近年、大学生が過疎地や地方都市の活性化のためにアイデアを考え、実際にアクションを起こす取り組みが増えています。学生を対象にした地方創生やまちづくりのコンテストも活発です。札幌にある北海学園大学経営学部の佐藤大輔研究室の学生たちも、この数年、芦別市と連携し地域活性化に取り組む「芦別プロジェクト」にチャレンジしています。毎年、地域の課題と向き合い、テーマや内容を変えており、今年(2026年)は「あしコネ」というイベントを開催します。今年の中心メンバーである3年生に、活動内容や意気込みなどを伺いました。
2022年から続く「芦別プロジェクト」。今年は地域と若者を繋ぐのがテーマ
芦別プロジェクトの3年生メンバーは、山形李果(やまがた・ももか)さん、小林愛来(こばやし・あえら)さん、川内志穂(かわうち・しほ)さんの3人。今年は彼女たちのほかに2年生が3人参加しています。彼女たちが所属する佐藤大輔研究室はどのようなゼミなのでしょうか?
最初に切り出してくれたのは山形さん。「大輔ゼミは、創造性、クリエイティブなアイデアでイノベーションを起こすことをテーマにしています。学生たちが自分たちで考え、実践的なプロジェクトに取り組むのが特徴です」と話します。
北海学園大学経営学部 佐藤大輔研究室の山形李果(やまがた・ももか)さん、小林愛来(こばやし・あえら)さん、川内志穂(かわうち・しほ)さん
いわゆる座学による学びだけでなく、学生たちが地域や企業と連携し、課題解決のためのプロジェクトに取り組むのが大きな特徴のゼミです。プロジェクトはさまざまあり、地域をアピールするための食品開発、人材確保のための取り組みなど、これまでもたくさんのプロジェクトが行われてきました。
今回、3人が携わる芦別プロジェクトは2023年から始まったもので、芦別市と連携して展開しています。
「もともとは2022年に芦別の事業者さんと出会った先輩が地域活性化に積極的で、そこからプロジェクトが始まったと聞いています」と小林さんが言うと、「毎年、課題を見つけ、それを解決する内容を考えています」と川内さんが続けます。たとえば、昨年は芦別の小学生を対象にした「あしらぼ」というイベントを開催。大学生が地元の小学生と一緒に芦別の魅力を発掘し、地域への愛着を育むことを目指しました。
そして今年、3年生になった3人が中心となって取り組むイベントが「あしコネ」です。芦別とコネクトを組み合わせたネーミングで、若者と地元の企業・地域を繋ごうという想いが込められています。
学生と芦別の企業の交流事業への関心は高く、あっという間に定員に
今年のイベント内容を決めるにあたって、「まずは芦別の協力企業の皆さんや学生にアンケートを取って、課題を抽出しました。その結果、若者と企業の交流の場が少ないという課題を解決するため、札幌の大学生と芦別の企業が関係を築くことができる交流事業を行うことにしました」と山形さん。
3人が用意してくれた資料によると、あしコネの目的は、「札幌の若者と芦別企業の魅力共創」「芦別の関係人口の創出」「企業と若者の持続的なつながりづくり」「芦別の価値を再発見する学びの場」とあります。まちの課題のひとつである、若者の流出と人手不足にスポットを当て、そもそも一度出て行った若者が戻らないのは、芦別に魅力的な企業がないからではなく、若い人たちと地域企業の接点がないから選択肢に入っていないだけではないかという仮説のもと、イベントの目的を構築。芦別の企業にとっても、参加する大学生にとってもプラスになる内容を練り上げました。

日程は9月15日~17日の3日間。参加者は2泊3日で芦別へ行くことになりますが、8月中に事前研修を実施するそう。この研修では、佐藤大輔教授によるマーケティングの講義と、芦別のまちについて市の担当者によるレクチャーが行われます。「このイベントは北海学園大学以外の学生も参加OKにしています。経営やマーケティングに興味のある学生にはすごく魅力的だと思います」と川内さん。
芦別での3日間は、地元企業との交流が行われるほか、芦別のまちの魅力を体感するためのアクティビティーも用意されています。小林さんは、「参加企業さんからは社長クラスの方たちがいらしてくれます。大学生が企業のトップの方たちと直接話ができる機会はそうそうないもの。これも魅力だと思います」と話します。
2日間で芦別の課題や解決策を深掘りし、3日目の最終日にはチームに分かれ、芦別で働くことの意味や訪問した企業の価値、イベントを通じて芦別に対するイメージがどう変わったかなどを含め、芦別で働く魅力をいかに学生に発信していくかの提案を芦別市長らに向けて発表します。
なかなか盛りだくさんの内容ですが、募集を開始するとあっという間に20人の定員が埋まってしまったそう。興味関心の高い学生が多いことが伺えます。山形さんは、「私たちもこんなにすぐに定員に達するとは思っていませんでした。G-PLUSという学内のインターネット上の掲示板のようなものがあるのですが、そこに載っているお知らせを見て、友達を誘って応募してくれた人が比較的多いようです。また、SNSを見て興味を持ち、応募してくれた人もいました。友達同士の参加が6割ほど。あとは1人での応募でした」と話します。
ビジネスの基礎が学べる経営学部。さらに実践的な学びが得られる佐藤大輔ゼミへ
参加者が定員に達し、ひとまずホッとしているという3人。せっかくなので、そもそも3人が経営学部に進学し、佐藤大輔研究室を選んだのかを伺おうと思います。

まずは、札幌出身の山形さんから。「大学進学を考えた際、ビジネスの基礎やマーケティングに関心を持っていたので、経営学部を選びました」とハキハキ話します。「大学生活の4年間って、ぼんやり過ごしていたら一瞬で終わってしまうと思ったんです。だからこそ、社会人になる前段階として、大学生のうちにしかできない有意義な実践経験を重ねたいと思ってこのゼミを選びました」と研究室を選んだ理由を語ります。

同じく札幌出身の川内さんは、「テレビCMなどをきっかけにマーケティングに興味を抱くようになり、経営学部に進学しました」と振り返ります。大学入学後のゼミの見学の際、佐藤教授のラフで魅力的な人柄や、自身がもともと関心を持っていた「地域活性化」に直接コミットできる環境に惹かれてゼミを選択。「北海道が好きで、一次産業や地方にも興味があります。芦別プロジェクトをきっかけに道内の地方都市の課題も知ることができました。将来的に大好きな北海道に貢献できる仕事に就きたいと考えています」と穏やかな口調で語ります。

一方、旭川出身の小林さんは、高校生のときに参加したオープンキャンパスで佐藤大輔研究室の学生たちの取り組みを聞いたのがきっかけで経営学部に進学。「ちょうどオープンキャンパスで、先輩たちからリアルなゼミの活動を聞かせてもらったんですけど、実践的で面白そうで、直感的に『このゼミに入りたい!』と思いました」とニッコリ。そして念願通り、人気の高い佐藤大輔研究室へ。卒業後はたくさん経験を積んで、将来は北海道での起業も視野に入れているそう。その経験の第一歩が芦別プロジェクトというわけです。
何度も通ううちに芦別の印象に変化が。まちのために自分たちも頑張りたい
さて、プロジェクトのけん引役として、今は堂々と活動している3人ですが、実はプロジェクトに関わるまで、芦別市に行ったこともなければ、場所すらよく知らなかったそう。2年生の冬に初めて芦別へ行ったときの印象を「冬ということもあって、とにかく人がいなくて、まちが動いていないという印象で、その静けさに逆に圧倒されました」と山形さん。川内さんも「ファーストフード店が全くないことに驚きました。駅舎も古く、北海道にこんな場所があるんだというのが最初の正直な感想でした」と話します。札幌や旭川という都市圏に暮らし、それまで観光地化された場所にしか足を運んだことがなかった3人にとって、地方都市が直面しているリアルな現状は衝撃だったようです。

しかし、何度も芦別に足を運び、地元のキーパーソンや企業を訪問するうちに、主観的な景色は少しずつ変わり始めました。「通い詰めるうちに、とにかく人が温かいまちだと気付きました」と川内さん。小林さんも「訪問先の皆さんは優しく迎えてくれるし、まちの人たちもみんな親切。そして何より、まちを良くしたいという熱い想いを持った人がたくさんいることが分かりました」と続けます。
イベントの協力、協賛集めのため、リストアップした芦別市内の企業に自分たちでアポを入れ、定期的に芦別を訪れている3人。この芦別プロジェクトに毎年のように協力してくれる建設系の企業の社長から、「君たちみたいな学生が来てくれるだけで救われるよ、と言ってもらったとき、本当にこのまちのために頑張ろうと思いました」と山形さんは話します。
また、ある日、3人がまちの飲食店で昼食を食べていたとき、たまたま居合わせた地域住民の方から「あれ、佐藤大輔研究室の子たちかい?」と声をかけられたことがあり、自分たちの活動がきちんと地域に根付き始めているんだと実感したそう。小林さんは「先輩たちがこれまで築いてきた関係性も大切にしなければと思いました」と話します。
ビジネスのリアルを知り、自分たちの成長も実感。最後まで頑張ってやり遂げたい
先輩たちからレクチャーしてもらったというビジネスマナー、たとえば訪問時の名刺の渡し方や席の座り方、アポを入れる際の電話対応やメールの書き方など、形式的なものをマスターした上で、芦別市内の企業を訪問しているという3人。温かく迎えてくれるところが大半だと言いますが、いざ協賛金の話になると、「厳しいビジネスの現実を肌で感じます」と川内さん。小さな個人商店などからは「応援はしているけれど、今の状況でお金を出すのは厳しい」と断られることもあるそう。しかし、そのようなリアルな声を聞くことで、「まちの本当の課題や本質的なものが見えてくるようになり、私たちも企業や行政の目線に立ち、相手にとってのメリットは何かを考えて行動できるようになったのは大きな収穫です」と山形さん。

現在、9社以上の地元企業から協賛してもらっているそう。「企業訪問をする中で、初めて知ったこともたくさんあります。芦別には世界とビジネスをしているようなすごい企業もたくさんあります。さまざまな企業の方々と直接お会いでき、お話を聞けることに私たちが何より刺激を受けています」と小林さん。
このプロジェクトに関わるようになり、大事な学びや刺激を受けるのはもちろん、自身の成長を感じることもあるそう。たとえば川内さんは、「それまで自分の意見を言うのが苦手でしたが、自然と自分を表現できるようになり、コミュニケーション能力が高まったと思う」と話します。
当初、一番懸念していたという参加者は、3人が想像した以上のスピードで埋まりましたが、芦別の企業回りやイベントの準備など、9月の開催に向けて3人がやらなければならないことはまだたくさんあります。ほかの勉強やアルバイトもなる中、忙しい日が続きますが、3人は「大学生のうちにこういう貴重な経験ができるのは、このゼミならでは。最後まで頑張ります」と笑顔で締めくくってくれました。


















