです。海外の方も地方のコアな魅力に触れられるような設計を考えています。副業人材のマッチングや情報発信にもアプリを活用していきます」

なぜ医学生がIT?と尋ねると、「デジタルが好きで高校生の時からプログラミングを独学で学び、最初は趣味からスタートして仲間が増えたので大学進学後に起業しました」とのこと。来年からは研修医として2年間東京に行くことを決めており、それでもむしろ「体は東京に行っても地方の発信を東京で行ったり、東京の情報や技術を北海道で生かしたり、いろいろな形で携わりはできます」と、足かせにはならないよう。

地域の人と関わりコミュニティーを作る

地域の人と自分たちの関係性、地域の中でのコミュニティーの関係性を作るノウハウに長けているのが、建築会社を経営しながら札幌でオンラインサロン「アフタースクール」を主催する齊藤将さん。一戸さん曰く、「飲みに行くと誰とでも仲良くなれる」というコミュニケーション能力の持ち主です。地域にある町内会や青年会などとの関係性を築き、地方のコアになるメンバーとのコミュニティーマネージャーを務めます。

kitakaido_8.JPG取締役 齊藤将さん

北加伊道の目指すキーワードの一つが、「179の地元を作る」。「理想は、スナックでツケて帰ってこられる関係性です(笑)。出張のウエイトは当然増えると思います。今は通信インフラが整いましたが、やはり直接話すと思いの乗り方が違いますので、地域に赴き並走する形でやっていきたいです。人材採用のお手伝いをする中でも、会えばいろいろな話を聞けます。そんな中で、『どうして俺はこの事業を始めたんだっけ』とその方のコアになる思いを聞けることも多いものです。それを自分たちスピーカーを通して発信することを大事にしていきたいですね」

コミュニティースペースでの出会いがきっかけ

4人の出会いは、「Village PROJECT」という月額制コミュニティスペースです。飲食店をベースとした月額制コミュニティスペースで、「村」として登録されている飲食店を「働ける」「学べる」「遊べる」「繋がる」場所(コミュニティスペース)として、使える「滞在型飲食店」プロジェクトで、呼びかけに呼応しあらゆる業種のフリーランスの人や経営者が集まっています。一戸さんもオーナーの鈴木さんから声が掛かりコンセプトに共鳴し、運営に携わっています。
齊藤さん、柴田さんも、鈴木さんとの接点から経営者など人との出会いを求めて会員に。近澤さんは、北加伊道で運用する前身となった位置情報に基づいて情報が残るアプリを飲食店向けに活用してもらいたいと鈴木さんに突撃で売り込みに行き、このスペースを知り入会しました。

kitakaido_2.JPG月額制コミュニティスペースサービス「Village PROJECT」

1時間半の飲み放題で会社設立が決定!?

現在150人以上が集まり、さまざまな人がいる中で、一戸さんは同じく地方出身の齊藤さんと意気投合し、一緒に釣りに行くように。さらに柴田さんや近澤さんともそれぞれ知り合い、地域での交流、アプリを活用して一緒にできたらいいね、とそれぞれに話していました。

「ひょんなことから4人で飲むことになり、それぞれの仕事や活動について話したら、得意分野を活かして一緒にできるよね、ということになり、会社設立が1時間半の飲み放題で決まりました(笑)」
それぞれの分野で勢いを持って活動している4人だからこそのエピソードです。
「向いている方向が一緒というより、本来バラバラだった4人それぞれの力を合わせたらこうやって社会に価値還元できるよね、という気づきが大きいかもしれないですね」と柴田さん。

4人の個性で現在・未来のカタチで地域を再構築

4人それぞれに、今後どのように北加伊道の活動に関わっていきたいかを尋ねました。
柴田さんは「必要な場所に必要な人やことやものが届く環境」を作るのが使命だといいます。

「業界の垣根を融かし、どちらかがどちらかを飲み込むのではなくお互いが適切な混ざり合いを通してより良くなる社会を作りたいです。まだ知らない地域人や地域を、それを知ってよかったと思える人に届けるデザイン構築が僕の役割。個人的には日本国内世界問わず、まだ出会ってない人たちと出会って理解と想像力を伸ばして受容力が高まり、優しくなれる人が増えればいいなと思っています。それが北加伊道の目指す世界線と一致するならば、そこに向けて取り組んでいきます」

近澤さんは、「地方の市町村を盛り上げるには、若者の力が必要です。アプリを通して若者が地方を盛り上げ、地方自治体でも使える仕様にし、その両軸で地方を盛り上げていければと思います。このような貴重な機会に関われて感謝しています。チームである以上一つの目的に向かって、責任を持って最大限貢献していきます!」と意気込みます。

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「179のコミュニティーを作ってバランスとって調整してくのが北加伊道の役割」と齊藤さん。「目指すのは本質的な民主主義。いろいろな自治体と連携し、どこの地域に住んでいても同じ情報レベルをみんなで共有できる場を北海道に作って行きたい。僕たちの生きている代でできなくても、子孫が北海道っていいなと思ってもらえる土壌を、リアルとネットで作っていきます」

最後に一戸さんに聞きました。「私たちが目指すのは、179の地元を作ること。田舎を出て帰ってくればおかえりと言える環境を作り、北加伊道がハブとなって地域ごとにイベントなどを自分ごととしてできるようにしたいと思います。そして、自分の経験から、『地元がなくなるって寂しいんだよ』と伝えていきます。地元の人たちと一緒に動いて、田舎に行って遊ぶように仕事ができるようにすることが理想です。スタートは4人ですが、仲間がどんどん増えて各地で自走できるようになればいいですね」

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4人それぞれの能力と志が混ざり合い、北海道の各地域で新しい動きが生まれることが期待されます。4人がここに至るまでに経験したことや、なぜこのような考えに至ったかを、さらに後編で掘り下げます。

【後編】はこちらから

株式会社北加伊道


人と人をつなぎ、地域の大切なものを残す。㈱北加伊道【前編】

この記事は2021年5月26日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。