HOME>このまちのあの企業、あの製品>夢と憧れを叶える!十勝に移住して北海道拓殖バスの運転士に

このまちのあの企業、あの製品
音更町

夢と憧れを叶える!十勝に移住して北海道拓殖バスの運転士に20240118

夢と憧れを叶える!十勝に移住して北海道拓殖バスの運転士に

「バスの運転手さんになりたい」そんな子どもの頃の夢を、好きだった北海道への移住のうえ転職して叶えたバスドライバーが十勝にいます。帯広市や新得町など十勝中西部を中心に運行している北海道拓殖バスの運転士、上月(こうづき)崇さんです。

上月さんはどんな想いで転職したのでしょうか。また、北海道拓殖バスは人材確保やバス事業の継続のためにどのようなことを考えているのでしょうか。2024年問題など全国的にドライバー不足が叫ばれている昨今、気になるところです。上月さんをはじめ北海道拓殖バスのみなさまにお話を伺い、北海道拓殖バスのドライバーの仕事の魅力を探ってみました。

北海道拓殖バスは十勝に根付いた地元の足

北海道拓殖バスは帯広市の隣、音更(おとふけ)町に本社を構えるバス会社。帯広駅などを基点に近郊や郊外を結ぶ路線バスと、とかち帯広空港への連絡バスや都市間バス、スクールバスや貸切バスなどを運行しています。

takusyokubus03.jpg

会社の前身は、1928年に新得町から鹿追(しかおい)町間に沿線開拓と材木輸送のために開業した、北海道拓殖鉄道(現在は廃線)という鉄道会社。1961(昭和36)年にバス事業部が独立し、現在に至ります。2023年12月現在、全86台のバスがあり、十勝の方々の通勤・通学の足であり、然別湖やトムラウシ温泉など観光客の足として運行しています。

幼少期の夢と北海道の憧れを叶え、バスドライバーに転職

上月さんは福島県出身で、2023年の春に拓殖バスの運転士として採用されるとともに、東北から北海道へ移住しました。バスドライバーとしての運転経験はゼロ。なんと未経験で新天地でのバスドライバーデビューなのです。

ただ、前職はJR東日本の列車の運転士さん。主に山形県で奥羽本線などの列車を長年運転してきたそうです。同じ運転士という職種で相通じるものがあるのかもしれませんが、道路の上と線路の上ではまるで違うはず。

「元々運転するのが好きだったんですよね。当然バスと列車では違いはありますけど、運転するのは楽しいです」

takusyokubus04.JPG

好きなことが仕事になるって最高!でも、なぜ列車からバスに?

「実は子どもの頃『バスの運転手さんになりたい』って思っていたんです。東北でずっと仕事をしてきたのですが、このまま働いてはいけるけど、この先はどうしようかなって考えていました。人生一度きりだしやりたいことやろうかなと思って、大好きだった北海道に行って子どもの時になりたかったバスの運転手をやろうって。実は8年くらい前に自分でバスの免許も取りに行っていました。バスの運転をしてみたくて、教習所行けばバス運転できるのでね」

なんと既に自分でバスの免許も!幼少期の想いや夢を叶えるべく転職をしたそうです。

北海道が好き。十勝が好き。月2回も渡道したことも

さらに、長年住み慣れた東北ではなく北海道で職を得た理由も、純粋に北海道が好きだったから。

「僕、北海道が大好きだったんです。祖母が十勝の陸別町に住んでいたというのもあって、子どもの頃からよく北海道に来ていました。毎年のように北海道を旅行していて、特に5年くらい前からは月2回くらい来ることもあるくらい好きだったんです。特に食事と温泉が好きで。前々から北海道に住みたいって気持ちはあって拓殖バスの求人も見て知っていたのですが、ふんぎりがつかなかったんです。でも人生一度だからって、もう勢いで応募して来てしまった感じです」

takusyokubus05.JPG

陸別町にゆかりがあったとはいえ、北海道の美味しいグルメに胃袋をつかまれ、極上の温泉の魅力にハマってしまったようです。広い北海道の中でも特に十勝でその魅力を強く感じられたそうです。

「道内各地を巡ったのですけど、やっぱり十勝がいいなって。食事が美味しいですし、近くに温泉もありますし。特にモール温泉は最高ですね。あと、サウナも設備が充実しているところが多いので、北海道に住むなら十勝にしようって考えていました」

志望動機は、馴染みのあるバスでお気に入りの場所を走りたい

ところで、十勝には大きなバス会社が2つあり、そのうちの1つが北海道拓殖バスです。なぜ北海道拓殖バスに応募したのでしょう?

「バスの『型』と路線が好きだったからなんです。僕が福島県に住んでいた時、家の前を地元のバス会社で福島交通のバスが走っていました。このバスのメーカーが、今拓殖バスで走っているバスのメーカーと一緒だったんです。運転するなら愛着のあるバスがいいなって。それと、上士幌(かみしほろ)とか鹿追とかドライブするのが好きだったんです。で、そっちの路線を持っているのが拓殖バスだったってのもあって、選びました」

好きな北海道の中でも大好きな十勝で、馴染みのあるバスでお気に入りの路線を運転したい。好きを極めて幼少期の夢を叶えてしまったという上月さん、素晴らしすぎます!

求人では魅力的ではないことや日々の仕事ぶりを見せる

夢を追求するって素敵なことではありますが、現実的には待遇や条件、周囲の環境など検討したり天秤にかけてみたりすることが多々あります。北海道拓殖バスの実情はどうなのでしょう?

一旦ここで、北海道拓殖バスの代表取締役社長の中木基博さんと執行役員統括部長の寺山康浩さんにお話を伺ってみました。

takusyokubus08.JPG

中木さん「都会の大手のバス会社さんとかに比べたら、給与とか休みとか劣るところはやっぱりあります。『こんなはずじゃなかった』って思われないように、会社として魅力的ではない部分もしっかり見せていきながら、会社に入ってからの生活とか魅力を伝えていくようにしています」

率直に語っていただきました。日本中でドライバーの人手不足が言われていますが、拓殖バスも例外ではありません。ただ、拓殖バスの場合は単に運転手募集の告知を出すのではなく、入社をしたその後の仕事や生活を見据えた紹介をしているのがポイントです。

中木さん「求人媒体で募集を出していますが、それ以外に当社独自のリクルート専用のホームページ作っているんです。その中で、例えば運転士さんの1日の流れはこんな感じですよとか、運転士のインタビューを載せるとか、あとは研修に入ってから一人前の運転士になるまでどういった研修の流れがあるのかとか、求人広告であまり載せられていないようなことも載せています」

takusyokubus09.JPG

寺山さん「あとは見せ方もですね、我々地方のバス会社なので、例えば広大な景色の中で進行していますとか、そういった写真とか動画とかを見せながら紹介しています。SNSもわりと頻繁に更新しています」

バスドライバーに興味があるけど日々の仕事はどんなことをするのだろうと悩んでいる方や、北海道の広々とした道を運転してみたいって思っている方などにとっても嬉しい施策。まさに上月さんのような方は必見です。

ドライバーの仕事紹介とともに十勝への移住紹介が大事

求人広告や自社サイトでの告知のほか、首都圏での合同企業説明会に出展することもあります。Webサイトにしても合同企業説明会にしても、道内在住の方とは違ったアプローチが必要だそうです。なぜなら、道内在住者と道外在住者の着眼点が違うから。単にドライバーさんはこういう仕事ですよという紹介ではなく、北海道へ移住を促す観点での仕事紹介に徹しているそうです。

中木さん「例えば、移住するにはどれくらいの費用がかかりますかとか、十勝の家賃の相場はどれくらいですかとか、移住に関する自治体の一時金のこととかですね。近隣の自治体の移住施策に関するパンフレットとかも見せながら話しました」

takusyokubus10.JPG

寺山さん「北海道以外の各県のバス会社さんとの違いとして、十勝平野の雄大な自然とまっすぐな道路の中で、こんなところでバス運転できますよっていう紹介のしかたは好評でしたね」

中木さん「十勝は北海道の中では雪がかなり少ない地方なので、冬でも路面のアスファルトが出ていることが多いんですよ。大型バスの運転をあまりしたことがない方にとっては、都会で人や車が多い狭い道路を走るより、広々とした十勝のほうが安心して走りやすいと思いますよ」

真冬でも『十勝晴れ』といわれるくらい晴天率が高くて雪が少ない十勝。都会に比べれば家賃も安くて生活コストも抑えられるので、バスドライバーへの転職にはいい環境です。

中木さん「ただ、職場環境や生活環境の魅力を伝えればそれでよしというわけでもなく、給与面とか都会の大手バス会社さんとの格差を縮めていくこともして考えていかないとって思います。そもそも運転士だけではなく、整備士や事務職員も少ないので、全体を通じてどうやって人を確保していくかっていうことは当社の課題です」

全国初のQRコード決済導入

人材確保のためにいかに魅力のあるバス会社にするか。拓殖バスでは乗客の利便性を高めるための施策や設備投資も積極的にしています。利用者が増えれば会社の売上が増え、ひいては従業員にも還元されます。

代表的な取り組みが、QRコード決済でバス運賃の支払いができる仕組みと、GoogleマップとGPSを活用した運行状況のリアルタイムの案内「バスロケーションサービス」です。なんと、バス事業者でQRコード決済を導入したのは全国初なのだそうです。

中木さん「大都市だとICカードが一般的ですけど、十勝では普及していないんです。でも、スマホは多くの方が持っていますよね。整理券にバーコードが印字されていて支払い時に現金かQRを選ぶだけなので、ICのようにはじめにピッとかざす必要もないです。お客様は整理券取ってお金を払うという流れが身についていますので、従来の乗り降りのしかたと変わらないという点で抵抗感も少なく受け入れていただけたと思います」

寺山さん「バスロケーションサービスは、一般路線バス車両にGPS(全地球測位システム)端末が搭載されていて、位置情報を公開しています。運行状況や遅れなどをスマホで確認できるんです。これらの取り組みをしてから、QRコード決済の取扱高は右肩上がりとなっています」

スマホがあれば、仮に真冬にバスが大幅に遅れていても寒空の中でいつ来るかわからないバスを待ち続ける必要もありませんし、下車時に小銭をジャラジャラ数える必要もありません。バスの使い勝手もよく利用しやすくなります。

新事業「拓鉄キノコタン」に注目!

さらにバス事業にとどまらず、会社全体の魅力創出を図る取り組みとして「拓鉄キノコタン」もスタート。これは、2023年に新得町内のバス営業所の一角に作った、新得町特産の原木シイタケの栽培と観光農園の施設です。

ここは会社の前身である北海道拓殖鉄道の駅があった場所。現在は新得町周辺のバスの拠点なので、観光施設ができることで既存路線の乗客増が期待できます。また、林業で栄えた街ゆえにかつて鉄道ができ、原木シイタケが特産品になったという歴史を伝える場としての社会的意義もあります。そして、北海道拓殖バスのドライバーさんが定年退職をした後の働き口の一つにもなります。
始まったばかりの事業ですが、この先の展開と賑わいに期待がいっぱいです!

takusyokubus13.jpg

「拓鉄キノコタン」の記事はこちら。ぜひご覧ください!

会社としてさまざまな取り組みをしていますが、すべて利用者のためであり、地域のためであり、従業員のための魅力向上の施策です。

バスの運転に専念できる環境

再び上月さんに、入社して気づいたことや気になったことなどを聞いてみました。

「うーん......、特別何か期待と違ったということはないですね。強いて言うなら、いい意味で運転手さんのイメージが変わったことくらいです。前は運転手さんってムスッとして怖いイメージだったのですけど、入社したらみんな親切でやさしいなって思いました」

特段不満もなく、むしろ理想の地で天職に就けて大満足なようです。

takusyokubus14.JPG

「早番の時は明るいうちに帰宅できますし、遅番の時は午前中に銀行へ行ったり買い物したりできて、時間のゆとりは入社前に思っていたよりもあります。近所にモール温泉やサウナがあるのも嬉しいです」

拓殖バスは自社営業所内に給油所や洗車機があるほか整備士もいるので、基本的に運転士は運転に専念できる職場環境。バス業界全体を見渡すと、運転士がさまざまな業務を兼任する会社が比較的多いそうです。
運転士は始業前のチェックをして運転業務に就き、営業所に戻ったらセルフで給油をしてその日の仕事は終わり。メンテナンスやタイヤ交換などは自社の整備士がしっかりやってくれますし、車内清掃は外部会社に委託しているので、運転士が整備や清掃をする必要がありません。

北海道に移住したいなって思っているみなさん、バスの運転士になってみたいと思っていたみなさん、十勝晴れの大平原でバスを走らせてみませんか?

takusyokubus15.JPG

北海道拓殖バス株式会社
北海道拓殖バス株式会社
住所

河東郡音更町然別北5線西37番地

電話

0155-31-8811

URL

https://www.takubus.com/


夢と憧れを叶える!十勝に移住して北海道拓殖バスの運転士に

この記事は2023年10月30日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。