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自然好きの3人が出会い生まれる、定山渓型アクティビティ!20230920

自然好きの3人が出会い生まれる、定山渓型アクティビティ!

札幌市民にとって定山渓温泉といえば、宿泊でも日帰りでも楽しめる身近なレジャースポット。中心部から車で1時間というアクセスの良さが魅力で、肌にやさしく芯から温まるお湯が心身をリフレッシュさせてくれます。
しかし、定山渓の魅力は温泉だけではありません!渓流でのラフティングやカヌー、サップに登山やハイキング、スキーやスノーシューツアーとオールシーズン楽しめる、自然に恵まれたエリアなのです。

2022年11月、定山渓の温泉街に、レストランやショップ、屋外テラスなどからなる「心の里 埜(の)のてらす」がオープン。その中にあるツアーデスク「野あそびベース フリルフスリフ」で、自然体験を楽しむ人たちが増えています。ノルウェー語で「気ままなアウトドアライフ」という意味のフリルフスリフでは、1歳の子ども連れでも参加できる川遊びツアーや、ワンちゃんと一緒に体験できるサップまで、年齢を問わずどんな人にも楽しめる体験メニューが揃っています。

jouzannkei_nonoterasu00002.JPG定山渓を訪れるどなたでも楽しんで頂けるスペース「心の里 埜(の)のてらす」

フリルフスリフを営むのは、アウトドアガイド歴10年、スキーとカヤックの達人である木村駿太さんと、野外教育の指導員として子どもたちと触れ合ってきた妻の葵さんご夫妻。そこに、「心の里 埜のてらす」の運営会社の社員で野生動物にも詳しい三浦優華さんが施設の立ち上げ時から加わって、体験メニュー作りの準備を一緒に進めてきました。

オープンして半年が経ち、それぞれの得意分野を生かしたアクティビティメニューは大盛況!お客さんの評判も上々です。各々の専門キャリアを生かして自然体験の楽しさを提供する3人のみなさんに、立ち上げまでのいきさつや自然の魅力、定山渓での暮らしや働きがいなどについてお聞きしました。

定山渓温泉にアクティビティを楽しむ拠点がオープン

jouzannkei_nonoterasu00005.JPG左から、木村葵さん、三浦優華さん、木村駿太さん

「心の里 埜のてらす」は、定山渓温泉の代表的な和風ホテルのひとつ「ぬくもりの宿 ふる川」(以下、ホテルふる川)が経営する複合施設です。アクティビティのツアーデスク「フリルフスリフ」のほか、地元でとれる農産物を使ったレストランやスイーツショップ、お土産にしたい逸品や新鮮野菜が並ぶマルシェ、無料で利用できる屋外テラスとドッグランがあり、レンタサイクル(有料)も貸し出しています。

木々のグリーンが映える屋外テラスでは、思い思いにチェアでくつろぐ人たちの姿が見えました。三浦さんに、利用できるのは、ホテルふる川の宿泊客限定なのでしょうか...?と聞いてみたところ、「いいえ、誰でも無料でご利用いただいています」と笑顔で答えてくれました。

隣には、これもふる川さんが10年前から営む人気スポット「心の里 定山(じょうざん)」があり、やはり誰でも利用が可能(有料、中学生以上)。癒しの空間が多くのリピーターまで惹きつけています。三浦さんはこれらの施設について、「ホテルだけでなく定山渓という地域を楽しんで、ゆっくりと過ごしてほしい」という社長の思いからつくられていると話します。

jouzannkei_nonoterasu00013.JPG野生生物が大好き、と話してくれた三浦優華さん

建物デッキのほうから、カン、カン、と鐘を鳴らすような音が聞こえてきました。近づいてみると、「フフフ」の文字があるTシャツを着た青年が薪割りをしています。フリルフスリフのスタッフの方でした。
薪割りといえば、昔は斧を振るって丸太を割る力仕事と思っていましたが、いまはハンマーで丸太をコンコン叩いて当たって木が割れる機械を使っているので、誰でも簡単、安全に行うことができます。「キンドリングクラッカーというんです。小さなお子さんでもできますし、うちで薪割り体験もやっていますよ」と、爽やかに教えてくれました。自分で割った薪をくべて、マシュマロを焼いて食べるまでがお楽しみというメニュー、子どもだけでなく大人も盛り上がりそうです!

コロナ禍を乗り越えて「定山渓=アクティビティ」の認知度を高める

「野あそびベース フリルフスリフ」の、これまでの道のりについて代表の木村駿太さんに聞いてみました。

jouzannkei_nonoterasu00009.JPG愛知県出身の木村駿太さん

駿太さんと葵さんは、野外教育を学ぶために入った北海道教育大学岩見沢校で知り合います。卒業後、駿太さんは十勝のアクティビティ会社で7年間ツアーガイドとして、葵さんは「札幌市青少年山の家」の野外教育スタッフとして働きました。2020年、お二人は念願の独立を果たし、定山渓でアクティビティ事業を始めます。

定山渓で起業した理由について駿太さんに尋ねると、200万もの人が住む札幌市内にある利点や、ご自身が定山渓の自然に魅了されていることを挙げてくれました。

「例えば、北海道でラフティングといえばニセコが有名ですよね。でも、定山渓の川ってニセコよりも激流なんです」と駿太さん。ニセコは川幅が広いのに対して、定山渓の豊平川上流は両側が切り立った渓谷で川幅が狭く、スリル満点で景色も素晴らしいのだとか。アラスカ留学の経験者で、カヤックとテレマークスキーの達人でもある駿太さんは、定山渓の豊かな自然を多くの人々に楽しんでもらいたいと話します。

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しかし、開業した年にコロナ禍に見舞われました。「特に最初の年は大変で、ハイシーズンでもお客さんがひとりも来なかった日もありました。生活のためにバイトばかりしていましたね」と振り返る駿太さん。それは、定山渓温泉全体が苦境に陥った時期でもありました。

そこに、ホテルふる川が新しい施設として「心の里 埜のてらす」を計画、フリルフスリフをスカウト。木村さんご夫妻の定山渓の自然への思いと、社長の願いがマッチし、新しいプロジェクトが始動しました。

施設がオープンしてから、定山渓のアクティビティに対する認知度が高まってきているそうで、「ニセコまで行くのはちょっと遠いと思っている人たちが、『定山渓は温泉だけかと思っていたら、アクティビティもできるんだ』と来てくださるようになったんですよね」と駿太さんは話します。地元のお客さんはもちろん、本州や海外からも観光客が訪れているそうです。

jouzannkei_nonoterasu00012.JPGお客さんそれぞれとのコミュニケーションを大切にしていると話してくれた木村葵さん

初夏でお忙しいなかのインタビュー。駿太さんが担当するツアーの時間が来たため、次はホテルふる川の社員、三浦さんにバトンタッチ。駿太さん、いってらっしゃい!

大学で野生動物を学び、定山渓の自然に惹かれてホテルふる川に入った三浦さん

新施設「心の里 埜のてらす」の準備期間中、フリルフスリフのお二人は、幅広いお客さんが参加できるように既存メニューのブラッシュアップと新体験メニューの開発に追われました。強力な助っ人として加わったのは、ホテルふる川の社員、三浦優華さん。三浦さんは2021年に入社し、新施設の立ち上げスタッフに任命されました。

jouzannkei_nonoterasu00014.JPG電動アシスト付きの自転車もレンタル可能です

札幌っ子で自然を愛する三浦さんは、酪農学園大学で野生生物学を専攻し、狩猟管理学を学びました(ちなみに、狩猟免許も持っているそうです!)。卒業後、札幌市円山動物園の任期付き飼育員としてエゾシカ、ペンギン、水鳥の担当を務めます。「鳥に詳しい職員の方から教えてもらって、野鳥が好きになりました!」という三浦さんは、趣味のバードウォッチングで通った定山渓の自然に魅せられました。

任期終了後、定山渓で働きたいという思いからホテルふる川に応募し、採用されます。当初は「心の里 定山」への配属を希望したそうですが、新たに建設される「心の里 埜のてらす」の立ち上げメンバーに抜擢。「最初は私と社長の2人しかいなくて、緊張しました」と話す三浦さんですが、自然のなかでの仕事は彼女にとってまさに理想的な職場でした。それからは、アクティビティを担当する主任として、フリルフスリフのお二人とタッグを組むことになります。

jouzannkei_nonoterasu00024.JPG外遊びだけではなく、バードコールなど屋内でのものづくり体験も人気です

3人の知識と経験を寄せ合って、すべての層が楽しめる体験メニューを開発

スキーやカヤックの達人でアウトドアガイドの経験が長い駿太さん、子どもの自主的な意欲を引き出す野外教育の指導員として活躍してきた葵さん、そして野生の生き物に精通する三浦さんは、3人で協力し合いながら、これまでの体験プログラムを洗練させ、さらに多岐にわたるバリエーションを生み出していきました。

それぞれの専門分野がミックスされた結果、多くの魅力的な体験プログラムが誕生しました。
定山渓を流れる豊平川の「激流ラフティング」のようなスリル満点のツアーから、緩やかな流れでの「ゆったりカヌーツアー」「渓谷サップツアー」など、幅広いメニューが展開されています。これらの川あそびのツアーはワンちゃんとの参加が可能で、愛犬家にとってはうれしいところ。

jouzannkei_nonoterasu00019.JPG定山渓の自然を知り尽くす3人に、おすすめスポットなどを聞いてみては?

1歳から参加できる「ちびっこカッパツアー」も家族連れに人気メニューのひとつです。子どもの自然教育に長く携わってきた葵さんもインタビューに加わって、お話をお聞きしました。

子どもの「やってみたい!」と思える気持ちを尊重していると葵さんは語ります。「保護者の方たちは心配で『危ない!』『やめなさい!』と言うこともありますけど、安全を確保した上で、ガイドの私たちもしっかりと見守っていますので、安心していただくようお伝えしています。また、参加される大人の方にも、日常を忘れて思い切り楽しんでもらえるようなツアーを心掛けています」

ホテルふる川社員の三浦さんもアクティビティのガイドを務めるそうで「冬のスノーシューツアーなどでは、野生動物や鳥についての話をしています」と得意分野を生かしています。三浦さんの影響で、葵さんも少しずつ野鳥に詳しくなってきたとか。屋内体験ではバードコールづくりもメニューにあり、完成した後は建物裏の森で鳴らしてみるのだそうです。野鳥が返事(?)をすることもあるそうで、忘れられない体験になりそう。

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同じツアーでも、参加するグループの様子に合わせて少しずつ内容や対応を変えるのがフリルフスリフの特長です。耳の聴こえないお客さんのラフティングガイドをしたこともあるそうで、「ボートに2人のガイドを乗せて、パドルを前に漕ぐときは肩を1回、後ろに漕ぐときは2回たたくと決めて、楽しんでもらいました」と葵さんは話します。このように、コミュニケーションを重視したフリルススリフの柔軟な対応が、着実に人気を高めています。

温泉が身近な定山渓の暮らし、オフの時間も自然を思い切り楽しむ

みなさんの、定山渓での暮らしについてもお伺いしてみました。

木村さんご夫妻が埜のてらすに入る前は、南区の事務所兼自宅から車で20分ほどの距離を定山渓まで往復していたそうですが、現在は職場から歩いて3分のところに家を借りています。葵さんは北海道が地元ですが、愛知県出身の駿太さんにとって雪のある暮らしは大変なのでは?とお聞きすると、大学生活を送った雪の多い岩見沢市に比べればまったく問題がないということでした。

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休日の楽しみについて聞いてみると、駿太さんはカヤックとテレマークスキー。カヤックでは「滝落ち」も楽しんでいるそうで、説明を聞くと、ほぼ直角に折れた崖を流れる滝をカヤックで滑り降りる、というよりは、落ちていくというものだとか!冬の季節はご夫妻で、車で20分の札幌国際スキー場へ通っています。そのほかにも、キャンプや庭でのバーベキューなど、楽しみは尽きません。これからも体験メニューを増やしていく予定で、先日は摘んだよもぎを使ったパンづくりのイベントを行ったそうです。

ホテルふる川の社員である三浦さんは、自社で働くメリットについて「温泉に入り放題なんですよ!」と笑顔で話します。「おいしい食べ物もたくさんあるので、『今週は頑張ったから、温泉に入って、おいしいものをいっぱい食べて...』と自分へのご褒美にしています。それに、定山渓といえば紅葉が有名ですが、ほかの季節でもその時期にしか出合えない景色や動物、植物の姿があるので、自分でも楽しんでいますし、訪れる方々にも見てもらいたいと思っています」

jouzannkei_nonoterasu00022.JPGこの日も多くのお客さんでにぎわっていました

定山渓を盛り上げる一員として、アウトドア業界の地位向上を目指す

定山渓に暮らす3人は、「この地域をより良くしていこう」というまちの人たちの気概を感じるといいます。観光協会が開催する「定山渓検定」では、今年は100名ほどの人が受験したとか。「働く人たちのホスピタリティ向上のためにつくられた検定で、定山渓に関する知識のテストがあります。『これは、どこで売っているまんじゅうか』という問題や、定山渓温泉PR隊長のキャラクター『かっぽん』の本名を答える問題もあるんですよ」

検定会場には、定山渓で働く人たちだけでなく、多くのボランティアも参加していました。彼らは観光イベントに欠かせない存在で、定山渓ネイチャールミナリエや秋のガイドツアーバス、冬の雪灯路(ゆきとうろ)などで活躍しています。宿泊施設から数人ずつ参加し、現住民や元住民も含めて「みんなで定山渓を盛り上げよう」という気持ちが感じられると三浦さん。

jouzannkei_nonoterasu00015.JPGフリルフスリフのスタッフ傳宝 薪平(でんぽう しんぺい)さんも交えてスリーショット

もちろん駿太さんと葵さんも、フリルフスリフとして観光協会に所属し、定山渓エリアを盛り上げる活動に積極的に参加しています。
葵さんは、最後にこう語ってくれました。「アウトドア業界は季節労働とか収入が不安定というイメージがあるかもしれませんが、それを払拭していきたいですね。三浦さんにも手伝ってもらいながら冬季や屋内、夜間のメニューと充実させているので、安定した仕事としてスタッフを雇い、社会的な保障も整えていきたい。夫婦でそう思っています」

これからは、大自然のなかでのアクティビティを楽しんだ後に温泉に浸かり、おいしいものを食べる...そんな定山渓がスタンダードになっていきそうです。

定山渓の他の記事などのまとめページはこちら!

■心の里 埜(の)のてらす■野あそびベース フリルフスリフ
■心の里 埜(の)のてらす
■野あそびベース フリルフスリフ
住所

北海道札幌市南区定山渓温泉西4丁目371

電話

011-206-1234(埜のてらす/木曜定休)
070−1534ー9272(野あそびベース フリルフスリフ)

■埜のてらす

https://kokorono-sato.jp/



■野あそびベース フリルフスリフ

https://www.friluftsliv.website


自然好きの3人が出会い生まれる、定山渓型アクティビティ!

この記事は2023年7月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。