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まちおこしレポート
乙部町

「人にやさしいまちづくり」で創る、心も体もバリアフリーのまち20190429

この記事は2019年4月29日に公開した情報です。

「人にやさしいまちづくり」で創る、心も体もバリアフリーのまち

北海道南西部、渡島半島の西部位置する乙部町(おとべちょう)。人口はおよそ3,700人で農・漁業の一次産業が盛んなまちです。北海道天然記念物として登録されている「鮪の岬(しびのさき)」や東洋のグランドキャニオンとも呼ばれる「館の岬(たてのさき)」をはじめとし、日本海に面する海岸線では、いくつもの歴史に育まれた自然景観が訪れた人を魅了します。心を動かす景観は人をも動かす力を秘めているようで、この乙部町の自然を身近で感じたいという理由から移住される事例も増えているんだそうです。

今回は、こうした移住に関しての取り組みやまちの広報を担う役場の総務課企画係、さらに地方創生の一環として設立されたおとべ創生株式会社に伺い、乙部町の取り組み、そして魅力について取材しました。

otobe12.JPGまるで海外のような滝瀬海岸の通称「シラフラ」。

バリアフリーで「人にやさしいまちづくり」

乙部町は「人にやさしいまちづくり」をテーマにバリアフリーを推進しているまちです。全国的にも珍しい完全バリアフリーの「ホテルあすなろ」や水陸両用の車いすで海水浴が楽しめる「海のプール」、さらには移住体験もバリアフリーでできるように2018年にはバリアフリー移住体験住宅を2棟新築しました。こうしたバリアフリーのまちづくりについて、乙部町役場の総務課長補佐 小松宏嘉さんにお話を伺いました。

「2015年に『ホテルあすなろ』が乙部町に開業したことを機に、せっかくホテルがバリアフリーなのに、観光資源にバリアがあるのはどうなんだろうという話があがりました。それならばと、檜山振興局と乙部町を含む檜山管内7町の檜山地域全体ではじまったのが『ひやまバリアフリーレジャー事業』という地域ぐるみの取り組みです」

otobe1.JPGご出身は函館市の小松さん。若い頃に訪れた際、乙部町の海の景色に惹かれ、そのまま役場に入職されたそうです。

こうした福祉と観光の連携は障がい者だけでなく、高齢化社会における観光客の受入体制の向上にも一役買っているそう。そして、乙部町ではレジャーだけに留まらずまち全体でバリアフリーに取り組んでいます。

「バリアフリーと一口に言っても実は利用者側からすると、ちょっとした段差の有無や道の幅、ドアの開け方などによって思うように利用できないケースもあります。そのため、こうしたバリアフリーの対応範囲の詳細をまとめて、訪れる方が安心して楽しめるようにバリアフリー情報を丁寧に発信する取り組みを行っています」

otobe4.JPGバリアフリーの海「海のプール」。

ホームページで温泉施設や飲食店、お土産屋さんなどのバリアフリー化されている施設をまとめて掲載しているだけでなく、各施設の入口やトイレ、浴場といった施設内のそれぞれを、写真と段差・道幅・ドアの種別・床材などといった細かな情報とともに情報を提供しています。また、「乙部町バリアフリー観光情報マップ」というパンフレットを制作し、町内のバリアフリー施設のご紹介も行っています。

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「このホームページやマップ制作を行っているのが、2016年に地方創生の一環として、町・商工会・観光協会の出資で設立された『おとべ創生株式会社』です。こちらで働いている2名は地域おこし協力隊として、移住してきた方なんです。ご案内しますので、ぜひ話を聞いてみてください」と小松さんは私たち編集部をおとべ創生株式会社へご案内してくださいました。

乙部町の魅力を発信する地域商社

おとべ創生株式会社に着くと出迎えてくださったのは、地域おこし協力隊兼おとべ創生のスタッフである菊地千尋さんと粕谷春菜さんです。まずはこのおとべ創生の役割について伺うと、菊地さんが教えてくださいました。

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「おとべ創生は乙部町にある特産品を活かした商品開発や提案を行う地域商社です。またホームページやパンフレット、イベントなどを通じて商品やまちの情報発信を行い、乙部町のことを多くの人に知っていただく取り組みもしています。他にもふるさと納税の受付・発送業務やバリアフリー移住体験住宅の管理も行っています」

otobe15.JPG2018年から地域おこし協力隊として活躍する菊地さん。

地方創生の一環として設立された会社ということもあり、業務は地域の情報発信や活性化など多岐に渡るようです。このおとべ創生のホームページに先ほど小松さんが教えてくださったバリアフリー化されている施設の詳細情報も掲載されています。

「ちなみに、こちらが当社が主体となって開発した商品ですよ」と教えてくださったのは粕谷さん。

乙部町は農業が盛んなまちということもあり、幻の黒大豆と言われる乙部産の「黒千石大豆」や乙部産100%の非加熱はちみつなど、乙部町を代表する特産品が並んでいました。これらの商品はふるさと納税の返礼品になっているものもあるそうです。

otobe9.JPGご出身は帯広市の粕谷さん。

2018年に完成したばかりの道内でも珍しいバリアフリー移住体験住宅についても伺いました。

「まだ利用開始して1年程ですが、夏の間はたくさんの方にご利用いただき、ほぼ空きがない状況でした。こうしたバリアフリーの住宅ということもあり、高齢者の方にご利用いただくことも多かったですね」と菊地さん。

この移住体験住宅は市街地に隣接しており、近くには飲食店やコンビニエンスストアはもちろん、源泉かけ流し100%の温泉もあるという、とても環境の良い場所にあります。2棟ともバリアフリー住宅のため、フルフラットでの作りになっており、電動カーテンやリクライニングベッドといった設備もあります。障がい者の方だけでなく、高齢者の方、そして介助をするご家族も一緒にゆっくりのんびり過ごせる空間となっています。

そうそう、お二人も移住者とのことなので、移住に関することについてもお話を聞いてみます。

otobe2.JPGバリアフリー移住体験住宅がこちら。

心奪われた圧倒的な乙部町の景観

まずはじめにお話を伺ったのは菊地さん。

「私は札幌出身で、乙部町に移住する前は札幌のペットショップで働いていました。旅行が好きで仕事が休みの時などは道内各地に出掛けていて、ある時、道南方面に旅行に行こうと思って調べていたら、乙部町を紹介する写真にとても惹かれるものがあったんです。それで、実際に来てみると、もう本当にすごくって。日本海に沈む夕日、もういつまででも海を見ていられるって思いました。それから何度か通うようになって、こっちに知り合いもできていくうちに、『ここに住みたいな〜』なんて思うようになったんです」

otobe6.JPG菊地さんは暇さえあれば海を見に行くほど、乙部町の景色の虜になったそう。

乙部町の景色にがっちりと心を奪われた菊地さん。なかでも滝瀬海岸の高さ約15mの白い断崖絶壁が約500mにも渡って連なっている「シラフラ」は一番のオススメスポットとのこと。こうして乙部町の景色の近くで暮らしたいと移住を決意した菊地さんですが、いざ移住となると仕事を探さなくてはいけません。そこで仕事を調べてみると、ちょうど地域おこし協力隊の募集を見つけ、2018年の6月に乙部町へ移住されました。

「札幌で長い間暮らしていましたので、不安もあったんですが、札幌に比べると雪も少ないですし、住みやすいですね。買い物も車で20分くらいで江差町の大きなスーパーに行けるので、不便は感じないですよ」

今後はもっと地域の方々と関わり合いながら、乙部町の活性化のお手伝いができればと力強く話してくださいました。

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ご夫婦そろって地域おこし協力隊!?

続いて、粕谷さんにもお話を伺ったのですが、実は粕谷さんはご夫婦で札幌から移住をされ、なんとご夫婦そろって同じまちの地域おこし協力隊員という珍しいケースでした。ご主人の粕谷翔馬さんは地域おこし協力隊として観光協会に所属し、観光振興やイベント、PR業務を担当しています。せっかくなのでご夫婦そろってお話をと、取材をさせていただきましたので、それは別の記事にてご紹介させていただきます。

→こちらが粕谷さんご夫婦の記事です
(お二人の移住や生活費にまつわるお話を伺いましたので是非ご覧ください!)

otobe16.JPG右がご主人の粕谷翔馬さん。ご出身は大阪なんだそうです。

人にやさしいまちが繋げる人

菊地さん、粕谷さんのようにかつて地域おこし協力隊として活躍し、卒業した後も地域・人との繋がりから、農業、養蜂家、建設会社、役場職員といった道に進んだ方など、乙部町に定住し活躍されている方が多いといいます。こうして外から来た方が、乙部町での暮らしを続ける選択には、「人にやさしいまちづくり」のテーマを通して、経験した地域・人との繋がりも、きっとみなさんの住む心地よさの一つなんだと感じた取材でした。

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乙部町役場
乙部町役場
住所

北海道爾志郡乙部町字緑町388番地

電話

0139-62-2311

URL

http://www.town.otobe.lg.jp

<おとべ創生株式会社>

北海道爾志郡乙部町館浦686番地2

TEL / FAX:0139-62-5034

https://www.otobesousei.com


「人にやさしいまちづくり」で創る、心も体もバリアフリーのまち

この記事は2019年4月11日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。