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Vol.21~稲葉研究室ファイル「ナマコのゆりかご」のお話~20230419

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こんにちは。くらしごと編集部です。
高級食材として広く知られているナマコ。意外と知られていませんが、実はナマコは、北海道における水産物の輸出額で、ホタテに次いで第2位なんです。そのナマコを取り巻く環境に、近年変化が...。


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Vol.21~稲葉研究室ファイル「ナマコのゆりかご」のお話~

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日本国内に幅広く生息しているナマコ(マナマコ)。その中でも北海道産のナマコは、特に高値で取引されています。

しかし、需要の高まりによって漁獲圧が増加し、漁獲量は2007年をピークに減少。2020年にはピーク時の約6割まで減ってしまいました。2013年には国際自然保護連合(IUCN)により、絶滅危惧種に指定されています。

安定した漁獲を維持していくためには、人工的に生産した種苗の放流が有効とされています。人工的に孵化させた稚ナマコを放流するやり方ですが、しっかりと大きく育つまでには様々な障害があります。その一つが、カニやヤドカリ等による食害です。

残念ながらナマコは、移動能力がとっても低い生き物です。逃げられないんです。なので守ってあげなければならない。
そこで私たち寒地土木研究所の寒地水圏研究グループ水産土木チームと、道外の海洋調査や魚礁開発を手がける海洋建設(株)が共同で開発したのが、「ナマコのゆりかご」という人工魚(ナマコ)礁です。

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人工魚礁は魚の家のようなもので、捕食魚から逃げるための逃避場所になったり、産卵する場所になったりします。
ナマコのゆりかごは、捕食生物の侵入を防ぐ目の細い外枠と、ホタテの貝殻を等間隔に並べた内部構造でできています。こちらを漁港内に設置した実証実験では、稚ナマコの生存率が大幅に上昇。またホタテの貝殻に付着した微生物等の有機物が餌となり、稚ナマコの成長を促進する機能も確認されました。

ナマコのゆりかごは今年の2月に商品化され、各自治体や漁業関係者からも注目されています。今後はより多くの場所で活用される見通しです。ナマコの資源回復と安定した漁獲の維持、ひいては漁業地域全体の活性化に繋がることと期待しています。

それにしても「ナマコのゆりかご」っていう名前、可愛くないですか?

文・稲葉信晴
(寒地土木研究所 寒地水圏研究グループ水産土木チーム)
博士(水産科学)、海洋細菌や赤潮プランクトンなど微生物からウナギ、ナマコまで大小幅広く海の生物に関する研究に取り組む。好きな魚(海洋生物)は、特にアマモや海藻などのハビタットフォーマー、デコレーター・クラブ(擬態好きなカニ達)。

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Vol.21~稲葉研究室ファイル「ナマコのゆりかご」のお話~

この記事は2023年4月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。