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新人ホテルマン、想い出ある定山渓で新たな価値づくりに挑戦!20230925

新人ホテルマン、想い出ある定山渓で新たな価値づくりに挑戦!

定山渓温泉は、札幌中心部から車で約1時間。緑豊かな渓谷に囲まれ、温泉という癒やしで非日常を手軽に体験できる場所です。「札幌の奥座敷」とも呼ばれ、戦後は高度経済成長の波に乗り、次々とホテルや旅館が誕生しました。昭和30年代の写真を見ると、とても賑やかな温泉街だったのがよく分かります。昭和、平成を経て、令和に入った今、かつての温泉街の良さを残しつつ、定山渓に新しい風が吹いています。温泉を軸にしながら、新たな魅力を発信する宿泊施設や個性ある店舗が増え、温泉街を訪れる人たちの様相も変わりはじめています。
今回は、定山渓で新しい価値を提供し続けている第一寶亭留グループに勤務する若手スタッフ・本間優希さんに、ご本人のキャリアをはじめ、定山渓の面白さや魅力について伺いました。

コロナ禍でも積極的に新卒を採用。そのような攻めの姿勢に共感し入社

jouzannkei_suizantei00014.jpg本間優希さん。すでに複数の部署を経験し、24歳とは思えない落ち着きです。

第一寶亭留は、1957年(昭和32年)に定山渓で創業。現在、定山渓を中心に全道で10箇所の宿泊施設や飲食店などを運営しています。その中心とも言えるのが、今回の訪問先のホテル「定山渓第一寶亭留 翠山亭」です。

同ホテルで予約係として勤務している本間さんは、現在24歳。長身で細身、スッとした立ち姿は遠くからでも目を引きます。出身は札幌で、大学を卒業後、新卒で第一寶亭留グループに入社しました。

「大学4年のとき、コロナ禍に突入し、授業もオンラインになりました。そのような中での就職活動だったので、なかなか難しい部分もありました。ちょうど観光業界自体も、落ち込んでいたので...」

そんなコロナ禍であっても積極的に採用活動を行い、攻めの姿勢を崩さなかった第一寶亭留グループに関心を持った本間さんは、「コンセプトがそれぞれ異なる館(宿泊施設のことを、やかた、と呼ぶそう)を運営している中で、個性が強めの宿作りをこれからもしていくという話を聞き、他にはないような館の運営に関わってみたいと思いました」と、就職活動時を振り返ります。

jouzannkei_suizantei00008.jpg制服がよくお似合いです

話の流れから、てっきり観光関係の学部学科を卒業しているのかと思いきや、実は北海道大学法学部出身という本間さん。法曹界へ進むつもりはなかったのでしょうか。

「法律について学んできましたが、法律の世界での就職は全然考えていませんでした。いろいろな選択肢の中から、もっと自分の人間としての幅を広げられるような業界、自分が興味関心を持っている業界に行きたいと思っていました」

学生時代は、家族や友人とよく旅行へ出かけていたそう。「モノより思い出」派で、形あるものにお金を使うより、旅などの「経験」や「体験」にお金をかけるタイプだったと言います。そんな本間さんに大きく影響を与えたのが、大学2年生のときに行った初めての海外での経験でした。

「3週間の短期留学で、スイスのジュネーブに行きました。国際連盟の本部施設などを見学させてもらい、いろいろな人と交流もでき、視野が一気に広がりました。もっと世界と繋がれたらとも思いました」

その後、旅や観光にまつわる仕事に興味を抱くようになり、観光メディアや通訳などの道も模索。その中に、ホテルマンという選択肢もあったそうです。ちなみにホテルマンの選択肢が入ったのは、中学生のときに家族旅行で行った先のホテルスタッフの制服姿を見て「カッコいいな」と思ったのが最初のきっかけだったかもしれないとのこと。

jouzannkei_suizantei00044.jpgご自身いわく、表に出るより、裏方の仕事の方が得意なんです、とのこと

臨機応変に対応ができる存在に。インバウンドが戻り、英語力も生かせる

現在は予約係の仕事を担当している本間さんですが、入社してから異なる部署や施設を4、5カ所経験しています。タイプを見極めた上での人事ということですが、人事担当者の方によると、本間さんにはいろいろな館や店舗を経験してもらい、将来的にその経験値を生かしてもらいたいと期待しているそう。

「異動は、いつも割と急なんです(笑)。ベーカリー(※1)にもオープニングスタッフとして3週間いましたし、ハイクラスの翠山亭倶楽部にも半年いました。ヘルプで富良野(※2)へも行きました。いろいろと幅を広げたいと思っていた自分にはいい経験だったと思いますし、社内のさまざまな部署のスタッフとコミュニケーションを取ることができたおかげで、頼れる人が増えました(笑)」

(※1)定山渓エリアに2021年にオープンしたベーカリーカフェ 「エクスクラメーションベーカリー」
(※2)富良野市にある、系列のフラノ寶亭留

繁忙期で人手が足りない時などは、フロントやサービスのサポートにも入るそう。臨機応変な対応ができるのは、いろいろ経験を積んできているからなのでしょう。

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「ビジネスホテルと違い、我々はお客さまにいただいている対価に見合ったおもてなしや時間、空間をここで提供しなければなりません。お客さまとのファーストコンタクトが予約係の仕事。そこでいかにお客さまの要望などを聞き出し、満足いく宿泊の時間を過ごしてもらうかが大事だと考えています。フロントと違って、直接的にお客さまから『ありがとう』と言っていただけることはありませんが、大きなトラブルもなくお客さまがお帰りになられたら、満足いただけたのだろうと考え、ひとまずホッとします」

最近はインバウンドのお客さまが戻りはじめ、「毎日のように英語で話しています。個人的に英語を使えるのはとてもうれしいことではあるのですが、コロナ禍に入社したので、こんなに英語を使うとは思ってもいなかったです」と笑います。

家族との思い出が詰まった定山渓温泉。今は大きく変化をしている最中

本間さんにとって定山渓温泉は思い出の地。子どものころから家族でよく利用していたと話します。

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「札幌の中心部からも近いし、気軽に行ける家族旅行の場所という感じでした。祖父母も含め、親戚が一堂に集まりやすいということもあって、頻繁に来ていた記憶があります。自分にとって、とても親近感のある場所です」

とはいえ、「子どものころに見ていた定山渓と今の姿はだいぶ違いますね」と話し、「古い温泉街という記憶が強く残っていたのですが、今は現在進行形で温泉街が変化をしている感じがします」と続けます。

昭和の香りが漂う宿泊メインの温泉街ではなく、温泉+αの楽しみ方ができる「魅力ある観光地」に変化しているのを肌で感じているそう。実際、第一寶亭留グループが手がける「山ノ風マチ」は、緑あふれる林の中に、宿泊施設だけでなく、ベーカリー、洋菓子店、定食屋など、個性あふれる店が軒を連ね、日帰りでも十分に非日常を楽しめるマチになっています。本間さんが在籍する「翠山亭」の敷地内にも、わざわざ買いに行きたくなるオリジナル最中を提供する「坂ノ上の最中」や、夏場だけのかき氷店「森乃百日氷」があり、連日多くの人が足を運んでいます。

jouzannkei_suizantei00061.jpg大人気!期間限定のかき氷店

また、店だけでなく、自然を生かした体験もののアクティビティや観光協会によるさまざまなイベントも増え、定山渓温泉全体で新しい流れを作り出そうとしているのが感じられます。

「人がたくさん訪れるようになると、温泉街全体に活気が出ます。定山渓全体でもっと魅力度がアップしていったらいいなと思います」

都会から近いのに、自然に囲まれた中で働くことができる贅沢さ

定山渓で働くことの魅力を尋ねると、「いろいろありますが、1年を通して、豊かな自然に囲まれて仕事ができることでしょうか」と本間さん。就職活動中、北海道から離れたくないと考えていた本間さんは、「程よく自然のある環境が好きで、満員電車に揺られて通勤するとかは考えられなかった」と笑います。建物の外に一歩出ると、風に揺れる木々の葉音、虫や鳥の鳴き声が当たり前のように聞こえる環境にとても満足しているそうです。

jouzannkei_suizantei00062.jpg定山渓エリア全体はもちろん、敷地の中も緑が多く、心が癒やされます

温泉街勤務=温泉街に住むという印象がありますが、本間さんの場合は定山渓から少し札幌市街地寄りのエリアから通っています。

「定山渓の中に会社の寮があり、そこに住んでいる人もいます。僕は休憩時間などにその寮を利用しています。定山渓はほかの温泉街と違って、札幌の市街地から通える距離というのも利点で、オンとオフの切り替えがしやすくていいと思います」

定山渓温泉の中でお気に入りのスポットがあるか尋ねると、しばらく考えたあと、「定山渓大橋かな」と本間さん。入社してすぐのころ、辺りを散策しているときに定山渓大橋からの眺めを知り、とても気に入ったそう。

「散歩したり、ランニングしたりするのが好きで、結構定山渓の中を歩いたり、走ったりしています。散策していると、その都度いろいろな発見があって楽しいのですが、定山渓大橋から見た四季折々の眺めが素晴らしいと思います。あと、夜に大橋に行って、橋の上から温泉街をぼんやりと眺めるのも好きです。川沿いに建つホテルの窓の灯りを見ながら、たそがれています。そして、定山渓は山の中なので、札幌市内と思えないほど星がすごくキレイに見えるのもいいところだなと思います!」

jouzannkei_kannkoukyoukai00021.JPG定山渓大橋からの眺め。四季や時間ごとにも違う顔が

訪れた人はもちろん、働く人にとっても楽しい地域になれれば...

本間さんから見て、定山渓を中心に展開している第一寶亭留グループの魅力はどういったところにあるかを尋ねると、「新しいことにどんどん挑戦し、それを成功させているのが第一寶亭留グループ。新しい価値を生み出し、定山渓を盛り上げていこうという姿勢が会社の魅力でもあると思います」とのこと。

最後に、目標や目指していることを伺うと、

「先ほど定山渓は現在進行中と話しましたが、やはりもっと定山渓温泉全体が盛り上がってくれるといいなとは思っています。ここを訪れた人だけでなく、働いている人たちにとっても、楽しく働けるような地域になったらステキだなと思います。あらゆる立場の人の意見や立場、視点を加味して、どうすれば物事が円滑に進むかなど、段取りを考えたり、仕組み作ったりするのが得意なので、これからも広い視野を持って、それを生かせたらとも思っています。定山渓にも何かひとつ、きっかけになるものが生まれて、ニセコのように地域全体が盛り上がるといいですね。その何かを作るのに関われたらいいなと思っています。あと、ホテルマンとしてはまだまだ勉強の日々です。先輩たちのように、もっと自分の気持ちをうまくコントロールできるようになりたいなと思っています」

jouzannkei_suizantei0075.jpg先輩や上司からも日々吸収

と、じっくり考えながら語ってくれました。

また、「定山渓温泉街で働く若手が集まって、何か交流などがあってもいいのかもしれませんね。まずは若手社員のテニス大会かな。僕、学生時代、ずっとテニスをやっていたので」とニヤリ。どうやら自信があるようです。こうした柔軟な発想を持つ若手の活躍が、定山渓温泉を盛り上げていく一つのきっかけになるのかもしれません。

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定山渓第一寶亭留 翠山亭 (第一寶亭留グループ)本間優希さん
定山渓第一寶亭留 翠山亭 (第一寶亭留グループ)
本間優希さん
住所

北海道札幌市南区定山渓温泉西3丁目105

電話

011-598-2141

URL

https://jyozankei-daiichi.co.jp/


新人ホテルマン、想い出ある定山渓で新たな価値づくりに挑戦!

この記事は2023年8月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。