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まちおこしレポート
神恵内村

地域商社「キットブルー」とともに、海辺のまちの未来を描く20210201

地域商社「キットブルー」とともに、海辺のまちの未来を描く

以前、くらしごとで取材した神恵内村の「藻場LANDプロジェクト」。
ふるさとの海を蘇らせるべく立ち上がった人たちを追いました。
以前の記事はこちら

その後、また神恵内を中心とした積丹半島の海に新たな動きがあると聞きつけたくらしごとチーム、さっそく取材をしたいと担当者を探したところ、たどり着いたのが、札幌にある(株)沿海調査エンジニアリングの大塚英治代表でした。

多忙の中、時間をさいて下さった大塚さんに、さっそく今回のプロジェクトの中身と、大塚さんが係わることになった経緯を教えてもらうことにします。

キットブルーの誕生

こんにちは~と笑顔で現れた大塚さん、まずは2枚の名刺を手渡してくれました。
1枚は(株)沿海調査エンジニアリング 代表取締役社長、そしてもう一枚には株式会社キットブルー 執行役員、とあります。

『キットブルー』??。なんとも美しい響きの名前ですが。。
「キット=KITは、K=神恵内(Kamoenai)・I=岩内(Iwanai)・T=泊(Tmari)という積丹半島西側の三町村の略称です。それに積丹半島の美しい海の色からきた「ブルー」が組み合わされて『キットブルー』です。キットブルーはその三町村が出資して設立された地域商社なのです」と大塚さんが教えてくれました。

kittoburu5.jpg積丹の青い海
最初に「地域商社」という存在について、整理しておきましょう。地域資源を魅力ある商品となるようプロデュースしてブランド化、そしてその地域内外に販売して収益を地域に還元する。地方創生を掲げる日本政府が後押しする、地域づくりの司令塔のような存在。そんな地域商社が各地にできていますが、キットブルーは神恵内に拠点を置く、地域商社なのです。

では、大塚さんがその地域商社であるキットブルーの運営を担うようになったのはどんな経緯だったのでしょう。
「背景から説明しますと、平成28年に、ウニとナマコから始まる地域づくりということで、神恵内村が主体となって、泊村と岩内町も参加した広域市町村連携事業が始まりました。柱は二つで、ナマコの増産と、冬ウニの商品化です。当初は漁業者中心で動いていたんですが、ブランディングやマーケティングにもっと力を入れていく必要があるということになって、やってくれる業者を探したんですが、いなかったんですね。それでうちの会社にやらないかって村長から声がかかったんです」

大塚さんが代表をつとめる(株)沿海調査エンジニアリングは、海洋調査やダイビング関係サービスなどを幅広く手がけており、神恵内村とは海洋調査などの業務で40年来のつきあいがあったことや、個人的に村長とも面識があったことから白羽の矢が立ったのでした。

「本当は水産流通の事業者がやるような仕事なんですけど、そういった会社や人材がなかなか見つかりませんでした。というのも、ナマコの商流(商品の情報、金銭、所有権などの流通を指します)は結構ややこしくて。密漁の問題があったり、海外のマネーがからんだり、ちょっとグレーの部分があったりするのです。だから中々手をあげる会社が無かったのです」

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それでもひきうけようと思った理由を聞くと
「僕も物好きというか、言われたら断れないと言うか(笑)。簡単ではないですけど、だからこそ面白みのある仕事だし、中小企業ならではの諦めの悪さとか、熱意とか、そういうパッションをもってあたりますよと村長に伝えましたね」

長年、海洋調査や水産資源の仕事にかかわってきた大塚さん。
環境の改善や、天然の資源を増やすということがいかに難しいかは身にしみていました。さらに、資源が増えたからといって地域が豊になるとは限らない、という例もたくさん見てきました。
そうした海に関わる様々なジレンマも経験してきたからこそ、やるべきことが見えていました。
「足りないのは水産流通なんです」
「海のことをよく知っている人・会社がある。そこで増殖・養殖をする技術や知見もある。しかし、増えて行った物をより高く売る仕組みがつくれていないんです、それをやるのがキットブルーです」

ウニとナマコの商品開発と販路開拓

では、具体的に今どんなことに取り組んでいるのでしょう

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「まず、冬ウニという商品を開発して販売しています。漁師さんたちが9月から11月にかけて、ウニに白菜を食べさせて養殖するんです。そうすると甘くて美味しいウニになります。実は11月から12月にかけて美味しいウニってほぼ流通してないんですよ。1月になると根室とか北方四島のものが出て来ますが、12月はほんとに品薄なんですよね。その端境期に出すので端境期ウニとも呼んでますが、それで年末需要に向けて販路開拓をしています。元はインバウンド需要が大きかったんですが、今はそれはないので国内向けです。個人向けだけではなくて、寿司屋などの飲食店向けも。あと最近はECサイトとSNSを連動させるのが基本ですね。もちろん、ECサイトはBtoCもBtoBも両方展開しています」

マーケットを良く見て商品を開発して、それを販売する方法・ルートを考える。まさに地域商社の重要な機能がここで発揮されているのですね。

kittoburu3.jpgほぼ完売状態の冬ウニ
「もうひとつの柱、ナマコは高級食材で、ユーザーはほぼ中国人です。それで当初、香港市場でブランディングして販路開拓をしていました。ところが昨年香港では民主化運動が起こって現地とのコミュニケーションがとりづらくなり、さらにコロナが追い討ちをかけて海外向けは厳しい状況になっています。ただ諦めるわけにはいかないですから、インバウンドが回復した時のお土産需要の準備をしていたり、新たにシンガポールとマレーシアに向けての販路開拓も進めてます」

さらに、ナマコに関しては食用だけではなく、その高い機能性を活用した保湿剤などのスキンケア商品も開発しているそうで、中国向けのECサイト内に北海道モールをつくり、それらの商品を出品するのだそう。

その他にも、コロナの影響で需要がダブついた泊村産の帆立を活用した冷凍食品を開発し、販売やふるさと納税の返礼品として世に送り出したそうです。
kittoburu4.jpgレンジでチンするだけで本格レストランの味!その名も「帆立でPON」。帆立は勿論チーズやアスパラなどメイン食材は全て道産

面白いのがそうしたアイディアを出すのが、誰か決まった人ではないということ。

実はキットブルーには、地域の職業や立場の異なる様々な人たちがパートナーというカタチでつながっています。
例えば、先の帆立の商品は、パートナーであるニセコのシェフのアイディアレシピをもとに、そのツテで水産加工会社の協力を得て完成したのだとか。


「地域商社の役割って、結局のところ地場の地域資源を見つけてきて、それにどうやって付加価値をつけて出していくか、それに尽きるんです」と大塚さん。

「それは地元だけでやっているとやはり限界があって、神恵内村の中だけでも良いアイディアはあるけれど、スピード感とかクオリティについてはそれぞれプロでやっている方に入っていただいた方が早いし、商品作りの段階、発掘してく段階でも外の目ってのは必要ですね。そういった方をつなげる役割ですね、僕らは」

kittoburu16.jpg泊村にあるさかずきテラスで開かれたまちづくりワークショップでは、ファシリテーターをつとめる大塚さん

多様なネットーワークのチームワークで地域を盛り上げる

ところで、キットブルーのWEBサイト、パンフレットデザインなどは、驚くほど洗練されたものになっています。これもパートナーの仕事なのかを尋ねると、長期的にキットブルーに関わってもらうことになっているデザインチームがあると教えてくれました。

「外に出すときにイメージ戦略は大切ですから、田舎の会社だけどなんか違うよなって感じを出したかったんです。基本は地域の人たちの地域資源に対する思いや、アイディアなのですが、キットブルーはそれをデザインでも表現したかったのです」

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さらに、大手海洋プラントメーカーやIT企業のテクノロジーも加わり、キットブルーを取り囲む構成は実に多彩です。しかしもちろん、その中心にあるのはふるさとを元気にしたいという、村長や地元の漁師さんたちの想いです。

この多様な人たちが関わる様子を大塚さんはこう語ります。
「『どっかから来た外の会社が、村で何かをやっている』ではなく、『地域を盛り上げていくコミュニティーを、そこはかとなく広げていく』そうゆうふうにしたいんです」

あくまでも主体は地域であって、それに寄り添い一緒に盛り上げていく、という姿勢が伝わってきます。

生まれたときから身近な海

さて、ここで大塚さん自身の歩みもお聞きしてみます。
「出身は小樽です。小樽で生まれたことと海が好きだということは関係ありますね。
小樽の塩谷(海岸)に日本泳法を教えていた、タカクワクラブという水泳クラブがあって、そこに子供の頃から通ってて、夏になったら毎日が海。日本泳法の免許皆伝ですよ、私」と笑います。

さらに高校ではボート部に入り、大学では海洋学科を選択します。それまでも海は身近にありましたが、そこでその後の人生が決まります。
大学の授業で講師を務めていた方が沿海調査エンジニアリングの方だったことが縁で、休日には沿海調査エンジニアリングの運営するダイビングショップでアルバイトも始めることになったのでした。

「積丹の海は綺麗です。透明度で言えば沖縄にも負けない。自分は何もない水深20mくらいのブルーの水中にポツンといるだけで楽しいんですけど、そこはある意味異次元空間です。でも宇宙に行くほどお金をかけなくても体験できる、すごい体験価値ですね。
そのうち、(ダイビングの)インストラクター(資格)もとって、そのまま勢いで入社しました。振り返ると、海のことしかやらずに今まで来れましたね、ある意味幸せです(笑)」

kittoburu17.jpg子どもたちに、積丹の海について伝える活動も

今後の課題は

最後に、大塚さんがキットブルーを通して、どんな未来を思い描いているのか聞いてみました

「やはり最大の課題は過疎化対策なんです。高齢化というのは自然の流れなのでどうこうするものではないです。でも人口減少は食い止められます。外から入ってくる人を増やして、地元の若者をとどまらせる。それには、ここに残りたい、と思える産業をつくることです」

「ウニの陸上養殖、面白いじゃないですか!そもそもできるんだろうかっていう不安や期待感があって、いざ出来てもつくって終わりじゃなくて、投資も必要だし、売らなきゃならないし。お客様や取引先と信用を積み重ねて、技術も一歩づつ進んでいって、少しづつクリアしていく。やがて、ビジネスモデルができて従業員が増えて、世界のどこでもいつでも食べられるようなウニを供給して、小さな村だけど、世界と繋がっていく。簡単ではないですが、そうゆう職場なり産業を作るってことがぼくの課題ですね」

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そして、こうも話してくれました
「田舎に戻るって、ある意味マイナスのイメージがあるかもしれない、でも、そうじゃなくて、神恵内で就職したいんだ!という子どもだちが出て来てくれたらいいですね。この地域ならではのビジネスモデルを構築して、この村には面白い仕事があるということを示す。そうすれば過疎化は食い止められるんじゃないかと思っています」

ウニやナマコを通した地域づくりはまだはじまったばかりですが、キットブルーを中心に「地域を盛り上げていくコミュニティー」から、今後どんな動きが生まれていくのか、とても楽しみです。
大塚さんのいうように、まだ美味しいウニを食べたことが無い人たちがその味を知ってくれる日も近いかもしれません
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株式会社キットブルー
株式会社キットブルー
住所

北海道古宇郡神恵内村大字神恵内村15番16

URL

http://www.kitblue.jp


地域商社「キットブルー」とともに、海辺のまちの未来を描く

この記事は2020年11月10日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。