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札幌市

「ときめく」デザインを追求し、活動の幅を広げるママデザイナー20211202

「ときめく」デザインを追求し、活動の幅を広げるママデザイナー

デパ地下で思わず手に取ってしまうお洒落なお菓子のパッケージ、お店の片隅で存在感を放つリーフレット...。

そんな素敵なデザインを手がける札幌在住のフリーデザイナー、鈴木いそかさん。ご主人と共にデザイン会社を創業し、自宅兼アトリエで制作に励み、5歳のお子さんを育てるお母さんでもあります。

いそかさんの作品であるデザインや、それを生み出すライフスタイルを紹介します。

江別のお菓子を『レトロおもしろく』紹介

以前、くらしごとでも紹介した江別市の地域おこし協力隊員、安達みゆきさん。安達さんが協力隊に着任後に初めて手がけたリーフレットのデザインをしたのが、もともと友人だったいそかさんでした。


「みゆきさんのところに遊びに行った時に、江別で昔から愛されている『煉化(れんが)もち』を食べて、レトロで可愛いパッケージが印象に残りました。そこで、こういったロングセラーのお菓子を集めたリーフレットを作ろう!とアイデアが生まれました」

suzuki_isoka2.jpgこちらが一緒に制作したリーフレットです。

テーマは「レトロおもしろい」。江別にたくさんの人に来てもらいたい、という思いを込めて、江別に移住したばかりの安達さんと札幌在住のいそかさんの客観的な見え方を大切に制作しました。

文字のフォントもレトロで素朴なデザインに。手書きのイラストや地図で可愛らしく、温かい雰囲気のリーフレットになりました。「煉化もちはバーベキューで焼いて食べる人も」「樹里庵のとろけるショコラはレンジで10秒でトロトロにしても美味」など、お店の人から聞いたちょっとした裏技を入れて楽しさを演出。

「費用が限られていたので、撮影もカメラマンに依頼せず自分たちでしました。江別製粉さんのホットケーキミックス『おやつイン』のイメージ写真は、みゆきさんの自宅で食器を用意し、ホットケーキを焼いて撮影。蜂蜜が垂れた感じまでこだわって撮影しました」

甘いおせんべいを、特別感のある装いで

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愛知県蒲郡市で製造販売されているせんべいの新しいブランドのデザインも手がけました。

海老せんべい「是蔵(これぞう)」を製造販売する石黒商店で、女性向けに洋風の甘いせんべいブランドの立ち上げが決まり、試食段階からいそかさんも関わることに。商品の味から意見を述べ、コンセプトを決め、ターゲットを聞いた上で、パッケージ・販促を制作。デザインだけではなく、こうしたゼロベースから参入しました。

「素材にこだわり、子どもにも食べさせたいと思う優しい味のおせんべいです。コロナ禍で試食を出せないので、店頭でパッケージだけで引き付けなくてはなりません。『おせんべいだけど、甘いお菓子の物語がはじまる』がコンセプトだったので、ちょっと特徴を持たせるために本のようなパッケージに。紙の質感にもこだわりました」

suzuki_isoka4.jpg全部で6種類あり、本棚に並べたくなるようなおしゃれで可愛いパッケージに仕上がりました。

そもそも、なぜ愛知県の会社の仕事を請けることになったのかというと...。

「知人の紹介で参加したセミナーに、愛知県の方が参加していました。石黒商店さんが新しい感覚を入れたいのでデザイナーを探している...とのことで、私の会社のウェブサイトを見てくれて、札幌のデパートに催事出店で来る機会にお会いすることもでき、『ぜひお願いしたい』とおっしゃっていただけました。プレゼンの時は社長の奥様とお母様も同席されたのですが、女性同士で話しやすかったというのもあり、『打合せが今までにないくらい楽しかった』と喜んでいただいたんです」

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原点は、「絵を描くのが好き」という思い

中高生のころクラスに一人いたような、絵が得意な生徒だったいそかさん。


学校祭のTシャツデザインを考えたり、高校のクラス全員のイラストを描いたりと活躍していましたが、空港のグランドホステスに憧れていたため、短大の英文科に進学。しかし、進路を考えるうち、「やっぱり絵が好き、デザイナーになりたい」と方向転換しました。

そして、グラフィックデザインの専門学校へ。卒業後は、「アルバイトからでもとにかく早くデザインの仕事がしたい」と、契約社員としてデザイン会社のアシスタントをしながら、求人を探していました。

しばらく働くうちに、商品パッケージを主に手がける老舗デザイン会社の正社員というチャンスが巡ってきました。「昭和20年創業で、昔ながらの手書きを大切にする会社でした。文字の造りやカーブの角度など細かいところまでこだわり、パソコンに頼りすぎてはダメと、自動的に配置された文字の間隔も一つずつ調整する上司や先輩から教わり、鍛えられました」

そのデザイン会社では10年間勤務。
北海道土産の食品などさまざまなパッケージの制作に携わり、三國清三シェフ監修シリーズのロゴなど、会社を離れた今でも活用されているものもあります。

suzuki_isoka6.jpgここに写るパッケージもそのひとつ

そこでは、営業社員が仕事を取ってきて指示されるのではなく、デザイナー自らクライアントから仕事を獲得し、ゼロから考えて提案するというスタイルでした。

「自分で直接話ができると、そのデザインを作った根拠も話せますし、クライアントから変更してほしいと言われた時もどこを直してほしいのかを聞き出すことができます。クライアントの悩みを聞き出し、なぜ売れないのかを一緒に考えることで、こうした方が売れるのでは?とアイデアも出てきます」

結婚・出産してもデザイナーとして活躍

2013年に、会社の同僚だった今のご主人との結婚を機に、2人で独立。株式会社ニコデザインを創業しました。


suzuki_isoka12.jpg事務所前に掲げられたオシャレな看板

以前の会社からのクライアントの案件や、紹介で来る案件などを請け負い、順調に歩んできました。

「最初は会社員時代と同様、2人ともクライアントのところに出向きながら制作をしていたのですが、次第に忙しくなって仕事が回らなくなり、対外的な窓口は基本的に夫、私は制作と分業する体制が出来上がりました」

そして2年後には娘さんを出産。妊娠中は体調に合わせて仕事をしつつ、出産直前までデザインをし、退院後には復帰しました。

「出産後すぐに仕事の電話にも対応していました。12月後半に入院し、出産し、年明けまで4週間くらいはパソコンに向き合わない時間があって...。そうすると、デザインしたいという禁断症状が出てきてしまい、すぐ仕事に戻ったんです(笑)」

その後は、育児と仕事を両立する日々が始まります。朝の支度と保育園の送迎が終わって自宅に戻ったら仕事開始し、夕方はお子さんを保育園に迎えに行き、急いで夕食を作りお風呂に入ったら、お子さんと一緒に寝るという慌ただしくも充実した毎日。

「朝は保育園に送って、自宅でコーヒーを入れたらスイッチが切り替わり、仕事モードに入ります。一つのことに集中するタイプなので、仕事中は仕事のことだけ。その代わり、休日はあえて仕事のことはなるべく考えないようにしてリフレッシュしています」

そんないそかさんのここ数年の気分転換は、自転車。

suzuki_isoka8.jpgこちらがいそかさん愛用の自転車

時には仲間と一緒に車に自転車を積んで足を伸ばし、洞爺湖周辺40kmを一周するなどポタリング(※目的地を特に定めずに、周辺を自転車で巡ること)を楽しんでいます。湖と森を背景に自転車をこぎ、車のスピードでは見られない景色を眺めたり、温泉街を訪ねたりと、非日常空間を堪能。

「自転車は1人でこぐので、無になれるのがいいですね。普段は仕事中は夫や社員と、それ以外は家族といるので、1人になれる時間は本当にありません。自分が一人っ子だからというのもあり、1人でいる時間がほしいタイプなんです(笑)」

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自分の好みより「手に取ってもらえるか」が大事

仕事のヒントにと、日ごろから本や雑誌、ポスター、テレビCMなどには常にアンテナを張っています。

「この表現いいな、と思ったら写真に撮っておき、後で参考にしたりしています。クライアントと打合せをしていても、ゼロから作るよりも『○○の広告みたいに』と話をした方がイメージが共有しやすいですから」

suzuki_isoka9.jpg事務所の本棚に並べられた参考にしているデザイン本の数々

女性的な可愛らしいデザインの仕事が多いですが、実は男性的でシャープなものが好きだといいます。「子どものころから、ピンクより黒が好きでした。ですが仕事では女性向けの商品パッケージのデザインを依頼されることが多く、商業デザイナーですので、自分の好みより『どうすれば手に取ってもらえるか』を考えて作っています」

時にはシャープで落ち着いた色味のデザインを求められることもあり、幅の広さもいそかさんの持ち味です。

仕事の幅を広げ「ときめくデザイン」を追求

さらに、活躍の場を広げる挑戦もしています。2019年に札幌でカメラマンとして活躍されている水上ゴロウさんという方を中心に発足した「ミライノデザイン研究室」。さまざまなジャンルのクリエイターが連携して広告物を作り上げるプロジェクトで、立ち上げ当初のロゴデザインの制作から関わっています。


「今まで20年近くデザインの仕事に携わり、40代に突入し、今までと違う場所に行きたい、色々なクリエイターの方々と一緒にお仕事をしてみたい、と素直に思いました。デザイナーとしての人生を考えると、さらにステップアップしていろいろな仕事をしてみたいと思ったんです」

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ウェブサイトやリーフレットのデザインなどこれまでとは違った分野のデザインも手がけ、さらに摩周・鶴居台湾友好観光推進協議会のPR動画とリーフレットを作るプロジェクトでは、現地での撮影前の打合せを重ね、2泊3日のロケも敢行。

「現地を自転車で巡る女子旅という内容だったので、『私のための内容じゃない!?』と思いました(笑)。朝早くから撮影に動いたり、打合せから完成まで長期間かけて制作したりと大変ではありましたが、楽しかったですし良い経験になりました」

suzuki_isoka11.jpgこちらがそのリーフレットです。

環境への配慮やコスト削減を考える企業が増え、パッケージの市場は徐々に縮小していくのでは、といそかさんはいいます。そんな中、仕事のバリエーションを増やし、いろいろな要望に対応できるようになりたいと前向きに挑戦を続けています。

目指しているのは、「自分がときめくデザイン」。

「自分がときめかないと、エンドユーザーをときめかせることはできないと思っています。そういうものを世の中に産み落としたいですね。一度関わったら、納品して終わりではなく結果まで見届けたいと思います。商品が売れなかった時は悲しいですしプレッシャーはありますが、やりがいも大きいです」

デザイナーとして安定した評価を得ながらも、さらに向上していこうと、楽しみながら仕事の幅を広げるいそかさん。デザインされたパッケージを手にした人、街角やウェブ上で見かけた人のときめきも広がっていきます。


鈴木いそかさん(株式会社ニコデザイン・ミライノデザイン研究室)
URL

https://nico-d.net

記事内でもご紹介しました、いそかさんが立ち上げ当初から参加しているミライノデザイン研究室


「ときめく」デザインを追求し、活動の幅を広げるママデザイナー

この記事は2021年10月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。