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まちおこしレポート
神恵内村

手弁当で故郷の海を蘇らせた神恵内の人々。20161017

手弁当で故郷の海を蘇らせた神恵内の人々。

「海と故郷の再生に取り組んだ神恵内の村長。」も、ぜひお読み下さい!

村長の言葉に突き動かされて〈希望の種をまく若者の話〉

笑顔で迎えてくれたのは、漁師の金田一晃弘さん(左)と職員の小倉裕介さん(右)。ともに多忙な仕事の合間を縫い、藻場LANDプロジェクトを支える作業員として実際に海に潜り多彩な作業に当たっています。
「たいしたことじゃありません(笑)」と謙遜する二人だが、こまめにコンサルタント企業の指導を受講したり、休日返上でダイビング資格を取得するなど、プロジェクトの遂行に対しては非常に献身的だ。ところで二人は、最初にこの海の再生の話を耳にした時、どう感じたのでしょうか?
金田一さんが答えます。「先輩たちの中には悲観的な人もいたけれど、自分たち世代はむしろやってみようって思った。だって...」ここでクスッと笑って、「村長がものすごく熱かったから(笑)。僕ら世代だけでなく子ども世代を考えてのことだって、痛いほど伝わってきたんです」
小倉さんが継ぎます。「水揚げの落ち込みも半端じゃなかったし、村がそこまで考えてくれるなら、自分たちも応えなきゃって」

mobaland_2nd_02.jpg北海道神恵内村 村長 高橋昌幸さん。

彼らがこう考える背景には、村の過疎問題があります。昭和半ばには3000人を超えていた人口も現在は900余名。高校もない。就職先もない。唯一の基幹産業である漁業から退く人はいても、参入する人などほとんどいません。そんな窮地に追い込まれつつある神恵内に、期待の灯をともすのが『藻場LANDプロジェクト』だったのです。
「海藻が戻れば、ウニやアワビの実入りもよくなる。港が賑わえば村も活気づいていくでしょう。なんとか僕らが子どものころの、あの神恵内を蘇らせたいと思ったんです」
現在ダイバー作業員として活躍するのは、二人を合わせて合計8人ほど。コンサルタント会社のスタッフの他は、ほとんどが神恵内に暮らす若き漁師です。
「ウニの密度管理をしたり、フェンスを設置したり。ただ船の上と海の中では勝手が全く違いますからね、当初は恐る恐るって感じでした(笑)」

mobaland_2nd_03.jpg磯焼けの海でのウニの密度管理

海底に藻種をまくという根気のいる作業。当初は石灰で真っ白だった不毛の風景に海藻の芽が彩りを添えていきます。コンブが生え、ワカメが芽吹き、ホンダワラ(雑草)が茂る。5カ月も過ぎると、一帯にかつての海藻の森林が蘇っていきました。
「うれしかったですよ。海が生き返ったみたいで」
森林には生態系も舞い戻ってきます。海藻の合間に魚影が揺れその葉には無数の魚卵が産み付けられました。ウニやアワビの実入りも格段に良くなりました。神恵内の漁師たちの顔に久しぶりの安堵が浮かびました。
今年でスタートから4年。海藻が再生を果たした拠点は神恵内の海のほんの一部だが、年々確実にその規模を拡大しています。「先は長い。でも立ち止まっているよりは何倍もいい」二人の海の男が笑顔で言いました。

mobaland_2nd_04.jpg海藻が蘇りつつある神恵内の海。

プロジェクトの根幹を支える企業の協賛金〈縁の下の行政マンの話〉

最後に話をうかがったのは、神恵内村水産農林係長の板倉さん。『藻場LANDプロジェクト』の行政窓口として奮闘する若き行政マンです。
「さまざまな特徴を持つプロジェクトですが、その最大の特徴は『企業から協賛金を預かり、海の森づくりに還元する』という企業参加型事業にあります。山に森を復活させる取り組みは環境保護活動の対象としては一般的ですが、海の森の再生に対する協賛金の募集は、おそらく世界で初でしょう」
そんな世界初の試みが、こんな小さな舞台で成功裏に進んだ理由とはなんでしょう。
「漁協の話に出たように、一つは村長の情熱だと思います。首長自らが地元から首都圏までさまざまな企業を訪問し、このプロジェクトや神恵内の未来に対する理解を説いたことが企業の方々の心を打ったのでしょう」その熱意は役場全体に伝わりました。当の板倉さんや職員が一丸となり、4年経った現在もこのプロジェクト事業の継続に尽力しています。

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「そして理由のもう一つは、村の青年世代の心意気。小さな村だからこそ、一人ひとりを繋ぐ絆が強いんです」
実は板倉さんは余市の出身。役場への就職を契機に神恵内での生活がスタートしたが、住めば住むほど、特に若い世代の神恵内に寄せる思いに心を打たれることが多くなった。村をなんとかしたい。故郷に人を呼び込みたい。そんな願いにも共感を覚えました。かつては村の移住者の一人だったが、今は同年代とともに村の魅力を発掘する『神恵内村魅力創造委員会』にも率先して参加しています。
「藻場LANDプロジェクトの成功は、神恵内村にとっては大きな自信にもなったと思う。この成功を自分たち世代がどう受け止め、どう活かしていくのか。本当の勝負はこれからなんです」

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古宇郡漁業協同組合 神恵内支所
古宇郡漁業協同組合 神恵内支所
住所

北海道古宇郡神恵内村大字神恵内村2122

電話

0135-76-5021

神恵内村役場
北海道古宇郡神恵内村大字神恵内村81-4
0135-76-5011
http://www.vill.kamoenai.hokkaido.jp/


手弁当で故郷の海を蘇らせた神恵内の人々。

この記事は2016年2月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。