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北海道で暮らす人・暮らし方
上士幌町

東京から移住した67歳。写真、自転車、気球と楽しみがいっぱい!20240826

東京から移住した67歳。写真、自転車、気球と楽しみがいっぱい!

十勝エリア北部にある上士幌町は道内でもいち早く移住・定住に取り組んできたまち。移住窓口やハローワーク、誰でも気軽に利用できる交流拠点やイベントも充実。新しく来る人たちにも開かれたまちとして人気があります。

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東京都出身の伴 公夫(ばん きみお)さんは、定年後に2回のお試し滞在を経て、2019年上士幌町へ移住。写真撮影にサイクリング、上士幌の名物・熱気球フライトなど、日々の生活を楽しんでいます。移住歴5年になる伴さんに、冬の季節を含めた普段の暮らしや、『第二の人生』で大切にしていること、移住までのいきさつなどを語ってもらいました。
「毎日が楽しくて、やりたいことを抑えないといけないぐらい」と話す伴さん。自然が大好きで環境重視から車を持たず、主な移動手段は自転車。あちらこちらへ出かけるのだそうです。

「東京でも自転車に乗っていました。都内だと信号が多いので止まることが多いんですが、こちらは信号がほとんどないので爽快に走れますよ」と笑います。

なんと片道40km離れた帯広や55.4km離れた三国峠へも自転車で往復するというから驚きます。

自転車で走り、風景を撮影。趣味を生かして写真展を開催

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「私は写真が趣味なので、自転車なら気になった場所ですぐ停まって撮影できるのもいいですね。4月にナイタイ高原牧場へ行ったときも、雪割草が咲いているのを見つけてすぐに写真を撮りました。十勝の景色は素晴らしくて、カナダの自然によく似ていると思います」

会社員時代に、世界80ヵ国を回ったという伴さんは、国内外の写真をたくさん撮りためてきました。カフェスペースがある「hareta(ハレタ・起業家支援センター)」では、スタッフさんとの会話がきっかけで、定期的に写真展を開くように。「地元の人たちは十勝の景色に慣れているので...」と、北海道ではなくヨーロッパや北欧、カナダなど海外の写真を展示しています。

ban_kaigai1.jpg伴さんが撮影した、スペインのアルハンブラ宮殿。すてき!
ban_kaigai_tate.jpgヨーロッパの海も北海道に負けず劣らず美しいですね

写真展では伴さんが紅茶を淹れるとのこと、聞けば移住前に学んできたのだといいます。

「たくさんの趣味を持っておこうと思って、ルピシアのティースクールに通いました。紅茶の文化はおしゃれで奥が深くいいですね。また知り合いの画家に頼んで水彩画を学び写真撮影に役立てますが、こちはまだ手つかずですね。というのも、毎日、やりたいことがいっぱいあるんですよ。地元のバルーンクラブの活動も楽しいですしね。お天気で風のない日には、朝5時ごろにみんなで集まって、気球を飛ばして遊ぶんです。終わった後はみんなでお茶を飲んだり、その後はランチに行ったりすることもあります」

ban_kikyu1.jpg十勝の広い空に気球を上げるのは気分爽快ですね!こちらも伴さん撮影

アクティブにあれこれとチャレンジして、楽しんで。充実した生活を送っているようです。

動くことで健康的に、魅力的な風景の発見やふれあいも

上士幌町の暮らしでは、『健康第一』を心掛けているという伴さん。食生活も意識して、自炊を基本にしています。疲れたときは、無理をせずに外食するのもポイント。楽しみにしているのは、ハレタで定期的に行われる「かーちゃんばーちゃん野菜市」。キャベツ、ジャガイモ、ダイコン、キュウリにトマトなど、農家の女性たちが販売する新鮮な旬野菜を安く買えるのだとか。調理法が分からないものは、レシピを地元の人に聞いて、おかずのバリエーションを増やしています。

体も極力動かそうと、自転車のほかに朝は1時間の散歩、お昼には町立スポーツセンターのトレーニングジムで汗を流しています。散歩中に立ち寄る神社には、仲良しのエゾリスがすんでいて、カメラを向けるとポーズを取ってくれるのだとか。長年、写真を趣味にしてきた伴さんにとって、上士幌町は魅力ある撮影スポットや被写体にあふれているといいます。地元の人には当たり前すぎて実感しづらいこの地域の魅力を、伴さんはしっかりと捉えています。

「畑に咲くジャガイモの花がきれいなんですよ。こちらに来てから初めて見たんですが、辺り一面が花でいっぱいで、スケールが違うんですよね。ジャガイモの種類によって白やピンクと色が違うことも知りました。イギリスの田園地帯を思わせる景色の写真もあります。気球から見下ろして、気に入った風景を撮ったりもしています」

ban_fukei.jpg伴さんが撮影した、美しい十勝の風景

スーパーや施設は徒歩圏内、冬も室内は温かく充実した暮らし

とはいえ、気になるのが北海道・十勝での冬の暮らし。移住後に初めて雪が積もった日はうれしくて長靴を買い、雪のなかをズブズブと歩く感触を楽しんだという伴さんですが、冬の移動や雪かきは負担にならないのでしょうか。

「確かに車がないのは不便ですが、できる範囲で歩いています。スーパーはうちの団地から徒歩10分ですし、大抵は歩いていける範囲で用事を済ませられるんですよ。特に晴れた日には、長靴であちこちを歩いて回っています。外に出られないような悪天候のときは、昔に撮った写真の整理をしたり、図書館で借りた本を読んだり、近くにある行きつけの飲食店に通ったりもしています。雪が積もった日はね、率先して団地前の除雪をしているんですよ。足の悪い方も住んでいますし、自分の運動にもなりますからね」

上士幌町は中心部にスーパーや町役場、温泉もある「ふれあいプラザ」、スポーツセンターなどの公共施設が集約されているので、近くの団地で暮らす伴さんにとっては冬の季節も便利。インドアの暮らしも充実、雪かきも良い運動になっているようです。

それでも、冬は最高気温が氷点下、最低気温がマイナス20度近くにもなる上士幌の寒さは大丈夫なのでしょうか...?

「冬の間も、思ったより寒さは感じませんでした。室内は暖かくて、北海道の住宅は気密・断熱性が高いのだと思います。暖房は、電気屋さんから『小さなストーブだと部屋が温まるのに時間がかかるし、燃料コストもかさむから、大きめのほうがおすすめですよ』とアドバイスをもらって、FF式石油ストーブを取り付けてもらいました。それに移住したころは、空が晴れていると洗濯物を干したくなりますが、移住窓口の上士幌コンシェルジュさんに『冬は服が凍るので部屋干しが基本ですよ』と聞いていたので、きちんと室内に干しています。あと、上士幌町はかなりゴミの分類が細かいんですけれど、それもコンシェルジュさんに聞きに行ったりしています」

住んでからも頼りになる「上士幌コンシェルジュ」

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伴さんのように、移住前だけでなく、移住後も頼りになっているのが、くらしごとの記事でも紹介した「上士幌コンシェルジュ」。移住のワンストップ窓口で、お試し暮らしの運営なども行っているNPO団体です。今回の取材も、上士幌コンシェルジュのサテライトオフィス・かみしほろ情報館の席をお借りして、インタビューをさせて頂きました。特産品販売やコーヒーを飲めるフリースペースがあり、いろんな人が立ち寄ります。


「ここに来れば、イベントなどのお知らせポスターが見られて、まちの情報を一度に仕入れることができます。それに毎月1回、コンシェルジュさんが移住者を対象に催してくれる誕生会というのがあって、移住の先輩やまちの人たちと交流できるんですよ。また、LINE仲間で『こういうイベントがあるよ』と回ってきたりもしますし、積極的に人とつながること、情報を得ることは大切だなと感じています」

「意外とまちのイベントが多いんですよ」と伴さん。先日は、年に1回行われる、上士幌町の家畜品評会へ行ってきたとか。

「乳牛や肉牛が、パドックをグルグルと回って体格を競う大会なんです。私たちには、よつ葉乳業の牛乳とヨーグルトをもらえて、終了後には餅まきもあるんですよ。あれって上を見ていちゃダメなんですよね。下を向いて、落ちたやつを片っ端から拾っていくんです。最初はダメだったけれど、やっとコツをつかみました」

移住は3年かけて情報収集、2回の滞在を経て決意

身振り手振りを交えながら、日々の楽しさを話してくれる伴さん。上士幌の充実した暮らしを手に入れるまでに、どんないきさつがあったのでしょうか。まずは、移住を決めた理由と場所探しについて語ってもらいました。

「定年近くになって第二の人生を考えたときに『北海道に住むのもいいな』と考えたんです。私は愛知県生まれで東京育ち45年、会社勤めの間には海外出張や写真撮影で海外によく行きました。北海道には住んだことはなかったけれども、それまで7回ぐらい写真を撮りに来て『北海道の自然は特別いいなあ』と思っていたんです」

そこで伴さんは、全国の移住窓口がある有楽町の「ふるさと回帰支援センター」を訪ねました。それから移住を決めるまでに3年間通い続けて、北海道に関する情報を細かく収集したといいます。

「はじめは道内のどこがいいかなと窓口で相談したり、移住フェアやセミナーに行ったりしていました。そのなかで『十勝地方は比較的晴れの日が多くて雪が少ない』と聞いたんです。十勝の移住説明会も行われるともいうので、さっそく参加してみました。そのなかでも熱心にいろいろと教えてくれたのが、上士幌コンシェルジュさん。その後、上士幌町の単独セミナーにも参加してみましたが、自治体側の話だけでなく、移住した人たちからの詳しい話を聞けたのがとても良かったですね」

当時、十勝・足寄(あしょろ)の小学校で教員をしていた友人にも、北海道暮らしについて尋ねてみたところ、「まずは冬を体験してみないと分からないよ」と言われて、真冬の十勝滞在にトライしました。その結果、いけると感じた伴さんは、上士幌町の生活体験モニターにも参加。今度は北海道でもベストシーズンの6月で、一戸建ての体験住宅に滞在しました。移住に当たって、車を持たないと決めていた伴さんは、生活に必要なお店や施設が自転車でどれぐらいの距離にあるかをチェック。もちろんサイクリングと写真撮影も楽しみました。

「移住の決め手は、やはり上士幌の自然です。正直なところ5,000人ほどのまちですから、東京と比べれば不便なところはありますよ。それでも、『自然』はお金を出しても買えないほど私にとって貴重なもの。上士幌の風景は私の大好きな中央ヨーロッパやカナダに似ていて、キタキツネやエゾタヌキ、エゾリスといった野生動物にもあえる。滞在中に、この上士幌で第二の人生を送ろうと決意して、住まい探しもはじめました」

移住では家探しも課題です。伴さんも良い一軒家を見つけたものの、残念ながらほかの人に先を越されてしまったそう。そこへ「まちの広報紙に公営住宅の募集が載っているよ」と教えられて、いま住んでいる団地に入居することができました。それも、1回目の応募では落ちてしまい、2回目で当選できたのだとか。「物件はすぐに決めないとね、早い者勝ちですから」と、伴さんは実感を込めて話します。

アルバイトで、まちの園児ともお友だちに

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そんな伴さんが、移住前には思ってもみなかった仕事に就きます。それは、認定こども園でのアルバイト。行きつけのお店でランチを食べていたときに、お店の奥さんから誘われたそうで、一度は断ったものの、二度目は人手不足で困っていると知り、「まちの役に立てれば」と引き受けたのだとか。

「週3日の2時間だけ、午後のお遊戯の時間に働いています。園児たちが遊んでいるのをケガがないように見守る仕事ですが、私は一緒になって遊んでいます」

サマーシーズンにも園庭で、元気な幼児たちと走り回る伴さん。「汗びっしょりで、さすがに疲れちゃいますけれど」と苦笑いしますが、その表情は意外と楽しそう。働いてから3年半がたち、町内の行く先々で子どもたちに「キミオおじさーん!」と呼ばれているそうです。

下調べや準備をしっかりと行うだけでなく、分からないことを聞いたり、アドバイスをもらったりすることで、北海道の暮らしにも比較的スムーズになじめるようになった伴さん。大切なことは、『健康第一』だけでなく『まちの人とのコミュニケーションを大切にすること』とも話してくれました。自然を愛し、旅を愛し、西行的な生き方に憧れを抱きつつ周囲の人々とののコミニュケーションを図ることで次に繋げている。
そんな伴さんのくらしは、とてもいきいきと輝いてみえました。

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伴 公夫(ばん・きみお)さん
住所

北海道河東郡上士幌町

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東京から移住した67歳。写真、自転車、気球と楽しみがいっぱい!

この記事は2024年6月11日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。