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北海道で暮らす人・暮らし方
池田町

林業を柱に、自分らしく生きる道を。池田町地域おこし協力隊20200924

この記事は2020年9月24日に公開した情報です。

林業を柱に、自分らしく生きる道を。池田町地域おこし協力隊

まちの林業の未来を見据え、持続可能な林業経営のために、小規模で森林を育て管理していく「小規模林業(自伐型林業)」の道を歩む池田町。
(池田町の取り組みの記事はコチラ→町の資源、天然林と炭焼き小屋を生かす小規模林業を。)
その想いを受け継ぐべく、地域おこし協力隊の方が2名採用されています。
2020年7月から採用された川瀨千尋(かわせちひろ)さんと、同じく8月から採用された福家菜緒(ふけなお)さんです。
活動が始まってさっそく、林業のノウハウを学ぶ毎日です。
つなぎ姿で山に入ってチェーンソーで木を切り、汗だくになって戻ってきたお二人に話を聞きました。

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好きなことをして生活したい、その手段が林業

北海道様似町出身の川瀨さんは、「40歳から好きなことをして生活する」という人生計画のもと、自衛隊入隊を経て不動産会社に入社して12年間働き、投資のノウハウを学んでいました。

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「不動産投資などでお金が働いてくれる環境を作って、空いた時間で好きなことを好きな人のためにやる生活がしたいと思っていました。その中で、山菜やキノコが好きなのもあって山に興味を持ち、林業に関心が湧いてきました。いろいろ調べる中で、私の理想のライフスタイルを叶えるのは自伐型林業だと考え、購入できる山林を探していたところ、地域おこし協力隊の募集を発見しました。子どもが生まれたタイミングでもあり、計画は前倒しになりましたが、32歳の今から体を動かしてやってみようと思いました」。

憧れの北海道で、いつかは林業の仕事を

一方、高知県出身の福家さんは、登山が好きなお母さんに連れられ、子どものころから森に行く機会が多く、高校生の時には森の仕事がしたいと思い、鳥取大学地域環境学科に進学。その後、もう少し勉強したいと北海道大学大学院農学院に進学し、環境資源学専攻へと進みました。

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「北海道は憧れの場所で行けるものなら行きたいと思っていて、来てみたらどっぷりはまって、ずっと住みたいなと思っていました。研究のフィールドが大樹町の歴舟川で、十勝に住みたいなと思いつつ、8年間は札幌近郊でレンジャーや環境教育、大学の研究室の事務員など、自然環境に関する仕事をしていました」。
現在小学1年生になるお子さんの出産を経て、育児と両立しながら自然に関わる仕事を続けてきた福家さん。興味のあった林業にも関わりたいと思っていたところ、大学院時代の研究室の先輩にあたる池田町林務係の山本健太さんが、池田町の地域おこし協力隊の募集についてSNSに熱い想いを投稿しているのを、共通の先輩のシェアを通して知りました」。

今回の地域おこし協力隊の募集を担当していたのが、その山本さん。製紙会社を経て中途採用で池田町に入庁し、池田町の林業の未来を考え小規模林業(自伐型林業)への舵を切った熱い職員です。もし自分が異動したとしても想いを受け継いで体現してくれる人に来てほしいと考えた山本さんは、提出書類の一つに4,000字の志望動機を加えました。

ikedakyoryokutai9.JPG右が池田町産業振興課の山本さん。池田町林業の未来を憂う熱いお方です

「役場内では、そんなに書ける人なんていないよ、と言われましたが、難なく書いてきたのが川瀨さんと福家さんだったんです。むしろ足りなかったと言っていました。それほどの想いを持った二人を、採用とさせていただきました」と山本さんは話します。

自伐型林業なら、家族中心の生活が可能に

川瀨さんが自伐型林業に関心を持った理由を尋ねると、「どこかに属することなく一人で仕事ができることが大きいですね。それに、お金のためにやるなら時には森に良くない伐採もしなければならないけれど、自伐型なら山の生態系を優先して自分のペースでできると考えたからです。妻が帯広に勤めているので、帯広から30分圏内で山を持って暮らしたいと考えていました。池田町なら通いでもできるので、その計画にもぴったり合致しました」という答えが。
そんな川瀨さんの人生計画を、奥さんも理解して応援してくれています。地域おこし協力隊への応募も、むしろ勤務時間が短くなるので歓迎だったとか。「家族あっての仕事だけれど、民間企業ではどうしても仕事優先になってしまいます。子どもが大きくなるまでは子育てにも時間を割けるし、3年後独立できる。3年後難しくても、35歳で不動産業に戻ることはできるので、そこまでリスクを感じずにチャレンジすることを決めました」。

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福家さんも、自伐型林業がライフスタイルに合っているのではと感じているそう。というのも、以前に林業への就職を考えて北海道森林整備担い手支援センターを訪ねて話を聞いたところ、子育てをしながらでは厳しいと諦めかけていたとか。
「仕事内容について詳しく聞いてみると、朝がすごく早いので、子どもを保育園に預けることもできないことがわかりました。そこで、自分のペースでできる自伐型林業なら小さい子を一人で育てながらできると思い、山本さんにも相談したところ、そういう人こそ来てほしい、人の働き方にも多様性があるべきと語ってくれたんです。私が先進事例になって、子育てをしながら森で働くことができる基礎が作れればと思いました」。

町で林業をベースに生活できる基盤を3年間で

お二人の熱い思いをベースに採用となったお二人ですが、地域おこし協力隊としての3年間の構想について聞いてみました。
3年間の計画が明確に立っている川瀨さん。「1年目は林業の専門知識を身に付けることに力を注ぎ、2年目は山林の情報を得ながら事務所と土場、山林を購入。合同会社を立ち上げます。3年目で不動産の事務所を登録して、卒業してからやることをこの段階から進めていきます」という話しぶりからも、かなり念入りに計画している様子。山本さんがお二人に太鼓判を押す理由もわかった気がします。
田舎は不動産会社がなかったり少ないケースが多く、池田町も宅建登録している会社は1軒だけ。マーケットとしても、不動産だけで食べていくなら不安がありますが、林業と掛け合わせて収入にしていくには良い兼業となっていることが伝わってきました。

ikedakyoryokutai4.JPG炭づくりの研修も行っています

福家さんは、「子どもたちに環境教育をしながら、将来の林業の担い手となってもらいたい」という強い思いがあり、そこで収入を得ていく方法を模索中だとか。
また、帯広で社有林を使って観察会を開くなどの環境教育をしているNPO法人トカプチの森ともつながり、活動に参加して意見交換をしていきたいと考えています。トカプチの森も活動する人が減り、高齢化しているので若い人の意見を求めていたといいます。
「これまで森林施業や生態系管理学を勉強していて、広葉樹で施業することが大事だと考えてきました。大規模な施業をしているところだとカラマツばかりになるので、今の池田町町有林をお借りして広葉樹の施業ができるのは大きなチャンス。生態系にも配慮した森づくりをしながら収入を得るにはどうしたらいいか模索したいと思います」。

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林業の基本から、自立していける仕組み作りまで

また、林業の技術も山本さんに教わりながら習得中です。入庁してすぐ、さっそくチェーンソーを扱って木を切る練習をしています。
「1本ずつ切っただけで汗だくになり、1時間くらいかかりました。安全のための装備を全部付けると外にいるだけで汗をかきます」と福家さん。
間伐、切った木の搬出、炭にする、販売まで、山本さんの通常業務に付いて行って、自伐型林業ができる一通りのスキルを学んでいきます。

卒業後は、町有林を使って分収林を作る構想になっていると川瀨さんが説明してくれました。
「私たちが30年間契約を結んで、木が売れた時に町に何割か払うシステムです。ただ、販路が確立されていないと利益化が難しいので、そこはアイデアを出しながら3人で探っています。地域おこし協力隊としての主な業務は、地域貢献的な業務と、将来の独立に向けた準備。それを使い分けてプロデュースしていければと思います。もし今後自伐型林業家が池田町にくるには収益が担保されていなければ生活していけないけれど、個人事業主同士が集まって団体を立ち上げて、10人くらい集まれば大きなロットの注文が入っても対応できるし、収益を分配できる。そういった仕組みをつくり、新規で参入したい人がそこで収入が得られるなら後進の自伐林家の人が来やすくなるので、その仕組みを作っていきたいと思っています」。

ikedakyoryokutai16.JPG3人で小規模林業(自伐型林業)の芽を出すべく奮闘中!?

自然いっぱい、おいしい店もある池田町ライフ

地域おこし協力隊として、池田町に住み始めたお二人。それぞれ、池田町での生活も楽しんでいます。
福家さんは市街地から少し離れた賃貸の一軒家を借りて住んでいますが、エリアに子どもがいないので、小1の娘を連れて挨拶に行ったら地域の人が目を細めて喜んでくれたとか。
「ラジオ体操のことなどを聞きに行っても、みなさん喜んで教えてくれて。田舎はもっと閉鎖的かと思っていたけれど、明るく受け入れていただけたので、地域のみなさんの力を借りて子どもを育てていけたらと思っています。子どもも最初は転校してお友達と離れるのを嫌がりましたが、『家にはお庭があるよ、ダンゴムシも飼っていいよ、麦畑でタンチョウの親子も見られるよ』とたくさんある良いところを話したところ、楽しみにしてくれるようになりました」と新しい生活を親子で楽しんでいるようです。

単身赴任なので、町内の居酒屋巡りも楽しんでいるという川瀨さん。
「おいしい店や、個性的な店が結構あるんです。よく役場の方と行ったりもしますが、以前の不動産業のお客様が役場の同僚になったというご縁もありました」。
そんな夜の場でも、地域おこし協力隊の仕事を繰り広げています。
「池田町で採れたミズナラのスティックをウイスキーやブランデーに漬けて香りづけをした商品を私たちがプロデュースし、飲食店にサンプルを持っていって試飲してもらっています。池田町には池田ワイン城があるので、いずれはこの香りづけスティックをワイン城で販売してもらえるよう職員の皆様に風味の検証をお願いしてます。地元の間伐材を生かした地域おこし型の業務ですね」。

お二人の活動はまだスタートしたばかり。でも、池田町の人たちの支えと期待を受けて、そして山本さんの思いを受け継ぎながら、いずれは個人の林業家として立ち上がるべく、持続可能な林業経営に向かって歩き始めています。

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※2021/6/17 追記
その後福家さんと川瀬さんは頓所幹成さんとともに3名で森づくり任意団体『minotake forest works(ミノタケ フォレスト ワークス)』を設立しました。主に広葉樹林を対象として、長伐期多間伐施業、近自然森づくり、身の丈に合った小規模で丁寧な自伐型林業を実践していきます。今後のminotake forest worksの活動はFacebook・Instagramで更新していくそうなので、こちらも合わせてご覧ください。

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池田町 地域おこし協力隊
住所

中川郡池田町字西1条7丁目11番地

電話

015-572-3111


林業を柱に、自分らしく生きる道を。池田町地域おこし協力隊

この記事は2020年8月6日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。