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まちおこしレポート
三笠市

地図に残る仕事を。民間企業で建築をきわめた公務員20200427

地図に残る仕事を。民間企業で建築をきわめた公務員

北海道札幌市から車で約1時間の距離にある三笠市。
以前、三笠市企画財政部政策推進課定住対策係におうかがいし、お話しを聞きましたが(食のまち、子育てのまち、新たな「三笠ブランド」)、今回訪れたのは経済建設部 建設課 建築係。
くらしごとでは、今までさまざまな市町村さんにお話をうかがっていますが、「建設課」にお話をうかがうのは少し珍しいかもしれません。

公務員として建設管理に関わるって、具体的にどんなことをしているの?民間企業との違いは?現場で作業することはあるの?・・・と、さまざまな疑問がわいてきます。

建設に関わる方はもちろんのこと、まちの建物がどうやって作られているのかなんて考えたこともなかった!という方にもぜひご覧いただきたい今回のお話。三笠市経済建設部 建設課 建築係の田中栄輔さんにお話をうかがいました。

民間企業の会社員から公務員へ

はじめに田中さんご自身の紹介から。 北海道石狩市花川出身の田中さんは、北海道石狩南高等学校で3年間を過ごし、建築関係の仕事をしていたお父様の影響から北海道工業大学の建築工学科に進学、卒業します。その後、1997年4月に札幌のゼネコンに就職。そこで現場監督として働き、主に学校を中心とした建物を担当していました。札幌市内の中学校や高校も、田中さんが数多く現場監督を務めたそうです。

mikasa_kenchiku27.jpg「MIKASA」の文字が入った作業着を着てきてくださいました

「現場監督の仕事内容を簡単にいうと、工程を組み、それに合わせて職人を手配し、予算の中からお金を振り分け、最後に利益を残すというお仕事。約1年くらいのサイクルで現場を担当します。若い頃は先輩について一生懸命学んで、僕は30才くらいから現場を一人で任せていただき、様々な建設案件を経験させてもらいました」

30歳で現場を一人で任されるというのは、比較的早めのタイミングだったそう。当時は人手不足もあったからね、と言う田中さんですが、なんと一人で現場をもった最初のお仕事は自治体の子育て施設で、工費は6億円だったのだとか!そんな巨額の案件にお一人で責任を持つことは、きっと想像を絶するようなプレッシャーだったのではないでしょうか。

「最終責任は現場監督にありますから、金額が大きいとその分度胸は要りますね。当時は正直本当に忙しくて、今の時代じゃとても考えられないけど、4カ月休みなく働いたときなんかもありましたね。休みがないとだんだん記憶もなくなっていって・・・」

三笠市役所には偶然にも田中さんと同じ高校出身の同級生がいらっしゃり、田中さんの激務が一瞬で想像できるエピソードも取材陣に教えてくれました。仕事が多忙を極める中、友人の結婚式に少し遅れて到着した田中さんは、なんと作業着で会場へ来たのだとか!当の田中さんは覚えておらず、「人ってあまりに忙しくなると、頭がまるで溶けたようになるんだよね」と笑います。

仕事でもプライベートでも転機になった30代

30代になると、様々な人生の転機がおとずれます。30歳のときに一級建築士資格を取得し、どんどん大きな仕事を任されるように。さらに奥様と結婚したのもこの頃で、ニセコ町で一緒に暮らしていました。仕事に、結婚に、順調な生活が続きます。

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「一人で担当した最初の仕事である自治体の子育て施設の建設を完了した後は、公共施設を次々と手がけ、5年くらいずっとそのまちでお仕事しました。この間は寝る時間以外はほぼずーっと現場にいました。・・・7時〜22時くらいまではずっといたかな。現場近くに会社の支店があり、その2階で寝泊まりしていたので、札幌にアパートを借りていたけどほとんど帰っていなかったと思います」

そのような多忙な生活を5〜6年続ける中、なんと2011年に会社が倒産することに。倒産したときに現場を持っていた田中さんは、退職後もその現場をやりきったといいます。

「建設業界にはJV(ジョイントベンチャー)という仕組みがあって、 資金力・技術力・労働力などが一企業では請け負うことができない大規模な工事・事業を、複数の企業が協力して請け負う事業組織体のことなんですが、最後の現場はJVでウチを含む3社で施工していたんです。ウチ以外の残りの2社から、最後までなんとかやってくれないか?という話があり、引き受けて、その最後の現場を終えました」

そして三笠市役所へ

その後は少しのんびりしたいと思っていたという田中さんですが、三笠市役所建設課の募集を知ることになります。
前職のつながりのあった知人から三笠市職員への応募を猛プッシュされ、最初は全く気乗りしなかったそうですが、三度も同じようなことがあり採用試験を受ける決意をしたのだとか。そして無事採用となり、のんびりする間もなく2012年にこの三笠市役所に入職します。

mikasa_kenchiku30.jpg三笠市役所。正面からはわかりませんが、上空からみるとXの文字のようにクロスしている、ユニークな構造です

「最初は民間企業出身の自分が、公務員の勤務が肌にあうだろうか?と心配でした。民間企業で15年以上勤務していましたし、現場で1日200人くらいをまとめあれこれと指示を出していたので、そんな自分が公務員というのは、全く違う環境になるんだろうなと」

当時、ゼネコン経験者はなかなかつぶしがきかないとも言われていたそうです。そして実際に入ってから、公務員として建設にたずさわることの違いがより明確になります。

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「当然ですが、一番違いが大きかったのは、利益が必要かそうじゃないか。公務員は利益を出すお仕事じゃないということを強く実感しましたね。ゼネコン時代では、お金を残して利益を確保することはとても大事で、『社員全員分の給料を稼ぐんだ!』という意気込みでしたから、ここは大きな違いでした」

公務員としてのお仕事は「公共」が優先されるケースが多いので、その違いは大きく感じられたことでしょう。

mikasa_kenchiku20.jpg三笠市役所でのお仕事は「毎日楽しいですよ」と話してくださいました

「もう一つは、建築物との関わり方。ゼネコンでは基本1つの案件を1年くらいかけて行っていました。また、『すでに設計やデザインが決定したもの』を忠実に作っていく業務でした。一方、三笠市の建設課の仕事はというと、同時に10本くらい案件を抱えながら、それぞれがきちんと進んでいるか確認しています。そして、自分たちで設計やデザインすることから始められます。自分が設計したものがまちに残るっていうのはすごく面白いですね」

そんな田中さんの三笠市での最初の仕事は、公営住宅や、火葬場の新築だったといいます。
「基本的に『いつまでに(期間)』『予算がいくら(金額)』は決定事項としておりてきます。でも、新しく建てる案件というのはそうそうなくて、老朽化の補修や耐震工事などのボリュームが多いですね。市役所の耐震工事なども行っていますよ」

mikasa_kenchiku16.jpgこちらの図面は冊子になっていて、10cm近い厚さがあります。全ページの設計図を入念にチェックします

三笠で暮らす=「みかさぐらし」のお話

三笠市に自宅も購入し、8年間三笠市に住んでいる田中さん。最初は三笠市の場所が北海道のどのあたりなのかもわからなかったそうですが、今ではすっかり快適なみかさぐらしをしています。中2、小6、小2のお子さん3人がいて、子育て支援に力をいれている「子育て世代に優しいまち」三笠ならではの暮らしやすさも享受しながら自然豊かな環境で過ごしていらっしゃいます。

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「三笠市のいいところは、自然が多く残っていることと、札幌まで高速で1時間弱という便利さのバランスが良いところでしょうか。海釣りが趣味なので、個人的にはもし海が近くにあったら本当に最高だと思いますが(笑)でも、北海道に憧れていて、ほどよく都会に近くて自然豊かな場所に住みたい、という方にはいい環境だと思いますよ」

mikasa_kenchiku23.jpg桂沢湖でもワカサギ釣りなどが楽しめます

まちのシンボル「高校生レストラン」と三笠市のこれから

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三笠市の有名な「高校生レストラン」も、田中さんが建築にたずさわりました。ご存じの方も多いと思いますが、この高校生レストランは道内の公立高校で唯一の食物調理科単科校である三笠高等学校の生徒が調理・接客を担当し、料理やスイーツを一般のお客さまに提供し、腕を磨くレストラン。高校生の研修施設でもあります。この施設の中には、プロ仕様の調理設備が勢揃いしており、ここからプロを目指し巣立っていく若者たちを多く輩出しているのです。土日の営業日には、行列ができるほどの人気です。

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高校生レストランの建物が完成するまで、「大変なことばかりでした!(笑)」と笑って当時を振り返ります。元々このレストランの構想は三重県の高校がモデルとなっていて、市としては「全く同じものを作っても仕方ないけど参考にしたい」という思いがあったので、市職員が何回も視察して形にしたそうです。

建物の外観は、「高校生レストラン」と一目でわかるシンボリックなものをどこに配置するかを十分に検討し、2転3転としながらなんとか決まったのだとか。そして完成後も、水漏れや各種不具合の対応のお願いが建築係に寄せられました。「空調などの設備も、1年間稼働してみなければわからない問題が色々と出てくるんです」と田中さんは話します。

mikasa_kenchiku1.jpgレストラン稼働後は、設備のことで何かあればまず田中さん!と相当頼られていたと、別の職員さんが教えてくれました

また、三笠市のこれからのまちづくりについて、このような構想も持っていると語ります。
「高校生レストランの知名度が上がってきていますし、さらに三笠を「食のまち」としてブランディングしていければ。三笠市に来たら美味しいものが食べられる!という食の聖地的な場所にして、食で三笠市をもっと盛り上げられたらいいなと思いますね」

mikasa_kenchiku22.jpg三笠の「食」ブランドをいかしたまちづくりをしたいと話してくれました

2020年4月下旬〜5月上旬(予定※状況により変更の可能性有)には、さらに田中さんが建築・設計した施設がオープンするのだそう。
「高校生レストランに新たに併設された施設で、三笠市にゆかりのある芸術家の作品や、高校生レストランにちなんだプロジェクションマッピングが観られる『小さな美術館』です。高校生レストランを利用した方は割引で入館できるので、ぜひあわせて利用してほしいですね」

まちづくりのやりがい

最後に、建設課建築係でのお仕事のやりがいについてお話を聞いてみました。民間企業出身であることが公務員のお仕事にもプラスになっているという田中さん。ゼネコンで現場監督をしていたからこそ、入札を経て業者に依頼をした際にも、現場の状況や実情も理解できるのだそうです。

mikasa_kenchiku19.jpg建築係でともに勤務する天羽さんと

「このまちのために何かしたい、という想いがあればいい仕事ができると思います。一級建築士資格、一級建築施工管理技士資格、建築基準適合判定資格も取得し、専門知識を身につけて学びながら、まちの役に立ち貢献できるというやりがいがありますよ」

そして、一番のやりがいだと感じるのは「地図に残る仕事である」ということだといいます。ご自身が関わった建造物が地図に残って何十年、何百年と地域に残っていく、このやりがいはきっとひとしおでしょう。

mikasa_kenchiku6.jpg建設課・水道課のみなさんで集合!

三笠市経済建設部建設課建築係
三笠市経済建設部建設課建築係
住所

北海道三笠市幸町2番地

電話

01267-2-3182

URL

https://www.city.mikasa.hokkaido.jp/mikasalife/


地図に残る仕事を。民間企業で建築をきわめた公務員

この記事は2020年4月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。